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2022年5月

2022年5月31日 (火)

ハードコアをベースに様々なサウンドを取り入れる

Title:Diaspora Problems
Musician:Soul Glo

今回紹介するのはアメリカをフィラデルフィアを拠点とするハードコアバンド。本作では、数多くのパンク/ハードコアバンドを世に送り出したインディーレーベル、エピタフ・レコードと契約したことでも話題になっているほか、このアルバムも各所で高い評判を集めているほか、日本でも徐々に評判を集めているようです。

そんな今、最も注目を集めているハードコアバンドのひとつである彼ら。王道的なハードコア路線を軸としつつ、様々な音楽性を取り込んだ作風が大きな特徴となっています。本作でも1曲目「Gold Chain Punk(whogonbeatmyass?)」ではハードコアやスクリーモを取り入れた、激しく勢いのある楽曲を聴かせてくれつつ、続く「Coming Correct Is Cheaper」では同じくハードコア/スクリーモ路線ながらも、疾走感あるギターサウンドはハードロック的な要素も。さらに「Thumbsucker」では軽快なホーンセッションを取り入れており、意外とポップで楽しい作風という印象を受ける曲となっています。

さらにその後も「Driponomics」では女性ラッパーを取り入れてHIP HOP的な要素を加えた上で、ノイジーなエレクトロサウンドを取り入れたナンバー。「We Wants Revenge」は、意外とポップなメロが流れてくる楽曲なのですが、ヘヴィーなギターサウンドにはメタル的な要素も。ガラッと雰囲気が変わるのがラストの「Spiritual Level Of Gang Shit」で、ラップをメインとしたミクスチャーサウンド。今までのヘヴィーなサウンドを敷き詰めたような雰囲気から一転、ラップの部分ではグッと音を抑えたメロウなサウンドを聴かせてくれます。

ハードコアやスクリーモ、HIP HOPにメタル、ハードロック、パンク、ノイズなどの要素をごちゃまぜにしたサウンドが大きな特徴で、ここに加わるのがピアース・ジョーダンの強烈に言葉を詰め込んでシャウトするボーカル。歌詞はなかなか聴き取りにくいものの、反差別をテーマとした社会派なメッセージが多いのだとか。アルバムを通じてエモーショナルに聴かせるボーカルは、彼の強いメッセージ性の現れと言えるのでしょうか。

そんな訳で、様々なサウンドを取り入れながらも、終始、シャウトするボーカルとヘヴィーなバンドサウンドが繰り広げられる作品ながらも、意外と根底にはポップなメロディーラインが流れており、同時に意外と聴きやすさも感じさせるアルバムにもなっています。ヘヴィーなサウンドの中に流れるギターのフレーズが意外とメロディアスだったし、「We Wants Revenge」のように、シャウトするボーカルの中に、ポップなフレーズが顔をのぞかせる楽曲も。意外とポップであると感じるリスナーも少なくないのではないでしょうか。

全12曲40分弱という、ちょうどよい長さなのも大きなポイント。バラエティーあるサウンドと合わせて、最後まで全くダレることなく、一気に楽しめることの出来る傑作アルバムになっていました。この手のバンドはフェス受けもしそうですし、今後、日本でもさらに注目が集まりそう。来年あたり、サマソニで来日するのでは?今のうちにチェックしておきたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/EARTH,WIND&FIRE

ここでも何度か紹介している、主に80年代に人気を博した洋楽ミュージシャンの日本でのシングル曲をまとめた「JAPANESE SINGLES COLLECTION」シリーズ、今回はEARTH,WIND&FIRE。EW&Fというと、イメージ的には「September」「Fantasy」のような曲が印象的なのですが、このアルバムを聴くと、時代に応じてそのサウンドをかなり変化させたことに気が付かされます。具体的には初期の作品は、もっとソウル寄りのファンクミュージックを聴かせてくれていますし、逆に後期の作品になると、AORにグッと近寄った楽曲になってきます。ただ、どの時代の曲もグルーヴ感あるサウンドとポップなメロディーラインが魅力的で、いままで正直、EW&Fの曲はあまり聴いてこなかったのですが、このアルバムで一気に惹かれました。遅ればせながら、EW&Fの作品をいろいろと聴いてみたくなったベスト盤でした。

評価:★★★★★

LABYRINTHITIS/Destroyer

カナダのシンガーソングライター、Dan BejarによるDestroyerによる約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「Have We Met」は彼の渋みのあるボーカルで聴かせるタイプのアルバムでしたが、今回は前作同様、エレクトロサウンド主体のニューウェーヴ路線ながらも、軽快でポップにまとめた作品が並んでおり、前作よりも楽曲自体のインパクトもあり、ポップで聴きやすい印象を受ける作品になっていました。

評価:★★★★★

Destroyer 過去の作品
Have We Met

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2022年5月30日 (月)

エレクトロサウンドながらもアコースティック的な暖かさを感じるアルバム

Title:Classic Objects
Musician:Jenny Hval

ノルウェー出身のシンガーソングライター、Jenny Hval(ジェニー・ヴァル)のニューアルバム。前作「The Practice of Love」も大きな評判を呼び、さらにLost Girlsのメンバーとしても活躍。Lost Girlsとしてリリースしたアルバム「Menneskekollektivet」も高い評判を呼びました。その前作「The Practice of Love」から約2年半ぶりとなるニューアルバム。本作ではインディーレーベルの名門、イギリスの4ADに移籍し、移籍後第1弾アルバムとなります。

その前作「The Practice of Love」ではエレクトロサウンドを使った幻想的な作風が大きな魅力となったアルバムでした。今回のアルバムも前作同様、シンセを用いたドリーミーな作風が大きな魅力となっています。ただ、前作以上に、ドリーミーなサウンド以上に、彼女のソプラノボイスによる歌にまず耳を奪われる作風に。冒頭を飾る「Year of Love」もエレピを使ったアレンジは比較的シンプルにまとめあげられており、彼女のボーカルと、メランコリックなその歌にまずは耳が行く作品になっていますし、タイトルチューンである「Classic Objects」もファルセット気味に歌われる、彼女のファンタジックなボーカルが強い魅力となっています。

また、ドリーミーなサウンドという点が前面に来ていた前作と比べると、今回の作品は、エレクトロサウンドが全体に流れつつも、どこかアコースティックテイストな暖かみも感じました。それは彼女のソプラノボイスのボーカルが大きな要因になっていたのでしょうし、他にも例えば、「Classic Objects」ではトライバルなパーカッションが、楽曲の中でリズムを刻んでいますし、「Year of Sky」なども、同じくトライバルなパーカッションが鳴り響きつつ、彼女のソプラノボイスを重ねることによって、ファンタジックな作風を作り上げています。

さらに最後に流れる「The Revolution Will Not Be Owned」では、ピアノとドラムスでジャジーな雰囲気でスタート。彼女のソプラノボイスで美しく歌われる歌を、ピアノとドラムスが底支えする作風となっています。結果として、シンセの音も入っているものの、非常にアコースティック的な暖かさを感じさせる楽曲となっていました。

エレクトロサウンドが主軸となりつつ、ドリーミーなサウンドを聴かせるという点は前作と同様。ただ、アコースティックなパーカッションやバンドサウンドを入れて、さらには彼女のソプラノボイスを前面に押し出すことによって、エレクトロサウンド主体ながらも、アコースティックな暖かさを感じさせるという、ちょっと不思議な感覚のアルバムに仕上がっていました。

もちろん前作同様、いい意味でスノッブさを感じさせないポップなメロディーラインは今回も健在で、そういう意味では広いポップスリスナー層にお勧めできそうな、聴いていて素直に心地よくなるアルバムという点は前作と同様。今回も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。実は彼女、なにげにキャリア的には15年以上のキャリアを誇る中堅のシンガーソングライター。ここに来て、徐々に世界的な注目を集めてきたようで、徐々に日本でも知名度を広げてくるのでしょうか。今後の活躍に期待です。

評価:★★★★★

Jenny Hval 過去の作品
The Practice of Love


ほかに聴いたアルバム

Warm Chris/Aldous Harding

ニュージーランドを拠点に活動しているシンガーソングライターの4枚目となるアルバム。本作はニュージーランドのチャートで1位を獲得するなど、大きな注目を集めており、また、本作も、上で紹介したJenny Hvalと同様、4ADからのリリースとなり、ニュージーランド本国のみならず、世界的な注目を集めています。全体的にはピアノやアコギをベースとしたアコースティックなサウンドでしんみりフォーキーな作風を聴かせるミュージシャン。ただ、ところどころにギターサウンドを入れてきたり、エレピを入れてきたり、サウンドが微妙に歪んだりと一癖あるところがユニークな点。もっとも、全体的には暖かい雰囲気のフォーキーなポップスで統一されており、聴きやすさを感じる1枚となっています。

