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2022年7月

2022年7月31日 (日)

伝説のミュージシャンのライブ盤

Title:Forever On My Mind
Musician:Son House

1902年生まれ。デルタブルースを代表するミュージシャンで、主に戦前に活躍。かのロバート・ジョンソンに影響を与えたといわれている、まさに伝説とも言えるブルース・シンガー、サン・ハウス。その後、1940年代に音楽業界から引退。世間から姿を消しましたが、その後のブルース・ブームの中、1964年に「再発見」され、再び活動を開始。1970年代半ばまで活動を続け、この世を去ったのが1988年ということですから、かなり長生きのミュージシャンだった訳です。

本作は、その「再発見」の直後、1964年11月23日に、アメリカはインディアナ州クロスフォーズヴィルの小さな男子校、ワバッシュ・カレッジで録音されたライブテープ。彼を再発見した一人であり、マネージャーを務めたディック・ウォーターマンがテープを所持していましたが、いままで音源化できず未発表となっていました。それが録音から60年近い月日を経て、ようやく音源化。貴重なライブ音源が日の目を見ることになりました。

音源としてはいまから60年近く前のライブ音源のテープ。いままで未発表だったものなのですが、それにも関わらず、非常にクリアな状態で聴けるのも特徴的です。ライブ音源なのですが、やはり伝説のブルースミュージシャンが復活してきた直後のステージだから、ということでしょうか、観客もかたずをのんで彼のプレイに聴き入っているような状況。その緊迫感は音源を通じても伝わってきます。

さてこのライブは、前述の通り、再発見直後のステージ。それまで20年程度、彼は音楽業界を離れて、ニューヨークの鉄道会社で働いていたそうです。それにも関わらず、ここで聴かせてくれるプレイに全く衰えは感じさせません。1曲目はこのアルバムのタイトルにもなった「Forever On My Mind」からスタートするのですが、感情たっぷりのギタープレイとゆっくりと聴かせるボーカルにいきなり耳を奪われます。静かながらも緊迫感のあるギターの演奏と歌声に聴き入ってしまう作品となっています。

その後も基本的にギター1本の弾き語りでライブは進んでいきますが、全8曲40分程度の内容ながらも、どの曲もサン・ハウスの魅力が詰まった演奏を聴かせてくれます。「Preachin' Blues」「Empire State Express」では非常に力強い演奏を聴かせてくれますし、特に「Empire State Express」ではシャウト気味のボーカルも迫力満点。この時、既に62歳となっている彼ですが、寄る年波を全く感じさせない力強い演奏が魅力的です。

後半の「Pony Blues」などは、ギターがちょっとよれよれになった感じになっているのは、後半になってちょっとパワーダウン気味か?とも思ってしまうのですが、このギターのよれよれ感が妙な味になって印象に残ります。全体的にギターにしてもボーカルにしても緩急のついたスタイルが魅力的。ギター1本のみの演奏ですが、8曲40分、一切ダレることなく、一気に聴けることの出来る作品でした。

サン・ハウスはやはり一般的には戦前の録音の評判が高いようですが、ただ本作を聴く限りでは、全く戦前に勝るとも劣らない魅力的なライブ盤になっていました。デルタブルースの巨人の演奏に触れるには、録音状況も良好ですし最適な1枚。いまさらこんな音源が残っていたというのは驚きですが、全ブルースリスナー必聴のライブ盤です。

評価:★★★★★

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2022年7月30日 (土)

6人のピアニストとの共演

Title:体温、鼓動
Musician:古内東子

2023年にデビュー30周年を迎える古内東子。そのデビュー30周年プロジェクトの第1弾としてリリースされたのが本作です。古内東子というとデビュー直後から注目を集めていて、デビュー当初は「大人の恋愛を歌う大人のお姉さま」という印象が強かったのですが、今となって彼女と意外と年の差がないことにちょっとビックリしています。デビュー当初は、まだ21歳だったのですね・・・それであれだけの大人のラブソングを作っていたのが、あらためて驚きなのですが。

その記念すべき30周年記念アルバムですが、本作は、6人のピアニストと共演したピアノアルバムという企画。彼女にとってピアノという楽器は作曲にも使いますし、思い入れの深い楽器だそうで、それだけにピアニストに対するリスペクトと、ピアノという楽器に対する感謝の意を含めて、今回のこのアルバムの作成に至ったそうです。今回は、楽曲毎に異なる6人のピアニスト(中西康晴、森 俊之、草間信一、河野 伸、松本圭司、井上 薫)を起用。さらに「この夜を越えたら」では彼女自身がピアノに挑戦しています。

そんな企画の下でのアルバムということもあって、彼女のアルバムの中ではよりピアノにスポットがあたった構成になっています。楽曲としてはいつもと同様、彼女の歌う切ないラブソングがベースとなっているのですが、ピアノを前に押し出したアレンジに。さらにそれぞれタイプの異なるピアノの演奏が楽しめる構成になっています。

例えば1曲目「虜」は井上薫がピアノを手掛けているのですが、爽やかなポップ調のピアノ。続く河野伸がピアノを弾く「夕暮れ」はしんみりと感情たっぷりに優しい雰囲気のピアノが印象的ですし、草間信一がピアノを弾くタイトルチューンの「体温、鼓動」は、ジャジーな雰囲気のピアノになっています。

「時にやさしい」は松本圭司がピアノを弾くラテン風のナンバーなのですが、今回のアルバムの中ではもっともフリーキーさを感じるピアノが印象に残りますし、逆に「動く歩道」はアルバムのリードトラックということもあって、古内東子の歌が比較的前に押し出された曲になっており、森俊之のピアノはどちらかというとサポートにまわっています。「だから今夜も夢を見る」を手掛ける中西康晴は、彼女の代表曲「誰より好きなのに」でもピアノを弾いていたピアニストで、今回のアルバムの中でももっとも古内東子らしさを感じるピアノだったように思います。そして「この夜を越えたら」は古内東子の弾き語り。やはり本人の弾き語りだけあって、もっとも歌に寄り添った形でのピアノになっているように感じました。

そしてラストの「はやくいそいで」はピアノによるセルフカバー。ピアノは河野伸の手によるようですが、「夕暮れ」と同様に優しい雰囲気のピアノの音色が印象に残ります。このように全8曲、ピアニストがそれぞれ異なるだけに、それぞれ違った雰囲気のピアノが楽しめるという、ピアノという楽器に着目すると非常にユニークなアルバムに仕上がっていたように感じました。

ただ一方、ちょっと気になったのは6人のピアニストがいずれもどこかサポート的に徹している感じがあり、良くも悪くも「このピアノはあの人の音色だ!」という感じのピアノがなかった点。もちろん、6人のピアニストいずれも間違いなく実力のあるプロのピアニストであり、それぞれの個性はそのプレイの中で出していたのですが、古内東子のボーカルを完全に脇に押やってしまうくらいの癖の強いピアニストも1人や2人、いてもよかったのかな、という印象は受けてしまいました。正直、古内東子の楽曲自体、良くも悪くも「いつもの彼女」であるだけに、ある意味、カンフル剤的に、そんなユニークなピアニストが入ってきてもおもしろかったかな、という感じはします。今回のアルバムは結果として、「いつもの古内東子」のイメージの中に留まってしまったのは、せっかくの企画アルバムとしてはちょっと惜しかったようにも感じました。

とはいえ、「大人のポップ」として聴き応えのある作品。ピアノに着目するとより楽しめるアルバムであることは間違いありません。30周年記念企画はまだこれからも続くみたいで、そちらも楽しみ。30年を経て、いまなお精力的な彼女ですが、これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

古内東子 過去の作品
IN LOVE AGAIN
The Singles Sony Music Years 1993~2002
Purple

透明
夢の続き
and then...~20th anniversary BEST~
Toko Furuuchi with 10 legends
After The Rain
誰より好きなのに~25th anniversary BEST~


ほかに聴いたアルバム

Assort/Novelbright

メジャー2作目となる6人組ロックバンドNovelbrightのニューアルバム。ギターロックを軸に、ストリングスやホーン、ピアノなども入った分厚いサウンドにポップなメロディーラインが特徴的なグループ。良くも悪くもJ-POPの王道を行くようなロックバンドといった印象で、広い層にアピールできそうなポップソングが魅力的。シングル単位で大ヒット曲が出れば、もうひとつ上のランクに行けそうな感もするのですが。

評価:★★★★

Novelbright 過去の作品
WONDERLAND
開幕宣言

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2022年7月29日 (金)

伝説のグループの60周年記念盤

Title:Temptations 60
Musician:The Temptations

60年代のモータウンを代表するコーラスグループ、テンプテーションズ。「60年代のモータウン」という括りに限らず、アメリカのミュージックシーンを代表するコーラスグループといっても間違いないグループと言っていいでしょう。テンプテーションの代表曲といえば1964年に発表された「My Girl」ですが、この曲は今や完全にスタンダードナンバーとなった1曲で、おそらく音楽にさほど詳しくない人でも、この曲は聴いたことがある、という方は多いのではないでしょうか。

そのテンプテーションズがいまだに活動を続けている、と聴いて驚く方も少なくないかもしれません。彼らはオリジナルメンバーを入れ替えつつ、継続的に活動を続けています。今でも活動を続けるテンプテーションは、なんと2021年に結成60周年を迎えたそうで、その60周年を記念してリリースされたのが本作。意外なグループの記念作として話題となっています。もちろん、メンバーのほとんどは後日加入したメンバーばかり。ただし、オリジナルメンバーとしてオーティス・ウィリアムズはいまだに在籍し続けているそうで、その点は逆に驚きとも言えるかもしれません。

そんなテンプテーションの記念すべきアルバムの1曲目「Let It Reign」はいきなりラップからスタートしてしまうので驚いてしまう方も少なくないかもしれません。サウンド的にも重低音を強調した、今どきのサウンドといった印象も強く、そこに流れてくるコーラスラインの美しさには耳を惹かれるものの、いかにも今風にアップデートされたサウンドは、賛否両論といった感じかもしれません。

しかし、この今風なスタイルにアプローチしたのはこの1曲目のみ。その後は、王道とも言えるソウルミュージックを聴かせてくれます。中でも特筆すべきは「Is It Gonna Be Yes Or No」で、同作ではかのスモーキー・ロビンソンが作曲、プロデュース、さらにはボーカルとして参加しています。非常に切なさを感じさせるメロウなメロディーラインが耳に残る作品で、スモーキー・ロビンソンの実力が今なお衰えていないことを感じさせる楽曲になっています。

さらにラストの「Come On」は、テンプテーションズの前身、オーティス・ウィリアムズ&ザ・ディスタンツが1959年に初めてレコーディングした楽曲で、ドゥーワップ的な要素も入った軽快なポップチューン。前半はグループの歴史を語るモノローグが入っており、まさに60年の記念すべきアルバムらしい構成となっています。

全体的には非常に良くできたソウル・コーラスグループのアルバムといった感じで、素直に楽しめる反面、1曲目以外は昔ながらの王道路線であり、目新しさはありません。そういう意味ではテンプテーションズを聴いたことない、という方とっては60年代のアルバムを聴いた方がよく、最初の1枚としてはあまりお勧めは出来ません。ただ、アルバムとしては素直によく出来た作品であり、コーラスラインも魅力的。テンプテーションズがしっかりと現役のグループであることも感じさせます。特に御年80歳となったオリジナルメンバーのオーティス・ウィリアムズには今後も末永く元気に活動を続けてほしいところ。70周年も是非!

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Un Verano Sin Ti/Bad Bunny

プエルトリコのレゲトンシンガー、Bad Bunnyのニューアルバム。日本では知名度がさほど高くないものの、ラテン文化圏では圧倒的な人気を誇るそうで、このアルバムはSpotifyでは既に2022年にもっとも聴かれたアルバムとなっているそうです。基本的に軽快でリズミカルなラテンミュージックなのですが、メランコリックなメロディーラインはいい意味で聴きやすさがあり、日本人にとっても違和感なく楽しめそうなアルバム。そういう点が、世界中で広く愛されている要因なのでしょう。日本でも今後、知名度が高まっていく、かも。

評価:★★★★

Bad Bunny 過去の作品
YHLQMDLG

So Far So Good/The Chainsmokers

アメリカのダンスポップデゥオ、チェインスモーカーズの約2年半ぶりとなるアルバム。エレクトロサウンドをバックにメランコリックに聴かせつつテンポよい軽快なポップソングはインパクトもありますが、正直、いかにも今どきのヒットソングといったイメージで、これといって特徴がないような印象が・・・。デビューアルバム「Memories...Do Not Open」は大ヒットしたものの、そのあとはいまひとつ芳しい結果を残していない彼らですが、率直に言って、確かにこの内容だと厳しいものが・・・。

評価:★★★

The Chainsmokers 過去の作品
Memories...Do Not Open
World War Joy

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2022年7月28日 (木)

アイドル系が目立つチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsもアイドル系が目立つチャートとなりました。

まず1位には韓国の男性アイドルグループのミニアルバムENHYPEN「MANIFESTO:DAY 1」がランクインです。CD販売数1位、ダウンロード数59位、PCによるCD読取数61位。先行配信の影響で、先々週のチャートで21位に初登場。その後、一度圏外に落ちたのですが、今週、CDリリースに合わせてランクアップし、一気に1位獲得となりました。本作は輸入盤ですが、またなぜかCD販売数もランクインです。オリコン週間アルバムランキングではフライング販売の都合か、2週目に12万2千枚を売り上げて1位初登場。直近はリパッケージアルバム「DIMENSION:ANSWER」で、同作の初動売上11万7千枚(1位)よりアップ。またオリジナルアルバムとして前作「DIMENSION:DILEMMA」の初動12万枚(1位)からは若干のアップとなっています。

2位は先週1位のジャニーズ系アイドルグループ、なにわ男子「1st Love」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。3位は韓国の女性アイドルグループaespa「Girls」がこちらもワンランクダウンでベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位に声優水瀬いのり「glow」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上1万3千枚で4位初登場。前作「Catch the Rainbow!」の初動1万8千枚(6位)からダウン。

5位にはMori Calliope「SHINIGAMI NOTE」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数4位。彼女はバーチャルYou Tuberだそうで、本作がメジャーデビュー作となります。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。前作「Your Mori.」は発売日の影響で、初動1千枚で42位初登場し、2週目は1千枚を売り上げ35位にアップしていますが、2週の累計売上よりも大きく上回る結果となっています。

6位には、こちらは韓国の女性アイドルグループfromis_9「from our Memento Box」がランクイン。CD販売数6位。オリコンでは販売枚数9千枚で6位初登場。こちらも輸入盤で販売日の都合か、先週からランクアップし、9千枚を売り上げて、2週目にして6位にランクイン。前作「Midnight Guest」も同様で、ランクイン2週目に1万2千枚(3位)を売り上げていますから、前作よりも実質的な初動売上はダウンしています。

7位初登場はいれいす「DICE」。You Tubeで歌唱動画をアップしている6人組グループ。CD販売数7位、ダウンロード数90位。本作がメジャーデビュー作となります。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。前作「Recollection Note」の初動2千枚より大きくアップしています。

初登場最後は8位にランクインした「『マジカルミライ』10th Anniversary OFFICIAL ALBUM」。初音ミクらボーカロイドによるライブイベント「マジカルミライ」10th Anniversaryで演奏が予定されている曲を収録したオムニバスアルバムとなります。CD販売数8位、PCによるCD読取数42位。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。

