勢いと安定感が同居
Title:Torpedo
Musician:FEEDER
イギリスのロックバンドFEEDERによる、約2年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作「Tallulah」はイギリスの公式チャートでベスト5入りするヒットを記録。バンドとして2005年にリリースした「Pushing The Senses」以来というベスト5ヒットを記録しています。その勢いを生かすためか、その後、直ぐに新作の作成をリリースした彼ら。ただ、新型コロナによるロックダウンの影響で制作は伸び伸びとなり、ようやくリリースされたニューアルバムが本作となります。そして、本作も前作に続いてイギリスの公式チャートでベスト5入りを記録。既に結成から20年以上を経過するベテランバンドの彼らですが、ここに来ての人気再燃には驚かされます。
ただ、確かに前作「Tallulah」もこの「Torpedo」も、ここに来てバンドとして脂がのっていることを感じる傑作に仕上がっており、この人気再燃もある意味納得感があります。正直、前作も本作もロックバンドとして決して目新しいことを演っている訳ではありません。ある意味、王道とも言えるオルタナ系のギターロック。もっとも、それだけにいい意味で安心して聴けるアルバムとも言えるでしょう。
特に今回のアルバムで感じるのは、ベテランバンドらしいバンドとしてのスケール感と、逆にベテランバンドらしからぬ、ロックバンドとしてのダイナミズム、勢いが同居している点で、それが大きな魅力となっていました。例えば冒頭を飾る「The Healing」はストリングスも薄く入ったバンドサウンドに伸びやかなメロディーラインはスケール感を覚え、ある種のベテランバンドらしい安定感のある作品になっています。一方で、続くタイトルチューン「Torpedo」はヘヴィーなギターリフにシャウト気味なボーカルまで加わり、ハードなスタートとなります。全体的には非常にダイナミックなバンドサウンドに、ベテランバンドらしからぬ勢いすら感じさせます。
その後も「Magpie」で、メタリックな要素すら感じさせるハードなバンドサウンドで攻めてくるかと思えば、続く「Hide And Seek」では伸びやかなサウンドとメランコリックなメロディーラインで聴かせる作風に。「Wall Of Silence」のようなダイナミズムとスケール感を兼ね備えたような曲もあったりして、楽曲としてもギターロック一本の方向性なのですが、ダイナミックなサウンドとスケール感あるサウンドで緩急つけた展開のため、最後まで全く飽きさせることはありません。
最後はギター弾き語り「Desperate Hour」で締めくくり。しんみりと歌を聴かせる楽曲で、後味のよい締めくくりとなっています。まさにヘヴィーでダイナミックな勢いのあるサウンドと、伸びやかでスケール感のある安定感あるサウンドを同居させた構成は、いい意味でベテランらしい実力の高さを感じます。しかし、ご存じの方も多いとは思いますが、FEEDERといえば、ベーシストのタカ・ヒロセは岐阜県出身の日本人で、こうやってイギリスの人気バンドでバリバリに活躍している訳だから、日本のメディアももっと取り上げてもいいと思うんですが・・・。
ちなみに彼ら、コロナ禍に入る前に作品を作り、その後、コロナ禍により制作が伸び伸びとなったのですが、そのコロナ禍の前に作った作品は、今回のアルバムに収録されず、2023年にリリース予定の次のアルバムにとってあるとか。ということは、次の作品まで1年程度のインターバルでリリースされるということですか。これは楽しみ。今、ベテランバンドとして脂ののっている彼らですので、次にも期待したいところ。ロックリスナーなら文句なしに楽しめるアルバムでした。
評価:★★★★★
FEEDER 過去の作品
TALLULAH
ほかに聴いたアルバム
In/Out/In /Sonic Youth
1980年代初頭から30年にわたり活動を続け、特にオルタナ系ロックバンドに絶大な影響を与えた、「レジェンド」とも言えるロックバンドSonic Youth。2011年に活動を休止してからちょっと久しくなってしまったのですが、本作は2000年から2010年にかけて様々な場所で録音した音源を集めたコレクションアルバム。全体的には、これでもかというほどのギターのノイズで埋め尽くされた作品が多く、自由なセッションの後が伺わせますが、「Machine」のようなポップなメロが流れてくる曲があったり、ノイジーなギターインストについても、意外とポップで聴きやすさを感じる側面があったりと、Sonic Youthの魅力は存分に感じられます。ちなみに彼らが活動休止になった理由は、ご存じの通り、メインメンバーのサーストン・ムーアとキム・ゴードンが離婚したから、なんですが、もう10年も経ったのだから、そろそろ大人の対応で活動再開してくれないかなぁ、なんて外野としては勝手なことも考えたりして。ABBAも復活したんだし・・・。
評価:★★★★★
Sonic Youth 過去の作品
The Eternal
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2022年」カテゴリの記事
- 5作同時リリース!その2(2022.12.24)
- 突如、5枚同時リリース!!(2022.12.23)
- 一気に注目度がアップ!(2022.12.20)
- 話題作に続く注目の2作目(2022.12.17)
- 熱狂的な人気(2022.12.09)
コメント