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2022年5月 3日 (火)

王道を行く

Title:Oochya!
Musician:Stereophonics

イギリスの国民的ロックバンドとも言えるStereophonics。ここでもアルバムがリリースされる度に毎回紹介していますが、デビュー以来、ほぼ2年毎にアルバムをリリースというコンスタントなペースの中、ほぼ前作、全英チャートで1位を獲得。一方、イギリス以外ではほとんど盛り上がりを見せず、特にアメリカビルボードチャートでは2001年にリリースされた「Just Enough Education to Perform」の188位が最高位という、これだけ英米の人気格差のあるバンドも、逆に珍しいかもしれません。

日本でも正直、他のイギリスのロックバンドと比べて、さほど高い人気を誇るバンドではないかもしれません。おそらくそれは彼らが、例えばRADIOHEADのような、評論家受けしそうな「最先端のサウンドを取り入れた実験的なバンド」ではないからというのも一つの要因でしょう。彼らの奏でる楽曲は、決して目新しくはない、王道なロックといった路線が魅力的。ただ一方、だからといってoasisのような、わかりやすいメロディーラインのロックを奏ででいるかと言われれば、そういうわかりやすいオルタナ系ロックチューンを聴かせてくれたかと思えば、日本人受けが、特に彼らのファン層として受け入れそうな若い世代の受けがあまりしなさそうな、渋いブルースロック的なナンバー中心のアルバムを作ってきてしまうあたり、比較的UKロックが好きなはずの日本人受けが今一つという大きな要素のように感じます。

実際、前作「Kind」は、そういう日本人受けがあまりしなさそうな、渋いロックチューンが主導となっているアルバムになっており、悪いアルバムではないな、と思いつつも、正直なところ、あまり好みの作品ではありませんでした。しかし、一方、今回の作品はグッと軽快なロックチューンが目立つ作品になっており、オルタナ系ロックが好きな日本人リスナー層にも受けそうな作品のように感じます。特に1曲目「Hanging On Your Hinges」は軽快なギターリフとポップなメロが主導となっているガレージロックのナンバー。いい意味でわかりやすきポップに仕上げているロックンロールチューンに仕上げています。

続く「Forever」も、ちょっと泥臭さを感じさせるサウンドながらもメランコリックさを感じるメロディーラインは多くのリスナーにとっても壺にはまるのではないでしょうか。同じく先行シングルともなった「Do Ya Feel My Love?」も分厚いバンドサウンドにちょっと切なさを感じるメロディアスなメロが魅力的な作品で、こちらも多くのリスナーが楽しめそうな楽曲。後半の「Made A Mess Of Me」などもノイジーなギターロックにポップなメロディーラインの楽曲と軽快でオルタナ色の強いナンバーになっていますし、ラストを飾る「Jack In A Box」もアコースティックなギターがメインのメロディアスに聴かせる楽曲に仕上げています。

一方では「Running Round My Brain」はヘヴィーなギターサウンドとシャウト気味なボーカルでハードロック色の強い作品に。終盤のミディアムチューン「Don't Know What Ya Got」も同じくシャウト気味なボーカルでハードロックテイストを感じさせる曲になっていますし、「Seen That Look Before」は郷愁感たっぷりのブルースロック的な作品と、渋さを感じさせる要素もしっかりと入っています。

ガレージロックからオルタナ系、ブルースロックやハードロックなど、ロックというカテゴリーで幅広い作風を感じさせるアルバム。ただ、どの曲も基本的には分厚いバンドサウンドを主軸にダイナミックなサウンドとメロディアスな歌をしっかりと聴かせるような作品になっており、聴き終わった後に「ロックを聴いたな」という、ロックリスナーにとっては充実感を持たせる作風に仕上がっていました。目新しさはないものの、王道を行くような満足度の高い作品に仕上がっていたアルバム。確かに、イギリスで国民的人気を誇るのは納得ですが、その反面、なぜイギリスだけ?という印象も受けてしまいます。ロックが好きなら文句なしに楽しめる作品です。

評価:★★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds
Kind


ほかに聴いたアルバム

Black Radio III/Robert Glasper

アメリカ・ヒューストン出身のジャズピアニストRobert Glasper。2012年にリリースしたアルバム「Black Radio」が大きな話題となり、世界的に注目のジャズピアニストになりました。「Black Radio」はグラミー賞を受賞するなど大きな評価を受け、さらに翌年リリースした第2弾「Black Radio II」も高い評価を受けました。本作は、その「Black Radio II」から約9年ぶりのリリースとなる「Black Radio」シリーズの第3弾。「Black Radio」シリーズはジャズというよりもR&Bにカテゴライズされる楽曲が並び、実際、グラミー賞でも「R&B Album」部門での受賞となっています。今回のアルバムでは、さらにジャズ的な要素は薄れ、どちらかというとR&B、さらにはAOR的な要素の強い作品に。いままで以上にポップで聴きやすさを感じさせるアルバムになっており、ジャズ以上に幅広くポップスリスナーが楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★★

Robert Glasper 過去の作品
Black Radio
Black Radio 2(Robert Glasper Experiment)
ArtScience(Robert Glasper Experiment)

Plonk/Huerco S.

アメリカの電子音楽家、ブライアン・リーズによるHuerco S.名義としては約6年ぶりとなるニューアルバム。とはいえ、ブライアン・リーズはPendant、Royal Crown of Swedenなどの名義でもアルバムをリリースしており、彼自体はコンスタントに作品をリリースし続けているようです。もっとも私が彼の作品を聴くのは本作がはじめて。非常にエッジの効いたメタリックなサウンドで、複雑に構成されたリズムが印象的。そういう意味では決して万人受けするとっつきやすい作品ではないかもしれませんが、これが良く聴くと、微妙にメロディアスな作風になっており、ついつい聴きこんでしまうポピュラリティーも持っているから不思議。何気にポップという印象すら受けてしまうアルバムでした。

評価:★★★★★

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