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2022年5月29日 (日)

アジカンらしさを感じるロックアルバム

Title:プラネットフォークス
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

結成25周年を迎えるASIAN KUNG-FU GENERATIONのニューアルバム。先日紹介したCoccoもデビュー25周年でしたので、あらためて月日が経つのは早いな、ということを感じます。もっとも、彼らの場合、メジャーデビューは2003年になるので、結成からメジャーデビューまではまだもうちょっと月日を要するのですが・・・とはいえ、来年でメジャーデビュー20周年になるのか・・・本当に月日が経つのは早いな・・・。

そんな彼らの今回のアルバムの特徴としては、様々なミュージシャンが参加している点があげられます。1曲目「You To You」ではROTH BART BARONが参加しているほか、「星の夜、ひかりの街」ではラッパーのRachelとOMSBが参加。「触れたい 確かめたい」では人気上昇中のバンド、羊文学のボーカリスト、塩塚モエカが参加しています。余談ですが、先日紹介したCoccoの25周年記念アルバムも、同じような様々なゲスト陣の参加が特徴的でした。25年というベテランの領域となり、一区切りとなるタイミングにおいて、ゲストミュージシャンによって自らの楽曲に新たな「血」を取り込みたい、という発想でしょうか。特にアジカンの場合は、参加したミュージシャンはいずれも彼らに比べるとキャリアが若いミュージシャンばかりで、新たな血の導入という発想が多いのかもしれません。

さて、アジカンといえば、分厚いギターサウンドと、そこに流れるポップなメロディーが心地よいパワーポップバンド。聴いていて難しいこと抜きとしてロックの気持ちよさ、聴き終わって「ロックを聴いたな」という満足感を覚える点が、彼らの大きな魅力だと思います。前々作「Wonder Future」は、まさにそんなロックの気持ちよさを感じさせる作品であった反面、前作「ホームタウン」は比較的、ポップな方向にシフトした作品となっていました。そしてそれに続く本作は、このロックの気持ちよさ、具体的に言えば特に前半に関しては聴いていて「ロックを聴いたな」という満足感を強く覚える作品となっていました。

この前半は、分厚いバンドサウンドにメランコリックさも感じるメロディアスなメロディーラインという、アジカンの王道を行くようなパワーポップ路線の曲が並びます。1曲目「You To You」もそうですし、続く「解放区」もそうですし、ヘヴィーで疾走感あるバンドサウンドに心地よさを感じる「Dororo」、ミディアムテンポでゆっくり歌い上げる「ダイアローグ」と、特に前半に関しては先行シングル曲が多いこともあってか、インパクトの強い曲の、いかにもアジカンらしい楽曲が並びます。

個人的にはそれらの曲に続く「De Arriba」の出だしのギターリフが、いかにも往年のシューゲイザーっぽくて壺。この前半は、分厚いバンドサウンドに心地よく身をゆだねることが出来る、いかにもアジカンらしい満足感を味わえるパワーポップナンバーが並びます。

一方、後半に関しては、前半からはちょっと路線を変えた曲調の作品が並びます。「星の夜、ひかりの街」は郷愁感のあるサウンドとメロディーライン、そして歌詞が印象的。ちょっと気だるい感じのラップも楽曲にピッタリとマッチしています。「触れたい 確かめたい」も塩塚モエカとのデゥオがピッタリはまっている、切なくメロディアスなミディアムチューン。「Gimme Hope」も分厚いバンドサウンドながらもミディアムテンポに聴かせる曲となっています。

ただ後半も、このような曲をインパクトとしつつも、「再見」のような王道パワーポップチューンをしっかりと聴かせてくれており、最後までアジカンらしさは健在。ラストの「Be Alright」はミディアムチューンでスケール感を覚えるナンバーに仕上がっているのですが、この曲もしっかりとバンドサウンドが下支えしており、最後の最後までアジカンらしいロックを楽しめるアルバムになっていました。

最後までしっかりアジカンらしさを感じさせるロックアルバムだった本作。いい意味で彼ららしい、聴いていて素直にパワーポップを楽しむことが出来る、彼ららしい作品に仕上がっていたと思います。結成25年とすっかりベテランの域に到達した彼らですが、まだまだバンドとしての勢いすら感じさせる作品。これからの彼らも楽しみです。

評価:★★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク
THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO
フィードバックファイル2
Wonder Future
ソルファ(2016)
BEST HIT AKG 2(2012~2018)
BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"
BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"

ホームタウン


ほかに聴いたアルバム

LAST TOUR AROUND JAPAN YUTAKA OZAKI/尾崎豊

1992年にわずか26歳という若さで急逝したシンガーソングライター尾崎豊。思春期の心境をストレートに描いた歌詞が多くのファンを呼び、特に死後もカリスマ的な人気を維持。その影響もあり、死後も数多くの「作品」がリリースされ、いわゆる追悼商法の代表格として賛否を受けました。さすがに逝去後30年を経ると、そのような追悼商法も少なくなってきたものの、久しぶりに「新作」がリリースされてきました。それが、生前最後のツアー音源を収録した、このライブアルバム。さすがにこの手の音源は、2013年にリリースされたベスト盤以来なのでちょっと久しぶりという感じもありますし、同時にラストツアーなんていう、もっとも商売になりそうな音源をいままでとっておいたのが不思議にも感じます。

ただ音源的には賛否あるようで、特にかなり癖の強い歌い方をする音源が収録されており、ファンの間でも違和感を覚える人も少なくない模様。もっとも、途中に収録されているMCとの関係や、あるいはいかにも命を絞り出しているように感じさせる、少々苦しさすら感じさせるボーカルスタイルが、これが最後というリスナーのイメージを増幅させ、まあ、あえてこういう音源をピックアップしたんだろうなぁ、ということを強く感じます。とりあえず貴重な音源ということで、チェックしておきたい作品であることは間違いないでしょう。でも、さすがにそろそろ尾崎豊関連の商品も品切れ・・・かなぁ?

評価:★★★★

10th Anniversary Best/家入レオ

タイトル通り、家入レオのデビュー10周年を記念したベストアルバム。ちなみに5周年の時にもベストアルバムをリリースしており、今回収録されているのは、その前回のベスト盤から本作までの間にリリースされた曲をまとめたもの。もともとメランコリックなメロディーが特徴的でしたが、初期の作品に比べて、ここ5年の作品は、この哀愁感がより増した感じがあり、歌謡曲テイストが強くなった感も。このままいくと、10年後くらいにはムード歌謡曲のシンガーになりそう・・・。ちなみに初回盤は、最初の5年にリリースした作品をセルフカバーしたCDか、ミュージックビデオ集がついてきます。よくありがちな手法とはいえ、熱心なファンは2枚買いをしなければいけないという少々、阿漕な手法に。今回はセルフカバーを聴いたのですが、初期の作品と比べると、やはりここ5年の作品は少々パワー不足な感も。ただ、デビューから5年でアルバム4枚リリースしているのに対して、その後5年では(1枚はカバーアルバムなので)実質アルバム2枚からのセレクトだったという差があるので、ベスト盤リリースはちょっと早すぎたかも。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE
5th Anniversary Best
TIME
DUO
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