「静」と「動」のバランスが見事
Title:Ugly Season
Musician:Perfume Genius
アメリカ・シアトルに拠点を置くシンガーソングライター、マイク・ハドレアスのソロプロジェクトPerfume Geniusのニューアルバム。毎回、非常に高い評価を受ける作品をリリースしている彼。かくいう私も前作「Set My Heart On Fire Immediately」を聴いてすっかりその作品にはまってしまったのですが、続いてリリースされた本作もまた、前作に引き続き、その魅力的な楽曲にすっかりはまってしまいました。
今回の作品は、もともと振付師のケイト・ウォリックの2019年に発表されたダンス作品「The Sun Still Burns Here」に提供する楽曲をまとめたアルバムだそうです。ただ、ダンス作品に付随するサントラ的な感じはほとんどなく、基本的には間違いなくPerfume Geniusの新作として機能する作品となっていました。
まず前作同様、なんといってもPerfume Geniusのファルセットで美しくメランコリックに聴かせる歌が魅力的。本作でも前半の「Herem」「Teeth」とストリングスやホーンなどのサウンドを幻想的に取り込みながら、美しい歌を聴かせる楽曲が並びます。前半に配された先行シングルにもなっている「Pop Song」もまた、シンプルなエレクトロサウンドに美しい歌が耳を惹く、タイトル通りのポップチューンに仕上がっています。
ただ、作品として新たな魅力を感じさせてくれるのは、ここから中盤以降。この「Pop Song」も後半に展開するに従い、トライバルなビートが入り、幻想的な雰囲気が増してきますし、続く「Scherzo」ではフリーキーなジャズ風の楽曲になっており、どこか不穏な空気感が漂います。さらに後半の目玉とも言えるのが「Eye in the Wall」で、トライバルに展開されるグルーヴィーで怪しげな曲調が強く印象に残る作品。サイケな雰囲気も漂う作品で、非常に独特な作風になっています。
この怪しげな雰囲気は続く「Photograph」も同様。どこか不穏な空気感の中、ゆっくりながらも独特のグルーヴ感を覚えるリズムも印象に残ります。さらにグルーヴィーに聴かせるという意味では続く「Hellbent」も同様。楽曲は不気味なノイズを奏でながらも、後半に至ると、ドラムのリズムなども加わり、ダイナミックに展開。こちらも独特のグルーヴ感が妙に印象に残る作品になっています。
前作同様、前半で聴かせるファルセットでメランコリックに聴かせるメロディーラインと、後半で聴かせるダイナミックでグルーヴィーなサウンドの対比が非常に魅力的。特に今回のアルバムでは前作で感じた「静」と「動」の対比が、前作以上に大きな魅力となっていたように感じました。今回のアルバムもまた、前作同様、年間ベストクラスの傑作に仕上がっていたと思います。ちなみにリリースはアナログ盤+配信のみというのは今風なリリーススタイルな感じ・・・。この魅力的な世界観を是非味わってほしい、そう感じる作品でした。
評価:★★★★★
Perfume Genius 過去の作品
Set My Heart On Fire Immediately
ほかに聴いたアルバム
Japanese Singles Collection-Greatest Hits-/Cyndi Lauper
ここでも何度か紹介した、洋楽ミュージシャンが日本でリリースしたシングル曲をまとめた「Japanese Singles Collection」シリーズ。今回は80年代に一世を風靡したシンガーソングライター、シンディー・ローパー。正直、シングル単位でしか聴いたことなかったのですが、こうやってベスト盤でまとめて聴くと、想像していたよりも素晴らしい楽曲が多いということを再認識しました。「Girls Just Want To Have Fun」「Time After Time」のようなおなじみの大ヒット曲はもちろんですが、それ以外の曲もインパクトのある良質なポップソング揃いで、あらためて彼女の魅力を強く感じました。あらためて高く評価されるべきポップスシンガーだと強く感じたベスト盤でした。
評価:★★★★★
Twelve Carat Toothache/Post Malone
今年のSUMMER SONICでヘッドライナーをつとめるアメリカのラッパー、Post Maloneのニューアルバム。HIP HOPというよりもエレクトロサウンドベースのメロディアスなポップソングがメインとなっており、いい意味で、素直で幅広い層にアピールできるようなアルバム。今年のSUMMER SONICも彼のステージで盛り上がりそう・・・。
評価:★★★★
Post Malone 過去の作品
Beerbongs & Bentleys
Hollywood's Bleeding
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