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2022年9月

2022年9月30日 (金)

シティ・ポップの要素が前面に

Title:樹影
Musician:クレイジーケンバンド

結成25周年を迎え、すっかりベテランの域に達しているものの、まだまだ精力的な活動を続けるクレイジーケンバンド。相変わらず1年に1度ペースでの新作をリリースし続けており、ちょうど1年前はカバーアルバムをリリース。オリジナルアルバムとしては2年ぶりとなるアルバムを今年もリリースしてきました。昨年は横山剣のデビューから40周年ということで記念のカバーアルバムのリリースとなったのですが、25周年の今年は通常ペースでのリリース、というマイペースなところが、CKBらしい・・・と言えるかもしれません。

さて、そんな2年ぶりとなる彼らのニューアルバムですが、まずアルバム全体としての印象として、シティ・ポップの要素を強く感じました。もちろん、いままでの彼らの作品もシティ・ポップというのは彼らの音楽を構成する重要な要素となっていましたが、今回のアルバムではその要素をより前面に押し出したような作風になっていたように感じます。冒頭を飾る「Almond」などはまさに典型例。シンセを用いたイントロに薄くストリングスが重なるスタートなど、いかにもシティーポップ然とした感じ。続く、タイトル通りにちょっとエキゾチックさを加えた「ドバイ」も同じく、軽快でメロウなサウンドがシティーポップらしい作風の楽曲となっています。

もちろん、このシティーポップという要素を縦軸に、ジングルを含めて全18曲、バラエティー富んだ作風の曲が次々と展開されてくるのもいつものCKBらしいところ。ボッサ風の「夕だち」にピアノを入れたジャジーな「強羅」。打ち込みを入れたダンサナブルなダンスチューン「Orange Cinnamon Sunset」に、ホーンセッションを入れた彼ららしいファンクチューン「Honmoku Funk」など、様々な音楽性を取り入れた曲が続きます。ただ、彼ららしい歌謡曲的な要素も入りつつも、ジャズ、ソウルなどの要素をふんだんに取り入れた爽やかであか抜けた都会的な雰囲気を感じさせる、まさに「シティ・ポップ」な側面を、どの曲からも強く感じます。

ただ、後半に関しては、シティ・ポップ的な要素を感じつつも、クレイジーケンバンドの大きな特徴のひとつである、「歌謡曲」的な要素も強く感じる作風になっていました。ムーディーにゆっくり歌い上げる「おじさん」に、「コウタイ」など特に後半はムード歌謡の要素が強い作風に。ここ最近は、以前ほど「昭和歌謡」という要素を押し出さなくなった彼らですが、この楽曲に関しては、まさに「昭和」というムードが漂う1曲に。実に彼ららしさを感じる作品になっています。

アルバム全体的には、クレイジーケンバンドらしさは強く感じられる、いい意味でベテランの彼ららしい安定感のある作品に仕上がっていたと思います。ここ最近の彼らの作品と同様、決して目新しさはあるわけではありませんが、クオリティーの高いポップスを仕上げてきているだけあって、「マンネリ」さもあまり感じられません。そういう意味ではデビュー25年を経て、いまだに脂がのった状態と言えるかもしれません。いい意味で安心して聴ける傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW
好きなんだよ


ほかに聴いたアルバム

Tumbling Ice/カーリングシトーンズ

寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本といった50代半ばの同世代大物ミュージシャンたちが集まったユニット、カーリングシトーンズ。同年代のミュージシャンたちが企画モノ的に集まったのかと思いきや、まさかの2枚目リリースということで、よっぽど楽しかったんだろうなぁ、ということを感じます。ただ、2枚目ということでユニークなパロディー風な曲を楽しく演っていることはわかるのですが、前作に比べると若干ネタ切れ気味か?それでもハードロックからガレージ、ラテンにスタジアムロック風な作品まで、主に70年代や80年代風のサウンドを中心に卒なくユニークにまとめあげているのは、さすが実力者揃いといった感じはありますが。

評価:★★★★

カーリングシトーンズ 過去の作品
氷上のならず者
カーリングシトーンズ デビューライブ! ~カーリング・シトーンズと近所の石~

焦年時代/PUNPEE&BIM

ラッパーPUNPEEとBIMによるダブルネームの5曲入りのEP。タイトルからして「少年時代」のパロディーなのですが、そのイメージ通り、「Kids Return」「蛍火」などノスタルジックな雰囲気を感じさせる曲が目立ちます。また、ZEEBRAが参加した「Jammin'97」のように、ねっちりとした夏の曲も。去り行く夏を惜しみつつ、ノスタルジックな気持ちで楽しめる作品。ただ、次はそろそろPUNPEEのフルアルバムを聴きたいのですが。

評価:★★★★

PUNPEE 過去の作品
MODERN TIMES
MODERN TIMES-Commentary-

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2022年9月29日 (木)

日韓男性アイドルが上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は日韓の男性アイドルグループが1位2位に並ぶチャートとなりました。

まず1位初登場はジャニーズ系アイドル。Snow Man「Snow Labo. S2」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上89万枚で1位初登場。前作「Snow Mania S1」の初動84万1千枚(1位)からアップしています。

一方、2位には韓国のアイドルグループNCT127「2 Baddies」が先週の7位からランクアップ。先週はダウンロード数のみでのランクインでしたが、今週、CD販売数が加わったようです。CD販売数2位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数83位。オリコンでは初動売上9万枚で2位初登場。前作「Sticker」の初動5万2千枚(1位)よりアップしています。

そして3位にはAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ただ、ダウンロード数は今週も1位をキープしたものの、CD販売数は2位から6位、PCによるCD読取数も1位から2位とそれぞれダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「BORN PINK」が先週の11位からランクアップし、ベスト10入り。CDの売上が加わった影響で、CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数47位にランクインし、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上2万3千枚で3位初登場。前作「THE ALBUM」の初動2万2千枚(4位)から若干のアップに。

5位には聖飢魔Ⅱ「BLOODIEST」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数17位。1980年代から90年代にかけて一世を風靡に、地獄から来た悪魔だと自称するヘヴィーメタルバンド…というのは、今の若い世代でもボーカルのデーモン閣下の活躍からご存じの方も多いでしょう。1999年に解散したものの、その後、散発的に再結成。そしてこのたび、実に23年ぶりにリリースされたオリジナルアルバムが本作となります。ちなみに8月24日にカセットテープという形態で先行リリースされていたため、オリコンではベスト10圏外からのランクアップという形で、1万7千枚を売り上げて4位初登場。23年前の前作「LIVING LEGEND」の初動1万6千枚から何とアップしています。CDが売れまくっていた23年前と比べて、CDでの売上枚数が増えたというのは驚くべきことですが、それだけ根強い人気を保ち続け、新作が待ち望まれていたということでしょう。

6位初登場はsumika「For.」。CD販売数5位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数18位。タイトル通り、バンド4枚目となるオリジナルアルバム。オリコンでは初動売上1万5千枚で5位初登場。前作「AMUSIC」の2万5千枚(3位)からダウンしています。

7位には女性アイドルグループ私立恵比寿中学「Major Debut 10th Anniversary Album 中吉」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数60位。タイトル通り、メジャーデビュー10周年を記念してリリースされたベスト盤。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。直近のオリジナルアルバム「私立恵比寿中学」の初動1万3千枚(4位)からダウンしています。

9位にはBUCK-TICK「CATALOGUE THE BEST 35th anniv.」が初登場。CD販売数8位、PCによるCD読取数33位。こちらはデビュー35周年を記念し、彼らの過去の作品を5つのコンセプトを元に編纂された5枚組のベストアルバム。5年前にもベストアルバム「CATALOGUE 1987-2016」をリリースしており、この時は4枚組だったので、1枚増えました。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。直近のオリジナルアルバム「ABRACADABRA」の初動2万枚(3位)からはダウン。ベスト盤の前作「CATALOGUE 1987-2016」の9千枚(6位)よりは若干のアップとなっています。

最後10位にはBAND-MAID「Unleash」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数81位。メイド服に身を包みつつ、HR/HM路線の曲を演奏する5人組バンドによるEP盤。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。オリジナルアルバムの前作「Unseen World」の初動1万枚(8位)からはダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年9月28日 (水)

Adoの快進撃はまだまだ続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はさらにAdoの快進撃が目立つチャートとなりました。

まず今週の1位には、「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週の2位からランクアップ。見事1位返り咲きを果たしています。ダウンロード数2位、ストリーミング数、You Tube再生回数及びカラオケ歌唱回数1位は先週から変わらず。これで16週連続のベスト10ヒット&8週連続のベスト3ヒット&通算5週目の1位獲得となりました。

今週も、「新時代」を筆頭に、さらにAdoの楽曲が並びます。2位には「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週の3位からランクアップ。結果、Adoが1、2フィニッシュを決める結果に。さらに「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が4位、「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が5位と先週と同順位をキープ。「Tot Muisica(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は今週13位にダウンしてしまいましたが、今週もAdoの曲が4曲同時ランクインという結果になっています。特にストリーミング数は今週も1位「新時代」2位「私は最強」3位「ウタカタララバイ」4位「逆光」と、1位から4位を独占する結果に。まだまだAdoの快進撃は続きそうです。

そんなAdoに割って入ったのが3位初登場NMB48「好きだ虫」。CD販売数では1位を獲得。ただ、PCによるCD読取数40位、Twitterつぶやき数35位の他はいずれのチャートもランク圏外となり、総合順位も3位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上16万枚で1位初登場。前作「恋と愛のその間には」の初動15万2千枚(1位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週、初登場曲は1曲のみ。10位になとり「Overdose」がランクイン。ストリーミング数で6位を獲得。その他、ダウンロード数50位、Twitterつぶやき数54位という結果でしたが、総合順位ではベスト10入りを果たしました。なとりは主にTikTokで話題となったシンガーソングライター。Hot100には未反映ですが、ビルボードのTikTok Weekly Top20でも見事2位に輝いています。

今週は初登場曲が少な目でしたが、その分、ロングヒットが目立ちました。まずTani Yuuki「W / X / Y」は先週と変わらず6位をキープ。ストリーミング数は今週もAdo4曲に続く5位にランクインしています。これで25週連続のベスト10ヒットに。

Official髭男dism「ミックスナッツ」は7位から8位にダウン。ただこれで24週連続のベスト10ヒットとなっています。ストリーミング数が7位から8位に、You Tube再生回数も12位から15位にダウンしましたが、一方、ダウンロード数は11位から9位にアップし、ベスト10返り咲きを果たしています。

先週、8位にランクインしてベスト10に返り咲いたSEKAI NO OWARI「Habit」はワンランクダウンの9位ながらもベスト10を今週もキープ。これで通算19週目のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年9月27日 (火)

70年代の「日本の」ロック風

Title:Into The Time Hole
Musician:GLIM SPANKY

ルーツ志向の音楽を奏でる女性ボーカル+男性ギタリストのユニット、というミュージシャン、なぜか日本では、まるで系譜のように続いていて、LOVE PSYCHEDELICO、Superfly、そして彼女たちGLIM SPANKYと、特に影響を公言していないものの、似たようなタイプのユニットが少なくありません。ただ、どのユニットも活動を続けるうちに徐々にスタイルをシフトさせ、最近では3ユニットとも、それなりに別のベクトルを向いた音楽を奏でています。

LOVE PSYCHEDELICOはそのうち、もっとも愚直にルーツミュージックを志向しているイメージ。Superflyは直近のアルバムではいきなりポップなアルバムをつくりビックリしたのですが、基本的にはハードロックや90年代J-POPを取り入れる方向にシフトしています。そんな中、比較的デビュー当初から変わらずルーツ志向のロックを奏でてきた彼女たちですが、今回のアルバムは一つの方向性を示したように感じました。それは、歌謡曲的要素を取り入れる方向性。今回のアルバムは、イメージで言えば70年代あたりの洋楽志向の日本のロックバンドをなぞったような、そんなイメージでしょうか。ルーツ志向を感じさせつつ、どこか強く感じる日本人的な歌謡曲の要素、それを強く感じさせるアルバムでした。

例えば「レイトショーへと」は気だるい感じるのロックを奏でつつ、哀愁感たっぷりのメロディーラインは日本人的なウェットさを感じさせますし、「風は呼んでいる」もメランコリックな作風で、どこか感じるフォーキーな要素は70年代的な空気感も覚えます。「未完成のドラマ」も同じく哀愁感たっぷりのメロディーラインが涙腺を刺激します。

ただ、ある意味典型的だったのがラストの「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバーでしょう。ご存じ1991年に坂本冬美が歌った曲のカバー。竹内まりややハナレグミなど数多くのミュージシャンがカバーしており、カバー曲の定番とも言える楽曲なのですが、まさに歌謡曲なこの楽曲がアルバムの流れとしてもピッタリとマッチ。締めくくりとしてピッタリの構成となっています。

もちろんダイナミックなバンドサウンドを聴かせる「シグナルはいらない」があったり、「未完成なドラマ」でもギターリフをしっかり聴かせてくれたりとロックとしてのカッコよさはこのアルバムでも健在。ただデビュー当初からのブルース色はちょっと薄れてしまって、全体的には今まで以上にポップテイストが強くなってしまった、そんな印象も受けます。

GLIM SPANKYとしては一つの方向性を示したアルバムというようにも感じた反面、賛否はわかれそうなアルバムだったかもしれません。個人的には(いままでの彼女たちの作品にも感じていたのですが)どちらの方向性に行くにしても、もうちょっと吹っ切れた方がおもしろかったのでは?とも思ってしまうのですが、ここらへんは今後のアルバム次第といった感じでしょうか。今後、どのような方向性に彼らが進んでいくのか、試金石のようなアルバムでした。

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
Walking On Fire


ほかに聴いたアルバム

PHALARIS/DIR EN GREY

約3年9ヶ月ぶりとなるDIR EN GREYのニューアルバム。非常にダイナミックなサウンドに対応するメランコリックなメロディーラインも魅力的。曲によってはストリングスやシンセを取り入れた曲も。今回のアルバムに関しては、前作同様、ヘヴィネスさが以前に比べてグッと増した印象も。一方で哀愁感たっぷりのメロを前面に押し出した歌モノも目立ち、いい意味で緩急のつけたアルバムになっていました。

