フルアルバムとしては久々
Title:REFLECTION
Musician:tofubeats
フルアルバムとしては約3年7ヶ月ぶりとなるtofubeatsのニューアルバム。tofubeatsといえば、メジャーデビュー直後は日本のエレクトロシーンの新時代の旗手的な取り上げられ方をしてかなり注目を集めていました。それに応じるかのように、彼もかなりワーカホリックな活動を続けており、一時期は1年に1枚ペースでオリジナルアルバムをリリースするなど、今のミュージックシーンの中ではかなりハイペースなリリースを続けていました。
そんな彼のオリジナルアルバムが約3年7ヶ月ぶりというと、かなり久々のように感じます。もっとも、2020年にはミニアルバム「TBEP」をリリースしていますし、配信シングルは継続的にリリースしており、なんだかんだいってもワーカホリックぶりがうかがえる活動は続けています。ただ一方で、この3年7ヶ月の間に突発性難聴を発症というトラブルに見舞われたそうで、このアルバムのリリースに合わせて、この間に書き続けた日記を再構成した「トーフビーツの難聴日記」をリリースしたりもしています。さらにはこの間に結婚、上京という人生の大きな節目を迎えたようで、彼にとってはこの3年7ヶ月というリリーススパンは大きな意味があったようです。
ただ、その彼の3年7ヶ月の出来事がやはりアルバムに大きな影響を与えたのでしょうか、今回のアルバムに関しては、いままでのtofubeatsと比べると、若干印象の異なるアルバムに仕上がっていました。いや、基本的なサウンドは大きな違いはありません。軽快なエレクトロサウンドのハウスチューンで、人なつっこい軽快なメロディーラインはそのまま。しかし、いままでのアルバムでは90年代J-POPからの影響を顕著に感じさせるポップチューンを入れて、ギミック的なインパクトを作り出していましたが、今回のアルバムではそのようなギミック的な部分はほとんどなし。ある意味、落ち着いたとも言えますし、正統派とも言えるハウスチューンを聴かせてくれます。
もちろん、いい意味で聴きやすいポップ路線というのは本作でも健在。「VIBRATION」では、ユーモラスなMCからスタートし、ラップも取り入れた作品ですが、メランコリックなエレクトロサウンドが大きなインパクトとなっていますし、タイトルチューン「REFLECTION」では中村佳穂がゲストボーカルとして参加。彼女の透明感ある伸びやかな歌声を聴かせるポップな「歌」が主軸となっている作品になっています。その他にもダンサナブルでシティポップ風の「CITY2CITY」や、ボッサ風のサウンドを取り入れた「恋とミサイル」のようなポップな歌モノがアルバムの中にちりばめられており、十分ポップなアルバムとして仕上がっています。
正直言うと、アルバム全体としてはおとなしい作風に仕上がっており、ギミック的な要素を減らした分、インパクトについては弱くなってしまった点は否めません。ただ一方、それだけに「良質なハウスミュージックのアルバム」という言い方がピッタリくるような、落ち着いたアルバムに仕上がっていました。これから再び、以前のようなギミック的要素を入れた作品を作ってくるのか、この路線を貫くのか不明ですが、ワーカホリック気味な彼のこと、また今後も新作は作り続けてくれるでしょう。今後も彼の活躍に注目です。
評価:★★★★
tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental
POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN
TBEP
RUN REMIXES
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