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2022年5月 8日 (日)

デビュー20周年のリクエストベスト

Title:20th Anniversary Favorites:As Selected By Her Fans
Musician:柴田淳

その切ない恋の歌に定評があるシンガーソングライター柴田淳。2001年にシングル「ぼくの味方」でデビュー。その後、特に3枚目のシングル「月光浴」や、それに続く「片想い」が話題となりブレイク。現在までコンスタントに活動を続ける彼女ですが、2021年には、そんな彼女もデビュー20周年を迎えました。本作は、それを記念してリリースされたオールタイムベストとなります。

さて、この手のオールタイムベスト、もちろんいろんなミュージシャンがリリースしていますが、その選曲及び曲順については、おそらくミュージシャンも悩むところでしょうし、ファンとしても注目したいところでしょう。そんな中、今回のベスト盤についてはかなりストレート。そもそもサブタイトル自体「As Selected By Her Fans」となっていることからもわかる通り、ファンによるリクエストを元にしています。さらにストレートなのがその曲順で、純粋に1位から20位までをそのまま並べた曲順。1位「月光浴」からスタートし、「今夜、君の声が聞きたい」「ぼくの味方」と続き、20位の「夢」まで、そのままランキング順に並んでいます。

この選曲と曲順にはある種の潔さも感じさせます。特に単純なファンからのリクエスト順となると、曲が最盛期に偏ってしまうリスクもあります。実際、今回のベスト20を見ると、ほとんどが2000年代前半にリリースされた曲がメインで、やはり「月光浴」や「片想い」あたりで彼女に出会って、その後、ファンになった人が多く、そんな人たちにとっては、やはり初期に聴いた楽曲の方が印象が強いのでしょう。一方ではアルバムとして2作前、「ブライニクル」に収録されていた「あなたが泣いてしまう時は」も選ばれており、この20年間、コンスタントに名曲をリリースしてきたことも感じさせます。

ただ一方で、このようなシンプルな曲順にした理由もなんとなく理解できます。それは、今回選ばれた20曲が、ほとんどどれも似たようなタイプの曲だったから、という点。ピアノとストリングスのシンプルなサウンドで伸びやかに聴かせるバラードナンバー。歌詞も、ほとんどが失恋、もしくは片想いの曲。ある意味、典型的なしばじゅんらしい曲が並びます。アルバム単位で聴くと、決して彼女はこのタイプの曲だけ歌っている訳ではないのですが、ただ、ピアノ+ストリングスの失恋バラードはまさに彼女の十八番とも言える作風。ある意味、似たような曲が並ぶからこそ、変に曲順をこねくり回すよりも、ストレートに人気順にした方がすっきりするという判断なのかもしれません。

そして、これだけ似たようなタイプの曲が並ぶにも関わらず、全20曲のベストアルバム、最後まで全く飽きることなく聴けてしまうというあたり、彼女の実力を感じさせます。まず印象的なのはその歌詞の世界。失恋や片想いの歌詞がほとんどなのですが、具体的な心境描写が胸をえぐられるような内容。曲によっては前向きに次に進もう、というような、典型的なJ-POP的な曲もあるのですが、あくまでも傷ついた心を受け止めるだけといった歌詞も目立ち、そこにリアリティーがあります。そんな歌詞にピッタリなのが、これまた狂おしいほど切なさを感じるメロディーラインと彼女の歌。この両者がピッタリとマッチしているからこそ、似たようなタイプの曲でありながら、最後まで全く飽きずに聴くことが出来ました。

ただ、ちょっと残念だったのは、2015年、わずか6年前に、既に「All Time Request BEST~しばづくし~」として同じくリクエスト曲を中心としたベスト盤をリリースしており、今回はその二番煎じだった点・・・。この手のベスト盤連発はよくありがちなのですが、正直、同じリクエストベストをわずか6年のインターバルで、というのはもうちょっと何とかならなかったのか、とも思ってしまいます。

もちろん、その点を差し引いても本作が魅力的なベスト盤だったのは間違いありません。あらためて柴田淳の魅力を認識できたアルバム。彼女の入門盤としても最適な作品です。

評価:★★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙
All Time Request BEST~しばづくし~
私は幸せ
プライニクル
おはこ
蓮の花がひらく時

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