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2022年5月31日 (火)

ハードコアをベースに様々なサウンドを取り入れる

Title:Diaspora Problems
Musician:Soul Glo

今回紹介するのはアメリカをフィラデルフィアを拠点とするハードコアバンド。本作では、数多くのパンク/ハードコアバンドを世に送り出したインディーレーベル、エピタフ・レコードと契約したことでも話題になっているほか、このアルバムも各所で高い評判を集めているほか、日本でも徐々に評判を集めているようです。

そんな今、最も注目を集めているハードコアバンドのひとつである彼ら。王道的なハードコア路線を軸としつつ、様々な音楽性を取り込んだ作風が大きな特徴となっています。本作でも1曲目「Gold Chain Punk(whogonbeatmyass?)」ではハードコアやスクリーモを取り入れた、激しく勢いのある楽曲を聴かせてくれつつ、続く「Coming Correct Is Cheaper」では同じくハードコア/スクリーモ路線ながらも、疾走感あるギターサウンドはハードロック的な要素も。さらに「Thumbsucker」では軽快なホーンセッションを取り入れており、意外とポップで楽しい作風という印象を受ける曲となっています。

さらにその後も「Driponomics」では女性ラッパーを取り入れてHIP HOP的な要素を加えた上で、ノイジーなエレクトロサウンドを取り入れたナンバー。「We Wants Revenge」は、意外とポップなメロが流れてくる楽曲なのですが、ヘヴィーなギターサウンドにはメタル的な要素も。ガラッと雰囲気が変わるのがラストの「Spiritual Level Of Gang Shit」で、ラップをメインとしたミクスチャーサウンド。今までのヘヴィーなサウンドを敷き詰めたような雰囲気から一転、ラップの部分ではグッと音を抑えたメロウなサウンドを聴かせてくれます。

ハードコアやスクリーモ、HIP HOPにメタル、ハードロック、パンク、ノイズなどの要素をごちゃまぜにしたサウンドが大きな特徴で、ここに加わるのがピアース・ジョーダンの強烈に言葉を詰め込んでシャウトするボーカル。歌詞はなかなか聴き取りにくいものの、反差別をテーマとした社会派なメッセージが多いのだとか。アルバムを通じてエモーショナルに聴かせるボーカルは、彼の強いメッセージ性の現れと言えるのでしょうか。

そんな訳で、様々なサウンドを取り入れながらも、終始、シャウトするボーカルとヘヴィーなバンドサウンドが繰り広げられる作品ながらも、意外と根底にはポップなメロディーラインが流れており、同時に意外と聴きやすさも感じさせるアルバムにもなっています。ヘヴィーなサウンドの中に流れるギターのフレーズが意外とメロディアスだったし、「We Wants Revenge」のように、シャウトするボーカルの中に、ポップなフレーズが顔をのぞかせる楽曲も。意外とポップであると感じるリスナーも少なくないのではないでしょうか。

全12曲40分弱という、ちょうどよい長さなのも大きなポイント。バラエティーあるサウンドと合わせて、最後まで全くダレることなく、一気に楽しめることの出来る傑作アルバムになっていました。この手のバンドはフェス受けもしそうですし、今後、日本でもさらに注目が集まりそう。来年あたり、サマソニで来日するのでは?今のうちにチェックしておきたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/EARTH,WIND&FIRE

ここでも何度か紹介している、主に80年代に人気を博した洋楽ミュージシャンの日本でのシングル曲をまとめた「JAPANESE SINGLES COLLECTION」シリーズ、今回はEARTH,WIND&FIRE。EW&Fというと、イメージ的には「September」「Fantasy」のような曲が印象的なのですが、このアルバムを聴くと、時代に応じてそのサウンドをかなり変化させたことに気が付かされます。具体的には初期の作品は、もっとソウル寄りのファンクミュージックを聴かせてくれていますし、逆に後期の作品になると、AORにグッと近寄った楽曲になってきます。ただ、どの時代の曲もグルーヴ感あるサウンドとポップなメロディーラインが魅力的で、いままで正直、EW&Fの曲はあまり聴いてこなかったのですが、このアルバムで一気に惹かれました。遅ればせながら、EW&Fの作品をいろいろと聴いてみたくなったベスト盤でした。

評価:★★★★★

LABYRINTHITIS/Destroyer

カナダのシンガーソングライター、Dan BejarによるDestroyerによる約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「Have We Met」は彼の渋みのあるボーカルで聴かせるタイプのアルバムでしたが、今回は前作同様、エレクトロサウンド主体のニューウェーヴ路線ながらも、軽快でポップにまとめた作品が並んでおり、前作よりも楽曲自体のインパクトもあり、ポップで聴きやすい印象を受ける作品になっていました。

評価:★★★★★

Destroyer 過去の作品
Have We Met

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