早くも3作目!
Title:Hellfire
Musician:black midi
今や、次世代を担うイギリスのロックバンドの代表格と位置付けられるようになったblack midiの3枚目となるアルバム。前作「Cavalcade」が2021年のリリースだったので、前作からわずか1年という、海外のミュージシャンとしては(日本のミュージシャンでも?)、かなり早いリリースペースでの新作リリースとなりました。それだけ勢いにのったバンドということでしょう。
今回のアルバムでも、まず1曲目でありタイトルチューンである「Hellfire」から圧倒されます。スタート直後から圧倒的なバンドサウンドに、ポエトリーリーディング的なラップ。そのダイナミックなサウンドに圧巻されつつ、2曲目「Sugar/Tzu」にうつるわけですが、この2曲目がアルバムのひとつのポイントになっているように感じます。ダイナミックで複雑に構成されたプログレ的なサウンドに同じく複雑なリズム、ホーンセッションまで入ったダイナミックで賑やかなサウンドが大きな特徴なのですが、もうひとつ大きな特徴となっているのは、ここに重なるメロディーとボーカルが、ムーディーで哀愁感ただようという点。ホーンセッションと重なり歌いあげられるボーカルは、ともすればひと昔前の日本の歌謡曲テイストな雰囲気すらあります。
続く「Eat Men Eat」もラテンテイストのサウンドを聴かせつつ、ラテンらしい哀愁感あふれるメロディーラインが大きな魅力に。続く「Welcom To Hell」もダイナミックで複雑な構成のサウンドと畳みかけるようなポエトリーリーディング的なボーカルを重ねつつ、時折、ムーディーな歌も垣間見せています。さらに続く「Still」はメランコリックな歌モノのナンバーとなっており、まさにこのダイナミックなプログレ的なサウンドとメランコリックな歌の組み合わせが本作の大きな特徴となっていました。
インターリュードを挟んだ後半も、そんなダイナミックなサウンドの曲とムーディーに聴かせる歌モノを交互に聴かせる展開に。ダイナミックなサウンドの「The Race Is About To Begin」からスタートし、メランコリックな歌モノ「Dangerous Liaisons」「The Defence」と続き、ラストの「27 Questions」はアバンギャルドな要素を不穏な雰囲気でダイナミックに聴かせる楽曲で締めくくり。最後はblack midiらしい圧巻なサウンドを聴かせる締めくくりとなっています。
前作では、ロック、プログレ、サイケに70年代的な要素を加えたサウンドに彼らの音楽的な幅の広がりを感じましたが、今回のアルバムも同じくロック、プログレ、サイケの要素に、ムーディーな歌モノという新たな音楽的要素を加えた作品になっていました。メランコリックなメロディーラインが多かったこともあり、前作以上にいい意味で聴きやすさも増した感じもします。これで3作目。アルバム毎にblack midiらしい主軸は維持しつつも、あらたなる展開を感じさせる彼ら。その活動からは、まだまだ目が離せなさそうです。
評価:★★★★★
black midi 過去の作品
Schlagenheim
Cavalcade
ほかに聴いたアルバム
World Wide Pop/Superorganism
様々な出自のメンバーから構成され、サンプリングなどを多用したユニークな音楽性で注目を集めたSuperorganismの2枚目となるアルバム。ボーカルのオロノが埼玉出身の日本人ということもあり日本でも注目を集めました。基本的に作風は前作と同様、様々なサウンドをサンプリングした賑やかでユニークなサウンドと、ダウナーに淡々と歌うボーカルが特徴的。前作ではイギリスのナショナルチャートで最高位25位を記録し、ブレイク寸前と言われたものの、残念ながら本作では99位までダウン。ブレイクは厳しい状況になっています。一方、日本のオリコンチャートでは最高位57位とベスト100入りもできなかった前作から大きくアップし、むしろ人気は上昇傾向に。その影響か、参加ミュージシャンにCHAIや星野源といった日本人ミュージシャンも目立ち、微妙に日本市場を狙っているような方向性が気になります。ユニークなバンドなだけに、もっと海外でも注目を集めてほしいところなのですが、変に「ビッグインジャパン」(というほど日本でも売れてはいないのですが・・・)にならないことを願いたいところなのですが・・・。
評価:★★★★
Superorganism 過去の作品
Superorganism
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