評価:★★★★★

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2022年5月29日 (日)

アジカンらしさを感じるロックアルバム

Title:プラネットフォークス
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

結成25周年を迎えるASIAN KUNG-FU GENERATIONのニューアルバム。先日紹介したCoccoもデビュー25周年でしたので、あらためて月日が経つのは早いな、ということを感じます。もっとも、彼らの場合、メジャーデビューは2003年になるので、結成からメジャーデビューまではまだもうちょっと月日を要するのですが・・・とはいえ、来年でメジャーデビュー20周年になるのか・・・本当に月日が経つのは早いな・・・。

そんな彼らの今回のアルバムの特徴としては、様々なミュージシャンが参加している点があげられます。1曲目「You To You」ではROTH BART BARONが参加しているほか、「星の夜、ひかりの街」ではラッパーのRachelとOMSBが参加。「触れたい 確かめたい」では人気上昇中のバンド、羊文学のボーカリスト、塩塚モエカが参加しています。余談ですが、先日紹介したCoccoの25周年記念アルバムも、同じような様々なゲスト陣の参加が特徴的でした。25年というベテランの領域となり、一区切りとなるタイミングにおいて、ゲストミュージシャンによって自らの楽曲に新たな「血」を取り込みたい、という発想でしょうか。特にアジカンの場合は、参加したミュージシャンはいずれも彼らに比べるとキャリアが若いミュージシャンばかりで、新たな血の導入という発想が多いのかもしれません。

さて、アジカンといえば、分厚いギターサウンドと、そこに流れるポップなメロディーが心地よいパワーポップバンド。聴いていて難しいこと抜きとしてロックの気持ちよさ、聴き終わって「ロックを聴いたな」という満足感を覚える点が、彼らの大きな魅力だと思います。前々作「Wonder Future」は、まさにそんなロックの気持ちよさを感じさせる作品であった反面、前作「ホームタウン」は比較的、ポップな方向にシフトした作品となっていました。そしてそれに続く本作は、このロックの気持ちよさ、具体的に言えば特に前半に関しては聴いていて「ロックを聴いたな」という満足感を強く覚える作品となっていました。

この前半は、分厚いバンドサウンドにメランコリックさも感じるメロディアスなメロディーラインという、アジカンの王道を行くようなパワーポップ路線の曲が並びます。1曲目「You To You」もそうですし、続く「解放区」もそうですし、ヘヴィーで疾走感あるバンドサウンドに心地よさを感じる「Dororo」、ミディアムテンポでゆっくり歌い上げる「ダイアローグ」と、特に前半に関しては先行シングル曲が多いこともあってか、インパクトの強い曲の、いかにもアジカンらしい楽曲が並びます。

個人的にはそれらの曲に続く「De Arriba」の出だしのギターリフが、いかにも往年のシューゲイザーっぽくて壺。この前半は、分厚いバンドサウンドに心地よく身をゆだねることが出来る、いかにもアジカンらしい満足感を味わえるパワーポップナンバーが並びます。

一方、後半に関しては、前半からはちょっと路線を変えた曲調の作品が並びます。「星の夜、ひかりの街」は郷愁感のあるサウンドとメロディーライン、そして歌詞が印象的。ちょっと気だるい感じのラップも楽曲にピッタリとマッチしています。「触れたい 確かめたい」も塩塚モエカとのデゥオがピッタリはまっている、切なくメロディアスなミディアムチューン。「Gimme Hope」も分厚いバンドサウンドながらもミディアムテンポに聴かせる曲となっています。

ただ後半も、このような曲をインパクトとしつつも、「再見」のような王道パワーポップチューンをしっかりと聴かせてくれており、最後までアジカンらしさは健在。ラストの「Be Alright」はミディアムチューンでスケール感を覚えるナンバーに仕上がっているのですが、この曲もしっかりとバンドサウンドが下支えしており、最後の最後までアジカンらしいロックを楽しめるアルバムになっていました。

最後までしっかりアジカンらしさを感じさせるロックアルバムだった本作。いい意味で彼ららしい、聴いていて素直にパワーポップを楽しむことが出来る、彼ららしい作品に仕上がっていたと思います。結成25年とすっかりベテランの域に到達した彼らですが、まだまだバンドとしての勢いすら感じさせる作品。これからの彼らも楽しみです。

評価:★★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク
THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO
フィードバックファイル2
Wonder Future
ソルファ(2016)
BEST HIT AKG 2(2012~2018)
BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"
BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"

ホームタウン


ほかに聴いたアルバム

LAST TOUR AROUND JAPAN YUTAKA OZAKI/尾崎豊

1992年にわずか26歳という若さで急逝したシンガーソングライター尾崎豊。思春期の心境をストレートに描いた歌詞が多くのファンを呼び、特に死後もカリスマ的な人気を維持。その影響もあり、死後も数多くの「作品」がリリースされ、いわゆる追悼商法の代表格として賛否を受けました。さすがに逝去後30年を経ると、そのような追悼商法も少なくなってきたものの、久しぶりに「新作」がリリースされてきました。それが、生前最後のツアー音源を収録した、このライブアルバム。さすがにこの手の音源は、2013年にリリースされたベスト盤以来なのでちょっと久しぶりという感じもありますし、同時にラストツアーなんていう、もっとも商売になりそうな音源をいままでとっておいたのが不思議にも感じます。

ただ音源的には賛否あるようで、特にかなり癖の強い歌い方をする音源が収録されており、ファンの間でも違和感を覚える人も少なくない模様。もっとも、途中に収録されているMCとの関係や、あるいはいかにも命を絞り出しているように感じさせる、少々苦しさすら感じさせるボーカルスタイルが、これが最後というリスナーのイメージを増幅させ、まあ、あえてこういう音源をピックアップしたんだろうなぁ、ということを強く感じます。とりあえず貴重な音源ということで、チェックしておきたい作品であることは間違いないでしょう。でも、さすがにそろそろ尾崎豊関連の商品も品切れ・・・かなぁ?

評価:★★★★

10th Anniversary Best/家入レオ

タイトル通り、家入レオのデビュー10周年を記念したベストアルバム。ちなみに5周年の時にもベストアルバムをリリースしており、今回収録されているのは、その前回のベスト盤から本作までの間にリリースされた曲をまとめたもの。もともとメランコリックなメロディーが特徴的でしたが、初期の作品に比べて、ここ5年の作品は、この哀愁感がより増した感じがあり、歌謡曲テイストが強くなった感も。このままいくと、10年後くらいにはムード歌謡曲のシンガーになりそう・・・。ちなみに初回盤は、最初の5年にリリースした作品をセルフカバーしたCDか、ミュージックビデオ集がついてきます。よくありがちな手法とはいえ、熱心なファンは2枚買いをしなければいけないという少々、阿漕な手法に。今回はセルフカバーを聴いたのですが、初期の作品と比べると、やはりここ5年の作品は少々パワー不足な感も。ただ、デビューから5年でアルバム4枚リリースしているのに対して、その後5年では(1枚はカバーアルバムなので)実質アルバム2枚からのセレクトだったという差があるので、ベスト盤リリースはちょっと早すぎたかも。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE
5th Anniversary Best
TIME
DUO
Answer

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2022年5月28日 (土)

ようやく!ようやく!

