昭和歌謡曲のレジェンドの作品集
Title:いずみたくソングブック-見上げてごらん夜の星を-
昭和を代表するヒットメイカーとして数多くのヒット曲を世に生み出してきた作曲家、いずみたく。ヒット曲のみならずCMソングやアニメソング、ミュージカルなど数多くのジャンルの作曲を手掛け、その数は約1万5千曲にものぼるそうです。今回紹介するのは、そんな多岐にわたる彼の作品のうち代表曲を網羅的に収録した初となる本格作品集。全CD5枚組となり、カテゴリーごとに「ヒット・ソングス」、生前の彼の自薦曲を中心に選曲した「レアリティ・ソングス」、テレビや映画などの主題歌をあつめた「テーマ・ソングス」に「CMソングス」、「舞台・ミュージカル・ソングス」で構成。さらにDVDとしていずみたくが生涯をかけて制作したミュージカルを今もなお受け継いでいるイッツフォーリーズの「いずみたく あいうえおメドレー」が収録されています。
そんないずみたくのヒット曲の数々ですが、既に彼は逝去後、20年を経ており、主に彼が活躍していたのは60年代や70年代。そのため、特に各種主題歌については聴いたことない曲も少なくなく、特に「主題歌」でも、彼が手掛けた後にあらたに主題歌になった曲の方がなじみのある、というケースも少なくありません。例えば「天才バカボン」はおなじみの「これでいいのだ~♪」ではなく、かなりビックリしますし、アンパンマンの曲も何曲か収録されているのですが、おなじみの「そうだ、うれしいんだ~♪」の曲ではありません(こちらは「アンパンマンのマーチ」で、こちらの作曲家、三木たかしも同じく巨匠なのですが)。
ただ一方、すごく懐かしさを感じる曲も少なくありません。特にこの膨大な彼の曲を聴いていて感じたのは、自分が子供の頃に、親がふと口ずさんでいた曲が多いな、ということ。ヒット曲はもちろんなのですが、CMソングなどでもそんな曲が多く、それだけ多くの人になじみやすい曲が多かったんだな、ということも感じました。また、もちろん「手のひらを太陽に」「いい湯だな(ビバノン・ロック)」「太陽がくれた季節」「ゲゲゲの鬼太郎」(こちらはおなじみのあの曲です)、さらには「徹子の部屋のテーマ」などなど、リリースした頃にリアルタイムで聴いていた訳ではないのですが、私個人としてもなじみのある曲も多く、あらためていずみたくが歌謡曲の多くのスタンダードナンバーを世に送り出してきたことを実感させられます。
さて、そんな彼の曲なのですが、全体的な曲の方向性としては「ザ・歌謡曲」といった印象を受けます。哀愁たっぷりに聴かせるわかりやすいメロディーラインは、まさに歌謡曲そのもの。また、特に彼の曲に多く感じた特徴としては、「太陽がくれた季節」が典型的なのですが、少々ベタでわかりやすいダイナミックなメロディーラインの曲が多く、いかにもな青春歌謡曲的な曲も目立ちました。一方で、ムード歌謡曲的な曲も少なくないものの、典型的な「演歌」といった曲はなく、そういう意味では60年代以降の、洋楽の影響も受けつつ日本らしいメロディーラインを引き継いだ歌謡曲の王道を行くような曲を書いていたのでしょう・・・というよりも、むしろ彼が書いたようなメロディーこそ、「歌謡曲」ととらえられ、多くの作曲家に影響を与えたのかもしれません。
非常にバリエーションある曲が並んでおり、おそらく、特に40代以降くらいの方にとっては知っている曲も少なくないのではないでしょうか。むしろ「手のひらを太陽に」なんて、今の幼稚園児でも知っているくらいでしょう。それだけ聴き応えのある作品集。60年代や70年代に青春を過ごしたような方にとっては、間違いなく懐かしくて感涙ものでしょうし、それより下の世代でも文句なしにお勧めできる作品だと思います。あらためて作曲家いずみたくの偉大さを実感できた作品集でした。
評価:★★★★★
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