« 不思議な「お花屋さん」 | トップページ | 資本主義の矛盾を突く »

2022年9月25日 (日)

女王の貫録

Title:RENAISSANCE
Musician:Beyonce

アルバムをリリースする毎に大きな話題となり、おそらく現在、最もアルバムのリリースが待ち焦がれられているミュージシャンBeyonceのニューアルバムがついにリリースされました!前作「Lemonade」のリリースから約6年。ようやくリリースされた新作は、待ち焦がれた世界中の音楽リスナーの期待に十分に応える傑作アルバムに仕上がっていました。

まずなによりも印象に残るのはアルバムのジャケット写真でしょう。透明の馬の上に自らの身体を惜しげもなく披露するBeyonceという構図。有名なゴダイヴァ夫人の絵に重ね合わせる指摘も多いようで、私自身もこのジャケット写真を見た時に、まずはこの有名な絵画を思い出しました。彼女自身は、このジャケット写真の元ネタについての言及はしていないのですが、今回のアルバムに関して「私の意図は、安全で、ジャッジされることのない場所を作ることでした」「完璧主義や考え過ぎから解き放たれる場所。叫び、解放し、自由を感じるための場所。それは美しい探検の旅でした」と語っているそうで、裸で街の中を横断したというゴダイヴァ夫人のエピソードと重ね合わせた部分があったのかもしれません。

そんなBeyonceのニューアルバムは、そのコメントの通り自由度が高い・・・というよりは、自分の好きなことを好きなように披露したアルバムと言えるかもしれません。「自由度が高い」というと、様々なジャンルの音楽に挑戦したアルバムというイメージがあるかもしれませんが、むしろ今回のアルバムは逆で、アルバム全編にわたって、ダンスミュージックで統一されたアルバム。おそらく彼女の一番演りたい音楽がここにあり、そして、一直線にダンスミュージックを演り切ったアルバムとなっていました。

実際、冒頭の「I'M THAT GIRL」の伸びやかな歌声を聴かせつつ、力強いリズミカルなビートがバックに流れますし、続く「COZY」もトライバルな要素を取り込んだ疾走感あるビートが大きな魅力。さらに強いビートを前面に押し出した「ALIEN SUPERSTAR」から、透き通った歌声による歌を前面に押し出しつつもファンキーなリズムが魅力的なR&Bチューン「CUFF IT」と、冒頭からリズミカルなビートの曲が続いていきます。

ただ、終始ダンスミュージックのアルバムとはいえ、同じダンスミュージックの中でもしっかりと幅を持たしています。例えば「THIQUE」ではトラップ的な要素を組み込んだり、「ALL UP IN YOUR MIND」ではノイジーで不穏なエレクトロビートを組み込んだりとサウンド一つでも様々なバリエーションを聴かせてくれます。そして何よりも大きな魅力だったのは彼女の力強い歌声を聴かせるポップな歌モノ。「VIRGO'S GROOVE」やラストを締めくくる「SUMMER RENAISSANCE」のようなポップな歌モノをしっかりと間に挟みつつ、また「BREAK MY SOUL」のようなHIP HOPを取り入れつつ、力強い歌声でソウルに聴かせる作品もしっかりと聴かせてくれます。約6年ぶりという作品ながらも、音楽リスナーの期待に申し分なく応えてくれたアルバムに仕上がっています。

この気高さを感じさせるジャケットの写真といい、ダンスチューンに統一しながらも、バリエーションを持たせ全16曲1時間強をまったくダレることなく聴かせてくれる構成といい、まさに女王としての貫禄を感じさせる圧巻のアルバムだったように感じます。文句なしに2022年を代表する傑作アルバムに仕上がっていたと思いますし、これだけのアルバムをしっかりとリリースしてしまえる彼女のすごさにあらためて舌を巻いた作品でした。もう、さすがです・・・としか言いようのない1枚でした。

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce

I AM...WORLD TOUR
Beyonce
Lemonade
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM
The Lion King:The Gift

|

« 不思議な「お花屋さん」 | トップページ | 資本主義の矛盾を突く »

アルバムレビュー(洋楽)2022年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 不思議な「お花屋さん」 | トップページ | 資本主義の矛盾を突く »