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2022年7月31日 (日)

伝説のミュージシャンのライブ盤

Title:Forever On My Mind
Musician:Son House

1902年生まれ。デルタブルースを代表するミュージシャンで、主に戦前に活躍。かのロバート・ジョンソンに影響を与えたといわれている、まさに伝説とも言えるブルース・シンガー、サン・ハウス。その後、1940年代に音楽業界から引退。世間から姿を消しましたが、その後のブルース・ブームの中、1964年に「再発見」され、再び活動を開始。1970年代半ばまで活動を続け、この世を去ったのが1988年ということですから、かなり長生きのミュージシャンだった訳です。

本作は、その「再発見」の直後、1964年11月23日に、アメリカはインディアナ州クロスフォーズヴィルの小さな男子校、ワバッシュ・カレッジで録音されたライブテープ。彼を再発見した一人であり、マネージャーを務めたディック・ウォーターマンがテープを所持していましたが、いままで音源化できず未発表となっていました。それが録音から60年近い月日を経て、ようやく音源化。貴重なライブ音源が日の目を見ることになりました。

音源としてはいまから60年近く前のライブ音源のテープ。いままで未発表だったものなのですが、それにも関わらず、非常にクリアな状態で聴けるのも特徴的です。ライブ音源なのですが、やはり伝説のブルースミュージシャンが復活してきた直後のステージだから、ということでしょうか、観客もかたずをのんで彼のプレイに聴き入っているような状況。その緊迫感は音源を通じても伝わってきます。

さてこのライブは、前述の通り、再発見直後のステージ。それまで20年程度、彼は音楽業界を離れて、ニューヨークの鉄道会社で働いていたそうです。それにも関わらず、ここで聴かせてくれるプレイに全く衰えは感じさせません。1曲目はこのアルバムのタイトルにもなった「Forever On My Mind」からスタートするのですが、感情たっぷりのギタープレイとゆっくりと聴かせるボーカルにいきなり耳を奪われます。静かながらも緊迫感のあるギターの演奏と歌声に聴き入ってしまう作品となっています。

その後も基本的にギター1本の弾き語りでライブは進んでいきますが、全8曲40分程度の内容ながらも、どの曲もサン・ハウスの魅力が詰まった演奏を聴かせてくれます。「Preachin' Blues」「Empire State Express」では非常に力強い演奏を聴かせてくれますし、特に「Empire State Express」ではシャウト気味のボーカルも迫力満点。この時、既に62歳となっている彼ですが、寄る年波を全く感じさせない力強い演奏が魅力的です。

後半の「Pony Blues」などは、ギターがちょっとよれよれになった感じになっているのは、後半になってちょっとパワーダウン気味か?とも思ってしまうのですが、このギターのよれよれ感が妙な味になって印象に残ります。全体的にギターにしてもボーカルにしても緩急のついたスタイルが魅力的。ギター1本のみの演奏ですが、8曲40分、一切ダレることなく、一気に聴けることの出来る作品でした。

サン・ハウスはやはり一般的には戦前の録音の評判が高いようですが、ただ本作を聴く限りでは、全く戦前に勝るとも劣らない魅力的なライブ盤になっていました。デルタブルースの巨人の演奏に触れるには、録音状況も良好ですし最適な1枚。いまさらこんな音源が残っていたというのは驚きですが、全ブルースリスナー必聴のライブ盤です。

評価:★★★★★

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