さらに今週はベスト10圏外からの返り咲きが1枚。SEVENTEEN「Face the Sun」が先週の29位から9位にランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。特にCD販売数が22位から9位に大幅アップ。オリコンでも9位にランクアップしています。ここらへんのCD売上の急上昇の理由がいまひとつ不明だったのですが・・・。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年7月27日 (水)

ヒゲダンとセカオワのデッドヒートが続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、チャート上位でロングヒットを続けるOfficial髭男dism「ミックスナッツ」SEKAI NO OWARI「Habit」。先週は初登場曲が1位2位と並んだ影響でランクダウンしてしまいましたが、今週もこの2曲のデッドヒートが続いています。今週はSEKAI NO OWARI「Habit」が3位から2位に、Official髭男dism「ミックスナッツ」が4位から3位にそれぞれランクアップし、ベスト3のうち2曲を占める結果に。「Habit」はこれで11週連続のベスト10ヒット&7週連続のベスト3、「ミックスナッツ」は15週連続のベスト10ヒット&通算12週目のベスト3ヒットとなりました。

ただ、「Habit」は先週2位にダウンしたYou Tube再生回数が再び1位にアップ。ストリーミング数は先週と変わらず3位をキープし、ダウンロード数は4位から3位にアップするなど、まだ勢いを感じさせる反面、「ミックスナッツ」は先週まで4週連続1位だったストリーミング数が2位にダウン。ダウンロード数は5位をキープしたものの、You Tube再生回数が6位から9位にダウンするなど、全体的に下落傾向となっており、ちょっと今後の動向が気になる結果となりました。

一方、今週1位を獲得したのはNiziU「CLAP CLAP」。先週10位に初登場しましたが、今週はCD販売数が加味され、CD販売数が1位にランクイン。ダウンロード数は6位から10位、You Tube再生回数も1位から2位にダウンしていますが、ほか、ストリーミング数33位、ラジオオンエア数17位、PCによるCD読取数57位、Twitterつぶやき数13位を獲得し、総合順位で1位獲得となりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万1千枚で1位初登場。前作「Take a picture」の初動31万7千枚から大幅減という結果となっています。

6位には星野源「異世界混合大舞踏会(feat.おばけ)」がランクイン。ダウンロード数及びラジオオンエア数1位、ストリーミング数64位、Twitterつぶやき数17位、You Tube再生回数21位。すごくコミカルなタイトルですが、こちら映画「ゴーストブック おばけずかん」の主題歌。ちなみにこちら児童書の「おばけずかん」の実写映画化だそうですが、あの本が実写映画化されるというのはかなり驚いています・・・。

8位にはKing Gnu「雨燦々」が先週の13位からランクアップし、ベスト10初登場。TBS系ドラマ「オールドルーキー」主題歌。ダウンロード数は先週1位を獲得しましたが、今週は2位にランクダウン。一方、ストリーミング数が59位から12位に大幅にアップしており、今後の動向次第ではさらなるヒットも見込めそう。You Tube配信されていないため、You Tube再生回数がランク圏外なのは残念ですが。

そして10位にはMrs.GREEN APPLE「ダンスホール」が先週の11位からランクアップし、ベスト10に初登場しています。6月1日付チャートで28位にランクイン。翌週に20位までアップするもその後ランクダウン。ただ、7月6日付チャート以降、ランクアップに転じ、ランクイン9週目にしてベスト10入りを果たしました。特にストリーミング数が徐々にランクアップしており、今週は4位までランクアップ。ベスト10ヒットの大きな要因となっています。フジテレビ系情報番組「めざまし8」主題歌で、徐々にその歌が浸透してきたという感じでしょうか。

続いてはロングヒット曲ですが、今週、Tani Yuuki「W / X / Y」は5位から4位にランクアップ。特に今週、ストリーミング数が実に14週ぶりに1位返り咲き。ダウンロード数も14位から6位にアップしています。これで16週連続のベスト10ヒット。

Saucy Dog「シンデレラボーイ」は先週から変わらず9位をキープ。ただストリーミング数は4位から5位にダウンしています。これでベスト10ヒットは通算25週目となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年7月26日 (火)

人を食ったような・・・

Title:
Musician:ゲスの極み乙女。

「ゲスの極み乙女。」というと、川谷絵音とベッキーとの不倫騒動からもう6年も経つのか・・・といった感もしますが、その時の(正直、やりすぎと思えるような)大バッシングに全く影響を受けることもなく、相変わらずマイペースなバンド活動を続けています。特にここ最近は、人を食ったような企画を実施することが多く、直近のオリジナルアルバム「ストリーミング、CD、レコード」では、なんと賞味期限付きのアルバムとして、CDではなくバームクーヘンを販売したり、最近では、バンド名を「ゲスの極み乙女。」から「。」を抜いて「ゲスの極み乙女」にする発表をしたりと、相変わらずな活動を続けています。

そんな人を食った企画といえば、彼ら初となるこのベストアルバムもそんな企画の一つと言えるでしょう。今回もCD版と配信版で内容が異なり、CD版では、なんと彼らの曲のうちから25曲をピックアップし、1つの曲となるように再構成。「Best Tracks」として35分に及ぶ曲に生まれ変わっており、その1曲のみを収録した内容となっています(ちなみにこちらも配信されています)。一方、配信版では全41曲を収録。このうち冒頭の2曲は新曲となっているほか、最後10曲は、様々なミュージシャンたちが彼らの代表曲をリミックスしたアルバムとなっています。

さて、この「Best Tracks」がなかなか秀逸。単純に彼らの曲をつないだだけではなく、1つの曲としてまとまるように再構築されており、聴いていて、25曲も連なっているように全く感じられないほど、自然に聴けてしまう展開となっています。正直なところ、メランコリックなメロディーラインはちょっと似ている感じの部分も多く若干、マンネリ気味じゃないの?と感じてしまう部分も顕著になってしまうのですが、それを差し引いても非常にユニークな試みであり、それが成功した結果になっていたように感じました。

特にこのメロディーラインに関しては配信版の41曲入りのベストアルバムでも感じるところはあり、基本的にマイナーコード主体のメランコリックなメロ一本調子。歌謡曲的な哀愁たっぷりのメロディーラインは魅力的であることは間違いないですし、曲によっては複雑な展開になっているメロディーも少なくないのですが、全体的にはやはり似たようなタイプの曲が多いと感じてしまいます。特に今回の配信版では前半に、メランコリックなメロディーラインを前面に押し出した曲を並べていただけに、そのようなことをより強く感じてしまいました。

ただ中盤以降は、そのメロディーラインのことを気にならなくなるようなほど、ラップを入れてきたり、ピアノやバンドサウンド、シンセの音を上手く組み合わせたトリッキーなサウンドを聴かせてきたりするユニークな楽曲が並びます。サウンドにはギターロックの要素のほかに、HIP HOPやエレクトロ、ファンクやジャズなどの要素も巧みに取り込んでおり、非常に自由度の高いユニークな音楽性が特徴的。もちろん、このような彼らの音楽性はいままでのオリジナルアルバムでも感じてきたことなのですが、ベスト盤を聴くと、そんな彼らの魅力をより強く感じることが出来ました。

バームクーヘンのアルバムといい、1曲のみのベスト盤といい、「。」だけ取った改名騒動といい、人を食ったような企画が目立つ彼らですが、サウンドの側面においても自由度が高くユニークで、ある意味、「人を食ったような」と言えるかもしれません。そういう意味ではトリッキーな人を食ったようなユニークなスタンスが、彼らのバンド活動を通じてのスタンスであり、そして最大の魅力なのでしょう。今回のベストアルバムで、そんなゲスの極み乙女。の魅力を再認識できたように感じます。

とりあえずは例の騒動も最近はひと段落してバンドとして積極的な活動を続ける彼ら。この人を食ったようなユニークなスタンスは今後も続きそうで、これからもいろいろと私たちを楽しませてくれそうです。これからの活躍も楽しみになるベストアルバムでした。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない
ストリーミング、CD、レコード


ほかに聴いたアルバム

artless/WONK

WONKの新作は全6曲入り、うち1曲はイントロ的な作品ですので、事実上5曲入りとなるミニアルバム。「宇宙」をテーマに全22曲75分という壮大なスケール感となった前作とは対照的に、オーガニックな感触の強い、しんみりと聴かせるアルバムに仕上がっています。基本的にメランコリックでAOR調の作風というスタイルはいままでの彼らと一緒ですが、ミニアルバムというシンプルに仕上げた内容になっていただけに、聴きやすく、しっかりとWONKの世界にはまれる作品になっていました。派手さはありませんでしたが、しっかりと彼らの実力を感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

WONK 過去の作品
BINARY(WONK×THE LOVE EXPERIMENT)
Moon Dance
EYES

cubism/おいしくるメロンパン

6枚目となるミニアルバム。前作までは比較的、彼らのロックバンドとしての側面を強調させたような作品が続いてきましたが、今回のアルバムは若干シフトチェンジ。メランコリックなメロディーラインを押し出した作風にシフトしました。個人的には前作までのようなバンドとしてのヘヴィネスさを押し出した方向性が良かったように思いますし、メロディーラインは若干フックが弱い点が気になるのですが、これはこれでバンドとしてのひとつの方向性を押し出した形といった感じでしょうか。ただ、これでミニアルバムは6枚目。そろそろフルアルバムでバンドとしての全体的な方向性を見せてほしいのですが。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
theory

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2022年7月25日 (月)

フルアルバムとしては久々

Title:REFLECTION
Musician:tofubeats

フルアルバムとしては約3年7ヶ月ぶりとなるtofubeatsのニューアルバム。tofubeatsといえば、メジャーデビュー直後は日本のエレクトロシーンの新時代の旗手的な取り上げられ方をしてかなり注目を集めていました。それに応じるかのように、彼もかなりワーカホリックな活動を続けており、一時期は1年に1枚ペースでオリジナルアルバムをリリースするなど、今のミュージックシーンの中ではかなりハイペースなリリースを続けていました。

そんな彼のオリジナルアルバムが約3年7ヶ月ぶりというと、かなり久々のように感じます。もっとも、2020年にはミニアルバム「TBEP」をリリースしていますし、配信シングルは継続的にリリースしており、なんだかんだいってもワーカホリックぶりがうかがえる活動は続けています。ただ一方で、この3年7ヶ月の間に突発性難聴を発症というトラブルに見舞われたそうで、このアルバムのリリースに合わせて、この間に書き続けた日記を再構成した「トーフビーツの難聴日記」をリリースしたりもしています。さらにはこの間に結婚、上京という人生の大きな節目を迎えたようで、彼にとってはこの3年7ヶ月というリリーススパンは大きな意味があったようです。

ただ、その彼の3年7ヶ月の出来事がやはりアルバムに大きな影響を与えたのでしょうか、今回のアルバムに関しては、いままでのtofubeatsと比べると、若干印象の異なるアルバムに仕上がっていました。いや、基本的なサウンドは大きな違いはありません。軽快なエレクトロサウンドのハウスチューンで、人なつっこい軽快なメロディーラインはそのまま。しかし、いままでのアルバムでは90年代J-POPからの影響を顕著に感じさせるポップチューンを入れて、ギミック的なインパクトを作り出していましたが、今回のアルバムではそのようなギミック的な部分はほとんどなし。ある意味、落ち着いたとも言えますし、正統派とも言えるハウスチューンを聴かせてくれます。

もちろん、いい意味で聴きやすいポップ路線というのは本作でも健在。「VIBRATION」では、ユーモラスなMCからスタートし、ラップも取り入れた作品ですが、メランコリックなエレクトロサウンドが大きなインパクトとなっていますし、タイトルチューン「REFLECTION」では中村佳穂がゲストボーカルとして参加。彼女の透明感ある伸びやかな歌声を聴かせるポップな「歌」が主軸となっている作品になっています。その他にもダンサナブルでシティポップ風の「CITY2CITY」や、ボッサ風のサウンドを取り入れた「恋とミサイル」のようなポップな歌モノがアルバムの中にちりばめられており、十分ポップなアルバムとして仕上がっています。

正直言うと、アルバム全体としてはおとなしい作風に仕上がっており、ギミック的な要素を減らした分、インパクトについては弱くなってしまった点は否めません。ただ一方、それだけに「良質なハウスミュージックのアルバム」という言い方がピッタリくるような、落ち着いたアルバムに仕上がっていました。これから再び、以前のようなギミック的要素を入れた作品を作ってくるのか、この路線を貫くのか不明ですが、ワーカホリック気味な彼のこと、また今後も新作は作り続けてくれるでしょう。今後も彼の活躍に注目です。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN
TBEP
RUN REMIXES

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2022年7月24日 (日)

昔ながらのロックンロールを今に

Title:Dropout Boogie
Musician:The Black Keys

毎回、古き良きロックンロールの伝統を受け継ぐアルバムを作り続け、音楽ファンの大きな注目を集めるアメリカのロックデゥオThe Black Keys。そんな彼らの11枚目となるニューアルバムがリリースされました。海外では、彼らのデビューアルバム「The Big Come Up」のリリースからちょうど20年後の前日となる2022年5月13日にリリースされています。

基本的に、ロックデュオとしてそぎ落としたサウンドで、60年代や70年代を彷彿させるようなシンプルなガレージロック、ブルースロックを奏でるのが特徴的な彼ら。今回のアルバムも、その路線に変更はありません。アルバムの1曲目を飾るのは先行シングルともなっている「Wild Child」は、まさにそんな彼らを象徴するような楽曲で、ギターリフ主導のシンプルなガレージロックチューン。続く「It Ain't Over」は哀愁感たっぷりのガレージロックに仕上がっています。

その後もブルースからの影響が顕著な「For the Love of Money」、ノイジーで分厚いギターリフで展開していくガレージナンバー「Your Team Is Looking Good」、ZZ TOPのビリー・ギボンズを迎えてハードな、力強いギターを聴かせてくれる「Good Love」とシンプルながらも力強いロックチューンが続いていきます。

メランコリックな歌を聴かせてくれるミディアムチューンの「How Long」を挟み、後半も70年代ロックンロールを彷彿とさせる軽快な「Burn the Damn Thing Down」、ヘヴィーなギターサウンドで力強く聴かせるミディアムチューン「Happiness」、力強いギターリフが耳を惹く「Baby I'm Coming Home」と続き、ラストを飾る「Didn't I Love You」もメロディーラインをボーカルと一緒になぞる力強いギターサウンドが耳に残るハードロック風のナンバー。いずれも60年代、70年代の古き良き時代のロックを今の時代に体現化しているような楽曲が並んでいます。

シンプルながらも昔ながらのロックンロールで、この手の作品によくありがちな、「オールドスタイルを引き継ぎつつ、今風のサウンドを取り入れている」というスタイルもほとんどありません。あえて言えば、重低音が目立つ音作りにしている点は、今風といえば今風でしょうか。直近作「Delta Kream」は彼らの原点あるブルースのカバーアルバムでしたが、今回のアルバムはその直後ということでしょうか、よりシンプルなサウンドのルーツ志向という方向性が強まったような印象も受けました。ヘヴィーなギターサウンド主体の曲作りで、ロックを聴いたという満足度も高いアルバム。ロックリスナーなら必ず気に入るであろう1枚です。

評価:★★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO
"Let's Rock"
Delta Kream

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2022年7月23日 (土)

トム・ヨークの新バンド!

