70年代、80年代ロックを等距離で取り込む
Title:Boat Songs
Musician:MJ Lenderman
アメリカはノースカロライナ州ナッシュビルを拠点に活動するシューゲイザー系インディーロックバンドWEDNESDAY。そのギタリストとして活躍しているJake Lendermanによるソロプロジェクトによる新作。彼が所属しているWEDNESDAYも、もちろん彼自身も全く初耳なのですが、このアルバムが高い評価を受けているのを知り、今回はじめて聴いてみました。
そして、これが非常におもしろいアルバムに仕上がっていました。一言で言えば、80年代インディーロックと70年代ロックの融合体のようなスタイル。1曲目「Hangover Game」は強烈なギターのフィードバックノイズが楽曲全体に貫かれつつ、ポップなメロディーを聴かせる、シューゲイザー系直系の80年代インディーギターロック。かと思えば続く「You Have Bought Yourself A Boat」はソウルミュージックへの憧憬も感じさせるような70年代ロックに仕上がっていますし、続く「TLC Cagematch」はアメリカの壮大な大地を彷彿とさせるようなカントリーロックからの影響の強い楽曲となっています。
その後も「SUV」はノイジーでヘヴィーなサウンドが全編で流れる、ガレージやパンクの影響も感じさせる楽曲に。かと思えば「Under Control」ではスライドギターも入ってしんみりと聴かせるカントリーロックに一気に変化しますし、「Dan Marino」はこもった感じのサウンドプロデュースがレトロな雰囲気を感じさせるギターロック。「You Are Every Girl to Me」も疾走感あるリズムにポップなメロ、ギターのフィードバックノイズが全面を覆う構成に、80年代のインディーロックからの影響を強く感じます。
最後の「Six Flags」はアルバムの中でも6分超という最長の長さとなっている曲ですが、こちらは不気味な雰囲気のサイケなサウンドからスタート。ローファイ気味な歌とギターの歪んだ音を前面に押し出した、シューゲイザー以上にサイケロックからの影響の強い楽曲に仕上がっており、こちらも80年代以上に70年代の色合いの強い作品となっています。
シューゲイザー系や、その後のオルタナ系ロックに軸足を置きつつ、カントリーロック、ブルースロック、サイケロックといった70年代のロックを等距離に取り入れたサウンドが独特でユニーク。カントリーロックやブルースロックといった要素は、言ってしまえば既に数多くのミュージシャンが取り入れてきた「よくあるスタイル」でありますし、またシューゲイザーを取り入れているバンドもこれまた多いのですが、このようなサウンドを同時に、それも等距離に取り入れているというスタイルに独自性と新しさを強く感じます。
全体に貫かれているシューゲイザー系からの影響もあり、個人的にかなり壺にはまったミュージシャンですし、また、音楽的にも文句なしの傑作。今年のベスト盤候補の1枚と言える作品でした。また、これを機にWEDNESDAYの楽曲もYou Tubeで試聴してみたのですが、こちらもかなり良さそうで、アルバムも聴いてみたいかも・・・。オルタナロック好きから、ブルース、カントリーロック好きまで幅広くお勧めできる作品です。
評価:★★★★★
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