評価:★★★★

DIR EN GREY 過去の作品
UROBOROS
DUM SPIRO SPERO
THE UNRAVELING
ARCHE
VESTIGE OF SCRATCHES
The Insulated World

PLASMA/Perfume

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。安定の中田ヤスタカ作詞作曲+プロデュース作で、彼らしいインパクトあるエレクトロポップが魅力的。非常にPerfumeらしさを感じる作品は、目新しさはないのですが、一方でこれだけ長く活動を続けていながら、一定以上のクオリティーを保ち続けるのはさすが。中田ヤスタカが他のミュージシャンに提供する作品は、結構良しあしがあるのですが、Perfumeに関しては軸がぶれていない感じがします。

評価:★★★★

Perfume 過去の作品
GAME
Future Pop
Perfume The Best "P Cubed"

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2022年9月26日 (月)

資本主義の矛盾を突く

Tilte:God's Country
Musician:Chat Pile

いままで2枚のEPをリリースし、本作がオリジナルアルバムとしてのデビュー作となるアメリカはオクラホマ・シティで結成された4人組ロックバンド、Chat Pile。ジャンル的には「スラッジメタルバンド」にカテゴライズされるバンドで、自らを「デス・グランジ」と形容しているそうです。

アルバムは、ダイナミックでメタリックなギターとシャウト気味のボーカルを聴かせる「Slaughterhouse」からスタート。どこか不穏な雰囲気の曲調が、まずは印象に残ります。その後も非常に不穏な雰囲気のメタリックなサウンドにシャウト気味のボーカルという組み合わせの作品が続きます。続く「Why」はヘヴィーなサウンドを前に押し出していて、どちらかというとメタル的な要素が強く感じますし、「Wicked Puppet Dance」などはアップテンポなサウンドにハードコアからの影響も強く感じます。

ただ、「デス・グランジ」を自称するように、サウンド的にはむしろグランジやオルタナティブロックからの影響も垣間見えます。例えば冒頭の「Slaughterhouse」のギターの音は、どこかグランジからの影響も感じさせますし、「Anywhere」などは、そのギターサウンドとボーカルから、個人的にはPixiesにつながる要素も感じさせます。ここらへん、スラッシュメタルとカテゴライズされる彼らですが、むしろメタルをあまり好まない、グランジ、オルタナ系ロックのリスナーでも楽しめる要素は大きいのではないでしょうか。

また加えて、彼ら、作品の中に社会的な要素を多分に取り入れているそうで、もともとChat Pileというバンド名自体、オクラホマシティーにある有害な鉱業廃棄物の山に由来するそうですし、今回のアルバムタイトルも、劣悪な環境で悪名高いオクラホマシティーの刑務所に由来するそうです。

他にも「The Mask」では銃乱射事件をテーマにしていたり、「Why」ではホームレスが増えているアメリカの現状を取り上げたりと、社会的テーマ性の高い音楽も特徴的。資本主義社会の中の矛盾をついたようなイメージでしょうか。残念ながらテーマ的にはいまひとつなじみのない部分もありますし、英語詞のためストレートに伝わらない部分もあります。ただ、彼らの社会に対する怒りは、このヘヴィーなサウンドを通じて、私たちにも響いてくるものはあるようにも思います。

前述のように、スラッシュメタルというカテゴリーに留まらず、意外と幅広いリスナー層にも受け入れられそうな部分もありますし、今後にも注目したいバンドでしょう。今後は、日本でも徐々に注目が集まるかも・・・。なんとなく、この手のバンドは来年あたりのサマソニで来日、という話もある、かも。

評価:★★★★★

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2022年9月25日 (日)

女王の貫録

Title:RENAISSANCE
Musician:Beyonce

アルバムをリリースする毎に大きな話題となり、おそらく現在、最もアルバムのリリースが待ち焦がれられているミュージシャンBeyonceのニューアルバムがついにリリースされました!前作「Lemonade」のリリースから約6年。ようやくリリースされた新作は、待ち焦がれた世界中の音楽リスナーの期待に十分に応える傑作アルバムに仕上がっていました。

まずなによりも印象に残るのはアルバムのジャケット写真でしょう。透明の馬の上に自らの身体を惜しげもなく披露するBeyonceという構図。有名なゴダイヴァ夫人の絵に重ね合わせる指摘も多いようで、私自身もこのジャケット写真を見た時に、まずはこの有名な絵画を思い出しました。彼女自身は、このジャケット写真の元ネタについての言及はしていないのですが、今回のアルバムに関して「私の意図は、安全で、ジャッジされることのない場所を作ることでした」「完璧主義や考え過ぎから解き放たれる場所。叫び、解放し、自由を感じるための場所。それは美しい探検の旅でした」と語っているそうで、裸で街の中を横断したというゴダイヴァ夫人のエピソードと重ね合わせた部分があったのかもしれません。

そんなBeyonceのニューアルバムは、そのコメントの通り自由度が高い・・・というよりは、自分の好きなことを好きなように披露したアルバムと言えるかもしれません。「自由度が高い」というと、様々なジャンルの音楽に挑戦したアルバムというイメージがあるかもしれませんが、むしろ今回のアルバムは逆で、アルバム全編にわたって、ダンスミュージックで統一されたアルバム。おそらく彼女の一番演りたい音楽がここにあり、そして、一直線にダンスミュージックを演り切ったアルバムとなっていました。

実際、冒頭の「I'M THAT GIRL」の伸びやかな歌声を聴かせつつ、力強いリズミカルなビートがバックに流れますし、続く「COZY」もトライバルな要素を取り込んだ疾走感あるビートが大きな魅力。さらに強いビートを前面に押し出した「ALIEN SUPERSTAR」から、透き通った歌声による歌を前面に押し出しつつもファンキーなリズムが魅力的なR&Bチューン「CUFF IT」と、冒頭からリズミカルなビートの曲が続いていきます。

ただ、終始ダンスミュージックのアルバムとはいえ、同じダンスミュージックの中でもしっかりと幅を持たしています。例えば「THIQUE」ではトラップ的な要素を組み込んだり、「ALL UP IN YOUR MIND」ではノイジーで不穏なエレクトロビートを組み込んだりとサウンド一つでも様々なバリエーションを聴かせてくれます。そして何よりも大きな魅力だったのは彼女の力強い歌声を聴かせるポップな歌モノ。「VIRGO'S GROOVE」やラストを締めくくる「SUMMER RENAISSANCE」のようなポップな歌モノをしっかりと間に挟みつつ、また「BREAK MY SOUL」のようなHIP HOPを取り入れつつ、力強い歌声でソウルに聴かせる作品もしっかりと聴かせてくれます。約6年ぶりという作品ながらも、音楽リスナーの期待に申し分なく応えてくれたアルバムに仕上がっています。

この気高さを感じさせるジャケットの写真といい、ダンスチューンに統一しながらも、バリエーションを持たせ全16曲1時間強をまったくダレることなく聴かせてくれる構成といい、まさに女王としての貫禄を感じさせる圧巻のアルバムだったように感じます。文句なしに2022年を代表する傑作アルバムに仕上がっていたと思いますし、これだけのアルバムをしっかりとリリースしてしまえる彼女のすごさにあらためて舌を巻いた作品でした。もう、さすがです・・・としか言いようのない1枚でした。

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce

I AM...WORLD TOUR
Beyonce
Lemonade
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM
The Lion King:The Gift

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2022年9月24日 (土)

不思議な「お花屋さん」

Title:Florist
Musician:Florist

ニューヨークはブルックリンを拠点に活動するインディーフォークバンドFlorist。前作「Emily Alone」以来、約3年ぶりとなる新作。前作で高い評価を集めていただけに、本作も注目を集めていました。さらにバンドとして4作目となる本作は、セルフタイトルとなるアルバムなだけに、否応なく、その期待も高まります。

個人的には彼女たちの作品を聴くのは前作「Emily Alone」以来、2作ぶり。前作「Emily Alone」は暖かいアコースティックなサウンドにフォーキーなメロ、さらにボーカルEmily Spragueの透き通るようなボーカルの優しい歌声が大きな魅力でした。今回のアルバムもそんなイメージで聴き始める・・・と、かなり違和感を覚えるアルバムになっています。1曲目の「June 9th Nighttime」はオープニング的なイントロチューン。おそらく、タイトル通り、6月9日の夜の時間を録音したのでしょう、虫の声も取り入れている作品になっているのですが、そこに流れるのは歪んだギターの音色。微妙にサイケデリックテイストな作品に。前作も同じように自然の音を取り入れた作品やサイケ風な作品もあったのですが、いきなりオープニングからこのような作品からスタートし、ちょっと驚きの下でのスタートとなりました。

そして続く「Red Bird Pt.2(Morning)」は、アコギのアルペジオからスタートし、しんみりフォーキーなサウンドと優しい歌声を聴かせるポップなナンバー。まさに前作でイメージしたFloristのイメージそのままの楽曲となっています。ただ、この曲に関しても、アコースティックなサウンドのバックに、微妙に歪んだギターの音が加わっており、サイケなテイストが加わった作品になっています。

アルバムの構成としては全19曲入りというそれなりのボリューム。ただ、アルバムの長さとしては57分という比較的コンパクトな内容となっており、フォーキーでポップな歌モノの間に1分~2分弱の短いインストチューンが挟まる構成になっています。このフォーキーな楽曲の間に挟まるインストチューンが短いながらもアルバムの中で大きなインパクトとなっており、アンビエントテイストで静かに聴かせる作品ながらも幻想的で、トリップ感のある作風が、リスナーをどこか異世界に誘うような、そんな雰囲気を醸し出しています。

そんなインスト曲を間に挟んだ歌モノナンバーも、基本的にアコースティックギターを主軸にフォーキーに聴かせる曲なのですが、微妙にサイケなサウンドが加わっている点がユニーク。「Two Ways」のようなアコギのみでしずかに聴かせる楽曲があるかと思えば、インストを挟んで次の歌モノになる「Organ's Drone」では、基本的にアコースティックなフォークチューンですが、微妙にギターノイズが加わっており、幻想的な色合いが加わった作品になっています。

その後も歌モノは「43」のようなバンドサウンドを前に押し出したような曲や「Sci-fi Silence」のようなドリームポップ風の曲を加えながらも、歌モノのラストとなる「Feather」ではアコギメインで郷愁感たっぷりに聴かせる曲。基本路線としては暖かい雰囲気のフォーキーなポップという方向性がありつつ、サイケやドリームポップの要素を加えた音楽性がユニークに感じます。

そしてその間に挟まるインストチューンも、不気味な雰囲気を醸し出しつつ、本編ラストとなる「Jonnie on the Porch」はドリーミーな雰囲気のアンビエントチューンで、サウンドは歪みつつもどこか爽やかさも感じさせる点が大きな魅力に。最後までどこか不思議な世界にトリップしたような雰囲気を味わえる構成になっていました。

前作以上に音楽的な幅が広がりつつ、前作で感じたFloristの魅力もしっかり残している傑作アルバムで、個人的には前作以上に気に入りましたし、年間ベストクラスの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。なによりポップで聴きやすさを感じさせつつも、サイケな音楽性に深入りしそうなそんな作品に。「お花屋さん」というバンド名やアルバムタイトルとは異なる、不思議な世界観が広がりますが、それが大きな魅力となっている作品でした。

評価:★★★★★

Florist 過去の作品
Emily Alone

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2022年9月23日 (金)

よりキュートでポップな方向にシフト

Title:Beatopia
Musician:beabadoobee

前作「Fake It Flowers」が大きな話題となったイギリスのシンガーソングライター、beabadoobee。今年、日本でもサマーソニックに出演し大きな話題になるなど、徐々に知名度を上げています。本作は、大きな話題となったデビュー作に続く2作目。前作ではイギリスのナショナルチャートで8位にランクインし、一気にブレイクを果たしたのですが、本作は同チャートで最高位4位とさらに躍進。現在でも人気上昇中であることをうかがわせます。

そんな前作は、スマパンやソニックユース、マイブラからの影響を公言している彼女が、その影響をストレートにあらわしたギターロックが大きな特徴であり魅力でした。今回のアルバムも、オープニング的な1曲目から続く2曲目「10:36」はそんなストレートなオルタナ系ギターロック。その後もヘヴィーでノイジーなギターサウンドを前面に押し出した「Talk」に、シューゲイザーからの影響を強く感じる「Don't get the deal」など、前作同様、90年代のオルタナ系ギターロックや80年代シューゲイザーからの影響を強く感じる曲が目立ちます。

ただ一方、今回のアルバムに関しては、アコースティックなサウンドを前面に押し出しつつ、彼女のキュートなボーカルやメロディーラインをより前面に押し出した作品が目立ちました。前述の「10:36」に続く「Sunny day」はアコースティックなサウンド+リズムマシーンというシンプルな構成で、メロウな雰囲気の彼女のボーカルを前に押し出したような作品。「Ripples」もアコギとストリングスというシンプルなサウンドで彼女の歌声をしんみりと聴かせるような楽曲になっています。

アルバムの終盤も「tinkerbell is overrated」はハイトーンの清涼感あるボーカルを前に押し出したポップな作品になっていますし、ラストの「You're here that's the thing」もアコギで聴かせるフォーキーな作風となっています。このポップなメロディーにキュートなボーカルという側面は、前作でも彼女の大きな魅力ではあったのですが、今回のアルバムは、こちらの側面をより前面に押し出して、ポップという印象が強くなったアルバムとなっていました。

この点、彼女の方向性としては気になる部分。ちょっとうがった見方をしてしまうと、彼女のキュートでポップな側面を生かして、より「売れ線」の方向にもっていこうとする戦略性を感じてしまいます。ただオルタナ系のロック路線が彼女の持ち味だっただけに、この路線を突き進めても、よくありがちな売れ線ポップシンガーにしかならないのでは?個人的な好みもあるかもしれませんが、出来栄えとしては前作の方が間違いなく上ですし、また彼女らしさも前作の方が生かされている感じがします。

それだけに最初は本作も違和感があったのですが、ただ何度か聴くうちに、やはり彼女の書くポップな楽曲は素直に楽しく、最後まで耳の離せないアルバムになっていました。そういう意味で、キュートでポップという彼女の持つ魅力を生かしていた作品であることは間違いなく、十分「傑作」と言える内容だったと思います。ただ、次回作はやはりノイジーなギターロック路線をもっと押し出したアルバムにしてほしいなぁ、とは感じてしまうのですが・・・。ちょっと次回作以降の方向性が気になってしまった新作でした。