Thundercat Japan Tour 2022

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2022年5月18日(水)18:00~

今、もっとも注目されているベーシストで、Flying LotusやKendrick Lamarのアルバムにも参加しているThundercat。2017年にリリースされたアルバム「Drunk」、2020年にリリースされたアルバム「It Is What It Is」はいずれも傑作アルバムでした。そんな彼の来日ライブが行われるとあって、さっそくチケットを確保しました!2020年に・・・・・・。

Snapshot

当初、このライブが開催される予定だったのが2020年4月。そう、あのコロナ禍がはじまった真っ最中。当然のごとく、ライブは延期に。延期後のスケジュールは同年の9月と決定されたものの、それも延期。その後、しばらく無しのつぶての状況になったのですが、当初の予定から2年、ようやく、ようやく来日公演が正式決定!この日を迎えました。正直、ライブ自体が中止になるものと半分以上諦めていたのですが、ようやく発券したチケットを握りしめ、クワトロに向かいました。

⇐発券したチケットは、このように当初の公演予定日が記載。ちなみに、コロナ禍の入場制限ということで、2回にわけての公演となり、私はそのうち1回目、18時スタートの会に参加しました。

会場には、テープで白い枠が区切ってあって、1つの枠につき1人が入ってみる見るように指示されていました。とはいえ、会場の定員の半分の入りということもあって、特に後ろの方はスペースも余裕で空いている状況。さすがに前の方で混雑の中、見るのはちょっと怖い感じもしたので、すいている後ろの方に陣取って、ライブ鑑賞となりました。

2回公演の1回目で、2回目も控えていることもあり、ほぼ18時ちょうどにライブはスタート。この日は、ドラマーには、Thundercatのアルバムにも参加しており、現在、非常に注目を集めているドラマーであるLouis Coleが参加。さらにキーボードのメンバーとの3人でのステージとなりました。1曲目は、最新アルバムからの1曲目ということもあり「Lost In Space/Great Scott/22-26」からスタート。ファルセットボイルで美しく聴かせてくれるのですが、さらにグルーヴィーなThundercatのベースと、Louis Coleの超絶ドラミングが重なるパフォーマンスで、序盤から一気に惹きつけられます。

その後はメンバー紹介を挟み、「I Love Louis Cole」へ。こちらは、まさに今回参加したドラマーLouis Coleのために作られたようなナンバーで、待ってましたとばかりのLouis Coleのドラムプレイを楽しめるナンバーで、さらに会場は盛り上がっていきます。さらに「Dragonball Durag」を聴かせてくれた後は再びMCに。こちらは日本ということでThundercatの趣味でもあるアニメネタに。途中(おそらく)「NARUTO」の話なども飛び出して、その話をLouis Coleに振ったところ、きちんと答えてくれたので「だから、君のことが好きだよ」なんていう2人の仲の良さを感じさせる会話も飛び出しました(笑)。Thander

最新アルバムからのナンバーを中心に、次々と演奏を披露。もちろん彼のファルセットボイスでメロウな歌も聴かせてくれるのですが、全体的には原曲よりも、やはり3人のプレイを楽しめるような内容に。ジャムプレイもじっくりと聴かせてくれ、特に、「チック・コリアに捧げます」と話してスタートした曲については、ThundercatとLouis Coleが延々と掛け合いのグルーヴィーなジャムを聴かせてくれて、会場を沸かせました。

終盤は「It Is What It Is」から、本編ラストは彼の代表曲とも言える「Them Changes」に。最後は、歌メインで、ファルセットボイスにのせてしっかりと聴かせてくれます。非常によい心持ちになってライブは終了。客電も明るくなり、さすがに2回目も控えているため、アンコールはなしかな・・・と思いつつも、客席からは盛大なアンコールが起こります。

そうするとやがて照明が暗くなり、なんと再びメンバーがステージに登場!最後は「Funny Thing」を披露。軽快でアップテンポなナンバーに、観客も大盛り上がり。最後は会場のテンションもマックスになった中、ライブの幕は下ろされました。

2回目のスタートが8時ということもあり、ライブが終了したのは7時半。約1時間半のステージでした。わかってはいたのですが、比較的短めのステージ。ただ、それでもLouis Coleとのプレイは非常に魅力的で、短いながらも非常に濃い内容のステージになっていました。まさに2年間、待ちに待ったかいのあったステージ!!途中のMCもかなりフランクリーで、彼の人柄も伝わりましたし、とにかく独特のグルーヴ感がたまらないライブとなりました。非常に満足度の高い1時間半でした。

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2022年5月27日 (金)

25周年の記念アルバム

Title:プロム
Musician:Cocco

今年、デビュー25周年を迎えたCoccoの、25周年記念アルバム。あの、衝撃的だったデビューシングル「カウントダウン」から、もう25年も経つのか・・・と、デビュー当初からリアルタイムに知っている身としては、自分も年を取ったなぁ、とも思ってしまいます。ただ一方で、いろいろと紆余曲折もあったよなぁ、とも感じてしまいます。2001年には、伝説とも言えるミュージックステーションの出演後の逃走劇や、その後の活動休止などもありつつ、最近ではYou Tubeで、今後メディアには一切登場しない旨を宣言し、物議をかもしたりもしました。もっとも、特にデビュー当初などは、自分の身を削って音楽を生み出すような活動が大きなインパクトを与えていたミュージシャンなだけに、逆に活動休止などもありつつ、よく25年も活動が続いたなぁ、という感覚も抱いてしまいます。

さて、そんな25周年を記念してリリースされたアルバム。本作の大きな特徴として様々な人たちとのコラボがあげられます。参加ミュージシャンとして「コバルト」ではハマ・オカモト、「ラブレター」ではCurly Giraffeの高桑圭、「ままいろ」ではBEGIN、さらには「結い」ではスガシカオがゲストボーカルとして参加。サウンドプロデューサーとして、おなじみの根岸孝旨の他にも、前述の高桑圭やBEGIN、さらには「星の子ら」では亀田誠治が参加しているほか、「てぃんさぐぬ花」ではCoccoも参加した沖縄のイベント「沖縄のウタ拝」を主催した作編曲家の辺士名直子がピアノとサウンドプロデュースで参加しています。あ、あとブックレットを見ていて気が付いたのですが、「ままいろ」でヴァイオリンを弾いているのはKANの奥様の早稲田桜子ですね・・・。

結果として、いつものCoccoの作品より音楽的なバリエーションも広がった意欲作になっていたと思います。「コバルト」ではファンキーなハマ・オカモトのベースラインをバックにCoccoがラップを披露。トオミヨウがサウンドプロデュースを行ったタイトルチューンの「PROM」はシンセのサウンドでスケール感を覚える楽曲に。「恋い焦がれて」ではラテンバンド、ディアマンテスのメンバーが参加したラテンナンバーといった、より意欲的に様々な作品に挑戦しようとする、彼女の挑戦が感じられます。

ただ、その結果としては良くも悪くもCoccoはCoccoだな、という印象をより強く受けたアルバムになっていました。どんなタイプの楽曲であろうと、彼女の歌声が加わると、一気にCoccoの楽曲となります。もちろん、すべての曲をCocco自身が作詞作曲を行っているというのも大きな要素なのでしょうが、あらためてCoccoの曲の一種の癖の強さを感じました。そのため、これだけ音楽的な幅を広げた意欲作にも関わらず、聴き終わると、むしろ「いつものCoccoのアルバムだ」という印象も抱いてしまいました。

もっとも、音楽性を広げた、といってもCoccoのイメージを一新させるような楽曲はありまえん。また、彼女のイメージを崩すためにも、あえて他のミュージシャンに作詞作曲をゆだねるというのも手だったように感じます。ある意味、Coccoらしさが残ったアルバムということで安心して聴けたことは聴けたのですが、どうせ様々なミュージシャンとコラボするのならば、いままでのCoccoのイメージからかけ離れたような曲も聴きたかったかも、とも思ってしまいました。

また、今回のアルバム、沖縄音楽の要素も比較的目立った点もポイントかもしれません。沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」を取り上げているほか、「コバルト」でも沖縄民謡的な部分が、またBEGINが参加している「ままいろ」でも同じく沖縄の要素を強く取り上げています。Coccoが沖縄的な要素を前に出すのは今に始まった話ではありませんが、前作「クチナシ」でも沖縄民謡的な楽曲がありましたし、今、より自らのふるさとに目を向けているのかもしれません。

個人的には上にも書いた通り、意欲的な作品であることが非常に魅力的に感じられた反面、その割には新たなCoccoの姿が見れなかった点はちょっと残念に感じました。結果としては良くも悪くも安心して聴ける良作に仕上がっていたとは思います。もっとも、全く新しいCoccoの姿が見れたといって、それがリスナーの求めていたものになるかどうかは難しいところなのですが・・・。なんとも煮え切らない感想になってしまうのですが、よく出来たアルバムだったのは間違いありません。今後、メディアには登場しないという彼女ですが、ライブツアーなどは通常通り行うとか。あくまでも「歌」で勝負していく彼女の今後に期待したいところです。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ
20周年リクエストベスト+レアトラックス
Cocco 20周年記念Special Live at 日本武道館 2days~一の巻x二の巻~
スターシャンク
クチナシ

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2022年5月26日 (木)

