シティ・ポップの要素が前面に
Title:樹影
Musician:クレイジーケンバンド
結成25周年を迎え、すっかりベテランの域に達しているものの、まだまだ精力的な活動を続けるクレイジーケンバンド。相変わらず1年に1度ペースでの新作をリリースし続けており、ちょうど1年前はカバーアルバムをリリース。オリジナルアルバムとしては2年ぶりとなるアルバムを今年もリリースしてきました。昨年は横山剣のデビューから40周年ということで記念のカバーアルバムのリリースとなったのですが、25周年の今年は通常ペースでのリリース、というマイペースなところが、CKBらしい・・・と言えるかもしれません。
さて、そんな2年ぶりとなる彼らのニューアルバムですが、まずアルバム全体としての印象として、シティ・ポップの要素を強く感じました。もちろん、いままでの彼らの作品もシティ・ポップというのは彼らの音楽を構成する重要な要素となっていましたが、今回のアルバムではその要素をより前面に押し出したような作風になっていたように感じます。冒頭を飾る「Almond」などはまさに典型例。シンセを用いたイントロに薄くストリングスが重なるスタートなど、いかにもシティーポップ然とした感じ。続く、タイトル通りにちょっとエキゾチックさを加えた「ドバイ」も同じく、軽快でメロウなサウンドがシティーポップらしい作風の楽曲となっています。
もちろん、このシティーポップという要素を縦軸に、ジングルを含めて全18曲、バラエティー富んだ作風の曲が次々と展開されてくるのもいつものCKBらしいところ。ボッサ風の「夕だち」にピアノを入れたジャジーな「強羅」。打ち込みを入れたダンサナブルなダンスチューン「Orange Cinnamon Sunset」に、ホーンセッションを入れた彼ららしいファンクチューン「Honmoku Funk」など、様々な音楽性を取り入れた曲が続きます。ただ、彼ららしい歌謡曲的な要素も入りつつも、ジャズ、ソウルなどの要素をふんだんに取り入れた爽やかであか抜けた都会的な雰囲気を感じさせる、まさに「シティ・ポップ」な側面を、どの曲からも強く感じます。
ただ、後半に関しては、シティ・ポップ的な要素を感じつつも、クレイジーケンバンドの大きな特徴のひとつである、「歌謡曲」的な要素も強く感じる作風になっていました。ムーディーにゆっくり歌い上げる「おじさん」に、「コウタイ」など特に後半はムード歌謡の要素が強い作風に。ここ最近は、以前ほど「昭和歌謡」という要素を押し出さなくなった彼らですが、この楽曲に関しては、まさに「昭和」というムードが漂う1曲に。実に彼ららしさを感じる作品になっています。
アルバム全体的には、クレイジーケンバンドらしさは強く感じられる、いい意味でベテランの彼ららしい安定感のある作品に仕上がっていたと思います。ここ最近の彼らの作品と同様、決して目新しさはあるわけではありませんが、クオリティーの高いポップスを仕上げてきているだけあって、「マンネリ」さもあまり感じられません。そういう意味ではデビュー25年を経て、いまだに脂がのった状態と言えるかもしれません。いい意味で安心して聴ける傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀
MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW
好きなんだよ
ほかに聴いたアルバム
Tumbling Ice/カーリングシトーンズ
寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本といった50代半ばの同世代大物ミュージシャンたちが集まったユニット、カーリングシトーンズ。同年代のミュージシャンたちが企画モノ的に集まったのかと思いきや、まさかの2枚目リリースということで、よっぽど楽しかったんだろうなぁ、ということを感じます。ただ、2枚目ということでユニークなパロディー風な曲を楽しく演っていることはわかるのですが、前作に比べると若干ネタ切れ気味か?それでもハードロックからガレージ、ラテンにスタジアムロック風な作品まで、主に70年代や80年代風のサウンドを中心に卒なくユニークにまとめあげているのは、さすが実力者揃いといった感じはありますが。
評価:★★★★
カーリングシトーンズ 過去の作品
氷上のならず者
カーリングシトーンズ デビューライブ! ~カーリング・シトーンズと近所の石~
焦年時代/PUNPEE&BIM
ラッパーPUNPEEとBIMによるダブルネームの5曲入りのEP。タイトルからして「少年時代」のパロディーなのですが、そのイメージ通り、「Kids Return」や「蛍火」などノスタルジックな雰囲気を感じさせる曲が目立ちます。また、ZEEBRAが参加した「Jammin'97」のように、ねっちりとした夏の曲も。去り行く夏を惜しみつつ、ノスタルジックな気持ちで楽しめる作品。ただ、次はそろそろPUNPEEのフルアルバムを聴きたいのですが。
評価:★★★★
PUNPEE 過去の作品
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