Title:A Light For Attracting Attention
Musician:The Smile

RADIOHEADのトム・ヨークの新バンドとして注目を集めているThe Smile。同じくRADIOHEADのメンバーであるジョニー・グリーンウッドと、ドラマーとして数多くのミュージシャンとのコラボを行っているトム・スキナーとの3人組バンド。もともとは2021年5月に行われた有料配信イベント「Live At Worthy Farm」に登場したのが最初。その後、その動向が注目される中、シングルを数多くリリースしてきましたが、このたびようやくThe Smileとしてのアルバムがリリースされました。

RADIOHEADでは、アルバム毎に様々な作風を取り入れて、音楽ファンにとって、いわば一挙手一投足が注目を集めていたトム・ヨーク。それだけにThe Smileとしてのニューアルバムも注目を集めましたが、まず聴いてみた感じとしては、基本的にはRADIOHEADの延長線に位置するようなバンドというイメージを、まずは強く抱きました。

実際、1曲目の「The Same」は、アバンギャルドなエレクトロサウンドとメランコリックな歌でスタートし、どこか「KID A」や「Amnesiac」の作品を彷彿とさせますし、ピアノをベースにしつつドリーミーでどこか不気味な様相のある「Pana-vision」や、ベースラインを軸としつつ、ファルセットボイスでメランコリックに歌い上げる「The Smoke」、ダイナミックなバンドサウンドを入れつつサイケに聴かせる「Thin Thing」など、いずれもRADIOHEADの1曲として収録されていても違和感はありません。

一方で、意外とポップでメロディーラインにインパクトのある曲も目立つというのも特徴的で、非常にヘヴィーなバンドサウンドで、ストレートなギターロックを聴かせる「You Will Never Work In Television Again」や、アコースティックなサウンドをバックに静かに聴かせるメロディーラインがインパクトもあり胸をうつ「Free In The Knowledge」、エレクトロサウンドをサイケに聴かせつつ、疾走感あるギターロックにメランコリックなメロディーラインが印象的な「We Don't Know What Tomorrow Brings」など、ロックバンドとしての側面を前に押してきたような曲も目立ち、ポップな作風の曲も目立ちます。

ただ、全体的にはRADIOHEADの延長線上といった印象を抱くとはいえ、エレクトロサウンドの曲があったり、ギターサウンドを前に出した曲があったり、アコースティックな曲もあったりと非常に自由度も高く、単純な一言の音楽性で言い尽くせないアルバムとも言える作品でした。そういう意味でもトム・ヨークらしい作品と言えるでしょうし、また、それでもやはり、これはRADIOHEADでも出来たんじゃない??とも思ってしまう部分も否めないアルバムでした。

とはいうものの、これはこれでThe Smileの新たな作品として傑作であることは間違いないかと思います。今後、The Smileとしての活動を続けるのか、それとも再びRADIOHEADとしての活動を再開するのかは不明ですが、とりあえずはこの作品でトム・ヨークの新たな世界を楽しみたいと思います。実験的でありつつ意外と聴きやすいという意味でもRADIOHEADと同様かもしれません。次々とあらわれる様々な音楽性を最後まで楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

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2022年7月22日 (金)

全英1位の理由もわかるインパクトある作品

Title:Dance Fever
Musician:Florence+The Machine

フローレンス・ウェルチ率いるイギリスのロックバンド、Florence+the Machine。前作では全英チャートが惜しくも2位に留まったものの、本作では2作ぶりに1位を獲得。5枚目のアルバムにして4枚のアルバムをチャート1位に送り込むなど、すっかり人気バンドとしてその地位を確立しています。

今回のアルバム、「Dance Fever」というタイトル通り、ディスコチューンを前面に押し出したダンスアルバム・・・・・・という感じではさすがにありませんでした。ただ、全体的にダンサナブルでリズミカルな作風が目立つ内容になっていました。2曲目「Free」は4つ打ちのリズムを前面に押し出したダンサナブルな作品になっていましたし、その前後の「King」「Choreomania」も、ダンサナブルとまではいかないもののテンポ良いリズムが流れる作品になっています。また後半の「My Love」も不気味な雰囲気でスタートするものの、途中からリズミカルなビートが流れる作品に。サビではダンサナブルな展開になっています。さすがにFlorence流のダンスアルバム、というほどではないものの、そんなリズミカルな曲が目立つ内容になっていたように思います。

また、そんなリズミカルな曲が核になっていたからでしょうか、アルバム全体としてもメロのフックが効いたインパクトある作品が目立つ、ポップなアルバムに仕上がっていました。前述の「Choreomania」もダイナミックなサウンドが高揚感ありますし、「Dream Girl Evil」もソウルフルにゆっくりと歌いあげるボーカルとダイナミックなサウンドがインパクトに。エキゾチックで怪しげな雰囲気が印象的な「Cassandra」もインパクト満点の楽曲に仕上がっていますし、「Daffodil」も同じく怪しげな雰囲気のサウンドとメロディーが耳に残ります。

なによりもインパクトの強さを感じるのは「My Love」で、バンドサウンドにストリングスを入れた分厚い疾走感あるサウンドと伸びやかなボーカルでインパクトの強い楽曲に。さらに終盤も、アコギでしんみり、ちょっとジャジーに聴かせる「The Bomb」もメロウな歌声が大きなインパクトのある楽曲ですし、ラストの「Morning Elvis」も美しくも荘厳でスケール感あるサウンドが耳に残る楽曲に仕上がっています。

一応、ジャンル的には「インディーロックバンド」というカテゴリーの彼女たちですが、分厚いサウンドはスケール感たっぷりで、メロディーラインもインパクト十分。いい意味で広い層に支持されそうなアルバムという印象を受けますし、実際に、全英1位と結果を残しています。そういう意味では、ロックリスナーのみならず広い層に素直におすすめできる作品。素直にその荘厳で力強いサウンドを楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

Florence+The Machine 過去の作品
CEREMONIALS
High As Hope

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2022年7月21日 (木)

新譜ラッシュ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は全10枚中8枚までが初登場という新譜ラッシュとなっています。

まず1位はジャニーズ系アイドルグループなにわ男子「1st Love」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得。本作がアルバムデビュー作となります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上71万2千枚で1位初登場。

2位はこちらは韓国の女性アイドルグループaespa「Girls」が先週の20位からランクアップしベスト10入り。CD販売数2位、ダウンロード数10位。またなぜか対象外のはずの輸入盤ですが、CD販売数でランクインしてきています。オリコンでは初動売上3万2千枚で3位初登場。前作「Savege」の1千枚(18位)から大幅にアップしています。

3位にはPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE「P.C.F」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数11位。LDHのダンスグループによるデビューアルバム。オリコンでは初動売上3万8千枚で2位初登場。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に[Alexandros]「But wait.Cat?」がランクインしています。CD販売数及びダウンロード数4位、PCによるCD読取数19位。アイドル系が目立つ今週のチャートの中で孤軍奮闘的なロックバンドによる新譜です。オリコンでは初動売上1万6千枚で4位初登場。直近作はベスト盤「Where's My History?」で、同作の初動3万8千枚(2位)からダウン。また、オリジナルアルバムとしての前作となる「Sleepless in Brooklyn」の3万9千枚(3位)からもダウンとなっています。

5位には韓国の男性アイドルグループiKON「FLASHBACK[+ i DECIDE]」がランクイン。CD販売数5位。5月に韓国でリリースされたミニアルバム「FLASHBACK」に、昨年2月にリリースされた「i DECIDE」、今年3月にリリースされた「Why Why Why」の日本語版を加えたアルバム。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。国内盤の前作「NEW KIDS」の初動2万7千枚(5位)からアップ。

7位初登場は女優上白石萌音「name」。CD販売数8位、ダウンロード数15位。オリコンでは初動売上9千枚で9位初登場。直近作は2枚同時リリースとなったカバーアルバム「あの歌-1-」「あの歌-2-」でそれぞれの初動売上1万5千枚(6位)、1万4千枚(7位)からそれぞれダウン。オリジナルアルバムとしての前作「note」の1万6千枚(3位)からもダウンしています。

9位には遠藤ナオキ「TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期 オリジナルサウンドトラック Bound for TOKIMEKI」がランクイン。CD販売数7位。タイトル通り、テレビアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の第2期のサントラ盤。オリコンでは初動売上1万枚で8位に初登場しています。

最後10位には男性4人組ダンスグループSHARE LOCK HOMES「jumble」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数99位。オリコンでは初動売上4千枚で18位初登場。前作「JACK」の6千枚(9位)からダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年7月20日 (水)

アイドル系の新譜が並ぶ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はアイドル系の新譜が上位に並びました。

まず1位にはジャニーズ系アイドルグループSnow Man「オレンジkiss」がランクイン。CD販売数、ラジオオンエア数及びPCによるCD読取数で1位を獲得。総合順位でも1位初登場となりました。映画「モエカレはオレンジ色」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上83万枚で1位初登場。前作「ブラザービート」の78万8万枚(1位)からアップしています。

2位はハロプロ系女性アイドルグループOCHA NORMAのデビュー作「恋のクラウチングスタート」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数15位、ラジオオンエア数13位、PCによるCD読取数25位、Twitterつぶやき数48位。オリコンでは初動売上9万5千枚で2位初登場となっています。

そして3位にはSEKAI NO OWARI「Habit」が先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ただ、7週連続1位をキープしてきたYou Tube再生回数は2位にダウン。5週連続2位だったストリーミング数も3位にダウンしています。ただこれで10週連続のベスト10ヒット&6週連続のベスト3入りとなりました。

続いて4位以下の初登場曲です。今週はアイドル系の初登場が続きます。まず6位にはボイメンエリア研究生「BURNING DANCE-バニダン-」がランクイン。CD販売数は3位にランクインしましたが、他のチャートはすべて圏外となり総合チャートはこの位置に。名古屋を中心として活動するアイドルグループBOYS AND MENの弟分で、名古屋・東京・大阪・福岡出身の 13 人組によるグループだそうです。オリコンでは初動売上4万4千枚で3位初登場。前作「GO!GO!トレジャーロード!!」の初動2万9千枚(4位)からアップしています。

さらに10位には女性アイドルグループNiziU「CLAP CLAP」がランクイン。先週まで7週連続1位だったセカオワの「Habit」に代わり、今週You Tube再生回数で1位を獲得。ダウンロード数6位、ストリーミング数35位、ラジオオンエア数56位、Twitterつぶやき数5位で総合順位はこの位置に。7月20日リリース予定のシングルからの先行配信で、来週はさらに上位にランクインしそうです。

続いてロングヒット曲ですが、まず先週まで1位にランクインしていたOffical髭男dism「ミックスナッツ」は今週4位にダウン。残念ながら連続1位記録は2週止まり。またベスト3入りも通算11週でとりあえずはストップ。ダウンロード数は1位から5位にダウン。You Tube再生回数も4位から6位にダウンしています。ただ、ストリーミング数は今週も4週連続の1位を獲得しており、まだまだ来週以降の巻き返しが期待できそう。これで14週連続のベスト10ヒットとなりました。

5位にはTani Yuuki「W / X / Y」が4位からワンランクダウン。ただストリーミング数は今週3位から2位にランクアップしており、地味ながらも着実な人気を維持しています。これでベスト10ヒットは15週連続となります。

Saucy Dog「シンデレラボーイ」は6位から9位にダウン。ただストリーミング数4位、カラオケ歌唱回数2位は先週から変わらず。こちらも根強い人気が続いています。これで通算24週目のベスト10ヒットとなります。

今週のHot100は以上。今週は優里「ベテルギウス」が10位から一気に15位にダウン。通算ベスト10記録が34週でストップしています。明日はHot Albums!

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2022年7月19日 (火)

1人の人間としてのKendrick Lamar

Title:Mr. Morale & the Big Steppers
Musician:Kendrick Lamar

アルバムをリリースする毎に大絶賛を浴び、今や、HIP HOPという枠組みに留まらず、もっとも注目を集めるミュージシャンの一人となったKendrick Lamar。その彼の約5年ぶりとなるアルバムがリリースされ、こちらも大きな話題となっています。毎回、強いテーマ性を持つリリックが特徴的で、そのラップする内容についても大きな話題となる彼。リリックの内容については私たちにとってストレートに伝わってこないのは非常に残念なのですが、ネットや雑誌などの情報を参考にしつつそのリリックを味わうと、今回も非常に深いテーマ性あるアルバムであることを感じさせます。

今回のアルバムは2部構成となっており、前半が成り上がりものを意味する「Big Steppers」、後半が鼓舞するものを意味する「Mr.Morale」という構成になっているそうです。まさにブレイクするまでの彼と、現在の彼をあらわしているようなタイトルになっています。そして肝心なアルバムの内容については、いろいろと解釈がわかれる部分もある中、共通するのはケンドリックが、普通の1人の人間であることを取り戻す過程を描いているという点。例えば「Savior」では「He is not your savior(彼は君の救世主ではないんだ)」というリリックが繰り返されますし、ラストを飾る「Mirror」でも「I choose me,I'm Sorry(俺は自分自身であることを選んだ、ごめん)」というリリックが繰り返されるなど、あくまでもケンドリックが、単なる1人の人間であることを強調するようなリリックが目立つ内容になっています。

他にも男性になった叔母や女性になった従兄弟への思いを語り、LGBTに対する応援歌的なスタンスも感じる「Auntie Diaries」や、キャンセルカルチャーに対する問題点を綴った「N95」などといったテーマ性あるリリックも特徴的なのですが、多分聴いていて、私たちにとって一番わかりやすかったのが「We Cry Together」でしょう。この曲、ケンドリックのフィアンセであるホイットニー・アルフォードとの喧嘩をそのまま再現した内容になっており、激しいやり取りをそのままラップにした内容は、言葉の意味はわからなくても最後になんとなく仲直りしそうな雰囲気も含めて私たちにも伝わってきますし、そういうさり気ない彼女との喧嘩を綴ることによって、彼が単なる1人の人間であることが伝わってくるような内容になっています。

さらに今回のアルバム、そんなリリックの内容以上に、楽曲自体、非常にしっかりとリスナーに聴かせる、魅力的な作品が並んでいたように感じました。例えば前述の「N95」ではトラップ的なリズムでリズミカルに聴かせつつ、80年代っぽいスペーシーなエレクトロサウンドを印象的に聴かせてくれますし、「Father Time」は胸をつかまれるような切なくメランコリックなサウンドが印象的。「Savior」ではヘヴィーでノイジーなビートが耳に残りますし、「Auntie Diaries」でも静かなエレクトロサウンドに重なるような早口のラップが印象に残ります。

そんな作品の中でもメランコリックな歌モノの楽曲も目立ち「Die Hard」「Purple Hearts」、ピアノをバックにもの悲しく聴かせる「Crown」など、歌モノ的な要素も目立つアルバムになっており、そういう意味でもいい意味で聴きやすい構成になっていたように感じます。最後を締めくくる「Mirror」も、その歌われる内容とは裏腹に、明るい雰囲気のトラックをバックに爽やかな歌モノのポップチューンとなっており、ある意味、1人の人間となったケンドリックのこれからの希望を感じさせる楽曲になっています。最後まで心地よいポップな楽曲も目立ち、いい意味で聴きやすさを感じさせるアルバムになっていました。

そんないい意味での聴きやすさもあって、個人的にはいままでのケンドリックのアルバムの中でも、ひょっとしたら一番楽しめたアルバムになっていたような印象すら受けます。また文句ないに今年を代表する傑作アルバムの1枚とも言えるでしょう。全18曲73分というフルボリュームの内容でしたが、リリック抜きにしても聴きどころの多いアルバムで、リリックの内容がストレートにわからなくても十分すぎるほど楽しめる作品だったと思います。もちろん、ネット上の情報などを参考に、リリックを読み解いていくのも大きな楽しみの一つともいえる作品。毎回、世間を驚かせる傑作を作り続ける彼ですが、今回もそんなすごい傑作をまた作り上げてしまいました。2022年を代表する1枚の誕生です。

評価:★★★★★

Kendrick Lamar 過去の作品
Good Kid M.a.a.D City
To Pimp A Butterfly
untitled unmastered.
DAMN.

