懐かしさの中で今風なサウンドも
Title:WHO CARES?
Musician:Rex Orange County
前作「Pony」で一躍注目を集めたイギリスのシンガーソングライターによる、約2年半ぶりとなるニューアルバム。前作「Pony」では全英チャートで5位を獲得したほか、アメリカビルボードチャートでは3位にランクインするなど大ヒットを記録しましたが、それに続く本作では、なんと全英チャートで1位を獲得。アメリカビルボードチャートでは5位に留まったとはいえ、2作連続ベスト10ヒットという結果となり、間違いなく人気ミュージシャンとして、その地位を確立する結果となりました。
前作「Pony」もそうでしたが、今回のアルバムも、最大の魅力は1にも2にも、その「歌」であることは間違いないでしょう。バンドサウンドにストリングスやピアノで味付けしたアレンジをバックに流れるそのメロディーラインは、メランコリックと切なさと爽やかさを同居させたような感触が大きな魅力。ただ、一方で決して目新しさはありませんし、ある種の懐かしさすら感じます。
例えば「OPEN A WINDOW」などはどこか80年代的な懐かしさを感じさせますし、「AMAZING」なども丸みを帯びて暖かさを感じさせるサウンドが、ノスタルジックな気分を彷彿とさせますし、こちらも80年代のAOR的な要素を随所に感じさせます。後半の「THE SHADE」の暖かいギターサウンドにも、どこか懐かしさを感じさせますし、「SHOOT ME DOWN」のピアノをバックに歌い上げるスタイルは、どこかエルトン・ジョンを彷彿とさせる部分があります。
この、どこか80年代の名残のあるようなメロディーとサウンドのセンスは実に秀逸で、確かに目新しさはないかもしれませんが、聴いていて安心できますし、いい意味で広いリスナー層にお勧めできるポップミュージックに仕上がっています。ビリー・ジョエルやエルトン・ジョン、ギルバート・オサリバンあたりが好きなら間違いなく気に入りそうなグッドミュージックを聴かせてくれるアルバムです。
ただユニークなのは、そんな懐かしさを感じさせるサウンドとメロディーに仕上がっていながらも、一方では意外と今風な部分も織り込んできている点で、さきほども紹介した「OPEN A WINDOW」では、前作に引き続きTyler, the Creatorが参加し、ラップを聴かせてくれますし、例えば「IF YOU WANT IT」の強いビートの打ち込みは、まさに今風なサウンド。リズミカルなエレクトロソングに仕上げています。
そんな感じで、懐かしさを感じる暖かいメロディーラインを聴かせてくれる一方で、しっかりと今の時代にアップデートも行っているスタイルが大きな魅力。前作同様の文句なしの傑作アルバムで、決して派手さないはないものの、本作もまた、今年を代表するアルバムと言えるのではないでしょうか。全ポップミュージック好きにお勧めしたいアルバムです。
評価:★★★★★
Rex Orange County 過去の作品
Pony
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