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2022年5月30日 (月)

エレクトロサウンドながらもアコースティック的な暖かさを感じるアルバム

Title:Classic Objects
Musician:Jenny Hval

ノルウェー出身のシンガーソングライター、Jenny Hval(ジェニー・ヴァル)のニューアルバム。前作「The Practice of Love」も大きな評判を呼び、さらにLost Girlsのメンバーとしても活躍。Lost Girlsとしてリリースしたアルバム「Menneskekollektivet」も高い評判を呼びました。その前作「The Practice of Love」から約2年半ぶりとなるニューアルバム。本作ではインディーレーベルの名門、イギリスの4ADに移籍し、移籍後第1弾アルバムとなります。

その前作「The Practice of Love」ではエレクトロサウンドを使った幻想的な作風が大きな魅力となったアルバムでした。今回のアルバムも前作同様、シンセを用いたドリーミーな作風が大きな魅力となっています。ただ、前作以上に、ドリーミーなサウンド以上に、彼女のソプラノボイスによる歌にまず耳を奪われる作風に。冒頭を飾る「Year of Love」もエレピを使ったアレンジは比較的シンプルにまとめあげられており、彼女のボーカルと、メランコリックなその歌にまずは耳が行く作品になっていますし、タイトルチューンである「Classic Objects」もファルセット気味に歌われる、彼女のファンタジックなボーカルが強い魅力となっています。

また、ドリーミーなサウンドという点が前面に来ていた前作と比べると、今回の作品は、エレクトロサウンドが全体に流れつつも、どこかアコースティックテイストな暖かみも感じました。それは彼女のソプラノボイスのボーカルが大きな要因になっていたのでしょうし、他にも例えば、「Classic Objects」ではトライバルなパーカッションが、楽曲の中でリズムを刻んでいますし、「Year of Sky」なども、同じくトライバルなパーカッションが鳴り響きつつ、彼女のソプラノボイスを重ねることによって、ファンタジックな作風を作り上げています。

さらに最後に流れる「The Revolution Will Not Be Owned」では、ピアノとドラムスでジャジーな雰囲気でスタート。彼女のソプラノボイスで美しく歌われる歌を、ピアノとドラムスが底支えする作風となっています。結果として、シンセの音も入っているものの、非常にアコースティック的な暖かさを感じさせる楽曲となっていました。

エレクトロサウンドが主軸となりつつ、ドリーミーなサウンドを聴かせるという点は前作と同様。ただ、アコースティックなパーカッションやバンドサウンドを入れて、さらには彼女のソプラノボイスを前面に押し出すことによって、エレクトロサウンド主体ながらも、アコースティックな暖かさを感じさせるという、ちょっと不思議な感覚のアルバムに仕上がっていました。

もちろん前作同様、いい意味でスノッブさを感じさせないポップなメロディーラインは今回も健在で、そういう意味では広いポップスリスナー層にお勧めできそうな、聴いていて素直に心地よくなるアルバムという点は前作と同様。今回も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。実は彼女、なにげにキャリア的には15年以上のキャリアを誇る中堅のシンガーソングライター。ここに来て、徐々に世界的な注目を集めてきたようで、徐々に日本でも知名度を広げてくるのでしょうか。今後の活躍に期待です。

評価:★★★★★

Jenny Hval 過去の作品
The Practice of Love


ほかに聴いたアルバム

Warm Chris/Aldous Harding

ニュージーランドを拠点に活動しているシンガーソングライターの4枚目となるアルバム。本作はニュージーランドのチャートで1位を獲得するなど、大きな注目を集めており、また、本作も、上で紹介したJenny Hvalと同様、4ADからのリリースとなり、ニュージーランド本国のみならず、世界的な注目を集めています。全体的にはピアノやアコギをベースとしたアコースティックなサウンドでしんみりフォーキーな作風を聴かせるミュージシャン。ただ、ところどころにギターサウンドを入れてきたり、エレピを入れてきたり、サウンドが微妙に歪んだりと一癖あるところがユニークな点。もっとも、全体的には暖かい雰囲気のフォーキーなポップスで統一されており、聴きやすさを感じる1枚となっています。

評価:★★★★★

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