内省的なリリックも大きなインパクト
Title:ALONE
Musician:OMSB
HIP HOPユニット、SIMI LABのMCかつトラックメイカーであるOMSBの、ソロ名義では3枚目となるフルアルバム。前作から約7年ぶりとなりますので、ソロアルバムとしては久々のアルバムとなる本作。ハマ・オカモトや小袋成彬といったちょっと意外なミュージシャンがゲストとして参加。ただ一方、ラッパーの参加はなく、基本的に彼1人が淡々とラップするスタイルの作品となっています。
さて、そんな彼のニューアルバムは、以前のアルバムでもいつも同じように感じるのですが、とにかくサウンドがカッコいいというのが第一印象となります。比較的最小限に、シンプルにまとめられたサウンドながらも、楽曲により様々なバリエーションを感じられ、特に独特のグルーヴ感にカッコよさを感じます。シンプルなサウンドの中に独特のグルーヴ感というと「Kingdom(Homeless)」でしょう。重低音のビートにグルーヴ感を覚えます。他にも「Fellowship」などもヘヴィーなサウンドがグルーヴィー。「One Room」などもメロウなサウンドながらも、独特のグルーヴを感じされる作品になっています。
ほかにもアコースティックギターの音を爽やかに奏でる「波の音」やピアノを入れてちょっとジャジーにしんみりと聴かせる「Standalone Stallone」など、最後までバリエーションに富んだサウンドを聴かせてくれており、このトラックを聴くだけでも最後まで耳が離せません。以前、ビートアルバムをリリースしたこともある彼ですが、このトラックだけでも延々と聴き続けられてしまうような魅力を感じます。
そして今回のアルバムはリリックも大きな魅力。特に、自分を見つめなおすスタンスのリリックが多く、内省的な内容が強く印象付けられます。特にアメリカ人と日本人のハーフという、日本の中では特異な目で見られがちな彼の出自からくるリリックも多く、例えば「大衆」は彼の歩んできた人生をあらためて振り返る内容が印象的。自分の生き方を貫く彼のスタンスには、共感できる部分も多く聴いていてグッときます。
また、かなりストレートに恋人との日常を綴るラブソングの「One Room」や、リスナーへのメッセージかと思いきや、実は愛する家族に対するメッセージを込めた「OMSBから君へ」など、非常に心に残ります。歌詞の多くは、彼の出自にからむ、彼の経験をストレートに反映させつつも、そこから導き出されるメッセージは、どこか私たちの共感を呼ぶようなものとなっており、彼の経験に裏打ちされたものなだけに、よりリアリティーをもって訴えかけます。
トラックもリリックも強いインパクトを持って訴えかける傑作アルバム。先日の私的ベストアルバムでも惜しくも次点でピックアップしましたが、内容的には間違いなく年間ベストクラスの作品だと思います。あらためて彼の実力を実感した作品でした。
評価:★★★★★
OMSB 過去の作品
Kitajima "36" SubLaw
Think Good
ほかに聴いたアルバム
ぼちぼち銀河/柴田聡子
デビューアルバム「しばたさとこ島」から、ちょうど10年を迎えたシンガーソングライター柴田聡子のニューアルバム。基本的にいつもの彼女と同様に、アコースティックなサウンドがメインで暖かい雰囲気の楽曲を聴かせてくれるのですが、所々シンセを積極的に取り入れてきたり、ホーンセッションを取り入れたり、ファンキーなサウンドを聴かせたりと、様々に聴かせる作風も大きな魅力。ただ、全体的にはあくまでも暖かいポップソングという路線はいつもと同様で、いい意味で安心して楽しめる作品でした。
評価:★★★★★
柴田聡子 過去の作品
柴田聡子
愛の休日
がんばれ!メロディー
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