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2022年7月18日 (月)

30年目のミスチル

2001年、2012年と、ほぼ10年毎にベストアルバムをリリースしてきたMr.Children。デビュー30周年となる今年、事実上、3度目となるベストアルバムをリリースしました。

Title:Mr.Children 2011-2015
Musician:Mr.Children

まずはこちら、「Mr.Children 2011-2015」。2011年から2015年の間に発表された楽曲が収録されています。ただし、一番前の作品は2012年リリースの「hypnosis」で、2011年に唯一リリースされた配信シングル「かぞえうた」は未収録となっています。

Title:Mr.Children 2015-2021&NOW
Musician:Mr.Children

こちらはタイトル通り、2015年から2021年にリリースされた楽曲が収録。さらに「&NOW」ということで、新曲「永遠」「生きろ」の2曲が収録されています。

今回、2枚同時リリースされたベストアルバムの大きな特徴は、CD2枚+DVDの全3枚組ということ。このうちDVDは、ミスチルのメンバーによる今とこれからについて語る座談会になっており、レコーディング風景やライブを収録した映像作品が多い中、メンバーの語りが聴けるという意味で貴重で興味深いDVDに仕上がっています。

また、CDのうちDisc2は「Mr.Children 30th giving」として、彼らの代表曲に係る過去のライブ音源が収録されています。「2011-2015」のDisc2、「Mr.Children 30th giving 1」は、2001年にリリースしたベストアルバム「1992-1995」「1996-2000」の範囲の曲のライブ音源が、「2015-2021&NOW」のDisc2、「Mr.Children 30th giving 2」では、ベストアルバム「2001-2005」「2005-2010」の範囲の曲のライブ音源が収録。この全4枚のCDを聴くことによって、事実上のオールタイムベスト的な構成になっています。

そして、正直言ってしまうと、今回のベスト盤、このDisc2のライブ音源の方が、どうしても耳が惹かれる曲が揃っている、と思ってしまいました。特にこの10年間、リリースされたアルバムはわずか4枚ですし(その前の10年間は7枚で、さらにその前の10年間は9枚(!))、その4枚のCDから、CD2枚分の選曲を行うわけですし、どうしてもセレクトに物足りなさは残ってしまいます。

また、ピアノやストリングスも入って、これでもかというほど分厚くスケール感を出したサウンドは、良くも悪くもいかにもスタジアムロック然とした印象は否めず。これを含めてミスチルらしいといえば非常にミスチルらしいのですが、残念ながら大いなるマンネリという印象も否めませんでした。

そうとはいってもインパクト満点のメロディーラインはいまでもしっかり健在で、個人的には特に「2015-2021&NOW」の方が、「fanfare」「Your Song」「Birthday」など、昔の彼らの曲に勝るとも劣らない楽曲が多く収録されていたような印象を受けます。直近のオリジナルアルバム「SOUNDTRACKS」は個人的にはあまりピンと来ないアルバムでしたが、こう並べると、彼らの勢いが今となっても衰えていないことを感じます。

そして何よりもライブ盤が名曲揃い。「CROSS ROAD」がバラードアレンジで、原曲と雰囲気が異なる点を除いて、基本的に原曲準拠のアレンジになっており、懐かしい名曲の数々をあらためて味わうことが出来ます。個人的には90年代の楽曲が、やはり思い出補正も合わせて感慨深いものもありますが、それ以降の楽曲も名曲揃い。あらためてMr.Childrenが優れたバンドであることを再認識しました。

このベスト盤を機に、あらたな10年の活動に入る彼ら。次の10年にも新たな名曲が続々と誕生しそうな予感もします。これからも彼らの活躍に期待したいところです。

評価:どちらも★★★★★

Mr.Children 過去の作品
SUPERMARKET FANTASY
SENSE
Mr.Children 2001-2005<micro>
Mr.Children 2005-2010<macro>

[(an imitation) blood orange]
REFLECTION
重力と呼吸
SOUNDTRACKS

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2022年7月17日 (日)

時代を超えた名曲

Title:花-20周年記念集-
Musician:ASA-CHANG&巡礼

東京スカパラダイスオーケストラのリーダーとしてデビューし、1993年に脱退。その後はパーカッション奏者として活躍するASA-CHANG。その彼が1998年に結成したユニットがASA-CHANG&巡礼で、2000年には現在もタブラ奏者として活躍し、このサイトでもアルバムを何度か紹介したことのあるU-zhaanもユニットに加わりました(2010年に脱退)。そのASA-CHANG&巡礼の代表作と言えるのが2001年に発表した「花」。映画「けものがれ、俺らの猿と」のエンディングテーマとして起用されたほか、2013年にリアレンジした「花-a last flower-」がアニメ「惡の華」のエンディングテーマとして起用されて、話題となりました。

本作は、その「花」の発表から20周年を記念したことによりリリースされた、「花」に関する様々なバージョンの作品をまとめたアルバム。オリジナル版や「花-a last flower-」はもちろん、レイハラカミや長谷川白紙によるリミックスや、現在のASA-CHANG&巡礼のメンバーによるセルフカバー、さらにはリミックスコンテストでの入賞作をまとめた全7曲入りのアルバム。ちなみにジャケットは「惡の華」の原作者、押見修造による作品となっています。

今回、久しぶりに「花」を聴いてみたのですが、やはり今でも聴き継がれている理由が納得できる名曲ということをあらためて感じました。全編、物悲しいストリングスの音色がまずは耳に残りますし、そんな中、声をタブラと同期させて「音」として取り扱っているスタイルが挑戦的。しかし、同時に、声は「音」としてだけではなく、しっかりと歌詞の内容もリスナーに伝わってきます。実験性とある種のポピュラリティーをしっかりと両立させた傑作で、あらためて「花」の魅力を感じることが出来ました。

そんな「花」を様々な形でリアレンジしているのですが、その解釈もユニーク。レイハラカミによるリミックス「あたらしい花」は、いわばストリングスの部分をレイハラカミの独特のサウンドに置き換えている形。「花-a last flowrer-」ではストリングスの代わりにフルートが入り、ちょっと優雅な雰囲気が出てきているのがユニーク。

現在のメンバーによるセルフカバー「花(ヒア☆ナウ☆)」では、ヴァイオリンやフルートを要する現在のメンバーによる新たなアレンジがユニークで、原曲に比べると、ガラッと明るい雰囲気になっている点が面白みを感じますし、長谷川白紙によるリミックスは、逆に思いっきりアバンギャルドさを増したアレンジに。同じ曲でも全く異なる雰囲気になっています。

最後に並ぶリミックスコンテストの入賞作も、ドリーミーなアレンジとなっている「Hana(Double Suicide Remix)」や、フュージョン風のアレンジを入れた「花(辺乃銀一郎Remix)」のどちらも秀逸。それぞれの個性が光るアレンジとなっていました。

全7曲、7通りのアレンジがありながらも、どの1曲として同じ雰囲気の曲調になっていない点が非常にユニークですし、それにも関わらず、どの曲も間違いなく「花」になっていた点も「花」という楽曲自体の持つ強度を感じます。いつもちょっと実験的な要素が強く、違和感を覚える点も多いASA-CHANG&巡礼ですが、「花」のもともと持つポピュラリティー故でしょうか、これらの作品に関しては、実験性と大衆性がしっかりと両立されており、いい意味での聴きやすさも感じました。ASA-CHANG&巡礼のファンはもちろん、参加しているミュージシャンや「惡の華」で「花」を知ったような方にも是非とも聴いてほしい傑作でした。

評価:★★★★★

ASA-CHANG&巡礼 過去の作品
影の無い人
ASA-CHANG&蒐集(ASA-CHANG)
まほう
事件

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2022年7月16日 (土)

海外で活躍する日本のサイケバンド

Title:クモヨ島
Musician:幾何学模様

コロナ禍で海外移動が制限されている今、現在ではともかくとして、ここ最近は日本のミュージシャンでも、日本以上に海外でその活躍の場を求めるミュージシャンが出てきているようです。先日、ここで紹介したおとぼけビ~バ~もそんなバンドの一組でしたが、今回紹介するこの幾何学模様というバンドも、そんなバンドの一組。メンバーのGo KurosawaとTomo Katsuradaは、アジアの音楽を海外に紹介するレーベル「Guruguru Brain」を立ち上げるなど、積極的に海外に進出。幾何学模様も海外の大型フェスに数多く出演し、話題となりました。

そんな彼らの最新アルバムである本作。今回、私が彼らの作品を聴くのは本作がはじめてですが、まずはいかにもサイケ風なジャケットが印象的。メンバーの写真も全員が長髪で、60年代あたりのサイケバンドがそのまま飛び出してきたような風貌が印象的なのですが、楽曲自体も60年代のサイケロックがそのまま継承したようなサウンドを奏でるようなバンドでした。

例えば「Effe」などはホーンセッションを入れつつも、レトロな様相のあるサイケサウンドが印象的ですし、「Cardboard Pile」もレトロな雰囲気の、懐かしさを感じさせるホーンの音色が印象に残りますし、「Gomugomu」なども、60年代テイストのギターサウンドがちりばめられたような楽曲に仕上げています。

ただ一方で、そんなレトロな雰囲気を醸し出しつつも、例えば「Dancing Blue」などのリズミカルなサウンドで奏でるグルーヴ感は、今風なものを感じますし、「Daydream Soda」の重低音のビートは、むしろ現在的なHIP HOPからの影響も感じさせるようなビート感が特徴的。バンドサウンドなどでは60年代の影響を色濃く感じさせる彼らですが、リズムに関しては、むしろ非常に現代的な要素を感じさせる部分が多く、この60年代のサイケと、現在のビートの融合が非常にユニークに感じました。

そしてもう一つユニークに感じたのは、彼らの楽曲、特にメロディーラインに関しては、非常に日本的なものを感じる点でした。特に1曲目「Monaka」は、日本の民謡のフレーズを取り込んだような郷愁感ただようメロディーが印象的。前述の「Dancing Blue」もグルーヴ感あふれるサウンドの中に流れるメロディーラインは日本的な哀愁感を覚えるメロ。「Yayoi,Iyayoi」も同様に、日本的な郷愁感が漂うメロが特徴的で、作品全体としてどこか日本的な部分を強く感じさせるものが印象的。海外に進出していながらも、いや、だからこそかもしれませんが、作品的には、むしろ積極的に「和」の要素を押し出しているように感じました。

現在と過去、日本と海外を巧みに融合させた作風が魅力的な彼ら。独自性もありますし、非常におもしろさを感じさせます。ただ、残念なことに本作で無期限の活動休止に入るとか。これだけの作品を作りながら、これが事実上最後の作品というのは非常に残念に感じます。いまからでも遅くないので、まだ彼らの作品に触れたことない方は是非ともチェックしてほしい、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

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2022年7月15日 (金)

コロナ禍の中でも変わらず!

レキシツアー2022 土偶サスペンス劇場~消えたレキシ男爵~

会場 名古屋国際会議場センチュリーホール 日時 2022年7月8日(金)18:30~

Rekishi_dogu

おなじみレキシのワンマンライブに足を運んできました!会場はまた、センチュリーホール。コロナ禍の中でも会場の定員規制も撤廃されて、ほぼ満員の会場に。ライブはほぼ定時にスタート。最初は恒例の「映像」からスタート。今回は「土偶サスペンス劇場」と題されているように、「火曜サスペンス劇場」のパロディーからスタート。池ちゃん扮するレキシ男爵が、自身の屋敷から忽然と姿を消したシーンが流れ、そしてライブがスタートとなります。

ライブはまず最新アルバム「レキシチ」の1曲目「ギガアイシテル」からスタート。そのまま「KATOKU」「姫君Shake!」とアップテンポなナンバーで盛り上げます。「姫君Shake!」の途中では、おなじみ(?)のカバー曲コーナーが。また例のごとく「名古屋出身のミュージシャン」ということになりますが、コロナ禍の中、観客からリクエストを募れないということで、メンバー間で誰だろう?という話になったのですが、そんな中、松平健の話が(正確には豊橋出身ですが)。そのため「マツケンサンバ」をカバーして盛り上がります。最後はチェッカーズ「涙のリクエスト」と続いていきます。

その後は、ここで早くも稲穂の登場!おなじみ「狩りから稲作へ」に、早くも突入。会場一面の光る稲穂が揺れるライブではおなじみのシーンとなりました。この日はそのまま「縄文ロンリーナイト」へ突入。2曲続けて稲穂が揺れていました。

続いてはメンバー紹介もかねてベーシスト、ヒロ出島こと山口寛男のいじり(?)に。ベーシストものまねということで、東京事変亀田誠治、細野晴臣、ハマオカモト、さらにはドリカムの中村正人のベースプレイの物まねに。特に胸の上あたりまでベースを持ち上げて身体を揺らしながらベースを弾く中村正人の物まねはソックリで、会場にも大笑いが巻き起こりました。そして、そんな盛り上がりのまま「Let's FUJIWARA」へ。ディスコチューンに会場は盛り上がります。そのまま「GOEMON」へと続いていきます。

その後はメンバー紹介で、この日のみ臨時で参加した島流しの刑こと鈴木圭の紹介へ。最初、スズキの会長の孫というジョークの紹介があり、一瞬真に受けてしまった・・・。その後、元気出せ!遣唐使こと渡和久がレキシに新撰組のユニフォームを手渡し、「鬼の副長HIZIKATA」へ。曲がはじまる前に、「ヒジ、カタ、コシ、ヒザ!」という曲の中の掛け声に合わせての振り付けの指導が簡単に行われ、曲がスタート。ヘヴィーな曲調に盛り上がりつつ、「ヒジ、カタ、コシ、ヒザ!」の掛け声ではみんな一斉に振り付けを行います。

そのまま「SHIKIBU」で盛り上がりつつ、一転、しんみり聴かせる「マイ草履」へ。ここで中盤。スクリーンが下りてきて、また映像が流れます。ここでは池ちゃんが古畑任三郎ならぬ池畑任三郎に扮して、消えたレキシ伯爵について推理するシーンに。最後は古畑任三郎のオープニング映像のパロディーまで飛び出し、そして後半戦がスタートとなりました。

