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2022年7月 3日 (日)

久々の新譜は時代を反映

Title:Unite/Divide
Musician:TRICERATOPS

ここ数年、メンバーのソロ活動が中心となっており、バンドとして事実上、活動休止状態だった3ピースロックバンドTRICERATOPS。ただ、昨年より配信限定のシングルをリリースし、徐々に活動を再開してきた彼ら。そしてようやく、実に約7年4ヶ月ぶりにリリースされたアルバムが本作です。

今回のアルバム、正直言うと最初聴いた時は、いままでにない地味なアルバムといった印象で、彼ららしいポップでダンサナブルな楽曲も少なく、全体的にメロディーラインはメランコリック。方向性としては明確だったのですが、全体的におとなしい落ち着いたアルバムに、最初はちょっとがっかりとしたというのが率直な印象でした。

ただ今回のこの楽曲の方向性は、コロナ禍の中での彼らを巡る状況が大きく影響してきているのでしょう。実際、「Unite/Divide」というタイトルも、いかにもこの時代を反映させたようなタイトルですし、なによりも今回のアルバム自体、彼らの作品としては珍しいくらい、現在の時代性が反映されています。特に歌詞の面で強いインパクトを残したのが「いっそ分裂」。ニューウェーブ風の軽快なポップソングなのですが、歌詞は

「かつて「We Are One」って歌った
僕らそんなに違いはないって
苦悩とか闇とか 晒したくはないけど
信念が崩れかけているんです」
(「いっそ分裂」より 作詞 和田唱)

と歌われる内容はかなり衝撃的。歌詞で歌われる通り、トライセラ自体、あまり「苦悩とか闇とか晒す」タイプのバンドではないだけに、コロナ禍の中での社会情勢がバンドに与えた影響の大きさを感じさせます。

そんなこともあって、かなり違和感を覚えた今回のアルバムですが、ただ、よくよく聴くと、彼ららしいポップなメロはしっかりと流れていますし、軽快なギターリフ主導の曲がありますし、TRICERATOPSらしさはしっかり出ているアルバムになっていました。例えば「マトリクスガール」はメランコリックなメロですし、彼ららしい軽快なギターロックチューンですし、特にメロディーラインの良さが出ていたのは「キミにひとつ地球」で、アコギ弾き語りで聴かせる暖かいメロと歌詞のポップソングで、シンプルでポップなメロは個人的には、最近、トライセラと交流があるKANからの影響も感じてしまいました。

歌詞にしても終盤、「リメインズ」では

「額に飾った煌めき ゴミ箱の悲しみ
どっちを更新したって 僕はきっとこの世界を
抱きしめるだろう」
(「リメインズ」より 作詞 和田唱)

と、前向きなスタンスを感じさせますし、事実上のラストナンバーである「THE GREAT ESCAPE」では

「飛び出せ!さぁ飛び出せ!
夜を切り離して」
(「THE GREAT ESCAPE」より 作詞 和田唱)

とこちらも前向き。このコロナ禍で分裂が進むような社会の中でも、前向きなスタンスを忘れないのは、やはりTRICERATOPSらしいなぁ、と感じました。

ただ、それでも残念ながらアルバム全体としては、特にメロディーの点ではインパクトが薄いという印象は最後まで否めませんでした。特に「THE GREAT ESCAPE」などは彼らしいギターサウンド主導のアップテンポなロックチューンなのですが、メロディーは完全にインパクト不足。全体的に楽曲のバリエーションも多く、凝ったサウンドも多く聴かせてくれるのですが、TRICERATOPSの最大の持ち味とも言える、インパクト満点のポップなメロディーラインという点からはちょっと物足りなかったかな、というのが正直な印象でした。

決して悪いアルバムではなく、むしろ彼ららしい良作とも言えるのですが、久々の新譜としてはちょっと残念だったかも。次の新譜はまた是非、彼ららしいポップなロックンロールを聴かせてほしいなぁ。これはこれで、こういう方向性を意図した作品なので、仕方ないのかもしれませんが。

評価:★★★★

TRICERATOPS 過去の作品
SHAKE YOUR HIP!!!
MADE IN LOVE
WE ARE THE ONE
WE ARE ONE-CERTIFICATE-
LOVE IS LIVE
DINOSOUL -BEST OF TRICERATOPS-
連載・おとといミーティング TRICERATOPS“12-Bar“
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
SONGS FOR THE STARLIGHT


ほかに聴いたアルバム

our hope/羊文学

同作がいきなりチャートでベスト10ヒットを記録した女性2名+男性1名からなる3ピースロックバンド、羊文学。「羊文学」という名前から、最初は空気公団にような系統のフォーキーなポップスロックのミュージシャンかと思いつつ、聴いてみると確かにそのような作風の曲もあったのですが、途中からしっかりとバンドサウンドが鳴り響くロックバンドでした。ただ、一方ではどこかフォーキーな作風の曲もあり、そういう点では独特な感じもします。ちょっとメロディーラインがベタかな、と思いつつも、そこらへんが急激にブレイクした理由なのかとも思ったりして・・・。今後もさらに名前が広がっていきそうな1枚でした。

評価:★★★★

たまらない予感/奇妙礼太郎

昨年、ミニアルバムのリリースはあったものの、フルアルバムとしては約3年7ヶ月ぶりとなる男性シンガーソングライターの新作。いままでの作品と同様、ピアノやアコギのようなアコースティックなサウンドと、一方では打ち込みも使いつつも、全体的には暖かみのある楽曲が魅力的。どこか郷愁感あるメロディーラインも、妙に耳に残ります。全体的には派手さはなく、インパクトという面では決して目立つ作品ではないものの、しっかりと心に残る暖かさのあるポップソング。良作という言葉がピッタリの1枚です。

評価:★★★★★

奇妙礼太郎 過去の作品
More Music
ハミングバード

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