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2022年6月 3日 (金)

名古屋にこだわった映画

今日は最近見た映画の感想です。名古屋を拠点に活動を続け、デビュー35周年を迎えるスラッシュ・メタルバンドOUTRAGE。日本のみならず海外でも活躍する彼らですが、その彼らのデビュー35周年を記念した映画「鋼音色の空の彼方へ」を見てきました。

この映画、単純なOUTRAGEのドキュメンタリー映画ではありません。正直、公式サイトを見ても若干わかりにくさがあるのですが、劇中劇の形態を取るフィクション。OUTRAGEの映画「OUTRAGE THE MOVIE」を撮影するためにあつめられた4人の今時の若者を中心に、それぞれの若者が壁にぶつかりつつ、映画撮影を通じてOUTRAGEの遍歴と彼らを重ね合わせることにより、OUTRAGEに魅せられていくのと同時に、壁を乗り越え、さらには4人の間にも絆が生まれてくる、そんな「物語」になっています。以前、the pillowsが30周年記念として制作した映画「王様になれ」が、彼らのドキュメンタリーではなく、the pillowsを媒介とした若い男女の物語となっていましたが、スタイルとしてはそれに近いものを感じます。

正直言うと、OUTRAGEに関してはほとんど思い入れはありません。それでもこの映画に興味を抱いたのは、名古屋を拠点に活動する彼らということもあって、映画全編にわたって名古屋にこだわったという点。登場するキャストも名古屋に縁のある人たちばかりならば、撮影場所も全て名古屋市内。監督も、OUTRAGEの映像作品を手掛けた山田貴教監督がつとています。

そんなこともあって期待半分、不安半分で映画に臨んだのですが、結果としてはとても楽しめた映画で、満足して映画館を後にすることが出来ました。この映画の大きな魅力を一言で言うと、いい意味で非常にベタだった、ということ。OUTRAGE役として登場するのは、いかにも今時の若者といった感じの4人。その4人がそれぞれの物語を展開していくのですが、それぞれがわかりやすい形で悩みを抱えていて、わかりやすい形でトラブルが発生して、わかりやすい形で乗り越えていく・・・と書くとかなり陳腐な感じがするのですが、ただ、悪い意味でひねくれた部分がなく、素直に映画に没頭することが出来る展開になっていました。

また、この監督自体、物語の描き方としてベタではあるものの非常にあっさりした描き方をしており、必要以上に説明的な内容だったり、感情過多な内容は避けており、ある程度以上の解釈は、観客に投げるような撮り方をしていました。特に今回、名古屋が舞台で名古屋にこだわった、という内容なのですが、そこで不安してあがるのが、ベタベタな名古屋弁ばかりが登場し、ステレオタイプな名古屋の描き方をされることでした。確かに、コメダやら世界の山ちゃんやら、いかにも名古屋的なアイテムは登場するのですが、基本的にメインキャストは名古屋弁を話しませんし、変にステレオタイプな名古屋の表現は登場してこず、そういう意味でも安心してみることが出来ました。

個人的には非常に楽しめた映画。見ようかどうか迷っていたのですが、見て正解でした。ただ、一方、正直なところ映画としての「粗さ」も目立ったのですが・・・ここらへんはネタバレ混みの感想で。

(以下、ネタバレ込みの感想です)

この映画、一番残念に感じたのは、OUTRAGEの映画にも関わらず、OUTRAGEの存在感が薄いこと。前半こそ、OUTRAGEの歴史に沿った物語と若者たちの物語を上手くリンクさせており、OUTRAGEの映画を撮る過程を通じて、OUTRAGEがどんなバンドが紹介してきたのですが、後半、若者たちの物語が展開していくと、OUTRAGEの物語の方は若干おざなりに。正直、後半については、OUTRAGE、あまり関係ないじゃん!と思ってしまう部分も少なくありませんでした。

また、OUTRAGEの存在感が薄いという意味では、残念ながら本編映画の中で本物のOUTRAGEのパフォーマンスシーンはほとんど出てきません。物語の序盤で、初期の彼らのライブ映像がチラッと流れるだけ。前述のthe pillowsの映画の場合、ライブパフォーマンスが映画の中でもしっかりと登場し、the pillowsの音楽映画としても満足できる内容だったのですが、OUTRAGEの「音楽」を求めてみてみたのならば、若干消化不良になるかもしれません。例えば、主人公の4人が、OUTRAGEの本当のライブを見に行くシーンなんかを挟むことによって、本物のバンドの音もしっかりと聴いてみたかったように思います。

あともうひとつ残念に感じたのは、劇中劇の中で35年前の名古屋の状況を再現しているのですが、35年も前の名古屋ということが、映画の中で全く表されていなかった点でした。特に劇中劇の中で、デビュー当初の打合せをコメダ珈琲で行っているのですが、35年前は、まだ市内にコメダはほとんどなかったはず・・・。ここらへんの粗さは映画を観ていてノイズのようにちょっと気になってしまいました。

それと「ベタ」が良かったとはいえ、主要キャストの一人を殺してしまったのは、ちょっと単純すぎるお涙頂戴路線でちょっといただけなかったかな。物語の中で死ぬことに正直必然性がなかったし・・・。

そんなマイナスの部分も実は結構目立ったのですが、ただ、映画全体としては概ね楽しめた作品でした。OUTRAGEというバンド、あるいはすべて名古屋で撮影された映画、そんなあたりに気になった方がいれば、チェックして損はない映画だと思います。OUTRAGEの35周年記念アルバムもリリースされているみたなので、次はそれも聴いてみたいです。

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