評価:★★★★★

beabadoobee過去の作品
Fake It Flowers


ほかに聴いたアルバム

Sons Of/Sam Prekop and John McEntire

The Sea and Cakeのフロントマン、Sam Prekopと、TortoiseのJohn McEntireによるデゥオアルバム。ある意味、ポストロック界の大御所同志のコラボということで注目を集める1枚ですが、作品としてはThe Sea and CakeやTortoiseのイメージとはちょっと異なるエレクトロサウンド。淡々としたスペーシーなエレクトロサウンドが続くアルバムになっているのですが、ミニマルに続いていくサウンドがとても心地よく、決して派手さはないものの最後まで耳の離せないアルバムになっていました。

評価:★★★★★

Love Quantum/Theo Croker

新進気鋭のジャズ・トランぺッターとして活躍するTheo Crokerのニューアルバム。前作「BLK2LIFE || A FUTURE PAST」はブラックミュージック全般からの要素を取り入れたアルバムになっていましたが、今回のアルバムは前作に比べると「ジャズ」の要素の強いアルバムに。ただ今回もラテンやHIP HOP、スウィングなどの要素も取り入れた自由度の高い作風が魅力的。ジャズというカテゴリーを問わず、広いリスナー層が惹きつけられるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Theo Croker 過去の作品
BLK2LIFE || A FUTURE PAST

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2022年9月22日 (木)

こちらもAdoはまだまだ強い

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、Hot100でさらに躍進したAdoですが、「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」はまだまだHot Albumsでも強さを見せています。今週もCD販売数で2位、ダウンロード数は2位から1位にアップ、PCによるCD読取数で1位を獲得し、総合順位で2位。これで5週連続の2位を獲得しています。

ただ今週も1位は別の作品。今週1位を獲得したのはKOH+「ヒトツボシ ~ガリレオ Collection 2007-2022~」。KOH+は柴咲コウと福山雅治が、本人たちが出演するドラマ「ガリレオ」の主題歌を歌うために結成されたユニット。9年ぶりの「ガリレオ」シリーズの新作である映画「沈黙のパレード」の主題歌「ヒトツボシ」を収録した6曲入りのEPが本作です。表題曲の他、過去の「ガリレオ」シリーズの主題歌がリマスタリングで収録。CD販売数1位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数7位で、総合順位も見事1位を獲得しました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上4万枚で1位を獲得しています。

3位は先週1位を獲得したONE OK ROCK「Luxury Disease」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位にゆず「YUZU ARENA TOUR 2022 SEES -ALWAYS with you-」がランクイン。タイトル通り「YUZU ARENA TOUR 2022 SEES」のうち、8月14日のさいたまスーパーアリーナの模様を収録した配信限定のライブアルバム。ダウンロード数で2位を獲得し、総合順位も4位にランクインしてきました。

6位初登場はMETAFIVE「METAATEAM」。METAFIVEは高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井とうう5人のミュージシャンから構成されたスーパーグループ。本作は昨年の7月にリリースされる予定でしたが、例の東京五輪での小山田圭吾に係る醜聞の影響で販売中止。その後、11月に行われた配信ライブの特典として一部でリリースされていましたが、このたびようやく一般リリースとなりました。CD販売数5位、ダウンロード数17位、PCによるCD読取数41位。オリコンでは初動売上7千枚で5位初登場。直近作はミニアルバム「METAHALF」で同作の5千枚(12位)よりアップ。また、フルアルバムとして前作の「META」(13位)から横バイという結果に。既に先行販売されており、前作のリリースが2016年という、サブスクリプションがここまで影響のある時期ではなかっただけに、今回の売上は、大健闘と言えるのでは?コアなファンにとっては、例の醜聞騒動はほとんど影響を及ぼさなかったし、むしろあの騒動をきっかけに聴いてみようというリスナーが増えさえしたのでは?小山田圭吾は今年に入り、活動を開始したようで、個人的にあの騒動は騒ぎすぎと思っているだけに、十分反省した上で、今後の活動を頑張ってほしいです。ただ、METAFIVEは残念ながらこれがラストだそうで、これだけ売れたんだから、やはり継続、とならないかなぁ・・・。

7位には韓国の男性アイドルグループNCTからの派生ユニットNCT 127「2 Baddies」がランクイン。輸入盤ということでダウンロード数のみ5位にランクイン。総合順位もベスト10入りしてきました。

9位には「アオペラ-aoppella!?-4」が初登場。11名の声優が参加する"青春×アカペラ"をテーマとしたプロジェクト。CD販売数7位のみにランクインし、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上5千枚で7位初登場。同プロジェクトの前作「A」の初動7千枚(7位)から若干のダウン。

今週の初登場は以上。ただ今週、ベスト10返り咲き組が1枚。10位に韓国の女性アイドルグループfromis_9「from our Memento Box」がランク圏外から一気にベスト10返り咲き。8週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これはサイン会の追加特典のシリアルナンバー付のアルバムがリリースされた影響。AKB系みたいな商法を使うんですね。こういうガメツイ商法に頼るのはすごくみっともなく感じます。

最後、ロングヒット盤ですが、ジャニーズ系アイドルグループなにわ男子「1st Love」は今週9位から5位にアップ。これで10週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年9月21日 (水)

またもAdoの快挙

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まだまだAdoの快進撃が続いています。

ただ今週1位はジャニーズ系アイドル、King&Prince「TraceTrace」。日テレ系ドラマ「新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数14位、Twitterつぶやき数2位、You Tube再生回数11位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上50万枚で1位初登場。前作「Lovin'you」の初動46万6千枚からアップしています。

しかし1位こそジャニーズ系アイドルに奪われましたが、今週も2位以下でAdoの曲がズラリと並んでいます。2位の「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」を筆頭に、3位「私は最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、4位「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、5位「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」と2位から5位までAdoの曲で独占しています。「新時代」こそ1位から2位にダウンしましたが、「私は最強」は4位から2位に、「ウタカタララバイ」は6位から4位にランクアップ。「逆光」も先週と同順位の5位をキープしています。

このうち「新時代」はダウンロード数こそ1位から2位にダウンしたものの、ストリーミング数、You Tube再生回数及びカラオケ歌唱回数と1位をキープ。これで連続15週目のベスト10ヒット&連続7週目のベスト3ヒットとなりました。また、ストリーミング数では1位「新時代」を筆頭に、2位「私は最強」3位「ウタカタララバイ」4位「逆光」と上位4位を今週もAdoが独占する形となりました。

さらに今週は「Tot Musica(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が先週の13位から10位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。この結果、ベスト10のうち5曲をAdoの曲が占めるという結果に。Adoの快進撃はまだまだ続いています。

続いて4位以下ですが、今週は初登場はゼロ。一方、上記の「Tot Musica」以外にもベスト10返り咲き曲がありました。まずSEKAI NO OWARI「Habit」。先週11位にダウンしたものの、今週は8位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きで、通算18週目のベスト10ヒットとなりました。特にストリーミング数が8位から6位にアップしています。

さらにTWICE「Talk that Talk」も先週の12位から9位にアップし、こちらも2週ぶりのベスト10返り咲きに。ただストリーミング数は先週と変わらず9位、You Tube再生回数は2位から3位に、ダウンロード数は39位から51位にダウンしており、全体的には下落傾向となっています。

一方、ロングヒット曲は、まずTani Yuuki「W / X / Y」が8位から6位にアップ。特にストリーミング数は、今週もAdoの4曲に続く5位をキープしています。これでベスト10ヒットは連続24週に伸ばしています。

そしてOfficial髭男dism「ミックスナッツ」も9位から7位にアップ。これで23週連続のベスト10ヒットに。ただ、You Tube再生回数こそ先週と同順位の12位をキープしたものの、ダウンロード数は9位から11位、ストリーミング数も6位から7位とそれぞれダウンしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年9月20日 (火)

食べ物を素材に日常を描いた歌詞が魅力

Title:プリンは泣かない
Musician:曽我部恵一

配信限定でリリースされた曽我部恵一のニューアルバム。市川実日子が主演し、曽我部恵一も出演、音楽も担当した動画配信サイトParaviオリジナルドラマ「それ忘れてくださいって言いましたけど。」に使用された曲を集めたアルバム。ドラマ主題歌「そしてきみと春を待つ」をはじめ、劇中で使われた楽曲や未発表曲を収録したアルバムで、ラストには「そしてきみと春を待つ」に吉田羊がコーラスで参加したスペシャルバージョンも収録されています。

今回のアルバムはドラマから派生したアルバムになっていますが、いわゆる劇伴曲を収録したようなサントラ的な作品ではなく、基本的に1曲を除いて歌ありの曲が並んでいます。そういう意味では純然たる曽我部恵一のニューアルバムとして楽しめる作品になっています。また、このアルバムの大きな特徴が、いずれもアコースティックで暖かい雰囲気のポップスがメインとなっている点。ここ最近、自由な音楽性、特にHIP HOPへの興味を感じられた曽我部恵一のソロ作ですが、ドラマの曲として求められているから、ということもあるのでしょうが、ある意味、曽我部恵一らしい作品が並んでいました。

また、歌詞の世界も曽我部恵一らしい、身の回りの情景を描いた歌詞が大きな特徴で、特にドラマ主題歌である「そしてきみと春を待つ」は神保町やすずらん通りといった固有名詞も出てくる、恋人との日常風景を描いた歌詞が魅力的。これをアコギの暖かくフォーキーなサウンドをバックにしんみり歌い上げており、まさに曽我部恵一らしい作品になっています。また「たまねぎの味噌汁はおきらいですか」も恋人との日常の食卓を描いた歌詞が、とてもほっこりさせられますし、「4月の午後に恋をしたくなる」もタイトル通り、アコギとピアノでしんみり暖かいサウンドをバックに聴かせるメランコリックなラブソング。聴いていて、とても暖かい気持ちになります。

そして今回のアルバム、「プリンは泣かない」というタイトルに象徴されるように(?)、食べ物を素材とした曲が目立ちます。前述の「たまねぎの味噌汁はおきらいですか」もそうですが、若干、どういうたとえなのか不明な「プリンのようなあかるい午後」に、プリンの食べ方を猫が考えるユーモラスな「やっぱり猫はプリンが好き」、暖かい歌詞ながらも内容が微妙にシュールな「プリンはなんにも知らないけれど」とプリン3部作(?)が並びますし、「人生はひっかけもんだい」も日常の食卓の風景を描いた作品。「きょうの旅」も食べ物からふくらませる発想がユニークですし、「だいすき」も好きな人を食べ物に例えるユニークな歌詞が心に残ります。ドラマの舞台となっているのが、下北沢で実在するカフェらしいので、それだけに食べ物をテーマとした曲が多いのでしょうが、食べ物という素材が曽我部恵一の作風にもピッタリマッチしています。

この食べ物をテーマとした楽曲もまさにそうなのですが、暖かい日常の風景を描いた歌詞が魅力的で、アコースティックなサウンドをふくめて、とてもほっこりさせられる曲が並びます。ある意味、曽我部恵一らしさを強く感じる楽曲ばかりなのですが、ここ最近は実験的な作風が続いただけに、こういった作品が余計、心にしみてうれしくなってくるようにも感じます。

ドラマ劇中歌を集めたアルバム、ということで、ひょっとしたら敬遠している方もいるかもしれませんが、曽我部恵一のニューアルバムとして間違いなく扱える、さらに曽我部恵一らしい傑作アルバムに仕上がっていました。ここ最近、脂ののりまくっている曽我部恵一ですが、このアルバムもそんな流れの中の1曲と言ってしまっていいかもしれません。とても暖かい気持ちになれる素敵なアルバムでした。

評価:★★★★★

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-
純情LIVE(曽我部恵一と真黒毛ぼっくす)
Loveless Love


ほかに聴いたアルバム

Unity/Mrs.GREEN APPLE

2020年にベストアルバム「5」をリリースすると同時に「フェーズ1完結」を宣言し、活動休止に入ったMrs.GREEN APPLE。その後、メンバー2人の脱退があったものの、今年に入って活動を再開。「フェーズ2開幕」を宣言し、「5」から2年ぶりにリリースしたミニアルバムが本作となります。ただ、「フェーズ2」といっても音楽的な方向性は以前と変わらず。分厚いサウンドの爽やかで陽気なポップソングというスタイルで、基本的にはいつものMrs.GREEN APPLEそのままといった感じ。もうちょっと新しい側面も見せてほしい感じもするのですが、それはこれから、ということなのでしょうか。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE
ENSEMBLE
Attitude
5

Ninja of Four/the band apart

ちょっと意外だったのですが、ここ最近、"Naked"名義のアルバムが続いていたため、the band apart名義でのオリジナルアルバムとしては「Memories to Go」以来、約5年ぶりとなるニューアルバム。ただ基本的にはいつもと同様、卒なくまとめられた「大人のロック」というイメージが強く、メランコリックなメロディーラインに、時として爽快に聴かせつつも、一方ではヘヴィネスさもしっかり聴かせる、緩急つけたバンドサウンドも大きな魅力。目新しさこそないものの、しっかりと聴かせる作品となっており、いい意味での安定感を覚える作品になっていました。

評価:★★★★★

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))
Memories to Go
前へ(□□□ feat.the band apart)
2(the band apart(naked))
20years
POOL e.p.
3(the band apart(naked))

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2022年9月19日 (月)

前作とは対照的

Title:Entering Heaven Alive
Musician:Jack White

ご存じThe White Stripeのギタリストとしてデビューし、ソロ活動後も様々な名曲を世に送り出し続けているJack White。今年4月にはアルバム「Fear of the Dawn」をリリースしたばかりですが、そこからわずか3ヶ月、早くもニューアルバムをリリースしました。もっとも、前作をリリースした段階で本作のリリースと、前作と合わせて2部作となるアナウンスはあったので、そういう意味でわかりきったリリースではあったのですが・・・1年のうちにフルアルバムを2作もリリースするあたり、彼の活動に勢いがあることを感じさせます。

