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2022年7月16日 (土)

海外で活躍する日本のサイケバンド

Title:クモヨ島
Musician:幾何学模様

コロナ禍で海外移動が制限されている今、現在ではともかくとして、ここ最近は日本のミュージシャンでも、日本以上に海外でその活躍の場を求めるミュージシャンが出てきているようです。先日、ここで紹介したおとぼけビ~バ~もそんなバンドの一組でしたが、今回紹介するこの幾何学模様というバンドも、そんなバンドの一組。メンバーのGo KurosawaとTomo Katsuradaは、アジアの音楽を海外に紹介するレーベル「Guruguru Brain」を立ち上げるなど、積極的に海外に進出。幾何学模様も海外の大型フェスに数多く出演し、話題となりました。

そんな彼らの最新アルバムである本作。今回、私が彼らの作品を聴くのは本作がはじめてですが、まずはいかにもサイケ風なジャケットが印象的。メンバーの写真も全員が長髪で、60年代あたりのサイケバンドがそのまま飛び出してきたような風貌が印象的なのですが、楽曲自体も60年代のサイケロックがそのまま継承したようなサウンドを奏でるようなバンドでした。

例えば「Effe」などはホーンセッションを入れつつも、レトロな様相のあるサイケサウンドが印象的ですし、「Cardboard Pile」もレトロな雰囲気の、懐かしさを感じさせるホーンの音色が印象に残りますし、「Gomugomu」なども、60年代テイストのギターサウンドがちりばめられたような楽曲に仕上げています。

ただ一方で、そんなレトロな雰囲気を醸し出しつつも、例えば「Dancing Blue」などのリズミカルなサウンドで奏でるグルーヴ感は、今風なものを感じますし、「Daydream Soda」の重低音のビートは、むしろ現在的なHIP HOPからの影響も感じさせるようなビート感が特徴的。バンドサウンドなどでは60年代の影響を色濃く感じさせる彼らですが、リズムに関しては、むしろ非常に現代的な要素を感じさせる部分が多く、この60年代のサイケと、現在のビートの融合が非常にユニークに感じました。

そしてもう一つユニークに感じたのは、彼らの楽曲、特にメロディーラインに関しては、非常に日本的なものを感じる点でした。特に1曲目「Monaka」は、日本の民謡のフレーズを取り込んだような郷愁感ただようメロディーが印象的。前述の「Dancing Blue」もグルーヴ感あふれるサウンドの中に流れるメロディーラインは日本的な哀愁感を覚えるメロ。「Yayoi,Iyayoi」も同様に、日本的な郷愁感が漂うメロが特徴的で、作品全体としてどこか日本的な部分を強く感じさせるものが印象的。海外に進出していながらも、いや、だからこそかもしれませんが、作品的には、むしろ積極的に「和」の要素を押し出しているように感じました。

現在と過去、日本と海外を巧みに融合させた作風が魅力的な彼ら。独自性もありますし、非常におもしろさを感じさせます。ただ、残念なことに本作で無期限の活動休止に入るとか。これだけの作品を作りながら、これが事実上最後の作品というのは非常に残念に感じます。いまからでも遅くないので、まだ彼らの作品に触れたことない方は是非ともチェックしてほしい、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

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