野宮真貴ビフォー・アフター
今日は、主にピチカート・ファイブのボーカリストとして知られる、野宮真貴関連のアルバム2作の紹介です。
Title:New Beautiful
Musician:野宮真貴
まずこちらは、現在の野宮真貴のソロアルバム。純然たるオリジナルアルバムというよりは、企画盤的な要素が強く、ピチカート・ファイブの作品を新進気鋭のシティポップのミュージシャンたちがリアレンジし、カバーした曲3曲、彼女と縁の深いミュージシャンたちが彼女に提供した新曲5曲、そしてライブ音源2曲を収録したアルバムとなっています。
作風としては、いずれもピチカートの延長線上にあるような軽快なラウンジ風のポップチューンがメイン。そういう意味では正直なところ目新しさはありません。ただ、様々なミュージシャンが彼女に提供した新曲については、提供したミュージシャンを含め、なかなか興味深いところ。GLIM SPANKY松尾レミにクレイジーケンバンドの横山剣、カジヒデキ&高浪慶一郎のコンビにピチカート所属前に野宮真貴が所属していたPORTABLE ROCK名義、さらには鈴木慶一とかなり豪華。基本的にピチカートのイメージに沿った楽曲になっているのですが、それでも横山剣作曲の「おないどし」は、本人も参加していることもあるのですが、一発で横山剣の曲とわかる個性的なメロディーラインが彼らしい感じがします。
また今回の音源でなによりも注目なのは本編ラストの「サンキュー」。ライブ音源なのですが、なんと小西康陽が会場に登場。野宮真貴と小西康陽が同じステージに立つという、ピチカートのファンならば感涙モノの貴重音源が収録されています。
ソロとなってもピチカートのイメージを引きずってしまっているというのは、良くも悪くもといった感じはしますが、一方で本作で強く感じるのは、どの曲も非常に野宮真貴が楽しそうに曲を歌っているという点。この人は本当に歌うことが好きなんだなぁ、ということが強く伝わってきます。また、どの曲についても、歌を聴けば一発で野宮真貴だとわかるボーカルも大きな魅力。しっかりとボーカリストとしての個性を確立しているということも改めて感じることが出来ます。そんなボーカリスト野宮真貴の「今」がわかるアルバムでした。
評価:★★★★
野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-
男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。
野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~
野宮真貴、ホリディ渋谷系を歌う。
野宮真貴 渋谷系ソングブック
で、上にもチラッと書いたのですが、そんな野宮真貴がピチカート・ファイブ結成前に所属していたのがPORTABLE ROCKというグループ。最初はソロとして活動していた野宮真貴のバックバンドが音楽ユニットという形で1982年に結成。ただ、残念ながら大きなヒットも飛ばせず1986年頃に自然消滅的に活動休止してしまったユニット。その後、何度か再結成を行ったりしたのですが、このたび、結成40周年ということでベストアルバムがリリースされました。
Title:PAST&FUTURE ~My Favorite Portabel Rock
Musician:PORTABLE ROCK
今回、はじめてPORTABLE ROCKの曲を聴いたのですが、楽曲は典型的な80年代っぽいテクノポップという感じ。野宮真貴のボーカルスタイルも、ピチカート以降の彼女とは異なり、完全にアイドル的な歌い方をしているため、軽快なテクノポップの作風と合わせて、アイドルポップ的なイメージが強くなってしまっています。
今回のアルバムにも収録されているシングル曲「春して、恋して、見つめて、キスして」は当時、コーセーのCMソングに起用されるなど、それなりにプッシュされていたようで、確かにそれなりのインパクトのあるポップソングには仕上がっています。ただ、正直なところ、悪くはないけど80年代によくあったであろうポップソング・・・といったイメージ。特に今回、新曲が2曲収録されており、今の野宮真貴が歌っているのですが、この2曲の出来が明らかによい。特にアイドル的な以前のボーカルと比べて、完全に野宮真貴としての個性を確立した彼女のボーカルが楽曲の中で大きなインパクトとなっており、むしろ結成から40年を経て、ようやくPORTABLE ROCKらしさを確立できたのではないか、とすら思ってしまいます。
そういう意味では正直なところ、なんで彼女たちがいまひとつ売れなかったのかはわからなくもないのですが・・・ただ、80年代っぽいテクノポップはそれなりのインパクトもあり、それなりに楽しめるのは間違いありません。野宮真貴のファンや、テクノポップが好きならチェックして損のない1枚だと思います。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
LOST IN TOKYO/SOIL&"PIMP"SESSIONS
約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム。向井秀徳をゲストに迎えた「ピンクの女」が、彼のボーカルもあって非常にカッコいい作品になっています。全体的にはソイルらしい怪しげなトーンの曲もあれば、一方でジャズの正統派の楽曲もあり、ソイルの音楽的な幅広さ、ジャズバンドとしてのしっかりとした土台も感じられる作品。
評価:★★★★
SOIL&"PIMP"SESSIONS 過去の作品
PLANET PIMP
SOIL&"PIMP"SESSIONS presents STONED PIRATES RADIO
MAGNETIC SOIL
"X"Chronicle of SOIL&"PIMP"SESSINS
Brothers & Sisters
BLACK TRACK
DAPPER
MAN STEALS THE STARS
THE ESSENCE OF SOIL
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2022年」カテゴリの記事
- 未来を見据えた30周年の締めくくり(2022.12.27)
- YUKIの全てがつまた6時間(2022.12.25)
- タイアップ効果でよりポピュラリティーが増した作品(2022.12.26)
- 昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その3(2022.12.11)
- 昭和のレア・グルーヴ企画拡大版 その4(2022.12.12)
コメント