その前作「Fear of the Dawn」ではゴリゴリのギターリフを前面に押し出したヘヴィーなロックを聴かせてくれました。いわばJack Whiteのパブリックイメージに沿ったアルバムであった、と言えるかもしれません。そして今回のアルバムは、前作とはある意味、対極的な位置にいるアルバムと言えるでしょう。アコースティックなサウンドをメインとしてゆっくり聴かせる楽曲がメイン。Jack Whiteのイメージからすると、若干意外性すら覚える作品かもしれません。

実際、アコギとピアノでしんみり聴かせる冒頭の「A Tip from You to Me」はどちらかというとフォークソングの様相が強い作品に。さらに「All Along the Way」「Love is Selfish」はギターのアルペジオでしんみり聴かせる作品となっており、ギターをゴリゴリ聴かせるJack Whiteのイメージからは、かなりかけ離れたものとなっています。

中盤の「I've Got You Surrounded(With My Love)」は本作で唯一、歪んだギターサウンドを前に押し出した作品になっています。ただ、この曲に関しても、ちょっとレトロな雰囲気のロックを聴かせる作品に。後半も、力強いピアノを前面に押し出した「A Tree on Fire from Within」やフォーキーに聴かせる「Please God,Don't Tell Anyone」など、アコースティックな雰囲気でフォーキーに聴かせる作品がメインのアルバムとなっています。

ただ、そんな聴かせるアルバムでありつつ、物足りなさはほとんど感じませんでした。フォーキーな作品ですが、その根底にはJack Whiteらしい、しっかりとルーツミュージックを土台として積み上げた音楽性をしっかりと感じられます。また、メロディーラインはしっかりとポップにまとまっており印象的。なによりもJack Whiteのメロディーメイカーとしての実力を感じさせるアルバムになっていました。

前作「Fear of the Dawn」とは対照的な作品でしたが、この前作と本作を合わせて、Jack Whiteというミュージシャンがそのようなミュージシャンなのか、しっかり理解できるようになっていた作品だったと思います。そういう意味でも、この2枚の作品を2部作としてリリースするJack Whiteの意図もよくわかるような気がしました。この2作品、両方とも合わせて、お勧めです。

評価:★★★★★

Jack White 過去の作品
BLUNDERBUSS
Lazaretto
Boarding House Reach
Fear of the Dawn

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2022年9月18日 (日)

町あかりの音楽性が確立

Title:総天然色痛快音楽
Musician:町あかり

最近では音楽活動のみならず、映画への出演や評論本の著作などいった活躍も見られるシンガーソングライター、町あかり。音楽的にもカバーアルバムのリリースや、子ども向け番組から派生したアルバム「あかりおねえさんのニコニコ♥へんなうた」など積極的な活動が続いていたのですが、かなり意外な事実として、町あかり単独名義の純然たるオリジナルアルバムとしては2017年の「EXPO町あかり」以来、実に5年ぶりの作品となります。

町あかりといえば、昭和歌謡曲の影響を強く受けたポップミュージックが特徴的でした。今回のアルバムもベースとして昭和歌謡曲からの影響を強く感じさせる点は以前と同様。ただ、それ以上に様々なジャンルの音楽を幅広く取り入れた作風が大きな魅力となっていました。例えば「おもんばかるガンマン」はカントリー、「あたしオートクチュール」はジャジーな作風、軽快なラテン風の「COME BACK TO ME セロトニン」、演歌風の「動物可愛いエレジー」に、タイトル通り浪曲風の「浪曲もぐ吉ものがたり」に小唄風の「廉価版小唄」、軽快なシンセポップの「あなたシンパ~オタクより愛をこめて~」に、「ラーメンは軽犯罪」ではラップすら取り入れています。

これだけバラエティーに富んだ音楽性なゆえに、以前の彼女のような、いかにもな昭和歌謡曲推しな雰囲気はちょっと薄れた印象もあります。もっとも、楽曲の基本的なベースとしてはやはり歌謡曲の要素が強いですし、なによりこの雑食性な音楽こそ、歌謡曲の大きな特徴。そういう意味ではこのアルバムも以前のアルバムと同様、歌謡曲の影響を多分に受けたアルバムであることには間違いありません。

ただ、いかにもな「歌謡曲推し」な要素が後ろに下がったのは、なによりもこの歌謡曲をベースとした雑多な音楽性が、町あかりの音楽としての個性を確立したから、のようにも感じました。要するに、デビュー当初のような、いかにも年齢とギャップがありそうな歌謡曲テイストの音楽を演奏する女の子・・・というイメージを前面に押し出さなくても、もうこういう音楽が町あかりの音楽として、しっかりと確立されたから、わざわざ「歌謡曲からの影響」を強く押し出さなくてもよくなった・・・そんな印象を今回のアルバムでは強く受けました。

また、町あかりの音楽性という意味では、その歌詞の世界観も間違いなく彼女の「音楽性」の一部でしょう。ちょっとレトロな音楽性と相反して、今風なネタを用いてきており、例えば合唱曲風にまとめた「誰もいないBBS」などは、タイトル通り、今は廃れてしまったネット文化である掲示板に対する追悼歌。「1テラバイトの情熱」は別れた恋人との思い出のデータが1テラバイトを超えたという、いかにも今どきなネタに。(「今どき」といっても微妙に古い感じもするのですが・・・)さらにもっと今時という意味では「動画投稿御殿」なんていう曲すらあります。

さらに日常生活をネタを独特の観点から描写した歌詞も大きな魅力で、「ラーメンは軽犯罪」はまさに夜中に食べるラーメンの背徳感を描いたネタになっていますし、何でも大きく括りたがる人を皮肉った「大きな主語」やネガティブな表現をポジティブに言い換えた「下手くそなのは味がある」など、ユーモラスな視点からのネタが満載。この歌詞の世界観にも彼女らしさを感じます。

そんな音楽的にもバリエーションがあり、歌詞的にもユニークな楽曲が全24曲。なかなかボリュームのある内容ですが、「痛快音楽」というタイトル通り、痛快で、かつおもちゃ箱のような楽しくユニークなアルバムに仕上がっており、1時間という長さを一気に楽しめるアルバムになっていました。変に難しいこと抜きにポップな楽曲を楽しめる、という点も町あかりらしさと言えるかもしれません。何よりも、前述の通り、町あたりの音楽性がしっかり固まった1枚とも言える作品。これからも精力的な活動が続きそうな彼女なだけに、これからの活動も楽しみになってくるアルバムでした。

評価:★★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し
EXPO町あかり
収穫祭!(町あかり&池尻ジャンクション)
あかりおねえさんの ニコニコへんなうた
それゆけ!電撃流行歌
別冊!電撃流行歌

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2022年9月17日 (土)

早くも3作目!

Title:Hellfire
Musician:black midi

今や、次世代を担うイギリスのロックバンドの代表格と位置付けられるようになったblack midiの3枚目となるアルバム。前作「Cavalcade」が2021年のリリースだったので、前作からわずか1年という、海外のミュージシャンとしては(日本のミュージシャンでも?)、かなり早いリリースペースでの新作リリースとなりました。それだけ勢いにのったバンドということでしょう。

今回のアルバムでも、まず1曲目でありタイトルチューンである「Hellfire」から圧倒されます。スタート直後から圧倒的なバンドサウンドに、ポエトリーリーディング的なラップ。そのダイナミックなサウンドに圧巻されつつ、2曲目「Sugar/Tzu」にうつるわけですが、この2曲目がアルバムのひとつのポイントになっているように感じます。ダイナミックで複雑に構成されたプログレ的なサウンドに同じく複雑なリズム、ホーンセッションまで入ったダイナミックで賑やかなサウンドが大きな特徴なのですが、もうひとつ大きな特徴となっているのは、ここに重なるメロディーとボーカルが、ムーディーで哀愁感ただようという点。ホーンセッションと重なり歌いあげられるボーカルは、ともすればひと昔前の日本の歌謡曲テイストな雰囲気すらあります。

続く「Eat Men Eat」もラテンテイストのサウンドを聴かせつつ、ラテンらしい哀愁感あふれるメロディーラインが大きな魅力に。続く「Welcom To Hell」もダイナミックで複雑な構成のサウンドと畳みかけるようなポエトリーリーディング的なボーカルを重ねつつ、時折、ムーディーな歌も垣間見せています。さらに続く「Still」はメランコリックな歌モノのナンバーとなっており、まさにこのダイナミックなプログレ的なサウンドとメランコリックな歌の組み合わせが本作の大きな特徴となっていました。

インターリュードを挟んだ後半も、そんなダイナミックなサウンドの曲とムーディーに聴かせる歌モノを交互に聴かせる展開に。ダイナミックなサウンドの「The Race Is About To Begin」からスタートし、メランコリックな歌モノ「Dangerous Liaisons」「The Defence」と続き、ラストの「27 Questions」はアバンギャルドな要素を不穏な雰囲気でダイナミックに聴かせる楽曲で締めくくり。最後はblack midiらしい圧巻なサウンドを聴かせる締めくくりとなっています。

前作では、ロック、プログレ、サイケに70年代的な要素を加えたサウンドに彼らの音楽的な幅の広がりを感じましたが、今回のアルバムも同じくロック、プログレ、サイケの要素に、ムーディーな歌モノという新たな音楽的要素を加えた作品になっていました。メランコリックなメロディーラインが多かったこともあり、前作以上にいい意味で聴きやすさも増した感じもします。これで3作目。アルバム毎にblack midiらしい主軸は維持しつつも、あらたなる展開を感じさせる彼ら。その活動からは、まだまだ目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

black midi 過去の作品
Schlagenheim
Cavalcade


ほかに聴いたアルバム

World Wide Pop/Superorganism

様々な出自のメンバーから構成され、サンプリングなどを多用したユニークな音楽性で注目を集めたSuperorganismの2枚目となるアルバム。ボーカルのオロノが埼玉出身の日本人ということもあり日本でも注目を集めました。基本的に作風は前作と同様、様々なサウンドをサンプリングした賑やかでユニークなサウンドと、ダウナーに淡々と歌うボーカルが特徴的。前作ではイギリスのナショナルチャートで最高位25位を記録し、ブレイク寸前と言われたものの、残念ながら本作では99位までダウン。ブレイクは厳しい状況になっています。一方、日本のオリコンチャートでは最高位57位とベスト100入りもできなかった前作から大きくアップし、むしろ人気は上昇傾向に。その影響か、参加ミュージシャンにCHAIや星野源といった日本人ミュージシャンも目立ち、微妙に日本市場を狙っているような方向性が気になります。ユニークなバンドなだけに、もっと海外でも注目を集めてほしいところなのですが、変に「ビッグインジャパン」(というほど日本でも売れてはいないのですが・・・)にならないことを願いたいところなのですが・・・。

評価:★★★★

Superorganism 過去の作品
Superorganism

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2022年9月16日 (金)

強いメッセージも込められた明るく楽しい新作

Title:Special
Musician:Lizzo

自身3枚目のアルバムである「Cuz I Love You」が大ヒットを記録。2020年のグラミー賞では8部門にノミネートされ3部門を受賞するなど、一気に時の人となったミュージシャンLizzo。本作は、そんな彼女の約3年ぶりとなるニューアルバムですが、このアルバムもアメリカビルボードでは自身最高位となる2位を記録。イギリスのナショナルチャートでもベスト10入りを記録するなど、前作に続いて大ヒットを記録し、話題となっています。

個人的にも前作「Cuz I Love You」は私的年間ベストアルバムで2位に入れるなど、かなりはまったアルバム。それだけに今回のアルバムもかなり期待していたのですが、最初聴いた時は若干違和感も残るアルバムになっていました。前作のアルバムは、力強いボーカルでファンキーに、時としてはスモーキーな歌声を聴かせてくれるアルバムになっており、ちょっとレトロなソウル風な側面を感じられたのですが、今回のアルバムについては、そのような要素はあまり感じられず、全体的には前作のアルバムでも感じたのですが、80年代のエレクトロポップ的な要素を強く感じるアルバムになっており、特に、若干ベタさも感じられるアレンジに、最初はちょっと違和感を覚えるアルバムになっていました。

ただもっとも、この一昔前のサウンドを取り入れたベタさを感じるポップチューンは前作でも感じられた特徴のひとつ。今回のアルバムは前作のそんな特色をさらに強調したアルバムと言えるでしょう。「About Damn Time」はまさにそんな80年代っぽさを感じられる軽快でファンキーなポップチューン。「2 Be Loved(Am I Ready)」も同じく軽快なエレクトロダンスチューンは、こちらはちょっと90年代風な要素を入れつつ、一方では最近のK-POP風な感覚も入った、懐かしさと今風を両立させたような楽曲に仕上げています。

他にも「Everybody's Gay」も同じく80年代っぽさを感じさせるエレクトロダンスチューン。「Birthday Girl」も、ホーンセッションを取り入れたサウンドに懐かしさを感じさせる明るいポップチューンにまとめながらも、一方ではトラップの影響を感じさせるリズムを取り入れており、こちらも懐かしさと今風を両立された楽曲となっています。

またベタさと言えば、「Break Up Twice」ではサビでローリン・ヒルの98年のヒット曲「Doo Woo(That Thing)」を引用。ラストのタイトルそのまま「Coldplay」では、Coldplayの「Yellow」のサビをサンプリングするなど、ある意味ベタな大ネタを使用しています。そういうわかりやすさという点を含め、全体的にポップに、非常に聴きやすく楽しめるアルバムに仕上がっています。そういう意味で前作同様、最後までワクワクしながら楽しんで聴けるアルバムでした。

一方、彼女のアルバムの最大の特徴といえば、そのメッセージ性。彼女自体、体型の多様性を受け入れるべきという「ボディ・ポジティブ」の提唱者として知られており、今回のアルバムでもタイトル曲「Speicial」では「あなたは特別」というポジティブなメッセージが込められており、「2 Be Loved(Am I Ready)」でも

"How am I supposed to love somebody else (Shee, shee, shee)
When I don't like myself? Like, ooh"
(自分自身を好きになれないで、どうやって他の誰かを愛するの?)
(「2 Be Loved(Am I Ready)」より Writer:Peter Svensson, Max Martin, Melissa Viviane Jefferson, Savan Harish Kotecha, Ilya Salmanzadeh)

と、「自分自身を愛するべき」という強いメッセージが込められています。このような強く前向きなメッセージ性も彼女の大きな魅力ですし、多大な支持につながっている大きな要因でしょう。

そんな訳で、最初は若干違和感を覚えた一方、何度か聴くうちに前作同様、非常に楽しめる作品になっていました。ポップな作風はわかりやすく、前向きなメッセージを含めて日本でも十分すぎるほど受け入れられそうなミュージシャンだと思います。これからの彼女の活躍にさらに楽しみになってくる傑作でした。

評価:★★★★★

Lizzo 過去の作品
Cuz I Love You

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2022年9月15日 (木)

こちらもAdoがまだまだ強い!