アイドル系がベスト3を占拠

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はベスト3を、いずれもアイドル系が占めました。

まず1位は韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「Minisode 2: Thursday's Child」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数31位、PCによるCD読取数31位。5曲入りのEP盤。オリコン週間アルバムランキングでも15万枚を売り上げて先週の7位から1位にランクアップし、2週目にして1位獲得となりました。

2位は、こちらは日本の女性アイドルグループ。ももいろクローバーZ「祝典」が初登場。CD販売数及びPCによるCD読取数3位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上2万6千枚で2位初登場。前作は、田中将大の応援歌を集めたコンピレーションアルバム「田中将大」で同作の初動1万5千枚(7位)よりアップ。オリジナルアルバムとして前作「MOMOIRO CLOVER Z」の5万3千枚(1位)からは大幅にダウンしています。

3位には、こちらは韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「FEARLESS」が、国内盤のCDリリースの影響で先週の22位からランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。CD販売数で2位にランクインしています。オリコンでも今週2万4千枚を売り上げて、先週まで輸入盤の売上で10位にランクインしていたのですが、ランキングを大きくアップさせています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位にRoselia「ROZEN HORIZON」がランクイン。ガールズバンドをメインとしたメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!」から誕生した架空のガールズバンドによる最新のミニアルバム。CD販売数6位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数8位。オリコンでは初動売上1万9千枚で6位初登場。前作「劇場版『BanG Dream! Episode of Roselia』Theme Songs Collection」の1万6千枚(3位)よりアップしています。

7位にはL'Arc~en~Ciel「30th L'Anniversary L'Album Complete Box -Remastered Edition-」がランクイン。CD販売数7位。結成30周年を迎えたラルクの、過去にリリースした11枚のオリジナルアルバムをリマスターして、ボックス版としてリリースしたのが本作。定価4万円超えという内容ながらも、見事ベスト10入り。オリコンでも初動7千枚で8位にランクインしており、ラルクの根強い人気を感じさせる結果となりました。

9位にはロックバンドNovelbright「Assort」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数48位。本作がメジャーでは2作目となるフルアルバム。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場。前作「開幕宣言」の8千枚(6位)からはダウンしてしまいました。

今週、返り咲き組も1枚。8位にHKT48「アウトスタンディング」がランクイン。11週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年5月25日 (水)

話題の映画の主題歌がついに1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

主題歌も高い評価を得ているようです。

今週、見事1位を獲得したのは米津玄師「M八七」。CDがリリースされた影響で、先週の2位からランクアップし、チャートイン2週目で見事1位獲得です。CD販売数は2位、ダウンロード数は先週と変わらず1位、ストリーミング数も44位から4位に大きくアップ。You Tube再生回数も9位から3位にアップしており、ラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数6位といずれも上位にランクインしており、その強さを見せつけました。ご存じ映画「シン・ウルトラマン」主題歌。映画の方も評判になっているようで、この曲もロングヒットが期待できそうです。オリコン週間シングルランキングでは初動売上22万8千枚で2位初登場。前作「Pale Blue」の15万6千枚(1位)からアップしています。

2位にはBE:FIRST「Bye-Good-Bye」が先週の41位からランクアップ。SKY-HIが自腹を投じたボーイズグループ発掘オーディション「THE FIRST」から誕生したアイドルグループ。CDがリリースされた影響で、7週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。CD販売数は3位初登場。ただ、CDリリースの影響で、ダウンロード数は88位から3位、ストリーミング数も53位から3位、You Tube再生回数も20位から2位と軒並みランクアップ。ほかにラジオオンエア数1位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数1位といずれも上位にランクアップしています。オリコンでは初動売上13万8千枚で3位初登場。前作「Gifted.」の19万3千枚(2位)からダウンしています。

3位は初登場組。AKB48「元カレです」。CD販売数は1位でしたが、ダウンロード数52位、ラジオオンエア数18位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数9位となり、総合順位は米津どころかBE:FIRSTにも負けて3位となりました。オリコンでは初動売上32万8千枚で1位初登場。前作「根も葉もRumor」の初動35万1千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下ですが、今週は初登場はゼロ。その影響もあり、ベスト10返り咲きも。それが優里「ドライフラワー」。ここ4週連続11位をキープしていましたが、今週10位にランクアップし、6週ぶりのベスト10返り咲き。通算74週目のベスト10ヒットを記録しました。優里は「ベテルギウス」が8位から9位にダウン。通算28週目のベスト10ヒットとなっています。

また他のロングヒット曲としてはSaucy Dog「シンデレラボーイ」。今週は5位から7位にダウン。ストリーミング数も3位から5位にダウンしています。ただ、これで通算16週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週までロングヒットを記録していたAimer「残響散歌」は今週、11位にダウン。ベスト10ヒットは23週連続でストップしました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年5月24日 (火)

明るく朗らかな戦前ジャズの世界

Title:The LOST WORLD of JAZZ 戦前ジャズ歌謡全集・ニットー篇

ここでも何度か取り上げている、戦前のSP盤の復刻を専門としたレーベル、ぐらもくらぶ。「戦前ジャズジャズ歌謡全集」と名付け、レーベル毎に戦前ジャズのSP盤をまとめた企画を続けてきましたが、今回はその第4弾。今回は戦前、関西にて活動を行っていたニットーレコードの作品を収録したオムニバスアルバム。大正9(1920)年に日東蓄音器株式会社として誕生したニットーレコードは、昭和初期には関西一のレーベルとなり、さらには東京進出も試みたものの、昭和10(1935)年にタイヘイレコードと合併。ニットーというブランドは存続したものの先細りとなり、昭和13(1938)年にはついにニットーブランドは消滅に至ったそうです。

「ジャズは戦後、アメリカの進駐軍によって日本にもたらされた・・・」なんていう俗説、最近ではすっかり否定され、戦前にも日本においてジャズが一大ブームになっていた、ということは、このぐらもくらぶのアルバムの紹介で何度もここでも記載しています。また戦前においてジャズというのは、今でいう「ジャズ」というジャンルのみを指すのではなく、一昔前までバンドサウンドが鳴っていれば、なんでも「ロック」と呼ばれていたのと同様、洋楽風のサウンドが鳴っていれば、なんでも「ジャズ」と呼ばれていたようです。

そのため、このアルバムに収録されている「ジャズ」についてもバラエティーは実に豊か。例えば「グランドホテルの歌」など、歌い方はむしろクラッシック的なボーカルスタイルですし、「谷の灯ともし頃」「月下の丘に」に至っては、ジャズというよりもハワイアン。「恋の思ひ出」なども今でいうところのムード歌謡曲風。「ジャズ」と一言で言っても、実に幅広いジャンルを指す言葉として用いられていたことが、このアルバムでもよくわかります。

そんな中、このニットーレコードの作品について感じたのは、楽曲が明るく、朗らかな雰囲気の曲が多かったという点でした。例えば戦前の大ヒット曲「アラビアの唄」「青空」は井上起久子のボーカルによるものですが、彼女のハイトーンボイスが明るく朗らか。「行進曲紐育」は内海一郎の明るいボーカルと軽快なジャズサウンドにのって、非常に明るく爽やかに繰り広げられています。「瀧の傍にて」を歌う三上静雄のボーカルも非常に朗らかですし、「恋人がほしい」はいわゆる戦前に流行ったボーイズものでコミカルな演奏がとても楽しい作品となっています。

全体的に明るく朗らかで、どこかコミカルさを感じる曲が多いというのは、関西のニットーレコードならでは、といった感じなのでしょうか?戦前の明るく陽気なジャズ文化を感じさせるオムニバスアルバム。毎回のことながら、ぐらもくらぶらしい良企画でした。戦前ジャズに興味がある方には文句なしにお勧めの1枚です。

評価:★★★★★

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2022年5月23日 (月)

セルフカバー3部作、完結!

