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2022年5月 1日 (日)

This Is アヴリル

Title:Love Sux
Musician:Avril Lavigne

約3年ぶりとなるアヴリルのニューアルバム。デビューアルバム「Let Go」の時は若干17歳で、若きパンククィーンだった彼女ですが、デビューから20年を経て、現在は37歳と、すっかり「大人の女性」となった彼女。その影響もあってか、ここ数作、「大人の女性」を目指したようなアルバムが続いていました。セルフタイトルとなった前々作「Avril Lavigne」ではバラエティー富んだ音楽性で、次の一歩を目指し、続く前作「HEAD ABOVE WATER」では、ミディアムテンポ主体の作品へとシフトしていきました。

ただ、その結果として、初期のパンクロッククイーンとしてのアヴリルをイメージすると、少々物足りなさも感じさせる向きも少なくなかったようです。実際にビルボードチャートでは前作「HEAD ABOVE WATER」は最高位13位とベスト10から陥落。その前からチャート的には下落傾向であったものの、アメリカビルボードのみならず、世界的にも厳しい結果に終わるアルバムとなってしまいました。

しかし、今回のアルバムはそんな「大人の女性」への方向性からうってかわって、初期アヴリルを彷彿させる勢いのあるパンクロックのナンバーが並ぶアルバムになっています。1曲目「Cannonball」から、いきなりギターのイントロからスタートし、彼女の元気よいボーカルでバンドサウンドをバックに疾走感もって歌い上げる楽曲。続く「Bois Lie」も、日本の90年代のガールズポップを彷彿とさせるような、ご機嫌なメロディーラインの流れてくるアップテンポなパンクポップチューン。その後もアップテンポでパンキッシュなギターロックの楽曲が続いていきます。

タイトルチューンの「Love Sux」も、力強いギターサウンドをバックに彼女のハイトーンボイス歌い上げる、典型的なメロディアスパンクな楽曲。エッジの効いたギターで疾走感もって聴かせる「Kiss Me Like The World Is Ending」もわかりやすくポップなメロディーラインとほどよく分厚いギターロックのサウンドが、ともすれば90年代的な雰囲気も感じさせる楽曲で、J-POPリスナーの親和性も高そう。日本でも毎回、ヒットを飛ばす彼女ですが、今回のアルバムは日本人受けも良さそうな感じがします。

ちなみに今回のアルバムは男性ボーカルを取り入れた曲も多く、「Bois Lie」ではマシン・ガン・ケリーが、「Love It When You Hate Me」ではブラックベアーが、「All I Wanted」ではBlink182のマーク・ホップスがゲストシンガーとして参加しています。全体的にアップテンポなパンクチューンで少々一本調子になりがちな中、男性ボーカル陣がちょうどよいインパクトとなっているようにも感じます。

アルバムの長さ自体も、全12曲で33分と、1曲あたり平均3分未満という短さ。パンクチューンで一本調子・・・とはいえ、これだけの短さですので、全く飽きることなく一気に聴けてしまいます。終盤には「Dare To Love Me」というバラードも並んでいますが、最後は再び「Break Of A Heartache」という勢いのあるパンクロックナンバーで締めくくり。最後まで勢いのあるパンクチューンが続いていました。

初期を彷彿とさせる、といっても、内容的にはともすればデビュー作以上にパンキッシュで、特にパンクロック色の強かった「The Best Damn Thing」以上に勢いのあるパンキッシュな内容に仕上がっていました。ただ、それだけに難しいこと抜きに楽しめるアルバムに仕上がっており、文句なしにワクワクする作品だったと思います。やはりこういうアルバムを望んでいたファンも多いのか、チャート的にもビルボードチャートで最高位9位と、以前には及ばないものの、2作ぶりにベスト10ヒットを記録。好調な結果となりました。次回作は、なんとなく以前にような大人な作品に戻りそうな感じもするのですが、ただ、何作かに1枚は、こういう元気印のアヴリルが聴きたいなぁ。とても気持ちのよい良作でした。

評価:★★★★★

Avril Lavigne 過去の作品
Goodbye Lullaby
Avril Lavigne
HEAD ABOVE WATER

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