後半戦ではまず「たぶんMaybe明治」から「大奥~ラビリンス~」で再び観客を盛り上げます。それから大河ドラマ「どうする家康」の主題歌に99.9%決定したらしい(笑)「ほととぎす」へ。ちなみに「SHIKIBU」が紫式部が主人公の再来年の大河ドラマにこちらも99.9%決定したそうです(笑)。さらにバラードナンバー「だって伊達」へ。バラードナンバーなので観客席に座っていいですよ、と呼びかけると、みんな一斉に座ります。「レキシのファンはアラフィフが多いので、みんな座りたくて仕方ない」と池ちゃんがいじっていました。いや、私も気持ちはよくわかりますし、この時ももちろんすぐに座りました(笑)。

さらに先日、NHKの番組「The Cover」に出演した話も。この時に、「年貢 for you」の合間にビートルズとさだまさしの曲を挟んできたバージョンの曲を歌ったそうですが、この日も、その時と同様、「年貢 for you」の間に「Let It Be」にさらにゴダイゴの「ビューティフルネーム」、さだまさしの「北の国から」「道化師のソネット」を上手く曲に挟み込んでカバーしていました。

本編ラストは「キラキラ武士」へ。ミラーボールも天井から降りてきて、みんなで踊ります。そしてラストには、イルカの着ぐるみが登場。これ「KMTR645」で登場してくるイルカの浮き輪「よしお」を着ぐるみにしたものですね。このよしおを池ちゃんが追いかけ、そのまま舞台から消え去り本編が終了。今回も例のごとく、よしおを池ちゃんが追いかけるシーンから映像がスタートします。

映像は「火サス」のおなじみのラストシーンに。よしおが崖っぷちに追い詰められているシーンで、なぜか船越英一郎扮する池ちゃんと、片桐なぎさ扮する(おなじみの)やついいちろうが登場。よしおが今回、浮き輪ではなく、感染症対策として、よしおに棒をつけた「よしお棒」になった経緯がコントで語られます。ここで何故かレキシ男爵は縄で縛られてダイナマイトがセットされている展開に。みんなでダイナマイトを回いあいしつつある中、ここで画面は一転、BTSの「Dynamite」のPVのパロディーに。BTSのパロディーが流れる中、恒例のバンドメンバーの変装は、今回はBTSの服装への変装となりました。

みんなBTSの服装で登場する中、ラストはやはりこの曲ということで「KMTR645」へ。いつもは大きなイルカ(よしお)の浮き輪が会場内にまわされて盛り上がるのですが、感染症対策として浮き輪はなしに。その代わりに、この日のグッズとして売られていた「よしお棒」をみんなで振り回します。そうしてライブは最高潮を迎える中で終了。最後は「聖母たちのララバイ」が流れる中、レキシとよしお(の着ぐるみ)が手を取り合いステージ上を回り、最後は抱き合いつつ、ステージは幕を下ろしました。

そんな訳で相変わらずネタ満載で楽しいレキシのライブ。相変わらず非常に楽しいステージでしたし、コロナ禍の感染症対策すら、ネタに変えるというあたり、レキシのエンターテイナーとしての実力を感じます。終わったのは21時10分頃。約2時間40分程度のステージで、いままでのライブがまるっと3時間のパフォーマンスだったということを考えると、彼としては短め。コロナ禍の中で、規制退場を行わなければいけない中、まるっと3時間という長さは会場の都合上、難しかったのでしょうか。ちょっと残念でしたが、いつものように非常に濃いステージになっていて、思いっきり楽しむことが出来ました。

前回、レキシのライブを見たのが、コロナ禍前最後のステージでした。今回、それから2年半ぶり。まだコロナ禍は終わる様相を見せていません。でも、次のレキシのライブの時は、マスクもはずして思いっきり声を出せる中、見たいなぁ。相変わらずとても楽しいステージ。次のレキシの名古屋ライブも、是非とも足を運びたいです!

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2022年7月14日 (木)

今週は「今どき」のチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は「おじさん」勢の活躍が目立ったチャートでしたが、今週の上位は、今どきのミュージシャンのアルバムが並んでいます。

まず1位は浦島坂田船「Toni9ht」がランクイン。ニコニコ動画やYou Tubeを舞台に活躍する4人組ユニット。CD販売数1位、ダウンロード数31位、PCによるCD読取数18位で総合順位で1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上5万3千枚で1位初登場。前作「L∞VE」の初動6万6千枚(1位)からはダウンとなっています。

2位には若手のロックバンド(といっても2013年結成なので、そろそろ中堅の域なのですが)Mrs GREEN APPLE「Unity」がランクイン。CD販売数3位、PCによるCD読取数は20位でしたが、ダウンロード数が1位にランクインし、総合順位は2位に。2020年に当面の活動休止を発表した彼らですが、2022年に活動再開。5人組バンドがメンバー2人脱退により3人組になってしまいましたが、活動休止前にリリースしたベストアルバム「5」からちょうど2年ぶりとなるミニアルバムで活動再開となっていまう。オリコンでは初動売上2万8千枚で3位初登場。直近のベストアルバム「5」の初動売上4万8千枚(1位)からはダウン。ただ、オリジナルアルバムとしての前作「Attitude」の2万6千枚(4位)からはアップしており、活動休止中にファン離れが起きなかったことを物語る結果となっています。

3位はジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「Made in」が先週の1位から2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、5位には女性声優水樹奈々「DELIGHTED REVIVER」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数11位。オリコンでは初動売上2万枚で5位初登場。前作「CANNONBALL RUNNING」の初動3万5千枚(3位)からダウンしています。

8位には、現在「シンデレラボーイ」がHot100でロングヒット中のSaucy Dogのミニアルバム「サニーボトル」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数19位。オリコンでは初動売上1万枚で9位初登場。前作「レイジーサンデー」の3千枚(13位)からアップ。オリコンでは自身初のベスト10ヒットとなっています。

9位初登場はゴスペラーズ「The Gospellers Works 2」。CD販売数9位、ダウンロード数20位、PCによるCD読取数65位。ゴスペラーズ初のセルフカバーアルバム。オリコンでは初動売上1万枚で11位初登場。直近作「アカペラ2」の初動1万2千枚(5位)からダウンしています。

最後10位には佐野元春&THE COYOTE BAND「今、何処」が初登場。CD販売数10位、ダウンロード数18位、PCによるCD読取数47位。先週は「おじさん」の活躍を取り上げましたが、佐野元春も御年66歳という十分な「おじさん」。ただ、今年に入り、4月にリリースした「ENTERTAINMENT!」以来2作目と、積極的な活動が目立ちます。オリコンでは初動売上8千枚で12位初登場。直近作は(「ENTERTAINMENT!」が配信限定アルバムだったので)ベストアルバム「THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005-2020」で、同作の初動5千枚(14位)からアップ。オリジナルとしては前作「或る秋の日」の4千枚(14位)からアップしています。ちなみにおじさん勢は今週も山下達郎「SOFTLY」が6位に、吉田拓郎「ah-面白かった」が7位にそれぞれランクインしており、まだまだ強さを見せつけています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年7月13日 (水)

ヒゲダン旋風再び?

今週のHot100

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見事2週連続1位獲得です。

今週1位はOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が2週連続で獲得。ストリーミング数が3週連続1位を獲得。ダウンロード数も2位から1位にアップし、2週ぶりに1位を獲得。You Tube再生回数も6位から4位にアップし、見事、2週連続通算3週目の1位獲得となりました。これで13週連続ベスト10ヒット&通算11週目のベスト3ヒットとなります。主に2019年から2020年にかけて吹き荒れたヒゲダン旋風ですが、この曲で再びヒゲダン旋風が巻き起こりそうです。

2位はSEKAI NO OWARI「Habit」が先週から引き続き同順位をキープ。You Tube再生回数は7週連続で1位を獲得。ストリーミング数も5週連続2位となっており、これで9週連続ベスト10ヒット&5週連続ベスト3入りとなります。しばらく、ヒゲダンとセカオワのデッドヒートが繰り広げられそうです。

3位は初登場曲。ジャニーズ系アイドルグループ関ジャニ∞「喝采」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数25位、その他のチャートは圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上15万枚で1位初登場。前作「ひとりにしないよ」の初動20万1千枚(1位)よりダウンしています。

7位にはwacci「恋だろ」が先週の38位からランクアップし、ベスト10初登場となりました。本作はフジテレビ系ドラマ「やんごとなき一族」挿入歌。6月30日にドラマが最終回を迎えた影響などもあり、ストリーミング数が73位から8位、You Tube再生回数も22位から3位に大きくランクアップし、見事ベスト10入りを果たしました。wacciは5人組のロックバンド。デビューが2012年というから、既に中堅どころのバンドで、いままでの曲もドラマやアニメ主題歌などタイアップには比較的恵まれてきたようですが、いまひとつ大ブレイクには至っていませんでした。ただ、2021年に武道館ライブも実施し、徐々に人気を確保してきた模様。さらにこの曲で本格的なブレイクとなるのでしょうか。

9位にはフォーエイト48「ロミエット」が先週の69位からランクアップ。CDリリースに合わせてベスト10入りとなりました。CD販売数2位、ストリーミング数69位。You TuberやTik Tokerとして活動する7人組グループ。本作がデビューシングルとなります。オリコンでは初動売上3万4千枚で2位初登場。

今週の初登場曲は以上。一方、ロングヒット曲は、まずはTani Yuuki「W / X / Y」が先週の7位から4位にアップ。ストリーミング数は先週と変わらず3位。You Tube再生回数が8位から10位にダウン。一方、ダウンロード数が13位から7位にアップしています。これで14週連続のベスト10ヒットに。

Saucy Dog「シンデレラボーイ」は先週と変わらず6位をキープ。ストリーミング数4位、カラオケ歌唱回数2位は先週から変わらず。これで通算23週目のベスト10ヒットになりました。

さらに優里「ベテルギウス」は8位から10位にダウン。ストリーミング数は4週連続の6位をキープ。これで通算34週目のベスト10ヒットとなります。ただ一方、「ドライフラワー」は先週の9位から11位にダウン。ベスト10ヒットは通算77週でとりあえずはストップです。

今週のHot 100は以上。明日はHot Albums!

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2022年7月12日 (火)

70年代、80年代ロックを等距離で取り込む

Title:Boat Songs
Musician:MJ Lenderman

アメリカはノースカロライナ州ナッシュビルを拠点に活動するシューゲイザー系インディーロックバンドWEDNESDAY。そのギタリストとして活躍しているJake Lendermanによるソロプロジェクトによる新作。彼が所属しているWEDNESDAYも、もちろん彼自身も全く初耳なのですが、このアルバムが高い評価を受けているのを知り、今回はじめて聴いてみました。

そして、これが非常におもしろいアルバムに仕上がっていました。一言で言えば、80年代インディーロックと70年代ロックの融合体のようなスタイル。1曲目「Hangover Game」は強烈なギターのフィードバックノイズが楽曲全体に貫かれつつ、ポップなメロディーを聴かせる、シューゲイザー系直系の80年代インディーギターロック。かと思えば続く「You Have Bought Yourself A Boat」はソウルミュージックへの憧憬も感じさせるような70年代ロックに仕上がっていますし、続く「TLC Cagematch」はアメリカの壮大な大地を彷彿とさせるようなカントリーロックからの影響の強い楽曲となっています。

その後も「SUV」はノイジーでヘヴィーなサウンドが全編で流れる、ガレージやパンクの影響も感じさせる楽曲に。かと思えば「Under Control」ではスライドギターも入ってしんみりと聴かせるカントリーロックに一気に変化しますし、「Dan Marino」はこもった感じのサウンドプロデュースがレトロな雰囲気を感じさせるギターロック。「You Are Every Girl to Me」も疾走感あるリズムにポップなメロ、ギターのフィードバックノイズが全面を覆う構成に、80年代のインディーロックからの影響を強く感じます。

最後の「Six Flags」はアルバムの中でも6分超という最長の長さとなっている曲ですが、こちらは不気味な雰囲気のサイケなサウンドからスタート。ローファイ気味な歌とギターの歪んだ音を前面に押し出した、シューゲイザー以上にサイケロックからの影響の強い楽曲に仕上がっており、こちらも80年代以上に70年代の色合いの強い作品となっています。

シューゲイザー系や、その後のオルタナ系ロックに軸足を置きつつ、カントリーロック、ブルースロック、サイケロックといった70年代のロックを等距離に取り入れたサウンドが独特でユニーク。カントリーロックやブルースロックといった要素は、言ってしまえば既に数多くのミュージシャンが取り入れてきた「よくあるスタイル」でありますし、またシューゲイザーを取り入れているバンドもこれまた多いのですが、このようなサウンドを同時に、それも等距離に取り入れているというスタイルに独自性と新しさを強く感じます。

全体に貫かれているシューゲイザー系からの影響もあり、個人的にかなり壺にはまったミュージシャンですし、また、音楽的にも文句なしの傑作。今年のベスト盤候補の1枚と言える作品でした。また、これを機にWEDNESDAYの楽曲もYou Tubeで試聴してみたのですが、こちらもかなり良さそうで、アルバムも聴いてみたいかも・・・。オルタナロック好きから、ブルース、カントリーロック好きまで幅広くお勧めできる作品です。

評価:★★★★★

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2022年7月11日 (月)

海外からの逆輸入

Title:SUPER CHAMPON
Musician:おとぼけビ~バ~

くるりの出身母体としても音楽ファンに知名度も高い、立命館大学のサークル「ロックコミューン」出身の4人組ガールズバンド、おとぼけビ~バ~。もともと結成が2009年というから、そこそこ中堅どころの経歴を持ったバンドなのですが、当初、日本ではさほど話題にならなかった一方、海外のインディーレーベルからCDをリリースし、海外で徐々に話題に。2018年にはアメリカ最大の音楽フェス「コーチェラ2018」に出演するなど話題となり、逆輸入的に日本でも話題となりつつあります。

本作は5枚目となるフルアルバム。私もちょっと前から彼女たちの名前は聞いたことあったのですが、彼女たちの音楽を聴くのはこれがはじめて。楽曲的にはシンプルなパンクロックをメインとした作風で、本作も全18曲入りというボリュームながらアルバムの長さは21分という、1曲あたり平均2分に満たない内容。そんな中でも「I won't dish out salads (サラダ取り分けませんことよ)」「I checked your cellphone (携帯みてしまいました)」のようなハードコア色が強い作品が比較的目立つ、ヘヴィーな作風が特徴的。バンドとしての演奏力は申し分ない迫力あるパフォーマンスを聴かせてくれており、このあたりが海外で高い評価を受けており大きな要因なのかもしれません。

また、それに加えて大きなインパクトとなっているのが彼女たちの歌詞でした。コミカルながらも女性の心境や、ちょっとした社会風刺をコミカルかつシニカルに描いており、ユーモラスかつ端的な歌詞なだけにサラッと軽く流してしまいがちなのですが、よくよく考えたら、このシニカルさとユーモアさを兼ね備えた歌詞の世界は、なにげに奥の深いものすら感じます。

例えば一番典型的なのが「I won't dish out salads (サラダ取り分けませんことよ)」なんかで、飲み会の席などで気を遣わせることを強制する日本の社会をコミカルに皮肉っていますし、「Dirty old fart is waiting for my reaction (ジジイ is waiting for my reaction)」なども、セクハラ気味のオヤジのことを皮肉っています。

