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2022年8月30日 (火)

偉大な2人のミュージシャンの共演

Title:Carry Me Home
Musician:Mavis Staples&Levon Helm

もともとザ・ステイプルス・シンガーズの一員として知られ、齢80歳を超えた今でも精力的な活動を続ける女性ボーカリスト、メイヴィス・ステイプルズ。この年になっても数年に1度、アルバムをリリースし続けるなど、現役の活動を続ける彼女ですが、本作は、もともと2011年に、The Bandのドラマー、リヴォン・ヘルムと録音したアルバム。もともと、The Bandの名盤「ラスト・ワルツ」で共演したこともある2人は、40年近く、友人関係にあったとか。このアルバムを録音して約1年後、ヘルムは亡くなってしまい、残念ながら本作が彼にとって最後の録音音源となりました。その後、10年以上、お蔵入りになっていた理由は不明なのですが、このたびようやく音源としてリリースされたのが本作となります。

今回のアルバムは基本的にカバーアルバムとなり、ザ・ステイプル・シンガーズや、リヴォン・ヘルムの曲をセルフカバーしているほか、ニーナ・シモンの「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」や、ローリング・ストーンズも演奏した「You Got to Move」、ボブ・ディランの「You Got to Serve Somebody」、The Bandの「The Weight」などもカバーしています。ただ、基本的にはメイヴィスのボーカルを軸として、バンドセッションにホーン、コーラスを取り入れた正統派サザン・ソウル的なカバー。カバーは前述の通り、ロックやフォークなどを取り入れつつも、どの曲も、ソウル、ブルース風のカバーに仕上げられています。

そのためこのアルバムで最大の魅力となっているのは、なによりもメイヴィス・ステイプルズのボーカル。彼女のアルバムはここのサイトでも何度も取り上げているのですが、(失礼ながら)その体格を生かした非常にパワフルなボーカルを聴かせてくれる一方で、やさしく繊細な歌声も聴かせてくれ、緩急つけた表現力豊かなボーカルが非常に魅力的。このアルバムでもそんな彼女のボーカルの魅力がいかんなく発揮されています。

1曲目「This Is My Country」から、まさにそんなメイヴィスのボーカリストとしての魅力がさく裂した楽曲に。比較的落ち着いて聴かせるボーカルながらも、所々にパワフルなこぶしを効いたボーカルが登場してきます。「Hand Writing On The Wall」も軽快なカントリー風のアレンジながらも、こぶしをきいたパワフルなボーカルが大きな魅力。かと思えば、しんみり聴かせるブルース風の「Move Along Train」では低音部をしっかりと静かに聴かせてくれており、このしっかりと楽曲を低音で支えるボーカルに彼女の底力を感じます。

最後の「The Weight」でも様々なゲストがボーカルとして参加し、にぎやかな雰囲気を醸し出しますが、最後の締めはやはり、彼女の力強いパワフルなボーカルで締めくくり。まさに大団円という名前にふさわしいラストとなっています。

そしてもう一方の本作の主役であるリヴォン・ヘルム。メイヴィスの力強いボーカルが目立つため、パッと聴いた感じ、決して目立たないのですが、それでもドラムとしてアルバムの屋台骨をしっかりと支えています。特に「This May Be The Last Time」ではミディアムテンポながらもドラムスでしっかりとしたグルーヴを作り出しており、彼の実力を感じせせます。これが彼にとって最後の録音となってしまったのですが、この時点において、ドラマーとしての衰えは全く感じられませんでした。

今となっては非常に貴重な音源となった本作。レジェンドともいえる2人のミュージシャンの共演という貴重な本作で、ロックリスナー、ソウルリスナーともに聴く価値のある素晴らしい内容となっていました。これが最後の共演となってしまったというのは今さらながら非常に残念なのですが、偉大なる2人のミュージシャンの共演に心から酔いしれることが出来る、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★

Mavis Staples 過去の作品
One True Vine
If All I Was Was Black
Live In London
We Get By


ほかに聴いたアルバム

Meet The Moonlight/Jack Johnson

サーフ・ミュージックの第一人者、Jack Johnsonによる約5年ぶりのニューアルバム。ちょっと意外なことに今回は、Alabama ShakesやJohn LegendなどのプロデューサーもつとまえたBlake Millsをプロデューサーに起用した作品に。ただ基本的にはギターをメインとしたオーガニックな雰囲気のサウンドで暖かく聴かせるというスタイルに大きな変化はなく、彼の良質なサーフ・ロックを楽しめる作品になっています。メランコリックに聴かせるメロディーも魅力的で、いい意味で安心して聴ける1枚でした。

評価:★★★★

Jack Johnson 過去の作品
SLEEP THROUGH THE STATIC
To The Sea
All The Light Above It Too
The Essentials

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