今週のHot Albums

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Hot100で圧倒的な強さを見せるAdoですが、Hot Albumsでも「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」がまだまだ強さを見せつけています。今週もCD販売数、ダウンロード数で2位、PCによるCD読取数で1位を獲得し、総合順位で2位。これで4週連続の2位を獲得しています。

一方、今週1位を獲得したのはONE OK ROCK「Luxury Disease」が獲得。CD販売数及びダウンロード数1位、PCによるCD読取数3位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上7万枚で1位獲得。前作「Eye of the Storm」の初動19万7千枚(1位)より大幅ダウンという結果になりました。ONE OK ROCKといえば、先日出演したサマソニで、このコロナ禍の中で声出しが禁止されていたにも関わらず、ボーカルのTakaが声出しを煽ったということが物議をかましています。今回の初動売上急落はその影響というよりは、CDからストリーミングへの媒体の変化によるものだとは思います。ただ、現在のライブの声出し禁止というのは、コロナ禍がはじまった頃、コロナ拡大の目の敵とされたライブを再開するために、業界全体として社会で受け入れられるためにも決めた約束事のはず。そういう経緯を考えずに、あたかも上から押し付けられた決まり事と混合するように「自分たちのやり方」とルールを破るのって、率直に言って良しあし以前に「頭が悪いな」と思います。非常に残念に感じる出来事でした。ちなみに同作の「International Version」もオリコンでは8千枚を売り上げて7位にランクインしています。

3位はHIP HOPユニットCreepy Nuts「アンサンブル・プレイ」がランクインしています。CD販売数及びダウンロード数3位、PCによるCD読取数10位。オリコンでは初動売上1万8千枚で3位初登場。前作「Case」の初動2万1千枚(3位)から若干のダウン。ただ、2作連続Hot Albums、オリコン共にベスト3入りを記録しており、その人気を確固たるものとしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位には円神「O」がランクイン。CD販売数4位でそれ以外の順位は圏外。オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」の元練習生により結成されたアイドルグループで、「エンジン」と読むそうです。本作がアルバムデビュー作。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。

7位初登場はポルカドットスティングレイ「踊る様に」。CD販売数及びダウンロード数7位、PCによるCD読取数95位。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。前作はEP盤の「赤裸々」で、同作の初動6千枚(9位)よりは若干のアップ。オリジナルフルアルバムとしての前作「何者」の1万1千枚(8位)よりはダウンしています。

8位にはGero「Parade」が初登場。CD販売数6位、ダウンロード数48位、PCによるCD読取数61位。もともとニコニコ動画への歌唱動画の投稿から人気を博したシンガー。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。前作「TOKYO HAZE」の3千枚(21位)からアップしています。

最後10位には猫又おかゆ「ぽいずにゃ~しんどろーむ」がランクイン。CD販売数15位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数75位。バーチャルYou Tuberによる本作がデビューアルバムとなります。オリコンでは初動売上5千枚で13位に初登場しています。

またロングヒット盤ではなにわ男子「1st Love」が7位から9位にダウンするもベスト10をキープ。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年9月14日 (水)

Adoの快進撃はまだ続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

2週連続の1位となりました。

今週、1位はAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が2週連続で獲得。ダウンロード数、ストリーミング数に加えて、You Tube再生回数も先週の2位から1位にアップ。さらにカラオケ歌唱回数を加えて4部門で1位獲得。圧倒的な強さで2週連続通算4週目の1位獲得。またベスト10ヒットは連続14週、ベスト3ヒットは連続6週目となりました。

さらに先週に続き「私が最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が、いずれも先週から同順位の4位、5位、6位と並んでいます。特にストリーミング数はそれぞれ2位3位4位を獲得。今週もAdoが1位から4位まで独占する結果となっています。

初登場最高位は2位のSexy Zone「Trust Me,Trust You」。テレビ朝日系ドラマ「トモダチゲームR4」主題歌。平井大が作詞作曲を担当しています。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位獲得。ラジオオンエア数7位、Twitterつぶやき数17位、You Tube再生回数90位で総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上21万2千枚で本作が1位初登場。前作「夏のハイドレンジア」の初動24万9千枚(1位)からダウンしています。

3位には韓国の女性アイドルグループKep1er「Wing Wing」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数40位、ラジオオンエア数49位、PCによるCD読取数38位、Twitterつぶやき数8位、You Tube再生回数77位。オリコンでは同曲が収録されている「<FLY-UP>」が初動売上6万8千枚で2位初登場。シングルでは本作がデビュー作となります。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲のみ。10位にTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「THE POWER」がランクイン。映画「HiGH&LOW THE WORST X」主題歌。CD販売数4位、ラジオオンエア数1位、Twitterつぶやき数7位にランクインしていますが、ストリーミング数81位、PCによるCD読取数86位、そのほかのチャートは圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上2万8千枚で4位初登場。前作「LIVING IN THE DREAM」の初動2万6千枚(3位)から若干のアップです。

ロングヒット曲ではまずTani Yuuki「W / X / Y」が先週と変わらず8位にランクイン。ストリーミング数は今週もAdoに続く5位にランクインしており、強さをキープしています。これで23週連続のベスト10入り。

そしてOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が今週も変わらず9位をキープ。これで22週連続のベスト10ヒットとなります。そして今週、ヒゲダンとデッドヒートを繰り広げてきたSEKAI NO OWARI「Habit」がついに11位にランクダウン。ベスト10ヒットは連続17週でストップしてしまいました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年9月13日 (火)

これが「ラスト」というのは残念・・・

Title:ブリトラ埋蔵金ファイナル
Musician:ブリーフ&トランクス

「半径5メートル以内の日常生活」をテーマに、ユーモラスな楽曲をフォーキーに歌うデゥオ、ブリーフ&トランクス。2000年に解散後、2012年に再結成。以降、コンスタントな活動を続けていたのですが、メンバーの細根誠が花屋に専念するために脱退を表明。今後は伊藤多賀之のソロユニットとして活動を続けていくそうですが、2人での活動は残念ながら、このアルバムがラストとなります。

せっかく活動を再開したのに、また脱退しちゃうのかぁ・・・とかなり残念に思うのですが、彼らの最初にメジャーデビューした1998年から最初の解散2000年までがわずか3年。一方、再結成からは既に10年の月日が経過しており、なにげに最初の活動よりも再結成後の活動の方がはるかに長く活動を行っている事実に、軽く衝撃を覚えました。年ととると、やはり時間がたつのが短く感じてしまいんですね・・・。

さて、本作はそんな彼らの2人としてはラストとなるアルバム。2019年にリリースした「ブリトラ埋蔵金」の続編となるような作品で、主に伊藤多賀之のソロ時代の作品をブリトラとして再録音した作品になっているそうです。おそらく細根誠が脱退する前に、伊藤ソロ作をブリトラとして録っておきたいという意図があったのでしょう。しかし、正直言って、これを作品として発表してよかったの?というような、かなり残念な作品になっていました。

まずなんといってもネタとして練り切れていないまま発表された作品があまりにも目立ちます。全21曲中6曲もデモ音源が収録されているのですが、いずれも楽曲として完成されておらず、ひとつのネタを軽く曲にのせた程度であり、オチもありません。特に「節電屋敷(Demo)」はネタ的にもブリトラらしいのですが、オチがなく宙ぶらりんの状態なので、聴いていてかなり物足りなさを感じます。

「ものまねアワー2022」も、単なる似てるかどうかわからないものまねをし合うだけのかなり内輪ネタ的な要素が強い曲で、「マニア向けの曲」と紹介されていますが、それ以前にプロとしてこういう作品を世に出すのはどうなんだろう?また、かなり気になったのが「メンズ差別」で、日常で女性が優遇されている、と思われるシーンを描写しているのですが、これ、反フェミニズムをこじらせた一部のネット住民がネット上で主張しているようなネタみたいで、「単なるネタだよ」と言われればその通りかもしれないのですが、かなり微妙に感じます。正直、ブリトラっていままでも、女性の外見をネタにするような曲もあって、薄く男女差別的な部分を感じないわけでもなかっただけにかなり気になりました。このアルバムでも「抱かれて3万円(Demo)」とかも、若干女性蔑視的な視点が入っているし。

曲によっては二番煎じ的な部分はあるものの「かかとスケスケ」だとか「スペアキー」みたいにブリトラらしいユニークな視点で日常を描いたコミカルな曲も少なくはないものの、オリジナルアルバムの1枚としてリリースするには、ネタの練りこみ不足が目立ち、かなり微妙な作品になっていたように感じます。こういうアルバムはファンクラブ限定とかでリリースするか、例えばファンへのサービスとして無料ダウンロードみたいな形でリリースすべきだったのでは?ブリトラが2人のうちにリリースしておきたかった、という趣旨はわからなくもないのですが、最後がこれ、というのはかなり残念に感じてしまいました。特に前作「パペピプペロペロ」はネタとしてかなり切れ味の優れた傑作だっただけに、最後に1から、純然たるブリトラのオリジナルアルバムを聴きたかったなぁ。

2人での作品としては、あとラストライブの模様を収録した作品がリリースされるそうなので、そちらには期待したいところ。また、伊藤多賀之のネタとしては脂にのっているようですので、今後のソロプロジェクトとしてのブリトラにも期待したいところです。ブリトラとしての名前を残して置く、ということはひょっとしたら単発的に細根誠の復活もありえるかもしれませんし。また、細根誠の花屋としての今後の活躍にもエールをおくりつつ、3年+10年以上にわたって、ユニークな曲を届けてくれて、どうもありがとうございました。

評価:★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症
手のひらを満月に
ブリトラBESTバイブルⅠ~家族で聴いても恥ずかしくない曲集~
ブリトラBESTバイブルⅡ~ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集~
ブリトラ埋蔵金
パペピプペロペロ

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2022年9月12日 (月)

昭和歌謡曲のレジェンドの作品集

Title:いずみたくソングブック-見上げてごらん夜の星を-

昭和を代表するヒットメイカーとして数多くのヒット曲を世に生み出してきた作曲家、いずみたく。ヒット曲のみならずCMソングやアニメソング、ミュージカルなど数多くのジャンルの作曲を手掛け、その数は約1万5千曲にものぼるそうです。今回紹介するのは、そんな多岐にわたる彼の作品のうち代表曲を網羅的に収録した初となる本格作品集。全CD5枚組となり、カテゴリーごとに「ヒット・ソングス」、生前の彼の自薦曲を中心に選曲した「レアリティ・ソングス」、テレビや映画などの主題歌をあつめた「テーマ・ソングス」に「CMソングス」、「舞台・ミュージカル・ソングス」で構成。さらにDVDとしていずみたくが生涯をかけて制作したミュージカルを今もなお受け継いでいるイッツフォーリーズの「いずみたく あいうえおメドレー」が収録されています。

そんないずみたくのヒット曲の数々ですが、既に彼は逝去後、20年を経ており、主に彼が活躍していたのは60年代や70年代。そのため、特に各種主題歌については聴いたことない曲も少なくなく、特に「主題歌」でも、彼が手掛けた後にあらたに主題歌になった曲の方がなじみのある、というケースも少なくありません。例えば「天才バカボン」はおなじみの「これでいいのだ~♪」ではなく、かなりビックリしますし、アンパンマンの曲も何曲か収録されているのですが、おなじみの「そうだ、うれしいんだ~♪」の曲ではありません(こちらは「アンパンマンのマーチ」で、こちらの作曲家、三木たかしも同じく巨匠なのですが)。

ただ一方、すごく懐かしさを感じる曲も少なくありません。特にこの膨大な彼の曲を聴いていて感じたのは、自分が子供の頃に、親がふと口ずさんでいた曲が多いな、ということ。ヒット曲はもちろんなのですが、CMソングなどでもそんな曲が多く、それだけ多くの人になじみやすい曲が多かったんだな、ということも感じました。また、もちろん「手のひらを太陽に」「いい湯だな(ビバノン・ロック)」「太陽がくれた季節」「ゲゲゲの鬼太郎」(こちらはおなじみのあの曲です)、さらには「徹子の部屋のテーマ」などなど、リリースした頃にリアルタイムで聴いていた訳ではないのですが、私個人としてもなじみのある曲も多く、あらためていずみたくが歌謡曲の多くのスタンダードナンバーを世に送り出してきたことを実感させられます。

さて、そんな彼の曲なのですが、全体的な曲の方向性としては「ザ・歌謡曲」といった印象を受けます。哀愁たっぷりに聴かせるわかりやすいメロディーラインは、まさに歌謡曲そのもの。また、特に彼の曲に多く感じた特徴としては、「太陽がくれた季節」が典型的なのですが、少々ベタでわかりやすいダイナミックなメロディーラインの曲が多く、いかにもな青春歌謡曲的な曲も目立ちました。一方で、ムード歌謡曲的な曲も少なくないものの、典型的な「演歌」といった曲はなく、そういう意味では60年代以降の、洋楽の影響も受けつつ日本らしいメロディーラインを引き継いだ歌謡曲の王道を行くような曲を書いていたのでしょう・・・というよりも、むしろ彼が書いたようなメロディーこそ、「歌謡曲」ととらえられ、多くの作曲家に影響を与えたのかもしれません。

非常にバリエーションある曲が並んでおり、おそらく、特に40代以降くらいの方にとっては知っている曲も少なくないのではないでしょうか。むしろ「手のひらを太陽に」なんて、今の幼稚園児でも知っているくらいでしょう。それだけ聴き応えのある作品集。60年代や70年代に青春を過ごしたような方にとっては、間違いなく懐かしくて感涙ものでしょうし、それより下の世代でも文句なしにお勧めできる作品だと思います。あらためて作曲家いずみたくの偉大さを実感できた作品集でした。