一方で「Leave me alone! No, stay with me! (リーブミーアローンやっぱさっきのなしでステイウィズミ)」はタイトル通りの描写で揺れ動く女性の心境をストレートに描いていますし、かと思えば「I put my love to you in a song JASRAC (あなたとの恋、歌にしてJASRAC)」などはタイトル通り、JASRACへの風刺を含んだ社会的な歌詞。ヘヴィーなサウンド同様、なにげに骨太なスタンスを感じる歌詞が大きな魅力に感じます。

ただ、ここらへんの歌詞については、日本社会や日本文化に大きくリンクした歌詞が多く、海外で多く活動するバンドとして、こういう歌詞が受け入れられているのが不思議な感じが・・・特に「Where did you buy such a nice watch you are wearing now (あらあんたえらいええ時計してそれどこで買いはったん)」なんかは京都弁特有の婉曲表現として有名な表現(暗に「話が長い」と言っている)で、ここらへん、日本人でもわからないかもしれないんですが・・・ま、私たちも洋楽のほどんどは歌詞の意味もわからずに聴いているので、お互い様なのですが。

逆輸入的に日本でも徐々に話題となっている彼女たち。はじめて聴いたのですが、力強いバンドサウンドはもちろん、コミカルでシニカルな歌詞の世界も楽しめたアルバム。今後、さらに日本でも注目度はあがりそうな予感も。また海外でもさらなるブレイクも?期待したいところです。

評価:★★★★★

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2022年7月10日 (日)

ベルセバらしさの中に多彩な音楽性が

Title:A Bit of Previous
Muisician:Belle and Sebastian

実に7年ぶりとなるベルセバのニューアルバム。え?そんなに久しぶりだっけ??といった感じもするのですが、確かに昨年はライブアルバムをリリースしていますし、2019年には映画のサントラを兼ねた「Days of the Bagnold Summer」をリリースし、さらにその1年前には、3枚のEP盤を1枚にまとめた「How To Solve Our Human Problems」をリリースしていますし、そういう意味ではオリジナルアルバムこそ7年というインターバルを経てのリリースですが、その間も積極的な活動を続けており、7年ぶりという印象は全く感じさせません。

そんな彼らのニューアルバムですが、もともとはロサンジェルスのスタジオで制作する予定だったのですが、コロナ禍により急遽予定は変更。故郷、グラスゴーのスタジオに通いつつ制作されたそうです。そのような制作環境が影響されたのか・・・どうかはわかりませんが、非常にベルセバらしいアルバムに仕上がっていたように思います。

アルバムの冒頭を飾る「Young and Stupid」は、アコースティックなサウンドにメロディアスで爽快な美メロが心地よいネオアコ直系の彼ららしさを感じさせる曲からスタート。ギターのアルペジオとピアノをバックにしんみりと美しい歌を聴かせるフォーキーな「Do It for Your Century」は、まさに彼らの真骨頂とも言える楽曲になっています。

一方で、そんな実にベルセバらしい楽曲を軸にしつつも、何気に多彩な音楽性を取り込んできているのも特徴的で、例えば「If They're Shooting At You」など、本筋はベルセバらしい美メロを聴かせつつ、ファンク、ゴスペル、ソウルなどの要素を上手く溶け込ませていますし、オリジナルアルバムとしての前作「Girls in Peacetime Want To Dance」で聴かせてくれたエレクトロ路線も「Talk to Me,Talk to Me」「Prophets On Hold」などで健在。軽快なシンセのサウンドを取り込んでいます。

他にも疾走感あるギターロックを聴かせる「Unnecessary Drama」や、ちょっとジャジーなピアノに、シティポップっぽさも感じる「Come On Home」など、バラエティー豊富。ただ、あらためてベルセバのアルバムを聴くと、思った以上にソウルやファンクからの影響の強さも感じます。今回のアルバムは、特にそのような方向性が強かったのではないでしょうか。

ただ、そんな多彩な音楽性を取り込みつつも、全体的にはベルセバらしい美メロの歌を聴かせるネオアコ路線で貫かれており、その点、実にベルセバらしいアルバムになっていたと思いますし、またアルバムとしての統一感のある作品になっていました。オリジナルアルバムとしては、ここ数作の中でベストと言える内容ではないでしょうか。あらためてベルセバの魅力に酔いしれた1枚でした。

評価:★★★★★

Belle and Sebastian 過去の作品
Write About Love(ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~)
Girls in Peacetime Want To Dance
How To Solve Our Human Problems
Days of The Bagnold Summer
What To Look For In Summer


ほかに聴いたアルバム

It's Time...to Rise From The Grave/Undeath

アメリカのデスメタルバンドによるニューアルバム。デスメタルバンドらしい、デス声にヘヴィーなサウンドを聴かせてくれるバンドで、音楽的な評価も高い模様。確かに、ヘヴィーなバンドサウンドは単純に力業といった感じに留まらない凝ったサウンドを聴かせてくれるだけに、デスメタルなどを普段聴かない私でも最後まで楽しめる作品になっていたのですが、ただ、全体的にはちょっと一本調子だったかな?いいアルバムだとは思うのですが。

評価:★★★★

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2022年7月 9日 (土)

聴いたままのコンセプトアルバム

Title:We
Musician:Arcade Fire

カナダのインディーロックバンドによる約5年ぶりのニューアルバム。2004年にリリースされたデビュー作「Funeral」が高い評価を得て、その後もアルバムをリリースするたびに、各所で絶賛が続きました。特に2010年にリリースされたアルバム「The Suburbs」はグラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞。人気面でもそれに呼応するかのように、同作から前作「Everything Now」まで全米、全英チャート共に3作同時連続1位獲得と、人気の面でも「インディーロック」の枠組みを超える人気バンドとまで成長しています。

ただ前作「Everything Now」は良作ではあったものの、大絶賛を持って迎え入れられたそれまでのアルバムに比べると、若干評価は低め。個人的にも十分「傑作」という評価は出来るものの、メロディーラインに少々陳腐さを感じ、いままでのアルバムと比べると、物足りなさを少し感じたのも事実でした。実際、その影響もあってか、本作では全英チャートでは見事1位を獲得したものの、アメリカビルボードでは最高位6位に留まっています。

そしてそんな中リリースされた、ちょっと久々となる新作。アルバムを聴き始めると、1曲目「Age of AnxietyⅠ」では狂おしいほど切ないメロディーとピアノを中心としたサウンドがまずグッと心を捉える作品に仕上がっています。アコースティックベースの1曲目と対になりつつも、1曲目と連作になる「Age of AnxietyⅡ」では、四つ打ちの打ち込みのリズムが入ってくるものの、こちらも切ないメロディーがとにかく美しい楽曲。

インターリュード的な曲を挟み、4曲目5曲目に連作として続く「End of The Empre Ⅰ-Ⅲ」「End of the Empire Ⅳ(Sagittarius A*)」も同じく連作。途中、ストリングスでスケール感を出したり、静かなホーンセッションを入れたりとバラエティーを出しつつ、こちらも狂おしいまでのメランコリックなメロディーラインが胸をギュッとつかまれるような作品になっています。

メランコリックで切なさを感じる前半から一転、「The LightningⅠ」は分厚いバンドサウンドで後半はダイナミックに展開しつつ、明るさを感じさせるインパクトのある楽曲。疾走感ありポップな楽曲「The Lightning Ⅱ」への展開はメロディーラインに分厚いサウンドにもインパクトがあり、このアルバムの中で核となっています。

終盤の「Unconditional Ⅰ(Lookout Kid)」「UnconditionalⅡ(Race and Religion)」はトライバルなリズムやアコースティックなサウンドを用いつつ、途中ではエレクトロサウンドを用いたり、ラテンなリズムが入ってくるなどバラエティー豊かな作風ながらも非常に祝祭色を感じる明るいポップチューン。そしてラストのタイトルチューン「WE」では最初はアコギでフォーキーにスタートしつつ、最後はピアノとストリングスで重厚に、しかし安らかな希望に満ちた雰囲気で、まさに大団円のようにアルバムは幕を下ろします。

メランコリックなメロとサウンドで悲しみに胸を押しつぶされるような前半から、希望を感じさせる後半、そして安らぎも感じることが出来るラストと、アルバムの構成的にもかなりわかりやすい本作。実は楽曲から受けるイメージの通り、コンセプチュアルな作品になっているそうで、前半は主人公がこの世界から脱出したいと願い、銀河の真ん中にあるブラックホール(Sagittarius A*=いて座A*)を見つめる話。しかし、そこにたどり着いた時に彼が見つけたのは、自分自身であり自分の目だったそうで、自分の苦痛ですら、実は自分の内面に抱えたものである、ということを表現したかったそうです。そして自分を受け入れた結果が後半で感じられる希望や安らぎだそうで、歌詞の内容まではストレートにわからないのですが、この物語の道筋は、歌詞がわからなくても非常にわかりやすく感じることが出来、そういう意味でも優れたアルバムに感じました。

傑作とは思うけど・・・とちょっと保留のついた前作と比べると、今回のアルバムは文句なしに傑作と言える内容だったと思います。Arcade Fireの本格的復活とも言える作品ではないでしょうか。さすがの実力を感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

ARCADE FIRE 過去の作品
THE SUBURBS
REFLEKTOR
Everything Now


ほかに聴いたアルバム

AIR/SAULT

ここ最近、アルバムをリリースする毎に高い評価を得ているイギリスのポストパンクバンドSAULT。バンド構成員も謎ながら、そのどす黒いファンキーなサウンドがとんでもなくカッコいいアルバムをリリースし続けているのですが、今回リリースされた最新作は、なんと全編オーケストラアレンジ。いままでの作品とはガラッと変わった作品に戸惑ってしまったのですが、ただ一方でメロディアスな豊かな音楽性は健在。今回も各メディアなどで高い評価を受けているようで、その実力を感じさせます・・・・・・・が、やはりいままでのファンキーでどす黒いグルーヴ感がカッコよかった作品と比べると、オーケストラアレンジの作品は、ちょっと薄味的な物足りなさは感じてしまいます。これもこれで彼らの音楽性の幅を感じさせるアルバムであるとはわかるのですが、次回作はやはり以前のようなファンキーな傑作が聴きたいなぁ。

評価:★★★★

SAULT 過去の作品
Untilted(Black is)
Untitled(Rise)
NINE

Alpha Games/Bloc Party

イギリスのギターロックバンドによる6枚目のオリジナルアルバム。打ち込みも積極的に用いたダンサナブルなギターロックバンドというイメージのある彼らですが、約6年3ヶ月ぶりと、かなり久しぶりとなった本作では打ち込みは鳴りを潜め、ギターサウンドを前面に押し出したロックチューンを聴かせてくれます。心地よくメロディアスなサウンドは以前の彼らと同様で、比較的素直なギターロック路線を楽しむことが出来る反面、Bloc Partyらしい個性はちょっと薄くなったかも。

評価:★★★★

BLOC PARTY 過去の作品
Intimacy
FOUR
HYMS

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2022年7月 8日 (金)

90年代J-POPに大きな影響を与えたバンド

Title:BEAT-UP ~UP-BEAT Complete Singles~
Musician:UP-BEAT

今回紹介するのは80年代後半から90年代前半にかけて活躍したロックバンドUP-BEATが、結成40周年、デビュー35周年を記念してリリースしたコンプリートシングルコレクション。1987年にリリースしたシングル「KISS IN THE MOONLIGHT」がフジテレビ系ドラマ「同級生は13歳」の主題歌となりスマッシュヒットを記録し、一躍注目を集めました。

とはいっても、人気面で言えば、彼らの先輩格にあたるBOOWYや、同じ時代に人気を博したTHE BLUE HEARTSなどと比べると、若干後塵を拝する感は否めません。アルバムは1989年にリリースした「UNDER THE SUN」や、その翌年にリリースしたベストアルバム「HAMMER MUSIC」で最高位4位を記録しているものの、シングルチャートは1988年にリリースした「DEAR VENUS」の18位が最高。私も80年代後半あたりからは、リアルタイムでヒット曲を聴いていた世代ではあるものの、今回彼らのシングル曲を聴いても、正直なところ聴いた覚えがある、という作品はありませんでした。

ただ一方で、今でもPENICILLINのHAKUEIやGLAYのTAKUROをはじめ、数多くのミュージシャンたちがその影響を公言しており、90年代以降のJ-POPシーンにも大きな影響を与えているミュージシャンで、そういう意味で実際のCDの販売数以上に重要なバンドと言えるでしょう。実際、このジャケット写真からしても、どこか90年代以降へのヴィジュアル系バンドへの影響も感じさせます。

実際、楽曲的にもあきらかにその後の90年代J-POPへのつながりを感じさせるスタイルが多く、彼ら自身もおそらくBOOWYに影響を受けているのでしょうが、いわゆるビートロックと呼ばれるような、ハードロックやグラムロックを日本風に解釈したバンドサウンドに、あか抜けた感がありつつも、どこか歌謡曲テイストも残した、転調を多用するメロディーラインというスタイルは、その後のGLAYや、そのほかヴィジュアル系と呼ばれるバンドへの影響を強く感じます。

ただ一方、彼らに影響を受けた90年代以降のJ-POPバンドが、洋楽からの影響を切り離してしまい、悪い意味でドメスティックな路線を突き進んでしまっていたのに対して、彼らに関しては、そのルーツを楽曲の中から強く感じます。ここらへん、同じくロックを歌謡曲的に解釈しつつ、ルーツはしっかり残していたBOOWYと似たような雰囲気を感じさせます。もともと彼らは、出自的にラモーンズのコピーバンドからスタートしたそうですので、それだけ洋楽からの影響も強いのでしょう。例えば「Go-Go Girl」などは完全に60年代のロックンロールの色合いを強く感じますし、「Black&Red」でもしっかりとモータウンビートを取り入れた軽快なロックンロールに仕上げています。

ちょっとベタな、その後のヴィジュアル系っぽさを感じるJ-POP的な曲も少なくなく、その点はちょっと今一つに感じる曲も少なくはないのですが、そこらへんを含めてもポップ的にインパクトある曲も多く、全38曲3時間弱というボリューム感で、そのすべてが今回はじめて聴いた曲なのですが、最後まで飽きることなく一気に聴き切れるアルバムになっていました。BOOWYや90年代J-POPが好きな方なら、ある種の懐かしさを感じつつ、楽しめるアルバムではないでしょうか。もちろん、リアルタイムにUP-BEATを聴いていた方は要チェックと言えるシングルコレクション。80年代後半から90年代前半の時代を感じながら楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

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2022年7月 7日 (木)

おじさんが目立つチャート

今週のHot Albums

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今週のHot Albumsでは、1枚、大きな注目を集めたアルバムがありました。それが今週2位に初登場した吉田拓郎「ah-面白かった」。ご存じの通り、70年代のフォークミュージックシーンの代表的なミュージシャンで、日本ポップス史上に残る「レジェンド」といって間違いないミュージシャン。しかし、76歳を迎えた今年、全ての音楽活動からの引退を表明。自身のラジオ番組も年内での終了がアナウンスされ、先日のテレビ番組「LOVE LOVE あいしてる」の出演も最後のテレビ出演とアナウンス。さらに本作が最後のオリジナルアルバムとアナウンスされました。