Title:ズ盤
Musician:ウルフルズ

2022年にメジャーデビュー30周年を迎えたウルフルズ。昨年から、30年30曲のセルフカバーアルバムのリリースが続きましたが、本作は「ウル盤」「フル盤」に続く第3弾。予想通り「ズ盤」となったのですが、今回は「ズっと聴きたいウルフルズ不朽の名曲選」というコンセプトに選曲したカバーアルバム。聴かせるナンバーがメインだった「ウル盤」、力強いファンキーな作品がメインだった「フル盤」に対して、その二つのコンセプトからちょっとはずれた、いわばメロディアスなポップチューンがメインとなった選曲だったように思います。

まず本作は、まさに待ちに待ったといった感じ、ようやく収録された大ヒット曲「ガッツだぜ!!」からスタート。彼らを代表するコミカルな「借金大王」「あそぼう」「ええねん」などといった代表曲が並んでいます。確かに、「ウル盤」に収録されているような感情込めて思いっきり聴かせるような曲でもありませんし、「フル盤」のように、思いっきり力強く歌い上げるというタイプでもない、でも実にウルフルズらしさを感じさせる曲が並びます。ちなみに「明日があるさ」はカバー曲であり企画的要素も強いためか、今回のセルフカバーでは選曲されませんでした。

さて今回セルフカバーアルバムということで、デビュー30年、彼らの成長ぶりが感じられるカバーが並んでいます。特に過去の2枚のセルフカバーでは、彼らのルーツであるブラックミュージックの要素の強い、より「黒い」カバーになっていましたが、本作も同様、基本的に原曲のアレンジを重視しつつも、ソウルやファンクの要素をより強めたカバーに仕上がっています。

例えば大ヒット曲でウルフルズの名前を世間に知らしめた「ガッツだぜ!!」も、基本的に原曲同様なのですが、よりファンクなリズムが強調され、トータス松本のボーカルもよりソウルフルに。「借金大王」もブギウギの要素がより強く、「年齢不詳の妙な女」にしても、原曲がもともと持っていたモータウンサウンド的な要素をより表に出してきたアレンジになっています。

原曲のアレンジをそのままに、少しだけ黒くリメイクしたアレンジにすることによって、原曲がもともと持っていた、彼らのルーツ志向の要素をより強く感じることが出来るカバーに仕上がっていました。そういう意味では、原曲のイメージを求めていたようなファンにとっても抵抗なく聴くことができ、かつ、ウルフルズの実力、30年の成長を感じさせる、とてもよいバランスのセルフカバーになっていたように感じます。

また、特に本作で注目したいのが、本作では唯一のオリジナル作となる「タタカエエブリディ」。コロナによる最初の非常事態宣言の最中に同作のデモ音源がウルフルズの公式You Tubeチャンネルにアップされた同作が、アルバム初収録となります。文字通り、コロナ禍が続く中、日常の中で「闘う」人たちへのエール。残念ながらあれから2年、ようやく今年のGWは行動制限なしとなったもののコロナ禍は終わっておらず、苦しい状況は続いていきます。それだけに今でも強いメッセージ性を感じる本作。早く、こういう苦しい時もあったね、と言えるようになればよいのですが・・・。

本作でとりあえずカバーアルバム3部作は終了。いずれもウルフルズの実力、魅力を感じることが出来る良作になっていました。30周年を迎えて、すっかりベテランバンドとなった彼ら。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

ウルフルズ 過去の作品
KEEP ON,MOVING ON
ONE MIND
赤盤だぜ!
ボンツビワイワイ
人生
ウ!!!
ウル盤
フル盤


ほかに聴いたアルバム

ニューマニア/ハルカミライ

人気上昇中のロックバンド、ハルカミライのメジャー3枚目となるアルバム。良くも悪くもいかにもパンクロック然とした風貌に、いかにも青春パンク志向のようなバンド名といい、微妙な雰囲気も漂う反面、楽曲の方は、いかにも青春パンクといった路線もありつつ、ビートロックや、もっと正統派パンク、さらにはオルタナ系のギターロック路線など幅広く聴かせてくれます。何気に結成10周年という既に中堅というキャリアのバンドで、それだけに、いい意味での卒のなさも感じられます。ただ、逆に、悪い意味でも「卒のなさ」も感じてしまうアルバムで、そろそろ次の一歩を聴きたい感じもするのですが。

評価:★★★★

ハルカミライ 過去の作品
THE BAND STAR

10-feat/10-FEET

バンド結成25周年を迎える彼らが、25周年を記念してリリースされたアルバムの第1弾。本作はコラボレーションアルバム「6-feat」シリーズの第3弾。本作もWANIMA、クリープハイプ、Dragon Ash、岡﨑体育、ヤバイTシャツ屋さん、氣志團など豪華なメンバーとのコラボレーションとなっています。そんなコラボ作は、コラボ相手の個性もそれなりに出しつつも、基本的には分厚いバンドサウンドで聴かせる10-FEETらしいパンクロック路線が基本。そういう意味では10-FEETの良い意味での強い個性も感じられるコラボ作となっていました。

評価:★★★★

10-FEET 過去の作品
VANDALIZE
Life is sweet
thread
Re:6-feat
6-feat 2

10-FEET入り口の10曲
Fin

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2022年5月22日 (日)

WEEZERで四季を感じる

Title:SZNZ:SPRING
Musician:WEEZER

アメリカのパワーポップバンドWEEZERの新作。ここ最近、かなり積極的なアルバムリリースが続いている彼ら。昨年には2枚のアルバム、さらに2019年にも2枚のアルバムをリリースしています。一方で、ここ最近はちょっと異色作とも言えるアルバムが続いており、前作「Van Weezer」はHR/HM路線、その前の「OK Human」はギターを取り除いたアレンジ、さらに2019年にリリースしたBlack Albumもポップ調の強いアルバムになっており、さらにTeal Albumもカバーアルバムと、彼ららしい正統派のパワーポップのアルバムは、ともすれば2017年の「Pacific Daydream」以来ということになってしまいます。

ただ、一方で正統派パワーポップアルバムのリリースはないものの、アルバムの出来としてはむしろかなり充実した内容の作品が続いているように感じます。特にポップなメロディーラインという彼らの持ち味については、冴えわたっている作品が続いており、バンドとしては脂がのった状況であることを伺うことが出来ます。異色作が続いているとはいえ、高い頻度でのアルバムリリースが、彼らの状況の良さを伺わせてくれます。

今回のアルバムに関しても異色作と言えるでしょう。今年は四季の節目に合わせて4枚のEPシリーズ「SZNZ」をリリースすることになり、春分の日である3月20日に、第1弾のEPである本作がリリースされました。今後は「SZNZ:Summer」「SZNZ:Autumn」「SZNZ:Winter」が順次リリースされるということ。今回も「異色的」な形でのリリースとなっています。

そんな本作は、本人たち曰く、「異教の神話、宗教儀式、魔法、シェイクスピア、ヴィヴァルディの『四季』などがインスピレーションの源」となっているということ。ここらへん、特に神話や宗教儀式、魔法などといった要素は、特に日本のバンドにとってはあまり取り上げられることのない素材。ジャケット写真も、どこかファンタジックなものとなっており、ユニークさを感じさせます。

実際、1曲目「Opening Night」もいきなり、ご存じヴィヴァルディの「四季」のフレーズを楽曲の中に用いており、春らしい爽やかさが演出されています。このクラシックのフレーズを楽曲の中に用いるという手法は日本でもよくあるのですが、得てして強度の強いクラシックのメロディーラインが楽曲の中で不自然に浮いてしまう形になることが少なくありません。しかし、そこはいままで数多くの名ポップチューンを作り出していたWEEZER。彼らのオリジナルのメロディーパートも「四季」のフレーズに全く負けることなく、「四季」の有名なフレーズがしっかりと曲の中に溶け込んでいました。

全7曲20分程度という短い楽曲構成なのですが、どの曲も爽やかな雰囲気の曲になっており、まさにタイトル通り「春」のイメージを持った楽曲が並びます。そんな中、爽やかながらもちょっと切なさを感じるメロディーラインが実にWEEZERらしく秀逸。例えば「A Little Bit of Love」もアコースティックベースのシンプルなサウンドからスタートしつつ、途中から展開される分厚いバンドサウンドが心地よい楽曲。「The Sound Of Drums」も分厚いバンドサウンドとメランコリックなメロがインパクトのある楽曲で耳に残りますが、特に耳に残るのが「All This Love」。非常にポップながらも切ないメロディーラインで胸が締めつけられそうになるポップソング。特にサビに入る前に転調するという、ちょっとJ-POPっぽい展開もインパクトとなり、WEEZERのポップスセンスが光る作品になっています。

今回のアルバムは、リリース形態こそ挑戦的であるのですが、楽曲としてはむしろWEEZERの王道とも言えるメランコリックなメロディーラインと分厚いバンドサウンドのパワーポップ路線。楽曲としてのインパクトも十分にあり、ある意味、WEEZERらしさを待ち望んでいたファンにはたまらない作品だったのではないでしょうか。ちなみに今後、夏、秋、冬のリリースも予定されているのですが、それぞれの季節を感じるものをリアルタイムで追求するために、現時点では制作されていないということ(ただ、そろそろ「夏」の制作は開始されているのかな?)。この調子だと、次回作以降も期待できそう。今年は1年間、WEEZERの新曲で楽しめそうです。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
Van Weezer

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2022年5月21日 (土)

モーサム寄りにシフト?

