人を食ったような・・・
Title:丸
Musician:ゲスの極み乙女。
「ゲスの極み乙女。」というと、川谷絵音とベッキーとの不倫騒動からもう6年も経つのか・・・といった感もしますが、その時の(正直、やりすぎと思えるような)大バッシングに全く影響を受けることもなく、相変わらずマイペースなバンド活動を続けています。特にここ最近は、人を食ったような企画を実施することが多く、直近のオリジナルアルバム「ストリーミング、CD、レコード」では、なんと賞味期限付きのアルバムとして、CDではなくバームクーヘンを販売したり、最近では、バンド名を「ゲスの極み乙女。」から「。」を抜いて「ゲスの極み乙女」にする発表をしたりと、相変わらずな活動を続けています。
そんな人を食った企画といえば、彼ら初となるこのベストアルバムもそんな企画の一つと言えるでしょう。今回もCD版と配信版で内容が異なり、CD版では、なんと彼らの曲のうちから25曲をピックアップし、1つの曲となるように再構成。「Best Tracks」として35分に及ぶ曲に生まれ変わっており、その1曲のみを収録した内容となっています(ちなみにこちらも配信されています)。一方、配信版では全41曲を収録。このうち冒頭の2曲は新曲となっているほか、最後10曲は、様々なミュージシャンたちが彼らの代表曲をリミックスしたアルバムとなっています。
さて、この「Best Tracks」がなかなか秀逸。単純に彼らの曲をつないだだけではなく、1つの曲としてまとまるように再構築されており、聴いていて、25曲も連なっているように全く感じられないほど、自然に聴けてしまう展開となっています。正直なところ、メランコリックなメロディーラインはちょっと似ている感じの部分も多く若干、マンネリ気味じゃないの?と感じてしまう部分も顕著になってしまうのですが、それを差し引いても非常にユニークな試みであり、それが成功した結果になっていたように感じました。
特にこのメロディーラインに関しては配信版の41曲入りのベストアルバムでも感じるところはあり、基本的にマイナーコード主体のメランコリックなメロ一本調子。歌謡曲的な哀愁たっぷりのメロディーラインは魅力的であることは間違いないですし、曲によっては複雑な展開になっているメロディーも少なくないのですが、全体的にはやはり似たようなタイプの曲が多いと感じてしまいます。特に今回の配信版では前半に、メランコリックなメロディーラインを前面に押し出した曲を並べていただけに、そのようなことをより強く感じてしまいました。
ただ中盤以降は、そのメロディーラインのことを気にならなくなるようなほど、ラップを入れてきたり、ピアノやバンドサウンド、シンセの音を上手く組み合わせたトリッキーなサウンドを聴かせてきたりするユニークな楽曲が並びます。サウンドにはギターロックの要素のほかに、HIP HOPやエレクトロ、ファンクやジャズなどの要素も巧みに取り込んでおり、非常に自由度の高いユニークな音楽性が特徴的。もちろん、このような彼らの音楽性はいままでのオリジナルアルバムでも感じてきたことなのですが、ベスト盤を聴くと、そんな彼らの魅力をより強く感じることが出来ました。
バームクーヘンのアルバムといい、1曲のみのベスト盤といい、「。」だけ取った改名騒動といい、人を食ったような企画が目立つ彼らですが、サウンドの側面においても自由度が高くユニークで、ある意味、「人を食ったような」と言えるかもしれません。そういう意味ではトリッキーな人を食ったようなユニークなスタンスが、彼らのバンド活動を通じてのスタンスであり、そして最大の魅力なのでしょう。今回のベストアルバムで、そんなゲスの極み乙女。の魅力を再認識できたように感じます。
とりあえずは例の騒動も最近はひと段落してバンドとして積極的な活動を続ける彼ら。この人を食ったようなユニークなスタンスは今後も続きそうで、これからもいろいろと私たちを楽しませてくれそうです。これからの活躍も楽しみになるベストアルバムでした。
評価:★★★★★
ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない
ストリーミング、CD、レコード
ほかに聴いたアルバム
artless/WONK
WONKの新作は全6曲入り、うち1曲はイントロ的な作品ですので、事実上5曲入りとなるミニアルバム。「宇宙」をテーマに全22曲75分という壮大なスケール感となった前作とは対照的に、オーガニックな感触の強い、しんみりと聴かせるアルバムに仕上がっています。基本的にメランコリックでAOR調の作風というスタイルはいままでの彼らと一緒ですが、ミニアルバムというシンプルに仕上げた内容になっていただけに、聴きやすく、しっかりとWONKの世界にはまれる作品になっていました。派手さはありませんでしたが、しっかりと彼らの実力を感じさせてくれる作品でした。
評価:★★★★★
WONK 過去の作品
BINARY(WONK×THE LOVE EXPERIMENT)
Moon Dance
EYES
cubism/おいしくるメロンパン
6枚目となるミニアルバム。前作までは比較的、彼らのロックバンドとしての側面を強調させたような作品が続いてきましたが、今回のアルバムは若干シフトチェンジ。メランコリックなメロディーラインを押し出した作風にシフトしました。個人的には前作までのようなバンドとしてのヘヴィネスさを押し出した方向性が良かったように思いますし、メロディーラインは若干フックが弱い点が気になるのですが、これはこれでバンドとしてのひとつの方向性を押し出した形といった感じでしょうか。ただ、これでミニアルバムは6枚目。そろそろフルアルバムでバンドとしての全体的な方向性を見せてほしいのですが。
評価:★★★★
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