その影響もあって本作はCD販売数2位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数で4位を記録し、総合順位も2位という結果に。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上4万6千枚を売り上げて、2位に初登場。前作「From T」の初動1万1千枚(10位)を大きく上回り、オリコンでは、1979年にリリースされたライブアルバム「TAKURO TOUR 1979」以来ということ。最後のアルバムということで、かつてのファンからの注目も集めているのでしょうし、これを機に、はじめて彼のアルバムを聴いてみたという方も少なくないのでしょう。まだまだ元気な彼が、この段階で音楽活動をやめてしまうのは残念ですが、ただ確かに一般企業ならば、既にとっくに退職している年齢。そう考えると引退は仕方ないのかもしれません。もっとも、元気である以上、再び活動意欲が芽生え、「やはりもう1枚アルバムをつくりました」ということも十分考えられるのですが。

さて今週のチャートは吉田拓郎をはじめ、「おじさん」のミュージシャンのランクインが目立っています。4位には山下達郎(69歳)「SOFTLY」が先週の2位からダウンしているもののベスト10入り。8位にも小田和正(74歳)「early summer 2022」がランクインしています。ビートルズが誕生して60年近くが経過し、ポピュラーミュージックのミュージシャンもどんどん高齢化してきているのは日本に限らないのですが、今週のチャートはそんな元気なおじさんたちを象徴するチャートとなっています。ちなみに小田和正も、前作「小田日和」をリリースした時に「最後から2番目(の気持ちで)」と言っていたのですが、このアルバムが最後でもおかしくなかったのですが、まだまだ音楽活動への意欲は旺盛らしいですね。いつまでもお元気で!(と、今の時代、まだそう声をかける年齢でもないのかもしれませんが)

そしておじさんというとファンからは怒られるかもしれませんが、今週アルバム「SEES」が5位に初登場してきたゆずも、メンバー2人とも45歳で世間の水準で言えば十分「おじさん」。CD販売数5位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数5位。オリコンでは初動売上3万枚で4位初登場。前作「PEOPLE」の3万5千枚(2位)からダウンしています。

さて、そんなおじさんが目立ったチャートでしたが、1位を獲得したのは平均年齢25歳という男性アイドルグループKing&Prince「Made in」。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得し、総合順位でも1位となりました。オリコンでも初動売上48万5千枚で1位初登場。前作「Re:Sense」の初動45万8千枚(1位)よりアップしています。ただ、平均年齢25歳というのは、一昔前なら、アイドルグループとしては、かなり「年齢がいっている」という印象だったのですが、ここらへんもすっかり変わってしまいましたね・・・。

3位にはAKB系女性アイドルグループNGT48「未完成の未来」がランクイン。メンバー山口真帆への暴行事件で話題となったグループ。事件の内容から、このグループが活動を続けるのはおかしいと思っているので、書かせていただきます。オリコンでは初動売上3万1千枚で3位に初登場しています。本作がデビュー作。

続いて4位以下の初登場盤ですが、あと1作のみ。9位に韓国の男性アイドルグループSHINeeのメンバーONEW(オンユ)によるソロアルバム「Life goes on」がランクイン。7月6日リリース予定のアルバムですが、先行配信でダウンロード数が1位を獲得し、見事ベスト10入りとなりました。

またベスト10返り咲きも1作。「トップガン マーヴェリック オリジナル・サウンドトラック」が先週の11位から10位にランクアップ。2週ぶりにベスト10返り咲きとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年7月 6日 (水)

1位返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はロングヒット中のあの曲が1位返り咲きとなりました。

今週1位を獲得したのはOfficial髭男dism「ミックスナッツ」。7週ぶりの1位返り咲きとなりました。先週3位にランクインしたCD販売数は19位にダウン。ダウンロード数も1位から2位にダウンしているものの、ストリーミング数は今週も1位を獲得。PCによるCD読取数が先週と変わらず2位、You Tube再生回数も先週と変わらず6位をキープした結果、通算2週目の1位獲得となりました。これで12週連続のベスト10ヒット&通算10週目のベスト3ヒットとなります。

2位は先週1位のSEKAI NO OWARI「Habit」がワンランクダウン。You Tube再生回数は今週も変わらず1位をキープしたほか、ストリーミング数も先週と変わらず2位にランクインしていますが、ダウンロード数は3位から4位に、CD販売数は4位から27位にダウン。結果、2週連続の1位とはなりませんでした。ただ、これで8週連続のベスト10ヒットに。今後、ロングヒットとなりそうです。

3位は初登場曲。ハロプロ系女性アイドルグループつばきファクトリー「アドレナリン・ダメ」がランクインです。CD販売数は1位でしたが、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数33位、Twitterつぶやき数72位にランクイン。総合順位は3位となりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上7万枚で1位初登場。前作「涙のヒロイン降板劇」の初動5万8千枚(3位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場曲は1曲のみ。NAYEON「POP!」が先週の51位から5位に大きくアップし、チャートイン2週目にしてベスト10入りを果たしました。NAYEON(ナヨン)は韓国の女性アイドルグループTWICEのメンバー。6月24日にリリースされたデビューEP「IM NAYEON」の代表曲となります。ストリーミング数が5位、You Tube再生回数が2位にランクインしたほか、ダウンロード数26位、ラジオオンエア数99位、Twitterつぶやき数29位にランクイン。総合順位は5位となりました。

続いてロングヒット曲ですが、まずはTani Yuuki「W / X / Y」は先週と変わらず7位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず3位、You Tube再生回数が11位から8位と再びアップしました。これでベスト10ヒットは13週連続となりました。

Saucy Dog「シンデレラボーイ」は先週の7位からさらに順位を上げ6位にアップ。今週、ストリーミング数が5位から4位にアップ。カラオケ歌唱回数も2位をキープし、総合順位はこの位置に。これで通算22週目のベスト10ヒットとなりました。

優里「ベテルギウス」が先週と変わらず8位をキープ。「ドライフラワー」は先週と変わらず9位にランクインしています。これで「ベテルギウス」は通算33週目、「ドライフラワー」は通算77週目のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot100!

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2022年7月 5日 (火)

90年代に一世を風靡したボーカリストのオールタイムベスト

Title:永劫回帰Ⅰ
Musician:上杉昇

1990年代中盤、いわゆるビーイング系ブームの中で中心的存在だったバンドWANDS。1992年にシングル「もっと強く抱きしめたなら」が大ヒットを記録した後、ヒット曲を連発していきました。そのボーカリストとして一時期、時の人となったのが上杉昇です。しかし、このビーイングという事務所は、非常に商業主義の強い事務所であったため、当時のビーイング系ブームで一世を風靡したバンドの多くが、のちにビーイングを離れていきます。

そんな中でも、ビーイング系を離れた理由がもっとも明確だったのが彼、上杉昇。1997年に脱退した後、同じくWANDSを脱退した柴崎浩と共にal.ni.coというユニットを結成するのですが、明確な歌謡ロックだったWANDSの作風から一転、洋楽テイストの強いグランジ系ロック路線にシフト。WANDS時代にも、同じくグランジ系の曲をリリースしていたこともあり、あきらかにWANDSとは求める音楽性が大きく異なるのだな、ということが誰からも明確にわかる脱退理由となっていました。

その後、al.ni.coも解散。猫騙というバンドを結成するのですが、こちらも活動休止状態になり、現在はソロで活動を続ける彼。そんな彼もWANDS時代から既に活動30年というキャリアを誇るのですが、その活動30周年を記念してリリースされたオールタイムベストが本作。ラルクのプロデューサーとしても知られる岡野ハジメがレコーディングプロデューサーを手掛け、一部は2021年バージョンに再レコーディング。al.ni.coや猫騙、ソロ自体はもちろんのこと、WANDS時代の曲も収録されている、文字通りの上杉昇のキャリアを通じたオールタイムベストとなっています。

もちろんWANDS時代を含めたオールタイムベストとはいえ、「もっと強く抱きしめたらなら」のような歌謡ポップ色の強い作品は収録されておらず、基本的に彼の音楽的志向にマッチしたグランジ系ロック路線の曲が並びます。サウンドについては、グランジ系ロックの王道を行くような歪んだギターサウンドを中心に据えたヘヴィーなバンドサウンドというスタイルであり、目新しさは感じられません。ただ、その分、音楽性としてはある意味非常に素直という印象もあり、ロックミュージックへの率直な愛情を感じることが出来ます。

ダイナミックなバンドサウンドは迫力もあり非常にカッコよく、もし初期WANDSのようなイメージを持っているとしたらもったいない感じ。ちょっとくすんだ感じの世界も統一感もあり、サウンドにマッチ。グランジ系、オルタナ系ロックが好きなら文句なしにチェックしてほしいアルバムだと思います。

そしてそんな中、ある程度以上の年齢の方なら聴いたことがあるかもしれないのが「Same Side」。1995年にリリースされたWANDSのシングル曲で、当時は最高位2位を記録するヒットナンバーとなっています。ノイジーなバンドサウンドをベースとしながらも、一方、メロディーラインは非常にポップにまとまっている曲調。これだけポップにしないとシングルリリースできなかったんだろうな、という点にビーイングとしての限界を感じる一方、バンドサウンドとポップなメロディーのバランスが逆に楽曲のおもしろさを作り出しており、このベスト盤の中でもちょうどよいインパクトとなっています。

また、今回あらためて聴くと上杉昇のボーカルも魅力的。曲によっては声をあえてつぶしてシャウト気味のボーカルを聴かせてくれるのですが、迫力がありつつも端正で、どこか色気を感じさせます。ここらへんの魅力的なボーカルが、WANDSとしてビーイング自体に神輿をかつがれた大きな要因だったのかもしれません。

素直にグランジロックの魅力を体感できるオールタイムベスト。また、WANDS時代から今まで、同じスタイルを貫いているあたりもロックが好きなんだろうなぁ、という点を素直に感じさせます。彼の作品を聴いたのはal.ni.co時代以来なのですが、あらためて魅力的なミュージシャンだと感じました。「未来永劫Ⅰ」というタイトル通り、「Ⅱ」もリリースされているので、そちらも近日中に聴く予定。楽しみです!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

妙齢/中村中

シンガーソングライター、中村中のオールタイムベストアルバム。あれ?ちょっと前にベストアルバムをリリースしたばかりじゃ?と思ったら、前のベストアルバム「若気の至り」から、もう11年も経つんですね・・・あらためて、月日の経つのは早いなぁ・・・。楽曲は、哀愁感あるメロディーラインを彼女の力強い歌声でしっかりと聴かせるスタイルがメイン。その中でも一貫して、社会の中の弱者からの視点というスタイルは一貫しており、彼女の大きな特徴となっています。今回のベスト盤に収録された新曲「あいつはいつかのあなたなのかもしれない」もまさにそんな彼女らしい歌詞で、弱者に対して他人事とみがちな人たちへの警鐘を鳴らしている曲。ある意味、彼女流の「Like a Rolling Stone」とも感じられるような曲で、今に至っても全く変化のない彼女のスタンスを強く感じさせます。個人的には、常々、もっと注目されて売れてもいいミュージシャンだと思っているのですが・・・。

評価:★★★★★

中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
若気の至り
二番煎じ

聞こえる
世界のみかた
去年も、今年も、来年も、
ベター・ハーフ
るつぼ
未熟もの

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2022年7月 4日 (月)

よりファンクネスが増したライブ音源

Title:Live At Okinawa 2022
Musician:ZAZEN BOYS

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最近は、NUMBER GIRLとしての活動も再開させ、さらに多忙となった向井秀徳。もちろん、ZAZEN BOYSとしての活動もコンスタントに行っており、特に昨年は、無観客ライブとはいえ、ZAZEN BOYSとNUMBER GIRLの対バンという夢の共演ライブを実現させてくれたりもしています。ただ一方、ZAZEN BOYSとしての新作は2012年のアルバム「すとーりーず」以来発表されておらず、ファンとしてはちょっと寂しい気持ちも持っていたりします。

そんなファンとしてはZAZEN BOYSの新譜を渇望する中リリースされたのが今回のライブアルバム。タイトル通り、今年4月22日に沖縄で行われたライブの模様を収録した作品で、向井秀徳の公式サイト「向井秀徳情報」にて無料ダウンロードでのリリースとなりました。ライブアルバムも、以前はコンスタントにリリースしていたのですが、2014年に同じく無料ダウンロードでリリースされた「Live At 大牟田ふじ」以来、約8年ぶりの作品となっています。

全20曲入りとなる本作ですが、今回はmp3ファイルを3分割にしてのリリース。約50分のファイルが2本と、12分のファイルが1本の計3本、約2時間弱というかなりのボリュームの作品となっています。

おそらくほぼノーカットでの収録だと思うのですが、ライブの雰囲気をそのまま体験できるのが魅力的。コロナ禍の中、徐々にライブもスタートしているとはいえ、やはり以前に比べると若干、ライブに躊躇してしまう方もいるであろう中、ライブの雰囲気をそのまま、それも無料ダウンロードで味わえるというのはうれしい限りです。

ZAZEN BOYSといえば2017年にベースの吉田一郎が脱退。2018年に新ベーシストとしてMIYAが加入しました。それから約4年が経過したものの、本作がライブアルバムとしてリリースされる初のアルバムとなります。ベースが代わったことにより、バンドとしてどう変化するかも注目のポイントだと思うのですが、バンドとしてメンバーチェンジを全くものともせず。むしろ以前以上にバンドとしての一体感を覚えるようなライブパフォーマンスを感じます。

さらにこのライブアルバムで強く感じるのは、以前に比べてベースラインの厚みが増し、よりリズムのファンキーさが増した感があるという点でした。特に序盤の「Honnoji」のドラミングを主導としたファンキーなリズムがゾクゾク来るほどカッコよく、さらに中盤で(公式サイトのセットリストにはのっていないのですが)「泥沼」を触りだけ聴かせるのですが、ここで聴かせてくれるMIYAのベースプレイのファンキーさにも耳を惹かれます。そしてライブでもおなじみな「ポテトサラダ」でも以前以上にリズムのファンキーさが増していますし、ラストの「Action」も黒さを感じさせるリズムが印象的でした。

ここらへん、ファンクなリズムももちろんのこと、ZAZEN BOYSのサウンドを聴くと、以前よりサウンドに黒さが増してきたように感じます。ひょっとしてですが、ギターノイズで埋め尽くすタイプの疾走感あるサウンドを聴かせるNUMBER GIRLが活動を再開したことにつれて、NUMBER GIRLとの差異をより強調するためにも、よりファンクで、ある意味、空間を聴かせるようなスタイルをより強調してきたようにも感じました。

ただ新ベーシストMIYAとの相性もよく、バンドとしての勢いも感じるZAZEN BOYS。次はそろそろ待望のニューアルバムも期待したいところ。ここらへん、ナンバガもひょっとしたら・・・といった感じもありますし、さて次の向井秀徳の一手はどうくるのでしょうか?これからが非常に楽しみです。