Title:OVERHEAT 49
Musician:百々和宏

MO'SOME TONEBENDERのボーカリスト、百々和宏による、約5年ぶり4枚目となるソロアルバム。モーサムと並行してのソロ活動ということで、ソロアルバムは明確に、モーサムの楽曲と一線を画するような内容になっていました。具体的には、ゴリゴリのガレージロックを前面に押し出したモーサムの作品と異なり、ソロアルバムでは比較的シンプルなサウンドに、メロディーラインを聴かせるようなポップな作品が目立ちます。歌詞にしてもパーソナルな部分を押し出したような歌詞が多く、いわばバンドとは明らかに異なるソロらしい作品を聴かせてくれています。

今回のアルバムに関しても、そんなモーサムとは異なるソロらしさを感じる作品も目立ちます。1曲目「鬼退治」はウォール・オブ・サウンドを彷彿とさせるような分厚い音に美しいメロディーラインを聴かせるミディアムテンポのポップチューン。「ハルノハクチ」もドリーミーなサウンドにメランコリックなメロディーラインが美しい楽曲。軽快でコミカルな「コロちゃん」やラストの「サルベージ」もギター弾き語りでしんみり聴かせるメランコリックなメロディーラインが耳を惹きます。

ここらへんの美しいメロディーラインは、モーサムでもよくよく聴くと感じられる部分ではあるのですが、あらためて百々和宏のメロディーメイカーとしての才能を感じさせられる部分。ゴリゴリのガレージロックが特徴的なモーサムのサウンドですが、実は、そこを裏から支えているメロディーラインの良さことがモーサムの魅力の大きなポイントだったんだな、ということをあらためて感じさせられます。

歌詞にしてもロックンロールへの愛情を素直に綴った「ロックンロールハート(ア・ゴーゴー)」、出身地の博多弁で歌詞を綴った「H・A・K・A・T・A・BEN」、さらにコロナ禍をユニークに歌った「コロちゃん」など、ユーモラスかつよりパーソナルな視点に立った歌詞が目立ちます。そういう意味でもソロらしい作品と言えるでしょう。

ただ今回の作品はその上で、MO'SOME TONEBEDERを彷彿とさせる作風の曲も目立ちました。例えば「H・A・K・A・T・A・BEN」などは歌詞はともかく、サウンドはヘヴィーなギターリフがメインのガレージサウンドになっていますし、タイトルチューン「オーバーヒート49」もパンキッシュな作風でバンド色の強い楽曲になっています。特に顕著だったのが「ジャグリNUパー」で、トランペットにモーサムの武井靖典が参加していることもあり、後半なフリーキーなサウンドといい、モーサムらしさが顕著。率直な感想としてモーサムでも出来たのでは?とも思ってしまいました。

モーサムはライブ活動を中心に継続的な活動は行っているものの、音源のリリースは久しく途絶えており、ライブでは披露されているのかもしれませんが、新曲も聴けていません。そのような状況だからこそ、ソロでの作品がモーサム寄りにシフトしてしまったように今回のアルバムでは感じてしまいました。結果としては音楽的なバリエーションが増し、内容的にいままで以上の傑作に仕上がったとは思うのですが。ただ、これだけの内容ならば、次はそろそろ久しぶりにモーサムの新作を聴きたいところ。百々和宏の実力を感じるとともに、モーサムを懐かしく感じてしまった作品でした。

評価:★★★★★

百々和宏 過去の作品

ゆめとうつつとまぼろしと
スカイ イズ ブルー


ほかに聴いたアルバム

廻人/Eve

ネット発シンガーソングライターの中でも、ネットという媒介を超えて人気を博しているミュージシャンの一人、Eve。本作にも収録されている「廻廻奇譚」がアニメ「呪術廻戦」主題歌に採用し、ロングヒットを記録しました。その同作も含め、全体的には疾走感あるギターロックのアレンジに、メランコリックなマイナーコード主体のメロディーラインがメイン。ただ、ほぼ全曲、マイナーコードのメロディーラインになっており、切なさを感じるメロディーラインはインパクトがあって耳を惹くものの、ちょっと一本調子かなという印象も受けてしまいます。前作「Smile」同様、前々作までのようないかにもボカロ系的な曲は減り、いい意味で一般性は増している感じもするのですが、もうちょっと曲のバリエーションが欲しい感じも。

評価:★★★★

Eve 過去の作品
おとぎ
Smile
廻廻奇譚 / 蒼のワルツ

1 OR 8/瑛人

ご存じ「香水」で一躍ブレイクした瑛人のニューアルバム。タイトルは「一か八か」という慣用句と、自身の名前(エイト=8)を掛けたものでしょう。基本的にアコースティックなサウンドをベースに、日常を暖かい視線から描く歌詞は確かにちょっと地味な感じもしますが、なかなか魅力的。このアルバムも含めて売上はいまひとつのようで、「香水」の一発屋になってしまいそうな感も強い彼ですが、正直、それにはちょっと惜しい感じがします。同じバラードナンバーでブレイクした優里がアルバムを含めてあれだけ売れていることを考えると、もうちょっと彼も売れていいような感じもするのですが、甘いルックスとそれに合った甘いラブソングを聴かせる優里は、確かに女性受けしそうだよなぁ・・・と感じたりもするのですが・・・。無骨な感のある彼にももうちょっと期待したいところです。

評価:★★★★

瑛人 過去の作品
すっからかん

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2022年5月20日 (金)

デビュー25周年

Title:SugarlessⅢ
Musician:スガシカオ

今年、デビュー25周年を迎えたシンガーソングライターのスガシカオ。その記念すべき25周年イヤーの第1弾リリースとなるのは、いままで2001年、2011年と10年に1度のサイクルでリリースしてきたコンセプトアルバム「Sugarless」シリーズの第3弾となります。アルバム未収録曲や他のミュージシャンへの提供曲のセルフカバーを収録したコンピレーションアルバム。もっともコンピレーションアルバムといっても、全12曲中4曲が新曲。4曲は配信シングル曲で、事実上のオリジナルアルバムと言ってもいい構成になっています。

さてスガシカオといえば、もともとオフィスオーガスタの中心的なミュージシャンとして人気を博していました。その後、2011年に独立。現在はSPEEDSTAR RECORDSから作品をリリースし、今に至っています。ただ、残念ながら独立後は売上的には下降傾向。本作も残念ながら最高位13位とベスト10入りを逃してしまいました。

しかし、楽曲の出来栄えとしては、むしろ独立後の方がより充実した作品を聴かせてくれています。独立後、初アルバムだった「THE LAST」も、独立後2作目となる「労働なんかしないで 光合成だけで生きたい」も、いずれも彼のキャリアを代表しそうな傑作アルバム。そしてそれに続く本作もまた、今の彼の充実ぶりをあらわす傑作アルバムに仕上がっていました。

独立後の作品が、本作を含めて充実作になっている大きな理由としては、やはり以前に比べると楽曲の自由度がグッと増した点が大きいのではないでしょうか。特に、彼が最も好むファンクミュージックを取り入れて、より「黒さ」を感じさせる作品がオフィスオーガスタ時代よりも増えています。本作でも冒頭「トワイライト★トワイライト」も、いきなりエッジの効いたギターサウンドからスタート。ファンキーなギターのサウンドがまずはカッコよさを感じさせます。「JOKER」もヘヴィーでファンキーなギターリフが怪しげで非常にカッコいいナンバー。「ハッピーストライク」も打ち込みのサウンドが80年代的な雰囲気を醸し出しつつ、ファンキーに聴かせるポップチューンに仕上がっています。

そんな「黒さ」を感じさせる楽曲を軸にしつつ「Music Train~春の魔術師~」のような爽やかなポップチューンや、切ない失恋の歌詞が胸をうつ「心の防弾チョッキ」、また小林武史プロデュースによる「ぼくの街に遊びにきてよ」のようなピアノで伸びやかに聴かせるミディアムチューンなど、バラエティー富んだ楽曲がズラリ。既発表曲のうちアルバム初収録となる曲を並べているのですが、スガシカオらしさがあらわれた曲の連続で、オリジナルアルバムとして聴いても、その流れに違和感がありません。

特に今回のアルバムで印象に強く残るのがラスト2曲。まずKAT-TUNへの提供曲「Real Face」。こちら、スガシカオは作詞のみの提供で作曲はB'zの松本孝弘。また今回、松本がプロデュースを手掛けています。かなりダイナミックなロックアレンジに仕上がっており、スガシカオの他の楽曲とは異なる雰囲気になっているのが逆にアルバムの中で大きなインパクトとなっています。そして最後は彼がKokua名義でリリースした「Progress」のセルフカバー。基本的にオリジナルに忠実なカバーになっているのですが、前向きな歌詞を含めてあらためて名曲だな、と感じさせるインパクトの強い作品に仕上がっています。

売上の傾向とは逆に、ミュージシャンとしての充実ぶりを感じさせる傑作アルバムに仕上がっていた本作。コンピレーションということで忌避しないで、是非とも聴いてほしい傑作だと思います。これだけ充実した作品が続くのなら、また人気的にも上り調子になりそうな感じがするのですが・・・。ちなみに25周年記念リリースはまだ続くのでしょうか?次のオリジナルアルバムも早く聴きたいです!

