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2022年5月16日 (月)

ボーカリストとしては既に紅白出演済

Title:NIA
Musician:中村佳穂

今、注目のシンガーソングライター、中村佳穂のニューアルバム。これが約3年4か月ぶり、フルアルバムとしては3枚目となる新進気鋭のシンガーソングライターの新作、となります。ただ、彼女の歌声自体はおそらく多くの人の耳に既に入っていると思います。というのは、声優として昨年7月に公開された映画「竜とそばかすの姫」の主人公の声を担当。さらに彼女がBelleとしてボーカルで参加したmillennium parade×Belle名義でリリースされた主題歌「U」が大ヒットを記録し、年末の紅白歌合戦出場まで果たしています。

「U」で作詞作曲を担当したのはご存じKing Gnuの常田大希であり、彼女自身は楽曲制作に参加していません。そういう意味ではシンガーソングライターとしての実力は、まだ世間にはあまり知られていない状況と言えるでしょう。実際、私自身もこのアルバムではじめて、シンガーソングライターとしての彼女を知ることが出来ました。

まず彼女の楽曲について感じるのは、全体的には明るい雰囲気というイメージがあります。彼女の声自体、どこかくったくのない明るさが感じられますし、打ち込みやバンドサウンド、さらにはピアノやストリングスも取り入れたサウンドも全体的に明るく、ポップソングとして素直に楽しめる作風に仕上がっているようにまずは感じます。

ただ、その上で彼女の作風は非常に今風であるとも感じられました。まず今風である大きな要素としてはHIP HOP的な要素の取り入れ。1曲目「KAPO」はタイトル通り、彼女の自己紹介的な作品で、軽快なアコギの音色が爽やかなのですが、ラップ的なボーカルといなっており、シンプルなリズムもHIP HOP的。また「Q日」もメロウに聴かせる曲なのですが、強いドラムーのビートにラップ的な要素の入ったボーカルスタイルに同じくHIP HOP的な要素を感じます。

さらに「Hey日」「Q日」や「ブラ~~~~~」なんていう自由度のあり、ある意味ネットスラング的なものも感じさせる楽曲タイトルも、今風と言えるのかもしれません。さらにもっとも自由度が高いといえばその音楽性。このHIP HOPもそうですが、様々な音楽的な要素を取り入れた自由度の高い音楽性も、いかにも今どきな感じがします。

例えば「さよならクレール」は、エレクトロサウンドとファルセットボイスで、シティポップのテイストを感じさせるメロウさのある楽曲。「アイミル」なども、ちょっとR&B的な要素も感じられます。「祝辞」なども、軽快なリズムはどこか「音頭」の要素を感じさせるトライバルなものですし、こちらにラップ的な要素も感じます。

かと思えば「MIU」はファルセットボイスで伸びやかに聴かせるバラードナンバーになっていますし、「Hank」もアコギのアルペジオとファルセットボイスでドリーミーに聴かせる楽曲に。さらにタイトルチューンの「NIA」ではピアノを取り入れて爽やかなポップチューンに仕上げており、ヒットポテンシャルも感じられるポップチューンになっています。

全体的には明るさや爽快さを感じさせつつ、自由度を感じさせる良質なポップアルバムに仕上がっている本作。楽曲としてのポピュラリティーも感じられ、最近の音楽の流行へのいい意味でのアップデートぶりも含めて、今風といった印象を強く感じさせます。確かに、シンガーソングライターとしての注目度の高さに納得する傑作で、今後のさらなるブレイクも期待できそう。紅白出場でその歌声だけは広く知れ渡った彼女ですが、シンガーソングライター中村佳穂としての名前がより広く知れ渡る日も遠くなさそうです。

評価:★★★★★

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