海外からの逆輸入
Title:SUPER CHAMPON
Musician:おとぼけビ~バ~
くるりの出身母体としても音楽ファンに知名度も高い、立命館大学のサークル「ロックコミューン」出身の4人組ガールズバンド、おとぼけビ~バ~。もともと結成が2009年というから、そこそこ中堅どころの経歴を持ったバンドなのですが、当初、日本ではさほど話題にならなかった一方、海外のインディーレーベルからCDをリリースし、海外で徐々に話題に。2018年にはアメリカ最大の音楽フェス「コーチェラ2018」に出演するなど話題となり、逆輸入的に日本でも話題となりつつあります。
本作は5枚目となるフルアルバム。私もちょっと前から彼女たちの名前は聞いたことあったのですが、彼女たちの音楽を聴くのはこれがはじめて。楽曲的にはシンプルなパンクロックをメインとした作風で、本作も全18曲入りというボリュームながらアルバムの長さは21分という、1曲あたり平均2分に満たない内容。そんな中でも「I won't dish out salads (サラダ取り分けませんことよ)」や「I checked your cellphone (携帯みてしまいました)」のようなハードコア色が強い作品が比較的目立つ、ヘヴィーな作風が特徴的。バンドとしての演奏力は申し分ない迫力あるパフォーマンスを聴かせてくれており、このあたりが海外で高い評価を受けており大きな要因なのかもしれません。
また、それに加えて大きなインパクトとなっているのが彼女たちの歌詞でした。コミカルながらも女性の心境や、ちょっとした社会風刺をコミカルかつシニカルに描いており、ユーモラスかつ端的な歌詞なだけにサラッと軽く流してしまいがちなのですが、よくよく考えたら、このシニカルさとユーモアさを兼ね備えた歌詞の世界は、なにげに奥の深いものすら感じます。
例えば一番典型的なのが「I won't dish out salads (サラダ取り分けませんことよ)」なんかで、飲み会の席などで気を遣わせることを強制する日本の社会をコミカルに皮肉っていますし、「Dirty old fart is waiting for my reaction (ジジイ is waiting for my reaction)」なども、セクハラ気味のオヤジのことを皮肉っています。
一方で「Leave me alone! No, stay with me! (リーブミーアローンやっぱさっきのなしでステイウィズミ)」はタイトル通りの描写で揺れ動く女性の心境をストレートに描いていますし、かと思えば「I put my love to you in a song JASRAC (あなたとの恋、歌にしてJASRAC)」などはタイトル通り、JASRACへの風刺を含んだ社会的な歌詞。ヘヴィーなサウンド同様、なにげに骨太なスタンスを感じる歌詞が大きな魅力に感じます。
ただ、ここらへんの歌詞については、日本社会や日本文化に大きくリンクした歌詞が多く、海外で多く活動するバンドとして、こういう歌詞が受け入れられているのが不思議な感じが・・・特に「Where did you buy such a nice watch you are wearing now (あらあんたえらいええ時計してそれどこで買いはったん)」なんかは京都弁特有の婉曲表現として有名な表現(暗に「話が長い」と言っている)で、ここらへん、日本人でもわからないかもしれないんですが・・・ま、私たちも洋楽のほどんどは歌詞の意味もわからずに聴いているので、お互い様なのですが。
逆輸入的に日本でも徐々に話題となっている彼女たち。はじめて聴いたのですが、力強いバンドサウンドはもちろん、コミカルでシニカルな歌詞の世界も楽しめたアルバム。今後、さらに日本でも注目度はあがりそうな予感も。また海外でもさらなるブレイクも?期待したいところです。
評価:★★★★★
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