バンド名の由来はあの名曲!
Title:Growing Up
Musician:The Linda Lindas
今、最も話題になっているガールズパンクバンド、The Linda Lindas。メンバー全員10代という若さで、さらにドラムスのミラ・デラガーザに至っては、若干11歳(!)。昨年5月、人種差別をテーマとした楽曲「Racist, Sexist Boy」の演奏動画がTwitterに投稿されると大きな話題を呼び、トム・モレロやレッチリのフリーなどといったそうそうたるメンバーが絶賛。オフスプリングやNOFXも所属したパンクロックのレーベル、エピタフ・レコードと契約を結び、ついにリリースされたデビューアルバムが本作となります。
このバンド名である「The Linda Lindas」という名前、日本人ならブルハの名曲を頭に思い浮かべる人が多いでしょうが、もともと日本映画の「リンダリンダリンダ」、さらにはそのタイトルの元となった「リンダリンダ」にちなむものだとか。ライブでは「リンダリンダ」のカバーも披露しているようです。また、メンバーはアジア系(ただし、日系ではなく中国系だそうです)及びラテン系アメリカ人によるグループになっており、「Racist,Sexist Boy」もコロナ禍の中で受けた人種差別が元となっているそうです。
そんな彼女たちの作品は、まさに正統派なガレージパンクといった印象。冒頭を飾る「Oh!」などもほどよくヘヴィーなギターサウンドを聴かせつつ、メロディーはポップ。キュートな彼女たちのボーカルもポップな印象をさらに強めています。その後も、軽快でメロディアスな「Growing Up」「Talking to Myself」を挟んで「Fine」はヘヴィーなギターサウンドに、シャウト気味でちょっと調子をはずしたようなボーカルは、まさにパンクロックの王道を行くような作風になっています。
その後も疾走感あるギターロックの「Nino」や、ヘヴィーな作風ながらメロがメランコリックな「Why」、ちょっとボッサ的な味付けのギターがアルバムの中でインパクトとなっている「Cuantas Veces」、ヘヴィーなギターにメランコリックなメロが印象的な「Remember」に「Magic」とテンポよく続きます。1曲あたり長くて3分程度、短いと1分台という作品が続き、この展開の速さもいかにもパンクロック的です。
そしてラストを飾るのが話題となった「Racist,Sexist Boy」。いままでの中でももっともヘヴィーでメタリックなギターサウンドにシャウト気味のボーカルが印象的で、彼女たちの強い主張も感じられます。
歌詞も
「Racist, sexist boy
You are a racist, sexist boy
And to have really take the joy
Fake dance, shoot and destroy
You are a racist, sexist boy」
(「Racist,Sexist Boy」より Written by Eloise Wong & Mila De La Garza)
と、日本語訳が不要なほどかなりストレートな歌詞が印象的。特にコロナ禍の中、欧米ではアジア系への差別が社会問題となりましたが、そんな中でストレートに響いてくる歌詞の内容となっています。
かなり勢いのあるバンドサウンドを聴かせてくれる一方で、王道なだけに若干、目新しさのなさを感じてしまいますし、バンドサウンドとしてもメロディーラインにしても、それだけで聴かせるにはちょっとインパクトの不足感は否めません。また、昔なら、大人が眉をひそめていた「若者の叫び」のパンクロックの歌詞を、「大人」が絶賛する構造は、ビリー・アイリッシュでも見られましたが、若干、もやもやした感じが残ってしまいます・・・。
全体的には、まだまだこれからかな、とも感じるのですが、もっとも彼女はまだ10代。これからまだまだ伸びしろのあるバンドであることは間違いありません。そういう意味でも今後が非常に楽しみになってくる反面、大人の社会に飛び込んで、変につぶされたりしないことも願うのですが。ただ、これからへの期待も含めて、間違いなく今、チェックしておきたいバンドです。今年のサマソニに来日も予定しているとか。一度ライブも見てみたいなぁ。
評価:★★★★
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