評価:★★★★★

スガシカオ 過去の作品
ALL LIVE BEST
FUNKAHOLiC
FUNKASTiC
SugarlessII
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-

THE LAST
THE BEST-1997~2011-

フリー・ソウル・スガシカオ
労働なんかしないで 光合成だけで生きたい


ほかに聴いたアルバム

Doping Panda/DOPING PANDA

2005年にメジャーデビュー。ディスコテイストも強いダンサナブルなロックチューンで、特にライブなどで多くのリスナーを惹きつけたロックバンドDOPING PANDA。残念ながら2012年に解散してしまったのですが、なんとこのたび再結成。実に10年ぶりとなるニューアルバムをリリースしてきました。セルフタイトルとなった本作は、かつてのドーパンらしいダンサナブルな曲がメインなのですが、エレクトロサウンドをバリバリに聴かせるというよりは、よりギターロックの色合いが強い作品に。ロックバンドとしての彼らの矜持を感じさせる内容となっています。解散前にリリースされたアルバムは、ちょっとチルアウト気味の地味な作風が目立っただけに、セルフタイトル通り、実にドーパンらしさを感じるとも言えるアルバムに。これはライブも見てみたくなりました。

評価:★★★★★

DOPING PANDA 過去の作品
Dopamaniacs
decadance
anthem
THE BEST OF DOPING PANDA
YELLOW FUNK

余命10年~Original Soundtrack~/RADWIMPS

タイトル通り、映画「余命10年」のサントラ盤。基本的には、ピアノやストリングスでしんみり聴かせる劇伴音楽が収録されている曲。映画を観ていないのでなんとも言えないのですが、タイトルからある程度の方向性は推測できそうな映画なので、なんとなく映画の雰囲気にもマッチしてそう・・・。ラストは主題歌「うるうびと」が収録されているのですが、分厚いストリングスアレンジに、RADWIMPSらしい、情熱的なラブソングの歌詞となっており、ある意味、これでもか、というほどの仰々しさを感じます。ここらへんは良くも悪くもRADWIMPSらしいといった感じがするのですが、個人的にはちょっと暑苦しすぎるかなぁ。

評価:★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version
夏のせいep
2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs
FOREVER DAZE

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2022年5月19日 (木)

いまだに大人気グループ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100は、まさに今をときめく若手ミュージシャンが1位2位を獲得しましたが、アルバムチャートは、30年近くにわたり、トップミュージシャンの地位を維持している人気グループが見事1位2位を獲得しました。

そんな訳で、今週の1位2位はMr.Childrenのベストアルバムが1位2位に並びました。1位は「Mr.Children 2015-2021&NOW」、2位には「Mr.Children 2011-2015」が並びました。タイトル通り、2012年にリリースされたベストアルバム「Mr.Children 2001-2005<micro>」「Mr.Children 2005-2010<macro>」に続く2011年以降にリリースした曲をまとめたベストアルバム。2001年にリリースされたベスト盤を含め、国内でCD媒体でリリースされたベスト盤としては、これが3度目。「Mr.Children 2015-2021&NOW」はCD販売数及びPCによるCD読取数がそれぞれ1位、「Mr.Children 2011-2015」はCD販売数及びPCによるCD読取数がそれぞれ2位と両方ともきれいに並びました。オリコン週間アルバムランキングでは「Mr.Children 2015-2012&NOW」が初動19万3千枚で1位、「Mr.Children 2011-2015」が初動18万5千枚で2位に初登場。ただ、前作「SOUNDTRACKS」の27万9千枚(1位)からはダウン。ベスト盤としての前作「Mr.Children 2005-2010<macro>」の初動73万2千枚(1位)及び「Mr.Children 2001-2005<micro>」の71万6千枚(2位)からは大きくダウン。もっとも、こちらは10年前のアルバムで、CDをめぐる状況も大きく変化しているので参考にはならないのですが・・・ただ、ミスチルというとブレイクしたのが1993年のシングル「CROSS ROAD」。それから30年近くが経過しているのに、いまだに第一線で人気を博しているのは驚くべき限りです。ただ、そのころ人気を博していたB'zもドリカムもスピッツも、いまだに第一線で人気を博しているだけに、逆にこの30年近く、音楽シーンの新陳代謝があまり進んでいないような気もしてしまうのですが・・・。

3位初登場は平井大「HOPE/WISH」。日本ではちょっと珍しい感じもするサーフミュージックをベースとしたシンガーソングライターによる新作。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数28位。デビューが2008年という、既に中堅の域に入ったミュージシャンなのですが、ここ数作、人気が上昇しており、これが初のベスト3ヒット。オリコンでも初動売上1万4千枚で3位初登場。前作「THE GIFT」の4千枚(15位)から大きくランクアップしており、オリコンでは初のベスト10ヒットを記録しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはLeo/need「Leo/need SEKAI ALBUM vol.1」がランクイン。スマートフォン向けゲームを中心としたメディアミックスプロジェクト「プロジェクトセカイ」から登場した架空のグループによるアルバム。CD販売数5位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数16位。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場となっています。

5位初登場はAAA「AAA DOME TOUR 15th ANNIVERSARY-thanx AAA lot-LIVE ALBUM」がランクイン。現在、活動休止中のavexのダンスグループAAAによるライブアルバムで、デビュー15周年を記念して開催されたライブツアーの中の、昨年12月に行われた東京ドーム公演の模様をおさめた音源。CD販売数4位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数34位。オリコンでは初動売上1万枚で4位初登場。直近作はリミックスアルバム「AAA MIX CD」で同作の5千枚(19位)よりは大きくアップ。その前にリリースしたベストアルバム「AAA 15th Anniversary All Time Best -thanx AAA lot-」の11万5千枚(1位)よりは大きくダウンしています。

6位初登場はアニメソング系女性シンガーReoNa「Naked」。CD販売数6位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数48位。新曲3曲+既発表曲のニューヴァージョン1曲+それらの曲のインスト盤4曲が収録された、事実上のシングルとも言えるEP盤。オリコンでは初動売上7千枚で6位初登場。前作も同じような事実上のシングルとも言えるEP盤「月姫-A piece of blue glass moon-THEME SONG E.P.」で、同作の初動1万枚(5位)からはダウンしています。

7位にはThe Rolling Stones「Live At The El Mocambo」がランクイン。1977年にトロントの300名収容のクラブで実施されたシークレットライブの模様を収録したライブ盤。CD販売数7位、ダウンロード数22位、PCによるCD読取数21位。オリコンでは初動売上5千枚で8位初登場。直近作はBBCでのライブ録音の模様を収録したライブ盤「On Air」で、初動売上は横ばい(16位)となっています。

9位にはYUKI「Free&Fancy」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数34位、PCによるCD読取数52位。こちらも3曲入りの、事実上のシングルとも言えるEP盤なのですが・・・なんでこの収録曲数でシングル扱いじゃないんだ??オリコンでは初動売上3千枚で9位初登場。前作「Terminal」の1万6千枚(2位)からは大きくダウンしています。

最後、10位にはニューヨークを拠点に活動する2人組ユニットThe Chainsmokers「So Far So Good」がランクイン。CD販売数は25位でしたが、ダウンロード数で4位にランクインし、総合順位では見事ベスト10入り。オリコンでは初動売上1千枚で22位初登場となっています。

一方、ロングヒット盤として、藤井風「LOVE ALL SERVE ALL」。先週の2位から8位にダウンしたものの、これで8週ぶりのベスト10ヒットとなりました。今週は新譜の多さもあって大きくダウンした結果となりましたが、来週は再度のランクアップとなるか、それとも??