評価:★★★★★

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2022年9月11日 (日)

吉田拓郎からミュージシャンの「終活」について考える

Title:ah-面白かった
Musician:吉田拓郎

吉田拓郎が2022年いっぱいで全ての音楽活動から引退を発表。かなり大きなニュースになったので、おそらくみなさんご存じでしょう。約10年ぶりとなるオリジナルアルバムである本作は、これが最後のアルバムであることが公表され、大きな話題となりました。チャートでもビルボード、オリコン共に最高位2位を獲得するなど大ヒットを記録。かくいう私も、彼のオリジナルアルバムは、本作をリアルタイムではじめて聴きました。

そんな彼のラストアルバムは、やはり最後であることを強く意識したアルバムになっており、例えば「雪さよなら」は1970年のアルバム「青春の詩」に収録されている「雪」の完結編としてセルフカバーをしていたりします。最後を締めくくりアルバムタイトルにもなっている「ah-面白かった」などは、まさにラストであることを意識した、彼の音楽活動に対する集大成的な歌詞に仕上げられています。

他の楽曲についても、やはりラストということを意識したのでしょうか、基本的には吉田拓郎らしいシンプルでフォーキーな楽曲が並んでおり、あえてでしょうが、このアルバムでの目新しさは感じられません。逆に、長年のファンにとってみれば、安心して聴ける、吉田拓郎らしい壺をついた作品になっているのではないでしょうか。

ただ、やはりこれが彼にとってラストのアルバムというと、熱心なファンではなくても、どうしても寂しさを感じてしまいます。例えば同じ「引退」が話題になる例としてスポーツ選手があげられますが、スポーツ選手の引退は30代かせいぜい40代。まだまだ人生、折り返し地点前であり、これから第2の人生が待ち構えている年齢です。しかし、現在76歳という彼にとって「引退」というとどうしても人生のゴールを目指す「終活」を想像してしまい、やはり寂しさを感じてしまいます。

もっとも最近は、彼に限らず音楽活動の引退を表明するミュージシャンの話題が相次いでいます。加山雄三も年内でのコンサート活動からの引退を表明していますし、小椋佳も今年いっぱいでの引退を表明。また公式には表明していないものの井上陽水も個人事務所の社長を退任し、引退の準備を進めているという話もありますし、また「引退」ではないものの、中島みゆきも全国ツアーからの引退を表明しています。

一方で海外に目を向けると、あまり「終活」を行っているミュージシャンというのは思い当たりません。ポールマッカートニーも、ミックジャガーもキースリチャーズもまだまだ現役で活動を続けていますし、B.B.KINGもチャック・ベリーも亡くなる直前まで、現役で活動を続けていました。アメリカの大御所、トニー・ベネットは先日、引退を表明しましたが、御年95歳。ここまで現役を続けてきたこと自体が逆に驚きです。

そう考えると日本でこれだけ「終活」に入るミュージシャンが多いという点に、日本独特の傾向を感じてしまいます。やはりウダウダと活動を続けるよりも、「終活」としてきれいな形で、周りに迷惑をかけず、人生の幕を下ろしたい、そう考える方が多いのでしょうか。この「周りに迷惑をかけず」という点に、良くも悪くも日本人的なものを感じます。また、中途半端にファンをまたせるよりも、進退についてしっかりと表明しておきたい、という意思もあるのかもしれません。

ただ、ある意味、吉田拓郎にしても他のミュージシャンにしても、既に自分のペースで勝手に音楽活動を進められる立場なのだから、「これで終わり」というよりも、自分のペースで活動を続けて、また音楽をやりたくなったら活動する、というスタンスでもいいような感じもするのですが・・・。まあ、こればっかりは個人の勝手なんで外野がとやかく言うべきことではないのかもしれないのですが、ただ、相次ぐミュージシャンの「終活」に、日本人らしさを感じてしまいました。

もっとも、宮崎駿みたいな例もあるので、何年かたったら、やはり音楽がやりたくなって新作を発表する、というケースは重々に考えられます。これがラストとはいえ、そういう期待も抱きつつ、「終活」とはいえ、まだまだ第2の人生は続くわけで、今後も末永くお元気で!

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Just Kids.ep/ART-SCHOOL

2015年の活動休止後、何度か復活ライブを行い、2018年には久々となるニューアルバムをリリースしたものの、木下理樹の体調不良により2019年以来、活動休止状態となっていたART-SCHOOL。しかし、今年の8月、ライブで活動再開。このたび待望の新作がリリースとなりました。全4曲入りのミニアルバムながら、非常に荒々しいサウンドに、メランコリックなメロディーライン、そして木下の気だるいボーカルが非常に印象に残る作品で、実にART-SCHOOLらしい作品に仕上がっています。まさに活動再開後の挨拶がわりともいえる作品なのですが、ART-SCHOOLらしいカッコよさを凝縮した作品に。次のオリジナルアルバムも楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

ART-SCHOOL 過去の作品
Ghosts&Angels
ILLMATIC BABY

14 SOULS
Anesthesia
BABY ACID BABY
The Alchemist
YOU
Hello darkness,my dear friend
Cemetery Gates-B SIDES BEST-
In Colors

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2022年9月10日 (土)

レジェンドにして、まだまだ現役感

現在、66歳という大御所的な位置にいながら、現役感たっぷりで活動を続ける佐野元春。今年に入って、一気に2作のアルバムをリリースしました。

Title:ENTERTAINMENT!
Musician:佐野元春&THE COYOTE BAND

まず4月に配信限定という形でリリースされたのが本作。2019年から2021年にかけて配信シングルとしてリリースされた5曲を一気に収録。その他、新曲を含めての全10曲という構成となっています。既発表曲がメインとなっているため、配信限定というリリース形態にしたのでしょうか。

まずこのアルバム、バラバラにリリースしたシングル曲をまとめたからでしょうか、非常にバラエティーに富んだ作品になっています。ホーンセッションが入って、スカのリズムを取り入れた「愛が分母」や同じく裏打ちのリズムで軽快に聴かせる「この道」、ブルージーに聴かせる「悲しい話」や疾走感あるギターロックの「少年は知っている」などなど。バラエティーに富んだ展開が楽しめます。

また、「ENTERTAINMENT!」というタイトルにピッタリと言えるかもしれませんが、ホーンセッションやシンセ、ピアノなども取り入れた、比較的楽しい雰囲気のアレンジが目立つのも大きな特徴。全体的に賑やかなアレンジの曲も目立ち、タイトル通り「ENTERTAINMENT!」な作風に仕上がっています。

さらに新曲では、コロナ禍を描写したような歌詞もあり、印象的なのが「東京に雨が降っている」でしょう。コロナ禍を「雨」に例えた曲なのですが、ただ決して暗い雰囲気の曲ではなく、むしろ「雨」の向こうの希望を歌っているような曲に仕上がっています。

「今日までの自分
明日からの自分
すべては夢のように
この雨の向こう
ぬれた街を歩いていこう」
(「東京に雨が降っている」より 作詞 佐野元春)

と非常に前向き。コロナで厳しい中でも力強く進んでいこうというメッセージ性を感じます。

シングル曲も多くバラエティーに富んでいるためいい意味で非常に聴きやすく、最後まで楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

Title:今、何処
Musician:佐野元春&THE COYOTE BAND

そして続く7月にリリースされたのが本作。こちらはCD形態でもリリース。さらに初回盤は「ENTERTAINMENT!」のCD盤も同封されています。

2022年早くも2枚目となるアルバムは本人たち曰く「やばいアルバム」だそうです。60歳を半ばもすぎたおじさん(失礼!)が「やばい」なんて表現をつかうあたり、ある種の若さを感じるのですが(笑)、確かに、その表現がピッタリと来るような、非常にエネルギッシュで若さあふれる作品となっていました。

様々なサウンドを取り入れてバラエティーに富んでいた「ENTERTAINMENT!」と比べると、こちらはバンドサウンドを前面に押し出した佐野元春のロックな側面をより押し出した作品に。テンポよいギターロックの「さよならメランコリア」や、ギターリフ主導の曲づくりとなっている「植民地の夜」、ギターサウンドで力強い「大人のくせに」などなど。シンセやピアノ、ストリングスなどを取り入れた曲も目立ちますが、全体としては力強いバンドサウンドを前に押し出したアルバムとなっています。

また、力強い前向きのメッセージを入れた曲が多いのも特徴的。「打ち上げろ魂 君の魂」と歌う「さよならメランコリア」や、「君の魂 無駄にしないでくれ」と歌う「斜陽」。さらに事実上のラストソングとなる「明日の誓い」では

「明日がなければ 意味がない
悩みがなければ 味気ない
今日と一緒に 歩いていこう
よりよい明日へと まぎれていく」
(「明日の誓い」より 作詞 佐野元春)

と、非常に力強い明日へのメッセージを歌っています。バンドサウンドと相まって、アルバム全体として力強さを感じさせるアルバムとなっていました。

この2作のアルバム、どちらも佐野元春がミュージシャンとして、ここに来て脂がのっていることを強く感じさせる勢いのある傑作に仕上がっていました。現役感も十分ですし、むしろ若々しさすら感じさせる作品で、この年齢に来て、こんな作品を作るとは、ある種の驚きすら感じさせます。本人としてもかなり自信作のようですが、それも納得の内容。60歳半ばを超えて、まだまだ脂ののった活動を続ける佐野元春。むしろこれからが楽しみにすらなってくるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

But wait. Cats?/[Alexandros]

途中、ベスト盤やコンセプトアルバムのリリースがあったため、オリジナルアルバムとしては約3年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。ここ最近のオリジナルアルバムはバンドとしての脂がのりきった傑作となっていたため、今回のアルバムもかなり期待していました。実際、ダイナミックで疾走感あるギターロック、特に英語詞の曲に関しては非常にかっこよさを感じ、前作から続くバンドとしての勢いを感じさせる一方、ちょっとベタさを感じるメロディーラインで、今一つな感じのする曲も目立ち、カッコいい曲とそうでない曲の差があったような。彼らのカッコよさもしっかりと感じたのですが、ここ最近のアルバムの中ではちょっと残念さも感じたアルバムでした。

評価:★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!
Sleepless in Brooklyn
Bedroom Joule
Where's My History?

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2022年9月 9日 (金)

謎の覆面ユニット

Title:Icons
Musician:Two Shell

今回紹介するのは、最近、イギリスで話題となっている覆面エレクトロデゥオ、Two Shellの新作EPです。海外版DOMMUNEともいえるライブストリーミングサイト、ボイラールームでの満員でのパフォーマンスが話題となり、さらにグラストンベリーへの出演を決めるなど、勢いのある活動を続ける彼ら。日本でも今後、徐々に話題となってきそうなユニットです。

今回のEPは5曲入りの作品なのですが、一言で言うと、高揚感があって非常に心地よいアルバムに仕上がっていました。1曲目の「Ghosts」は、まさにスペーシーなサウンドで、楽曲後半になるにつれ、どんどん高揚感の増してくるエレクトロチューン。続く「Pods」はちょっとダウナーな雰囲気ながらも、こちらもリズミカルで、近未来的な雰囲気の漂うエレクトロサウンドが心地よい楽曲に仕上がっています。

スペーシーなサウンドが心地よかった前半から変わって、中盤の「Dust」はトライバルなリズムで聴かせる楽曲に。後半の女性コーラスと相まって、こちらもリズミカルで高揚感ある作品ながらも、どこかエキゾチックな雰囲気が魅力的な作品になっています。続く「Memory」はサンプリングされたコーラスも心地よいリズムを奏でるリズミカルな楽曲。こちらもメタリックなサウンドが、他の曲とはちょっと異なる雰囲気を醸し出しています。

そしてラストを締めくくる「Mainframe」はリズミカルなナンバーながらも女性ボーカルをサンプリングさせつつ、ちょっとメランコリックな雰囲気で聴かせるのが魅力的なナンバーでこのEPは締めくくられています。

覆面のエレクトロユニットというと、どうしてもダフトパンクを思い出してしまいます。ただ、背景の物語性を含めて、覆面のコンセプトがはっきりとしていたダフトパンクに比べると、どうも「覆面」といっても顔を覆うマスクなどはその時々によって異なるようで、「覆面である」という以外のコンセプト性はまだあまり持っていない模様。また、サウンド的にも、王道路線といった印象で、一度聴けばTwo Shellの音である、というほどのはっきりした個性は、残念ながらいまのところまだ感じられません。

ただし一方で、終始高揚感のある心地よくリズミカルなエレクトロサウンドは大きな魅力。とにかく難しいこと抜きで、聴いていて非常に心地よさを感じる作品となっていました。そして、この気持ちよさの大きな源となっているのが、楽曲に流れるメロディーラインの心地よさでしょう。ラストの「Memory」のメランコリックなメロで、彼らのメロディーセンスの良さを実感させられますが、このセンスのよいメロディーがアルバム全体に流れており、聴いていて心地よさの大きな要因になっているように感じました。

まだ日本では無名のユニットのようですが、今後、徐々に日本でも知名度は高まってきそう。特にこの手のユニットは、比較的早い段階で来日公演とか実現しそうなので、そうなれば一気に注目度も高まるかもしれません。まだまだ2枚のEPをリリースしたのみで、謎な部分も多いユニットのようですが、これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Ella At The Hollywood Bowl: The Irving Berlin Songbook/Ella Fitzgerald

史上最高のジャズボーカリストの一人といわれるエラ・フィッツジェラルドが、1958年に、アメリカはカリフォルニア州ハリウッドにある野外音楽堂「ハリウッド・ボウル」で行ったライブの模様を収録したライブアルバム。今回、全貌が公開されるのは初という、かなり貴重な音源となっているようですが、まず感じるのは非常に録音状態が良いということ。今から60年以上前の録音で、かつ野外というのが信じられないほどクリアな音源で楽しめます。そして、その圧巻なエラのボーカルが楽しめるライブアルバムになっています。彼女の、時にはパワフルに、時にはしんみりと聴かせる緩急つけたパフォーマンスが実に魅力的。彼女のボーカリストとしての才能を存分に感じられるアルバムになっています。「ジャズボーカル」というカテゴリーに限らず、音楽ファンなら必聴の作品です。

評価:★★★★★

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2022年9月 8日 (木)