評価:★★★★★

ZAZEN BOYS 過去の作品
ZAZEN BOYS IV
すとーりーず
Live At 大牟田ふじ


ほかに聴いたアルバム

気まぐれサーカス/及川光博

昨年、デビュー25周年を迎えたミッチーこと及川光博の、約2年ぶりとなるニューアルバム。コロナ禍の風潮もいい意味で全く感じさせない、ミッチーらしい明るく楽しいミッチー節が展開されるファンキーなポップチューンが並ぶ本作。いつも通り彼らしいアルバムですし、ミッチーとして求められる点にしっかりと答えている点、稀代のエンターテイナーであるミッチーらしい作品と言えるでしょう。ただ「フライドポテト」は寄る年波をコミカルに描写した作品になっており、ミッチーでも・・・と思っちゃいます(笑)。それはともかく、また久々にミッチーのライブに行きたくなってくるような、そんな楽しいアルバムでした。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE
BEAT&ROSES
BE MY ONE
XXV

JR SKISKI 30th Anniversary COLLECTION

JR東日本のスキー旅行キャンペーン「JR SKI SKI」。1990年代にCMが放映され、その後一度中断。2006年からCM放送が再開され現在に至ります。毎年、CMソングが流れるのですが、特に90年代にはここで起用されたCMソングが必ずヒットすることでも話題になりました。本作は、その「JR SKI SKI」のCMソングを集めたコンピレーションアルバム。2000年代以降の曲についてはともかく、1990年代の曲については、タイアップ効果も盛んに言われていた、まさに「JR SKI SKI」発のヒット曲で、懐かしく聴くことが出来ました。Zooやglobeといった、名前を出すだけで懐かしく感じるようなミュージシャンたちの曲が並んでおり、アラフォー以上の世代にとっては、懐かしさを感じるコンピレーションだと思います。

評価:★★★★

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2022年7月 3日 (日)

久々の新譜は時代を反映

Title:Unite/Divide
Musician:TRICERATOPS

ここ数年、メンバーのソロ活動が中心となっており、バンドとして事実上、活動休止状態だった3ピースロックバンドTRICERATOPS。ただ、昨年より配信限定のシングルをリリースし、徐々に活動を再開してきた彼ら。そしてようやく、実に約7年4ヶ月ぶりにリリースされたアルバムが本作です。

今回のアルバム、正直言うと最初聴いた時は、いままでにない地味なアルバムといった印象で、彼ららしいポップでダンサナブルな楽曲も少なく、全体的にメロディーラインはメランコリック。方向性としては明確だったのですが、全体的におとなしい落ち着いたアルバムに、最初はちょっとがっかりとしたというのが率直な印象でした。

ただ今回のこの楽曲の方向性は、コロナ禍の中での彼らを巡る状況が大きく影響してきているのでしょう。実際、「Unite/Divide」というタイトルも、いかにもこの時代を反映させたようなタイトルですし、なによりも今回のアルバム自体、彼らの作品としては珍しいくらい、現在の時代性が反映されています。特に歌詞の面で強いインパクトを残したのが「いっそ分裂」。ニューウェーブ風の軽快なポップソングなのですが、歌詞は

「かつて「We Are One」って歌った
僕らそんなに違いはないって
苦悩とか闇とか 晒したくはないけど
信念が崩れかけているんです」
(「いっそ分裂」より 作詞 和田唱)

と歌われる内容はかなり衝撃的。歌詞で歌われる通り、トライセラ自体、あまり「苦悩とか闇とか晒す」タイプのバンドではないだけに、コロナ禍の中での社会情勢がバンドに与えた影響の大きさを感じさせます。

そんなこともあって、かなり違和感を覚えた今回のアルバムですが、ただ、よくよく聴くと、彼ららしいポップなメロはしっかりと流れていますし、軽快なギターリフ主導の曲がありますし、TRICERATOPSらしさはしっかり出ているアルバムになっていました。例えば「マトリクスガール」はメランコリックなメロですし、彼ららしい軽快なギターロックチューンですし、特にメロディーラインの良さが出ていたのは「キミにひとつ地球」で、アコギ弾き語りで聴かせる暖かいメロと歌詞のポップソングで、シンプルでポップなメロは個人的には、最近、トライセラと交流があるKANからの影響も感じてしまいました。

歌詞にしても終盤、「リメインズ」では

「額に飾った煌めき ゴミ箱の悲しみ
どっちを更新したって 僕はきっとこの世界を
抱きしめるだろう」
(「リメインズ」より 作詞 和田唱)

と、前向きなスタンスを感じさせますし、事実上のラストナンバーである「THE GREAT ESCAPE」では

「飛び出せ!さぁ飛び出せ!
夜を切り離して」
(「THE GREAT ESCAPE」より 作詞 和田唱)

とこちらも前向き。このコロナ禍で分裂が進むような社会の中でも、前向きなスタンスを忘れないのは、やはりTRICERATOPSらしいなぁ、と感じました。

ただ、それでも残念ながらアルバム全体としては、特にメロディーの点ではインパクトが薄いという印象は最後まで否めませんでした。特に「THE GREAT ESCAPE」などは彼らしいギターサウンド主導のアップテンポなロックチューンなのですが、メロディーは完全にインパクト不足。全体的に楽曲のバリエーションも多く、凝ったサウンドも多く聴かせてくれるのですが、TRICERATOPSの最大の持ち味とも言える、インパクト満点のポップなメロディーラインという点からはちょっと物足りなかったかな、というのが正直な印象でした。

決して悪いアルバムではなく、むしろ彼ららしい良作とも言えるのですが、久々の新譜としてはちょっと残念だったかも。次の新譜はまた是非、彼ららしいポップなロックンロールを聴かせてほしいなぁ。これはこれで、こういう方向性を意図した作品なので、仕方ないのかもしれませんが。

評価:★★★★

TRICERATOPS 過去の作品
SHAKE YOUR HIP!!!
MADE IN LOVE
WE ARE THE ONE
WE ARE ONE-CERTIFICATE-
LOVE IS LIVE
DINOSOUL -BEST OF TRICERATOPS-
連載・おとといミーティング TRICERATOPS“12-Bar“
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
SONGS FOR THE STARLIGHT


ほかに聴いたアルバム

our hope/羊文学

同作がいきなりチャートでベスト10ヒットを記録した女性2名+男性1名からなる3ピースロックバンド、羊文学。「羊文学」という名前から、最初は空気公団にような系統のフォーキーなポップスロックのミュージシャンかと思いつつ、聴いてみると確かにそのような作風の曲もあったのですが、途中からしっかりとバンドサウンドが鳴り響くロックバンドでした。ただ、一方ではどこかフォーキーな作風の曲もあり、そういう点では独特な感じもします。ちょっとメロディーラインがベタかな、と思いつつも、そこらへんが急激にブレイクした理由なのかとも思ったりして・・・。今後もさらに名前が広がっていきそうな1枚でした。

評価:★★★★

たまらない予感/奇妙礼太郎

昨年、ミニアルバムのリリースはあったものの、フルアルバムとしては約3年7ヶ月ぶりとなる男性シンガーソングライターの新作。いままでの作品と同様、ピアノやアコギのようなアコースティックなサウンドと、一方では打ち込みも使いつつも、全体的には暖かみのある楽曲が魅力的。どこか郷愁感あるメロディーラインも、妙に耳に残ります。全体的には派手さはなく、インパクトという面では決して目立つ作品ではないものの、しっかりと心に残る暖かさのあるポップソング。良作という言葉がピッタリの1枚です。

評価:★★★★★

奇妙礼太郎 過去の作品
More Music
ハミングバード

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2022年7月 2日 (土)

海外での注目のSSW

Title:春火燎原
Musician:春ねむり

これがフルアルバムとして2枚目となるシンガーソングライターによる最新作。ただし、CDリリースの予定はなく、配信及びLPでのリリースのみというのが、今時な感じがします。私自身、彼女のアルバムを聴くのは本作がはじめて。もともときっかけとなったのはアメリカの音楽サイト、Pitchforkで紹介されていたことから。「Best New Album」とはなっていなかったものの、レビューで8.0という高評価をマーク。その時、はじめて彼女の名前を知って気になったのがきっかけで、本作を聴いてみることにしました。

もともと前作「春と修羅」がフランスのレーベルからリリースされたりと、海外での活動も積極的に行っていたようで、アメリカで行われている音楽祭「SXSW」にも2021、2022と2年連続で出場。日本以上に海外での活動も積極的に行っているようです。それが、Pitchforkへのアルバム紹介及び高評価へもつながったようで、徐々に日本でも逆輸入的に話題になってきているようです。

楽曲的にはおおざっぱに言ってしまうと、キュートな感じのアイドルテイストもある女性ボーカルが、ラップあるいはポエトリーリーディング的に歌うスタイルで、インタビュー記事で「DAOKOや水曜日のカンパネラみたいに雑に括られていた」という感じで書かれていたのを読みましたが、確かに、そう雑に括りたくなるのもわからないことはありません。

ただ、サウンド的にはそれらのミュージシャンたちとはかなり異なっており、非常に雑食的なのがユニーク。疾走感あるギターロックの「あなたを離さないで」から、続く「ゆめをみている(deconstructed)」は一転、エレクトロサウンドが主導する楽曲に。「シスターwith Sisters」ではトラップ風のリズムを取り入れていますし、「Kick in the World(deconstructed)」では、デス声調のボーカルを含めて、ハードコア風なサウンドを取り入れています。ハードコア、ヘヴィーロックからエレクトロ、HIP HOP、ノイズ、ポップス、ポエトリーリーディングなど、様々なジャンルを自在に取り入れている点が大きな特徴となっています。

ある意味、この自由度の高いサウンドは、良くも悪くもこだわりのない今風なものを感じさせます。あえて「可愛らしさ」を表に出したボーカルもそうですが、ここらへん、それこそHIP HOPからアイドルポップまで、様々なジャンルをこだわりなく同じレベルで取り入れるあたり、いかにも今のミュージシャンという印象を受けます。

そして彼女の大きなもう一つの特徴がその歌詞。歌詞は、現実社会の中に上手くフィットできず、もがき苦しむ中、それでも前向きに「生きる」ことに対してエールを送るような、そんな歌詞の内容が特徴的。例えばタイトルチューンである「春火燎原」では

「地上じゃ使えない羽だけを持っている
聖なる列にもぼくの番号はないけれど
炎に呑まれて溺れ続けるぼくを
憐れんだやつを端から殺してやる」
(「春火燎原」より 作詞 春ねむり)

のように、現実の中でもがき苦しむ中、その中でも乗り越えてやろうという意思が明確に感じられます。

こういうアイドルポップ的な部分を持ちながらも、自分を削り、メッセージを発するというスタイルは、彼女自身も影響を公言しているのですが、大森靖子からの影響を感じさせます。また、自分を削るような強烈なメッセージ性は、ある意味、Coccoに通じるような部分も感じました。とにかく、その世界観がズバズバと心に突き刺すような、そんな歌詞が強く印象に残りました。

海外での活躍が先行するような形となり、日本での知名度は決して高くありませんが、その歌詞のメッセージ性といい、雑食性なサウンドのユニークさといい、今後、間違いなく注目度はアップしていく予感があります。アルバムとしては全21曲1時間強というボリューム感ですし、その歌詞の世界からも、ある種の重さを感じさせる内容でしたが、それだけ心にもズシリとくるアルバムでした。間違いなく、要チェックの1枚。一度是非、春ねむりの世界を味わってほしいと感じさせる作品です。

評価:★★★★★

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2022年7月 1日 (金)

非常に重いメッセージ性を感じる

Title:笑い死に
Musician:般若

昨年、新レーベル「やっちゃったエンタープライズ」を設立。それまで所属していた「昭和レコード」から独立したラッパー、般若。その後、何作か配信でシングルを何枚かリリースしていたものの、前作から約1年9ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリース。「やっちゃったエンタープレイズ」独立後、初となるアルバムとなります。

このアルバムの中で、なんといっても大きな印象を残すのは「2018.3.2」でしょう。哀しげなピアノが流れる中、静かに綴られるラップが印象的なこの曲は、2018年に発覚し、ニュースでも大きく取り上げられた目黒5歳女児虐待事件をテーマとして扱ったもの。事件現場の向かいのマンションに住んでいた彼は、被害者の女の子が運ばれていく様子を目撃したということ。そのことに大きくショックを受けた彼が、悩んだ結果、書き上げたのが本作。ある種のドキュメンタリータッチで綴られたリリックはかなり具体的かつ印象的で、強く心に響く、作品になっています。

この、非常に重たいテーマの作品がひとつの主軸になっていたからでしょうか、今回のアルバムは「笑い死に」というタイトルとは反して全体的にメランコリックな雰囲気が漂うような作風となっていました。1曲目「とめてくれよ」から、かなりダウナーな雰囲気でのスタートとなりますし、「ハタチの君へ」もトラップ的なリズムでメランコリックなサウンド。さらに「2018.3.2」につながる「テキトー」「色の無い海の底」も郷愁感を覚えるようなトラックが印象的でした。

そしてそんな中で、特にこの時代を力強く「生きる」ことをテーマとしたリリックが目立ったように思います。まず「糞馬鹿野郎」は、まさにそんな今を生きている自分を描写としたリリックが印象的。「拝啓」でもまさに今を生きる日常を描いていますし、そしてなんといっても「じんせいさいこおお」はタイトル通りの人生讃歌。「宇宙の果てから見たら/俺達の存在すっげー小せえ」という、ある意味振り切れたリリックも印象的。さらに最後は「うまくいく」で、タイトル通り、前向きなメッセージを綴って本作は終了。最後は非常に前向きな気持ちでアルバムを聴き終える内容になっていました。

特に「2018.3.2」で気持ち的にもかなり落ち込みかねない本作だからこそ、そこから続く「じんせいさいこおお」「うまくいく」で一気に盛り返す構成も、おそらく考えられたものなのでしょう。他にも子供へのメッセージともとれる「ハタチの君へ」や、イジメやLGBTを扱った「色の無い海の底」など、全体的にテーマは重め。それだけにズシリと心に来るアルバムになっていますが、それだけにラスト2曲の前向きなメッセージが、より心に響いてくるアルバムになっていました。

決して派手ではないものの、非常に重たい、おそらく般若にとっても重要作とも言える作品になっており、聴き応えのある内容になっていました。文句なしの傑作アルバム。いつも印象的なリリックを聴かせてくれる般若ですが、その中でも特に印象的な作品が多かったアルバムだったと思います。普段、ラップを聴かないリスナー層でも、このメッセージは強く響いてくるはず。是非、チェックしてほしい1枚です。

評価:★★★★★

般若 過去の作品
ドクタートーキョー
HANNYA
グランドスラム
THE BEST ALBUM
話半分
般若万歳II
IRON SPIRIT
12發


ほかに聴いたアルバム

Same/SHERBETS

浅井健一率いるSHERBETSによる、実に6年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは、ピアノやストリングスを取り入れつつ、メランコリックで美しいメロディーラインをこれでもかというほど聴かせる作風に。ここ最近、比較的安定感のある作風を確立してきた感のあるSHERBETSでしたが、今回のアルバムは、SHERBETSとしての方向性がある程度固まったような、いい意味での安定感も覚える作品になっています。一時期は駄作を乱発気味で心配された浅井健一ですが、最近はリリースペースも落ち着いて、良作もしっかりとリリースしてくるようになりました。そんないい意味での安定感を覚える作品でした。

評価:★★★★

SHERBETS 過去の作品
MIRACLE
GOD
MAD DISCO
FREE
STRIPE PANTHER
きれいな血
CRASHED SEDAN DRIVE
The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」

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