« 寺山修司×志磨遼平 | トップページ | Adoの快進撃が続く »

2022年9月 6日 (火)

シンガーソングライターとしての実力

Title:The Gospellers Works 2
Musician:ゴスペラーズ

ゴスペラーズの最新作が、彼らが他のミュージシャンたちに提供した楽曲のセルフカバー集。ゴスペラーズというと、コーラスグループとしての側面にスポットがあたりがちであり、「シンガーソングライター」的な視点が忘れられがちなのですが、メンバーみずから作詞作曲を行う「シンガーソングライター」としての側面も持っています。特に5人のメンバー全員が、曲づくりにかかわっており、今回のセルフカバーアルバムでも、メンバー全員が何らかの形でかかわっており、彼らにとって大きな武器と言えるでしょう。

また今回のセルフカバーアルバムの楽曲提供先も、ちょっと意外な感も。デゴマス、ジャニーズWESTといったジャニーズ系アイドルや三浦大知、さらにアカペラをテーマとしたアニメ作品「アオペラ」への提供曲や、人気声優小野大輔、さらに夏川りみや郷ひろみといったベテラン勢への提供など、かなり多岐にわたっています。ちなみに今回のアルバムタイトル「The Gospellers Works 2」となっていて、2007年に「The Gospellers Works」をリリースしていますが、こちらはカバー曲やコラボ曲を集めたコンセプトアルバムとなるので、セルフカバーアルバムとしては本作が初となります。

さて、そんなセルフカバーアルバム、ほかの人への楽曲提供曲ではよくありがちなのですが、ともすればゴスペラーズの楽曲以上にゴスペラーズらしい曲が並んでいます。特に「アオペラ」に提供した2曲「Follow Me」「RAINBOW」については、正統派ともいえるアカペラ曲が並んでいます。ある意味、ゴスペラーズの原点的な作風とも言える曲にもなっており、ゴスペラーズのコーラスワークをこれでもかというほど聴かせてくれており、コーラスグループとしての彼らの実力も再認識できる作品になっています。

他もジャニーズ系に提供した「DONUTS」「Special Love」はいずれも爽やかなポップソングに仕上がっており、ゴスペラーズらしい曲なのですが、一方では確かにジャニーズ系っぽさも感じます。また三浦大知に提供した「Keep It Goin' On」はジャジーなアレンジでファンキーな作風となっており、リズムにのせる点もあわせて歌手としての難易度が高い曲になっている点、やはり歌手に合わせた曲づくりといった感じになるのでしょうか。

また、郷ひろみに提供した「五時までに」も、夏川りみに提供した「会いたくて」も落ち着いて聴かせる楽曲になっている点、こちらもベテランシンガーのイメージに合わせたような曲になっています。ただ、このような提供作の歌手による違いはありつつも、どの曲もゴスペラーズの王道とも言える作品になっているのも大きな特徴的で、そういう意味では、ゴスペラーズの音楽性の広さを感じさせ、あらためてシンガーソングライターとしての実力を感じさせる作品になっていました。

もちろん、逆にゴスペラーズとしての目新しさはない、とも言える作品になってはいますが、ゴスペラーズのニューアルバム的な感覚で楽しめるアルバムであることも間違いないでしょう。また、コーラスワークを前提とした曲を書けるという点で、ゴスペラーズのソングライターとしての需要は今後も続きそう。ソングライターとしての彼らの活躍にも注目していきたいところです。

評価:★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20
Soul Renaissance
What The World Needs Now
G25 -Beautiful Harmony-
アカペラ2


ほかに聴いたアルバム

Nonnegative/coldrain

結成15周年を迎える彼らの7枚目となるニューアルバム。マイナーコード主体のメロディーで、ダイナミックなサウンドを聴かせる疾走感あるロックを聴かせてくれ、1曲1曲に関しては文句なしにカッコいい反面、正直、似たような曲が多く、アルバムを通して聴くと、もうちょっとバリエーションが欲しくなってしまいます。勢いで押し切っている、という部分もあるのですが・・・。

評価:★★★★

coldrain 過去の作品
THE REVELATION
Until The End
VENA
FATELESS
THE SIDE EFFECT

虹の麓/元ちとせ

途中、ベスト盤やカバーアルバムのリリースなどがあり、活動としては積極的に継続していたものの、純粋なオリジナルアルバムとしては2008年から実に14年ぶりとなる元ちとせのニューアルバム。折坂悠太や長澤知之、青柳拓次など豪華なメンバーが作家陣として参加しているなど、かなり力の入れようも感じます。ただ、こぶしを入れてゆっくりと聴かせる元ちとせのスタイルで、良くも悪くも全体として彼女の色に染まっており、また、彼女の得意とする奄美民謡の影響を受けたような曲と比べると、全体的にポップ色が強く、結果として薄味になっている印象が。ラストの「ヨイスラ節(冥丁REMIX)」が一番良かったあたり、彼女の歌い方は、やはり民謡にもっともマッチしているような感じも。

評価:★★★★

元ちとせ 過去の作品
カッシーニ
平和元年
元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~
トコトワ~奄美セレクションアルバム~

|

« 寺山修司×志磨遼平 | トップページ | Adoの快進撃が続く »

アルバムレビュー(邦楽)2022年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 寺山修司×志磨遼平 | トップページ | Adoの快進撃が続く »