こちらもAdoの強さが目立つが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Adoの強さが目立ちつつ、アイドル系が1位獲得です。

今週1位初登場はBE:FIRST「BE:1」。CD販売数1位、ダウンロード数及びPCによるCD読取数2位。SKY-HIが私財を投じて実施したオーディション番組「THE FIRST」から誕生したアイドルグループでこれがデビューアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上16万1千枚で1位初登場。

そして2位には今週もAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が先週と同順位をキープ。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数は今週も1位をキープ。オリコンでも2位をキープしており、Hot100で圧倒的な強さを見せるAdoですが、Hot Albumsでもその強さを見せつけています。

3位初登場は竹内まりや「Quiet Life」。CD販売数3位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数23位。1992年にリリースしたアルバムの30周年記念のリマスター盤。発売された当初をリアルタイムに知っているだけに、それから30年という事実は軽く衝撃的なのですが・・・。オリコンは初動売上1万5千枚で4位初登場。直近のオリジナルアルバム「Turnable」の初動9万6千枚(2位)からはさすがに大幅ダウン。ただ、同じく30周年記念盤として2017年にリリースされた「REQUEST」の初動8千枚(9位)より大幅にアップしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず5位に角松敏生「Inherit The Life」がランクイン。オリジナルフルアルバムとしては約8年ぶりとなる作品。CD販売数4位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数19位。オリコンでは初動売上8千枚で5位初登場。直近作はセルフカバーアルバム「EARPLAY~REBIRTH 2~」で、同作の初動9千枚(4位)から微減。オリジナルフルアルバムとしての前作「THE MOMENT」の初動も8千枚(16位)でしたので、初動売上は横バイとなりました。

8位初登場は「Paradox Live -Road to Legend- Round1 "RAGE"」。CD販売数9位、ダウンロード数27位、PCによるCD読取数73位。HIP HOPをテーマとしたメディアミックスプロジェクト。完全にヒプノシスマイクの2匹目のどじょう狙いのプロジェクト。オリコンでは初動売上4千枚で12位初登場。同プロジェクトの前作「Paradox Live Opening Show-Road to Legend-」の初動1万枚(10位)からダウンしています。

9位には「SET LIST 2 ~劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスターリッシュツアーズ 挿入歌集~」がランクイン。CD販売数6位、PCによるCD読取数42位。タイトル通り「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE」の劇場版第2作。劇場公開日の9月2日リリースのため、オリコンでは今週はベスト50にランクインしてきませんでした。

最後10位には女性アイドルグループPimm's「RELIGHT」がランクイン。CD販売数のみ8位にランクインし、総合順位はこの位置に。自称「ミクスチャーロックアイドル」だそうですが、Hot100の乃木坂46の曲といい「ロック」という言葉がすっかり様式化・陳腐化したことを感じさせます。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「URBAN WARFARE」の4千枚(14位)からアップしています。

また、今週、ジャニーズ系アイドルグループなにわ男子「1st Love」が7位にランクインし、8週連続のベスト10ヒットを記録。ロングヒットとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年9月 7日 (水)

Adoの快進撃が続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はなんと1位返り咲きです。

今週、1位を獲得したのはAdo「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」でした。先週2位からのワンランクアップで、2週ぶりの1位返り咲き。ストリーミング数は4週連続、ダウンロード数は5週連続の1位を獲得。You Tube再生回数は1位から2位にダウンしてしまったものの、ほか、ラジオオンエア数4位、Twitterつぶやき数で30位を獲得。そして今週なんと、カラオケ歌唱回数で昨年の2月から80週連続1位を続けてきた優里「ドライフラワー」を下してついに1位を獲得という快挙を達成しています。これで13週連続ベスト10ヒット&5週連続ベスト3ヒット&通算3週目の1位獲得となりました。

Adoは今週も「私が最強(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」「逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」「ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が、いずれも先週からワンランクダウンして4位、5位、6位と並んでいます。これで今週も4曲同時ランクインという快挙を達成。ただし、先週8位だった「Tot Musica(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」は残念ながら11位にダウンして、5曲同時のランクインはなりませんでした。

ただし、ストリーミング数は今週も「新時代」の1位を筆頭に、「私が最強」2位、「逆光」3位、「ウタカタララバイ」4位と1位から4位を占拠。圧倒的な強さを見せつけています。

ベスト3に戻ります。2位には乃木坂46「好きというのはロックだぜ!」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数9位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数7位。正直、「ロック」という言葉のあまりに陳腐な使われ方に、ロックというジャンルの過去の歴史を全く無視されて、すごく馬鹿にされたように感じます。しかしこういう使われ方をすることを考えると「ロック」という言葉も概念も、完全に過去の遺物になってしまったんですね。また、秋元康の作詞家でありながらも「言葉」の背景を全く大切にしない姿勢にも疑問を感じてしまいます。オリコン週間シングルランキングでは初動売上57万6千枚で1位初登場。前作「Actually...」の46万3千枚よりアップしています。

3位には韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「Good Boy Gone Bad」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数78位、ストリーミング数40位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数21位、You Tube再生回数72位。オリコンでは初動売上36万7千枚で2位初登場。前作「Drama」の初動9万2千枚(3位)から大幅にアップしています。

4位以下の初登場しては、7位に韓国の女性アイドルグループTWICE「Talk that Talk」がランクイン。配信限定シングルでYou Tube再生回数で1位を獲得。ほか、ダウンロード数18位、ストリーミング数11位、ラジオオンエア数46位、Twitterつぶやき数で67位を獲得。総合順位でベスト10入りとなりました。

その他、ロングヒット曲としては、Tani Yuuki「W / X / Y」が先週から2ランクダウンながらも8位にランクイン。特にストリーミング数ではAdoの4曲に続く5位をキープしています。これで22週連続のベスト10。

さらにOfficial髭男dism「ミックスナッツ」SEKAI NO OWARI「Habit」の争いですが、今週「ミックスナッツ」が9位、「Habit」が10位と再度逆転。これで「ミックスナッツ」は21週連続、「Habit」は17週連続のベスト10ヒットとなります。両者とも後がない状況ですが、ただし、ストリーミング数は「ミックスナッツ」7位、「Habit」8位と、どちらも3週連続同順位をキープしており、まだまだ根強い強さを感じられます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年9月 6日 (火)

シンガーソングライターとしての実力

Title:The Gospellers Works 2
Musician:ゴスペラーズ

ゴスペラーズの最新作が、彼らが他のミュージシャンたちに提供した楽曲のセルフカバー集。ゴスペラーズというと、コーラスグループとしての側面にスポットがあたりがちであり、「シンガーソングライター」的な視点が忘れられがちなのですが、メンバーみずから作詞作曲を行う「シンガーソングライター」としての側面も持っています。特に5人のメンバー全員が、曲づくりにかかわっており、今回のセルフカバーアルバムでも、メンバー全員が何らかの形でかかわっており、彼らにとって大きな武器と言えるでしょう。

また今回のセルフカバーアルバムの楽曲提供先も、ちょっと意外な感も。デゴマス、ジャニーズWESTといったジャニーズ系アイドルや三浦大知、さらにアカペラをテーマとしたアニメ作品「アオペラ」への提供曲や、人気声優小野大輔、さらに夏川りみや郷ひろみといったベテラン勢への提供など、かなり多岐にわたっています。ちなみに今回のアルバムタイトル「The Gospellers Works 2」となっていて、2007年に「The Gospellers Works」をリリースしていますが、こちらはカバー曲やコラボ曲を集めたコンセプトアルバムとなるので、セルフカバーアルバムとしては本作が初となります。

さて、そんなセルフカバーアルバム、ほかの人への楽曲提供曲ではよくありがちなのですが、ともすればゴスペラーズの楽曲以上にゴスペラーズらしい曲が並んでいます。特に「アオペラ」に提供した2曲「Follow Me」「RAINBOW」については、正統派ともいえるアカペラ曲が並んでいます。ある意味、ゴスペラーズの原点的な作風とも言える曲にもなっており、ゴスペラーズのコーラスワークをこれでもかというほど聴かせてくれており、コーラスグループとしての彼らの実力も再認識できる作品になっています。

他もジャニーズ系に提供した「DONUTS」「Special Love」はいずれも爽やかなポップソングに仕上がっており、ゴスペラーズらしい曲なのですが、一方では確かにジャニーズ系っぽさも感じます。また三浦大知に提供した「Keep It Goin' On」はジャジーなアレンジでファンキーな作風となっており、リズムにのせる点もあわせて歌手としての難易度が高い曲になっている点、やはり歌手に合わせた曲づくりといった感じになるのでしょうか。

また、郷ひろみに提供した「五時までに」も、夏川りみに提供した「会いたくて」も落ち着いて聴かせる楽曲になっている点、こちらもベテランシンガーのイメージに合わせたような曲になっています。ただ、このような提供作の歌手による違いはありつつも、どの曲もゴスペラーズの王道とも言える作品になっているのも大きな特徴的で、そういう意味では、ゴスペラーズの音楽性の広さを感じさせ、あらためてシンガーソングライターとしての実力を感じさせる作品になっていました。

もちろん、逆にゴスペラーズとしての目新しさはない、とも言える作品になってはいますが、ゴスペラーズのニューアルバム的な感覚で楽しめるアルバムであることも間違いないでしょう。また、コーラスワークを前提とした曲を書けるという点で、ゴスペラーズのソングライターとしての需要は今後も続きそう。ソングライターとしての彼らの活躍にも注目していきたいところです。

評価:★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20
Soul Renaissance
What The World Needs Now
G25 -Beautiful Harmony-
アカペラ2


ほかに聴いたアルバム

Nonnegative/coldrain

結成15周年を迎える彼らの7枚目となるニューアルバム。マイナーコード主体のメロディーで、ダイナミックなサウンドを聴かせる疾走感あるロックを聴かせてくれ、1曲1曲に関しては文句なしにカッコいい反面、正直、似たような曲が多く、アルバムを通して聴くと、もうちょっとバリエーションが欲しくなってしまいます。勢いで押し切っている、という部分もあるのですが・・・。

評価:★★★★

coldrain 過去の作品
THE REVELATION
Until The End
VENA
FATELESS
THE SIDE EFFECT

虹の麓/元ちとせ

途中、ベスト盤やカバーアルバムのリリースなどがあり、活動としては積極的に継続していたものの、純粋なオリジナルアルバムとしては2008年から実に14年ぶりとなる元ちとせのニューアルバム。折坂悠太や長澤知之、青柳拓次など豪華なメンバーが作家陣として参加しているなど、かなり力の入れようも感じます。ただ、こぶしを入れてゆっくりと聴かせる元ちとせのスタイルで、良くも悪くも全体として彼女の色に染まっており、また、彼女の得意とする奄美民謡の影響を受けたような曲と比べると、全体的にポップ色が強く、結果として薄味になっている印象が。ラストの「ヨイスラ節(冥丁REMIX)」が一番良かったあたり、彼女の歌い方は、やはり民謡にもっともマッチしているような感じも。

評価:★★★★

元ちとせ 過去の作品
カッシーニ
平和元年
元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~
トコトワ~奄美セレクションアルバム~

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2022年9月 5日 (月)

寺山修司×志磨遼平

Title:ドレスコーズの音楽劇《海王星》
Musician:ドレスコーズ

今回、ドレスコーズが非常に興味深いアルバムをリリースしました。本作は、ドレスコーズの志磨遼平が音楽監督を手掛けた舞台"PARCO PRODUCE 2021 音楽劇『海王星』"の劇中歌を収録した作品。ただ、この音楽劇も単なる劇ではなく、もともと、かの寺山修司が、演劇実験室"天井桟敷"結成前の1963年に執筆し、未上演であった音楽劇。それをこのたび上演する運びとなったのですが、その中で音楽を担当したのが志磨遼平。寺山修司が作詞した劇中歌に彼が曲をつける形での「新作」となっています。

もともと志磨遼平の寺山修司からの影響は強く、彼が以前結成していたバンド「毛皮のマリーズ」の名前の由来も、寺山修司の戯曲「毛皮のマリー」から取られたもの。今回の音楽劇にあたっても、志磨遼平を音楽監督として起用したというのは、まさに適材適所のセレクトといっても間違いないでしょう。

今回のアルバムは、全20曲入りながらも、1曲あたり1分~長くても2分程度の長さの曲が次々展開されます。ただ、劇伴曲にありがちなワンアイディアのインスト曲が並んでいるのではなく、しっかり1曲毎に完結している歌モノのポップソングが並んでいます。そういう意味ではドレスコーズのニューアルバムとしても十分聴ける内容になっています。

作風的には昭和初期や戦後すぐの大衆歌謡を彷彿とさせるようなレトロな雰囲気のポップが並びます。志磨遼平がボーカルを取る曲もあれば、おそらく劇中でも大勢で歌われるのでしょう、合唱曲のようなスタイルの曲も少なくありません。「酔いどれ船」のようなダイナミックなハードロック調の曲もあったりするのですが、「恋する女」「紙の月」のようなムード歌謡曲的な曲、「商売に強くなる法」のような軽快な戦後すぐの軽音楽のような楽曲もあったりバラエティー豊かながらも、レトロなポップソングが並んでおり、まさに志磨遼平の得意分野といった感じの曲が続きます。

一方、なによりもユニークだったのが寺山修司の書く歌詞。諧謔的でありながらも皮肉的、時としては人を食ったような歌詞ながらもどこか人間心理の本質をついたような歌詞が特徴的で、一度聴いたら忘れられないような独特なものがあります。そしてこの歌詞が絶妙に志磨遼平の曲とマッチしているのが見事。というよりも、志磨遼平自体、寺山修司からの影響を強く受けているため、もともとドレスコーズで書いていた歌詞自体、寺山修司の歌詞に似ている印象もあり、これらの曲が志磨遼平の作詞と言われても不思議ではないほど。といっても、歌詞のインパクトといいユニークさといい、やはり寺山修司に軍配はあがりそうですが・・・。

そんなこともあって、寺山修司の音楽劇とはいえ、ドレスコーズの新作として全く違和感のないアルバムになっていますし、ファンなら間違いなく聴くべきアルバムに仕上がっていたと思います。またドレスコーズの新作としても文句ない傑作アルバムに仕上がっていたと思います。むしろ寺山修司の歌詞が与えられ、いつも以上に志磨遼平としての本領を発揮した作品とすら言えるかもしれません。劇自体も見たくなった、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ
バイエル(Ⅰ.)
バイエル(Ⅱ.)
バイエル

