挑戦心は強く感じれるベストアルバム
Title:FLASH BACK ~KAI THE BEST 35th~
Musician:甲斐よしひろ
1974年に甲斐バンドを結成。70年代に「HERO(ヒーローになる時、それは今)」「安奈」が大ヒットを記録し、一世を風靡しました。その後もコンスタントに活動を続けてきたものの1986年に解散。その後、甲斐よしひろはソロとして活動を開始。本作は、1987年のソロデビューから35年を記念してリリースされたベストアルバムとなります。いままで、甲斐バンドと甲斐よしひろの作品については、ヒットした楽曲単位では聴いたことあったのですが、今回のソロキャリアのオールタイムベストではじめて彼のソロ作についてまとめて聴いてみました。
今回の2枚組のベストアルバムでは、Disc1では「THE 35th SIDE」として、甲斐よしひろのソロとKAI FIVE時代の代表曲、16曲を収録。Disc2では「COVERS SIDE」として甲斐よしひろが行ったカバー曲16曲と、そのオルタナティヴバージョン2曲の計18曲が収録されています。
まず今回のベストアルバムで強く感じたのは、甲斐よしひろはどちらかというと歌謡曲のミュージシャンというイメージが強かったのですが、様々なジャンルへの挑戦を行っているチャレンジングなミュージシャンなんだということでした。このベストアルバムでも、1曲目「電光石火BABY」「レイン」と、いきなり打ち込みのサウンドでスタートし、少々驚かされます。その後も「嵐の明日」ではピアノでしんみり聴かせる作品に、「WORD」ではホーンセッションが入ってファンキーな作品に仕上がっています。
Disc2でも「『祭りばやしが聞こえる』のテーマ」ではいきなりHIP HOP風のトラックが入ってきて驚かされますし、その後もMr.Childrenの「くるみ」や斉藤和義の「歩いて帰ろう」といった、彼にとってみれば、かなり「若手」のミュージシャンたちの曲も積極的にカバーしています。
また、今回のベスト盤を聴くにあたって、Wikipediaで甲斐よしひろについて読んでいて思い出したのですが、90年代後半にはあの小室哲哉プロデュースでシングルを何枚か出しています。なぜか今回のベストアルバムでは収録されていないのですが、ある意味、彼のイメージとは大きく異なる小室哲哉とあえて手を組むというスタイルにも、彼のチャレンジングな性格を感じることが出来ます。
ただ一方、非常に残念だったのは彼のボーカルについて癖が強すぎて、挑戦した新たな音楽性の向き不向きが大きすぎるということも感じました。彼のボーカルスタイルはこぶしを効かせて力強く聴かせる、歌謡曲や、ともすれば演歌的なスタイルとも言えるスタイル。そのため、打ち込みの曲や、HIP HOP風のトラックが入っている曲に関しては、かなり違和感があり彼のボーカルスタイルに合っていないように感じます。逆に彼のボーカルスタイルに合っていたのは、例えばDisc2の「ダイナマイトが150屯」のような、演歌的なテイストの強い曲。そういう意味では、甲斐よしひろのある種のステレオタイプ通りの曲が彼のボーカルに一番合っている点、せっかくの挑戦がなかなかうまく言っておらず、若干残念に感じました。
このベストアルバムは、甲斐よしひろが挑戦心あふれるミュージシャンということがわかり興味深く感じられた反面、それが必ずしもうまく言っていない点が残念にも感じられた作品でした。ただ、パワフルな彼のボーカルがピッタリとはまった曲も少なくなく、聴き応えも十分にあるベストアルバムだったとは思います。来年にはついに70歳を迎える彼ですが、この挑戦心はまだまだ続いていきそう。そういう意味ではこれからの彼の活躍も楽しみに感じられるベストアルバムでした。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
early summer 2022/小田和正
実に約8年ぶりとなる小田和正のニューアルバム。前作「小田日和」の時に「最後から2番目(のアルバム)という気持ちで」と語っていたのですが、本作がラストアルバムとアナウンスされていないので、安心しました。ただ内容的にはいつもの小田和正といった感じ。良質なポップスという感じは強いものの、良くも悪くも「大いなるマンネリ」といったイメージも強い作品。もっとも、安心して聴けるという面でメリットも大きいのですが。
評価:★★★★
小田和正 過去の作品
自己ベスト2
どーも
小田日和
あの日 あの時
Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios/宇多田ヒカル
今年1月に行われた宇多田ヒカルの配信ライブの模様を収録した、配信限定のライブアルバム。最新アルバム「BADモード」の収録曲のライブパフォーマンスをロンドンの名門レコーディングスタジオであるAir Studiosで収録を敢行した内容。既に「BADモード」の初回限定版にライブパフォーマンスのDVDがついてきていたので、音源自体は今回はじめて聴いた訳ではありません。ライブ音源では、よりそのボーカルが耳をうつ作品。「BADモード」ではサウンド面でも宇多田ヒカルの魅力を感じた作品でしたが、このライブ音源では、宇多田ヒカルのボーカリストとしての魅力を、より堪能できた作品でした。
評価:★★★★★
宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome
初恋
One Last Kiss
BADモード
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