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2022年6月 5日 (日)

ノスタルジックさを感じさせる久々の新譜

Title:Shuttle Loop
Musician:サイプレス上野とロベルト吉野

サイプレス上野とロベルト吉野、通称「サ上とロ吉」。デビューアルバムから既に15年を経過している中堅のHIP HOPユニットですが、意外なことにメジャーデビュー後はこれが2作目のアルバムとなります。また、オリジナルアルバムとしても約3年半ぶりとなるニューアルバム。途中、コラボ作のみを集めた企画盤「サ上とロ吉と」がリリースされていますが、純然たるオリジナルアルバムとしては少々久しぶりの作品となりました。

そんな彼らのニューアルバムですが、彼らの旧知のミュージシャンたちが数多く参加しています。「RAW LIFE」では鎮座DOPENESSとSTUTS、「MONEY」では漢 a.k.a. GAMI、「万華鏡」ではTARO SOUL、KEN THE 390といった昔からの仲間たちが、このアルバムには多く参加しています。このように昔ながらの仲間たちと作ったアルバムだからでしょうか、今回のアルバムは特にノスタルジックな雰囲気があふれるアルバムになっていたように感じます。

もともとサ上とロ吉といえば、横浜出身、それも「ドリームランド」出身であることを強調したユニットでした。もちろんHIP HOPの分野では、自らの出身地を強調したラッパーは数多くいます。そんな中でも彼らは特に、自分たちの出自を強調するラップを、いままで多くリリースしてきました。

そんな中でも今回は、例えば「おもしろおかしく」では昔の仲間との思い出をつづり、「RAW LIFE」でもいままでの彼らの活動を振り返るような内容になっており、「STANCE」もあらためてB-BOYとしてのスタイルをつらぬいた今までの歩みを振り返る内容になっています。特に特徴的だったのが「少年イン・ザ・DRM」で、タイトルそのまま、彼らの少年時代を振り返っているような内容のリリック。ノスタルジックな要素の多い今回のアルバムの中心的な作品となっています。

サウンド的にもバリエーションもあり、ミクスチャーロックなタイトルチューン「Shuttle Loop」からスタートし、ホーンやピアノを入れて暖かい雰囲気のトラックとなった「MONEY」、エキゾチックなトラックの「万華鏡」など、いい意味でこだわりのないバラエティー富んだトラックの音楽性は彼らならでは、最後まで飽きることなく楽しむことが出来ます。

ただ、そういった聴きどころが多い中でも今回のアルバム、ノスタルジックな要素が先に立ったからでしょうか、全体的に若干薄味で、インパクトが弱かったような印象があります。彼らのいままでのアルバムは、聴き終わった後、内容が強烈に印象に残る作品が多いのですが、今回のアルバムに関しては、聴き終わった後、正直なところ、これといった印象が残りませんでした・・・。良作だとは思うのですが、いままでの彼らの作品に比べると、ちょっと惜しさを感じてしまう作品。過去を振り返りすぎているのかなぁ・・・。

評価:★★★★

サイプレス上野とロベルト吉野 過去の作品
WONDER WHEEL
YOKOHAMA LAUGHTER
サ上とロ吉のINMIX~non stop rental~
MUSIC EXPRES$
TIC TAC
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(紅)
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(白)

コンドル
大海賊
ドリーム銀河
サ上とロ吉と


ほかに聴いたアルバム

Get Set/Awesome City Club

昨年、「勿忘」が大ヒットを記録。年末の紅白歌合戦に初出場を果たすなど、一躍知名度が高まったAwesome City Club。その「勿忘」も含む前作「Grower」からわずか1年超のインターバルでのリリース。バンドとして勢いがある・・・と見えるかもしれませんが、「勿忘」のヒットで注目が集まるうちに新たなアルバムをリリースしておこうという意図も見え隠れします。

というのも、率直に言って、本作はバンドとしての勢いをさほど感じられません。音楽的なバリエーションも増して、「勿忘」のヒットの余波を借りたような勢いも感じた前作に比べると、Awesomeらしさは健在ながらも、全体的にメランコリックなメロディーラインが目立ち、正直、ちょっと似たようなタイプの曲が並んでしまった本作は、前々作までの彼らの弱点であり、前作で克服したように見えたバリエーションの乏しさが戻ってしまった感はあります。1曲1曲については、男女ツインボーカルを上手くいかしたポップスが魅力的なのですが、全体的には前作には至らなかったかな、とも感じてしまった本作。売上的にも紅白出演後の作品にも関わらず、いまひとつ伸び悩んでいるのは、そういう点が理由なのかも?悪い作品ではないのですが、ちょっと残念にも感じた1枚でした。

評価:★★★★

Awesome City Club 過去の作品
Awesome City Club BEST
Torso
Catch The One
Grow apart
Grower

SIX KICKS ROCK&ROLL/ザ・クロマニヨンズ

15枚目となるザ・クロマニヨンズのニューアルバム。楽曲によってはレトロな要素があったり、メランコリックに聴かせたり、ビートを強調していたり、コミカルな歌詞を聴かせたりとバリエーションを聴かせつつ、基本的にはいつも通りのロックンロールを聴かせてくれます。ザ・クロマニヨンズも15枚目となり、どんどん楽曲のシンプル化も進み、サウンドもエッジが効いた感じも。そんな中、今回のアルバムは若干、ギターがより前面に押し出されていた印象も受けました。今回も安定の傑作。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH
ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020
MUD SHAKES

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