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2022年9月 4日 (日)

シンプルだからこそ

Title:余白のメロディ
Musician:寺尾紗穂

本作が10作目となるシンガーソングライターの新作。シンガーソングライターとしてのみならず、エッセイストや書評家等としても活躍している彼女。私もむしろ、彼女については楽曲以上にエッセイを読んだことがあったりして、その多彩が活動が目立ちます。というわけで、実は彼女の楽曲をアルバム単位で聴くのはこれがはじめて。ただシンガーソングライターとしての才能はもちろんのこと、その美しい歌声に魅せられるアルバムになっていました。

まず本作ですが、前半は比較的バリエーションの富んだ構成になっています。1曲目「灰のうた」は、ストリングスで盛り上がる構成。ハイトーンボイスでメランコリックな彼女の歌声がまず耳を惹きます。「良い帰結」は前半、ピアノのみで聴かせる構成ながらも後半はパーカッションやウィンドチャイムの爽やかなサウンドが鳴り響き、どこか自然の森の中にいるような感覚になります。エレピでしんみり聴かせる「確かなことはなにも」に、リズムマシーンも入って幻想的な「ニセアカシアの木の下」で、は、アコースティックなサウンドがメインの本作では少々異色な内容。さらにフルートでしんみり聴かせる「期待などすてて」まで、アコースティックメインの静かなサウンドが軸になりつつも、バラエティー富んだ楽曲が続きます。

そしてこのアルバムのひとつのハイライトとも言えるのが中盤の「森の小径」のカバー。戦争の足音が迫ってきた1940年の楽曲。もともとミュージックマガジンで戦前歌謡についてのコラムを書くなど、大衆音楽に対する造詣が深い彼女によるカバーなのですが、ピアノ1本で静かに力強く歌い上げるこの曲は、80年以上前の曲とは信じられないほどの歌の力を感じさせます。

そこからの後半は基本的にピアノの音のみでしんみりと歌いあげる楽曲が並びます。ただ、前半以上に彼女のボーカルがくっきりと浮かび上がっている楽曲となっており、彼女のボーカリストとしての才能を存分に感じられる傑作に。特にラストを締めくくるのは西岡恭蔵の「Glory Hallelujah」のカバー。ピアノ1本で力強く歌い上げるその歌声は、ある種、神々しさすら感じさせ、心に強く響いてきます。

終始、彼女の美しくも力強い歌声に惹かれるアルバム。その彼女のボーカリストとしての実力もさることながら、カバー曲のセレクトのみごとさも、大衆音楽の歴史に対しても造詣が深い彼女ならでは、といった感じでしょうか。コロナ禍やらウクライナの戦争やら不安なことが多い毎日だからこそ、彼女の歌声が心に響いてくる1枚。シンプルな内容だからこそ、特に曲の素晴らしさが胸に入り込んでくる、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

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2022年9月 3日 (土)

80年代に一世を風靡した男性SSW

Title:Senri Oe Singles~First Decade~
Musician:大江千里

1980年代後半から90年代にかけて一世を風靡した男性シンガーソングライター、大江千里。特に一時期は、当時の流行であったトレンディードラマにも出演するなど、ミュージシャンという枠組みを超えたアイドル的な人気も博し、文字通り、時代を代表するミュージシャンの一人として活躍していました。その後、90年代後半以降は人気は落ち着いたものの、2000年代に突如、ジャズピアニストとなるためにニューヨークに移住。現在もニューヨークでジャズピアニストとしての活動を続けています。コロナ禍がはじまった頃に、ニューヨークからのレポートとして、彼が登場する機会が何度かあり、アラフォー世代以降にとっては、その懐かしい名前の登場に驚いた方も少なくなかったのではないでしょうか。

そんな彼がデビューしたのが1983年。来年にかけてデビュー40周年目の記念すべきアニヴァーサリーイヤーにあたるそうで、そのアニヴァーサリー・プロジェクトの第2弾となるのは、彼自身初となるシングルコレクション(ちなみに第1弾は「Rain」の7インチ・シングルとアルバム「Letter to N.Y.」のアナログLPだったそうです)。ただ、初回限定版の「Special Limited Edition」と通常版の「First Decade」にわかれており、今回紹介するのは通常版の方。EPICソニー時代の最初の10年のシングル曲が収録されており、1983年のデビューシングル「ワラビーぬぎすてて」から、1992年の「ありがとう」までが収録されています。それ以降の曲が初回限定版にしか収録されていないのは残念ですが(特に、シングル曲の何曲かは、これがアルバム初収録となるようですし)、ただ、大江千里の代表曲は概ね、この最初の10年に発表された曲となるので、彼のシングルコレクションとしてはまずまず申し分ない選曲となっています。

さて、そんな大江千里の楽曲の大きな魅力は、とても爽やかなポップスでありつつも、どこか切なさを感じるメロディーライン。もともと彼が音楽をはじめたきっかけはギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」だったそうですが、この爽やかだけど切ないメロディーラインという点は、ギルバート・オサリバンの楽曲の方向性ともマッチしています。この彼の楽曲の特徴はデビュー直後の作品からも感じられ、特に初期の代表曲とも言える「BOYS&GIRLS」などはまさにそんな爽やかさと切なさを両立させた絶妙なメロディーラインが大きな魅力に感じます。

ただ、特に大江千里らしさが確立されたのはこのアルバムで言えば「YOU」あたりからでしょうか。ここらへんから、いかにも大江千里らしい曲が続くのと同時に、彼にとっても脂ののった時期であることが強く感じられます。「GLORY DAYS」や、シングル曲ではないものの今回選曲された「Rain」「dear」「あいたい」など、勢いのありインパクトがあるポップソングが並びます。そう考えると、ここで彼最大のヒットソング「格好悪いふられ方」が登場してくるのも必然の流れだったのでしょう。個人的にもリアルタイムに聴いていた曲だけに懐かしさを感じると共に、あらためていい曲だな、ということを感じました。

個人的に例えばKANとか槇原敬之とか、ピアノ弾きのシンガーソングライターって壺。そういう意味では大江千里もかなり壺にはまりそうなものなのですが、ただ、個人的には今回のシングル集を聴いても、確かに若干壺からははずれるのかな、とも思ってしまいました。メロディーもサウンドも壺にはまるのですが、個人的にちょっとはずれちゃっているのが歌詞。彼の書く歌詞って、「もてない男」の心境というよりも、むしろもうちょっと女の子慣れしているような男子の心境なんですね。実際、80年代後半にアイドル的な人気を得ていただけに、そこらへんがKANとかマッキーとかとはちょっと一線を画する部分なのかもしれませんし、そこがいまひとつ大江千里に個人的にはまりきらなかった大きな要因のように感じました。

そんなことを感じつつも、ただポップソングとしては間違いなく魅力的な本作。代表曲を網羅した2枚組という長さもちょうどよいですし、リアルタイムで聴いていたアラフォー、アラフィフ世代はもちろん、男性シンガーソングライター好きにはチェックしてみて損はないアルバムだと思います。現在はジャズピアニストとしてニューヨークで活動を続ける彼。ジャズピアニストとしてもがんばってほしいけど、たまにはポップソングも歌ってほしいなぁ、とも思ってしまったりして・・・。

評価:★★★★★

大江千里 過去の作品
GOLDEN☆BEST
Boys&Girls
Letter to N.Y.


ほかに聴いたアルバム

7+/冨田ラボ

活動20周年を迎えた冨田ラボのニューアルバムは、総勢20名という豪華ミュージシャンが参加したアルバム。堀込高樹・泰行兄弟に細野晴臣、坂本真綾、長岡亮介、bird、藤巻亮太、藤原さくら・・・とかなり豪華なメンバーがズラリと名前を並べています。楽曲は基本的にはメロウに聴かせるシティポップなのですが、参加しているミュージシャンによってジャズ色が強いものや、トライバルなリズムでエキゾチックな雰囲気を奏でるもの、ラップを取り入れたものやドリーミーに聴かせるものなどバラエティー豊富。ラストの「MIXTAPE」に至っては、10分に及ぶ作品の中、様々なタイプの曲が展開される実験的な作風に。最後まで聴かせどころたっぷりのアルバムでした。

評価:★★★★★

冨田ラボ 過去の作品
Shipahead
Joyus
SUPERFINE
M-P-C “Mentality, Physicality, Computer"

愛彌々/MONGOL800×WANIMA

パンクバンドMONGOL800とWANIMAによるスプリットEP。もともとラジオ番組の中での対談を機に作成されることになったそうで、タイトルは「アイヤイヤ」と読むそうです。両者のコラボとなるタイトルチューンに、お互いがお互いに楽曲提供を行った2曲+お互いの曲をお互いがカバーした曲2曲の計5曲が収録。どちらも力強い(ちょっと暑苦しい)パンクバンドという共通項のあるだけに、コラボもバッチリ。あえていえば、比較的「沖縄」に寄せてきた感があり、より南国っぽいというのか、より暑苦しさを感じるような印象も。

評価:★★★★

WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!
Cheddar Flavor
Fresh Cheese Delivery

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2022年9月 2日 (金)

壮大なプロジェクトの第1弾、第2弾

今回紹介するのは、ルーツ志向のブルースロックで、音楽ファンを中心に高い評価を受けているバンド、テデスキ・トラックス・バンドのニュープロジェクト。「I Am The Moon」と名付けられたこのプロジェクトは、全24曲を4枚のアルバムに収録するという壮大なプロジェクトで、「Ⅰ.Crescent」「Ⅱ.Ascension」「Ⅲ.The Fall」「Ⅳ.Farewall」の4枚のアルバムを、ほぼ毎月、4か月連続でリリースするというプロジェクトとなっています。今回紹介するのは、そのうちの第1弾、第2弾となります。

Title:I Am The Moon:Ⅰ.Cresent
Musician:Tedeschi Trucks Band

まずこちらが6月にリリースされた第1弾アルバム。全5曲35分という内容になっています。サブタイトルは、英語で三日月を意味する「Cresent」。ここから徐々に満ちていくというイメージでしょうか。

実際、アルバムは静かにスタート。しんみり聴かせる「Hear My Dear」に、このプロジェクトのタイトルナンバーともいう「I Am The Moon」もバラードナンバー。2曲目「Fall In」はブルージーなギターで軽快に聴かせる楽曲ですが、「Circled 'Round The Sun」はエキゾチックなギターが鳴らされる中、力強くバンド演奏を聴かせる楽曲となっており、ある意味、新たなスタートを彷彿とさせる楽曲になっています。

そしてラスト「Pasaquan」はこのプロジェクト唯一のインスト曲だとか。12分にも及びジャムセッションのナンバーになっており、まずは彼らのバンドとしての実力を否応なくみせつけるこの作品で、まず第1弾は幕を下ろします。

評価:★★★★

Title:I Am The Moon:Ⅱ.Ascension
Musician:Tedeschi Trucks Band

そしてこちらが7月にリリースされた第2弾。こちらは全7曲、長さは前作とほぼ同様の36分強。サブタイトルの「Ascension」は「上昇」を意味するようで、前作でスタートしたこのプロジェクトが徐々に上昇していくのがこのアルバムということでしょうか。

実際、楽曲としてはかなり力強く感じるメンフィスソウル風の「Playing With My Emotions」からファンキーなリズムの入る「Ain't That Something」と、前半、力強くスタートします。そしてパワフルなゴスペルのボーカルを聴かせる「So Long Savior」へと、まさにプロジェクトは上へ上へと上昇していくような構成となっています。

一気にテンションが高まる前半と比べると、後半はちょっとチルアウト気味か、ミディアムテンポで聴かせる曲が並びます。ただ、後半の曲に関しても力強いボーカルとバンドの演奏はもちろんそのまま。最後まである種のテンションはたもったまま、36分のアルバムは幕を下ろします。

評価:★★★★

そんな訳で、壮大なプロジェクトの第1弾、第2弾。徐々に助走を付けたバンドが、大きく舞い上がり、上へ上へと突き進んでいった、そんな2枚といった感じでしょうか。ただ、どちらもソウル、ブルース、カントリー、フォークなどのアメリカのルーツ音楽を取り入れた、古き良きアメリカンロックというスタイルは変わらずで、テデスキとしては目新しいといった印象は受けません。良くも悪くも、いつもの彼ららしい、そんなアルバムだったとも思います。とりあえず、既に第3弾、第4弾もリリースされていますが、そちらの紹介はまた後日。間違いなく、古き良きロックの伝統を引き継いだ、良質な作品でした。

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND
Let Me Get By
Signs

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2022年9月 1日 (木)

今週もジャニーズ系が1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、今週もジャニーズ系が1位獲得です。

今週、1位を獲得したのはHey!Say!JUMP「FILMUSIC!」でした。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上20万2千枚で1位初登場。前作「Fab! -Music speaks.-」の初動25万枚(1位)よりダウンしています。

2位はAdo「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」が先週と同順位をキープ。今週もCD販売数及びPCによるCD読取数で2位を獲得。ダウンロード数で1位を獲得しており、2週連続の2位獲得となりました。

3位初登場は女性アイドルグループGirls2「Shangri-la」がランクイン。EP盤の扱いのためアルバムチャートにランクインしていますが、3曲入りの実質的なシングルとなっています。CD販売数のみ3位にランクインで総合順位も3位に。オリコンでは初動売上1万4千枚で3位初登場。前作のフルアルバム「We are Girls2」の1万5千枚(6位)から微減。

6位にはロックバンドMY FIRST STORYのベストアルバム「X」がランクイン。ONE OK ROCKのTakaの弟がボーカルをつとめるバンド。CD販売数6位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数50位。オリコンでは初動売上5千枚で6位初登場。直近作でオリジナルアルバム「V」の初動売上1万1千枚(2位)よりダウンしています。

今週は初登場はあと1枚のみ。10位に韓国の女性アイドルグループTWICE「BETWEEN 1&2」がランクイン。9月1日リリース予定の韓国盤からの先行配信。ダウンロード数で3位にランクインし、総合順位もベスト10入りです。

今週は初登場盤も少なく、これで以上。ヒットチャートはまた来週の水曜日!

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