ポップな第7弾
Title:レキシチ
Musician:レキシ
すっかり人気ミュージシャンとして、その地位が定着した感のあるレキシの、約3年7ヶ月ぶり、タイトル通り、7枚目となるニューアルバム。あらためてレキシについて紹介すると、もともとSUPER BUTTER DOGのメンバーとして活動し、100sのメンバーでもあった池田貴史が、自らの趣味である日本史をコンセプトとして立ち上げたソロプロジェクト。最初は、若干、余興感もあったのですが、豪華なゲスト陣と、なによりもファンクやソウルミュージックに裏打ちされたクオリティーの高い音楽性と日本史をテーマとしたコミカルな歌詞のギャップが大きな評判を呼び、人気沸騰。このアルバムを含め、2作連続チャートでのベスト3入りを達成しています。
今回のアルバムでも多くの豪華ミュージシャンがゲストで参加。参加ミュージシャンには、日本史にちなんだニックネーム、レキシネームがつけられるのですが、レキシネームあ、たぎれんたろうことAwesome City Clubのatagi、にゃん北朝時代ことカネコアヤノ、さらにぼく、獄門くんこと打首獄門同好会が参加。それぞれが楽曲の中でもしっかり個性を発揮。あ、たぎれんたろうが参加した「たぶんMaybe明治」はAwesomeらしいシティポップ、にゃん北朝時代が参加した「マイ草履」はしっとりと聴かせるバラードチューンに仕上げています。
そしてアルバムの中で強いインパクトにもなっているのがぼく、獄門くんが全面的に参加した「鬼の副長HIZIKATA」で、打首獄門同好会の曲として違和感がないメタルチューン。ちょっと異色な楽曲となっています。ただ、どの楽曲もゲストミュージシャンに沿ったような曲調になっているのですが、作詞作曲はあくまでもレキシこと池田貴史本人。彼の音楽性の広さと、音楽的素養の深さを感じます。
そんな豪華なゲスト勢が参加したバラエティーある音楽性が特徴的なのですが、今回のアルバムはそんな中でも、全体的によりインパクトのあるポップな作風、あえていえば90年代や80年代後半あたりの匂いも感じさせるような楽曲が並んだような印象を受けます。先行シングルにもなった「ギガアイシテル」はホーンセッションも入ったメロディアスなポップチューン。続く「だぶんMaybe明治」も前述のように、90年代の空気感のあるAORですし、それに続く「だって伊達」もピアノ弾き語りからスタートし、バンドサウンドで盛り上がる展開のバラードナンバーはJ-POPの王道のような作風になっています。
その後も「Let's FUJIWARA」はディスコチューンでいかにも80年代ですし、「鬼の副長HIZIKATA」もメタルで、これまた80年代的な空気も感じます。最後を飾る「フェリーチェ・ベアト」も、シンセなども入った分厚いサウンドをバックに、感情たっぷりに聴かせるバラードナンバーはいかにもJ-POP的。全体的にポップでインパクトのある楽曲が並ぶ作品になっていました。
もちろんJ-POP的といっても、その根底にはしっかりとファンクやソウルの要素が感じられるのが池田貴史の実力。ここらへん、「洋楽風だけどルーツレス」という、よくありがちなJ-POPとは一線を画する点は強調しておきたいところ。今回も相変わらず、日本史をテーマとしたコミカルな歌詞も光っており、今回は特に幕末や明治をテーマとした曲が多く収録。今回のアルバムにちなんだアーティスト写真も明治の軍服を着たレキシの姿になっており、グッと近代に寄った内容になっています。
そんな訳で今回もいい意味で安定感のあるレキシの新作。特にここ数作、楽曲的にも歌詞的にもレキシらしい完成度が増し、完全にレキシとしての方向性が定まってきた感もあります。今後、この方向性が歌詞的にもサウンド的にも、さらにどのように展開・進化していくのか・・・とても楽しみです。
ただ今回のアルバム、ちょっと残念だったのが付属のDVD。いつもは豪華ゲストが参加したバラエティー的なノリのドキュメンタリーが収録されているのですが、コロナ禍で外での収録ができなかったからなのか、レコーディング風景を収録という、よくありがちなパターンに。これは以前の方がよかったなぁ。この点だけちょっと残念。まあ、アルバムとしての価値には全く影響しない話なのですが。
評価:★★★★★
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