そして先週、ランクアップしてきた多くのロングヒット盤は残念ながら今週はベスト10圏外になってしまいました。Ado「狂言」は12位、優里「壱」は11位、YOASOBI「THE BOOK 2」は16位、宇多田ヒカル「BADモード」は14位にそれぞれランクダウン。いずれの曲も先週で通算10週目のベスト10ヒットという、奇遇な結果となっていましたが、今週は仲よくそろってランクダウンとなりました。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年5月18日 (水)

今をときめくミュージシャンが1位2位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、まさに今をときめくミュージシャンが1位2位に並びました。

まず今週1位はOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が先週の2位からランクアップし、見事1位を獲得。ストリーミング数は4週連続1位。You Tube再生回数は8位から5位にアップ。その他、ラジオオンエア数4位、Tiwtterつぶやき数61位、カラオケ歌唱回数48位で、総合順位では見事1位獲得となりました。

一方、2位には米津玄師「M八七」が初登場でランクイン。ダウンロード数は本作が1位。ただ、ストリーミング数は44位、ラジオオンエア数12位、Twitterつぶやき数4位、You Tube再生回数9位と他のチャートはいまひとつ奮いません。映画「シン・ウルトラマン」主題歌として映画ともども話題となっています。ちなみにタイトルは、もともと初代ウルトラマンの出身地とされる「M78」(こちらは架空の星雲)とする予定だったそうですが、本来の台本に出身地として記載されていた「M87星雲」(こちらは実在する星雲)にちなんでこのタイトルとなったそうです。来週にはCDリリース分も加算されるため、さらに上位が狙えるかもしれません。

3位にはハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「愛・魔性」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数10位、ラジオオンエア数88位、PCによるCD読取数12位、Twitterつぶやき数49位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上5万6千枚を売り上げて1位初登場。前作「限りあるMoment」の3万5千枚(4位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲は1曲のみ。SEKAI NO OWARI「Habit」が先週の20位からランクアップし、ベスト10入り。映画「ホリック xxxHOLiC」主題歌。6月22日にCDリリースが予定されていますが、その先行配信となります。今週特にストリーミング数が36位から8位にアップ。You Tube再生回数も6位から2位にアップしており、ネット系のランキングが健闘しています。MVのダンスが話題になっているようです。

他のロングヒット曲ですが、まずSaucy Dog「シンデレラボーイ」。今週は先週と変わらず5位をキープ。特にストリーミング数が3位をキープし強さを見せているほか、カラオケ歌唱回数も2位につけています。これで通算15週目のベスト10ヒットとなります。

優里「ベテルギウス」は先週の10位から再び8位にアップ。こちらもストリーミング数が先週と変わらず4位につけており、ベスト10キープの大きな要因となっています。これで通算27週目のベスト10ヒットとなりました。

逆にAimer「残響散歌」が今週8位から10位にダウン。ストリーミング数は6位から9位に、ダウンロード数も9位から17位にダウン。これで23週連続のベスト10ヒットとなりましたが、さすがに来週のランクインは厳しいか?

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年5月17日 (火)

壺にはまりまくる楽曲の連続

Title:BEST ALBUM SUPERVILLAIN
Musician:ビッケブランカ

個人的に、今の日本のシンガーソングライターの中で、最もメロディーラインが私の壺にはまっている人の一人と言えるのが彼、ビッケブランカ。本名、山池純矢という、愛知県は名古屋市の北、豊山町出身の列記とした日本人ミュージシャン(イチローと同郷!)の彼ですが、明らかにギターのようなコード楽器を使った、コード展開主体のメロディーではなく、ピアノのようなメロディー楽器を使った、メロディーの運びの妙によって聴かせるメロディーラインは完全に私の壺。影響を受けたミュージシャンとしてマイケル・ジャクソンやエルトン・ジョンと並んでビリー・ジョエルをあげているあたり、完全に私の好みにピッタリ。かなりはまっているミュージシャンの一人です。

本作は、彼のメジャーデビュー5周年を記念してリリースされた初のベストアルバム。全36曲入りの内容なのですが、ファン投票により楽曲を収録。CDリリースの他に、配信でのリリースも行われているのですがユニークなのはその曲順がCDと配信で異なるという点。CDは曲の流れを考えての曲順になっている一方、配信はファン投票による人気順になっているとか。最初から最後まで通して聴くことが前提のCDと、自分の好きなように曲順を変えられる配信との差ということなのでしょうか。なかなかユニークな試みのように感じます。

さて彼の楽曲の特徴としては、上にも書いた通り、メロディーがコード主体ではなく、いかにもピアノのようなメロディー楽器で作られたかのような、音の運びの心地よさで作られたメロディー進行が大きな魅力。基本的にピアノを軸に曲によっては打ち込みやストリングスを取り入れたシンプルなポップソングがメイン。あくまでも「歌」を聴かせるのがメインのミュージシャンなだけに、サウンド的なバリエーションは広くなく、「ココラムウ」のようなリズムにファンクの要素を取り入れる楽曲があったり、「蒼天のヴァンパイア」のようにラテンのリズムを取り入れる曲があったり、「Stray Cat」のようなビッケ流のディスコチューンがあったりと、それなりのバリエーションは聴かせてくれるものの、基本的にはあくまでもメロディーの良さを聴かせてくれる点が大きな特徴です。

そんな彼の楽曲の中で1位になったのが「ウララ」という2018年のメジャー初のシングル曲というのはちょっと意外な感じも。アニメタイアップ曲かつシングル曲なので、これを機にビッケを知ったというファンが多い影響でしょうか。ただ、陽気で軽快なポップチューンは彼らしさを感じる楽曲で、ビッケを知るための最初の1曲としては最適だったな、ということを感じます。

個人的に上位の曲で大好きなのが「Winter Beat」でファルセットで歌いあげるサビも心地よいですし、サビからさらに大サビへと展開する構成などは聴いていてゾクゾクしてしまいます。また、「Ca Va?」「Shakebon!」のフランス語の響きを上手くリズムに取り入れてユーモラスに聴かせる、この2曲のダンスチューンもはずせないところ。「Ca Va?」「Shakebon!」というフレーズが耳から離れなくなること請け合いです。

他に個人的なお気に入りとしたは「ポニーテイル」。爽やかでちょっと切ないメロディーラインが印象的なのですが、特にサビでキュッと胸が締め付けられるようなメロディーラインがたまりません。「TARA」のようなファルセットボイスを上手く用いて切なく聴かせるラブソングも、素晴らしいメロディーラインを聴かせてくれますし、モータウンビートを取り入れた「Moon Ride」も軽快で楽しいポップチューンになっており耳を惹きます。

「夢醒めSunset」のような、ちょっと幻想的に切なく聴かせる楽曲も、彼の書くメロディーの妙が生かされていますし、ミディアムチューンの「THUNDERBOLT」のような祝祭色豊かな楽曲も、彼のメロディーとストリングスの音色がピッタリとマッチ。最後を締めくくる「Black Catcher」も、メランコリックなメロディーラインに焦燥感あってダイナミックなサウンドがピッタリと合っており、こちらもアニメ「ブラッククローバー」のオープニングテーマなのですが、なんとなくアニソンっぽさを感じさせる曲になっています。

そんな訳でアルバムは全36曲2時間半近いボリューム感ある内容でしたが、この私の壺にはまりまくるメロディーラインの良さのためか、全く飽きることなく最後まで一気に聴き切れたアルバムになっていました。あらためてビッケブランカのメロディーメイカーとしての魅力を感じさせるベストアルバム。正直、まだ楽曲単位でもアルバム単位でも大きなヒットを出せていない彼ですが、それが不思議なくらいの名曲揃い。そろそろ1曲、大ヒット曲が出ないかなぁ。ポップス好きならば是非ともチェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS
wizard
Devil
HEY
BYE
FATE

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2022年5月16日 (月)

ボーカリストとしては既に紅白出演済

Title:NIA
Musician:中村佳穂

今、注目のシンガーソングライター、中村佳穂のニューアルバム。これが約3年4か月ぶり、フルアルバムとしては3枚目となる新進気鋭のシンガーソングライターの新作、となります。ただ、彼女の歌声自体はおそらく多くの人の耳に既に入っていると思います。というのは、声優として昨年7月に公開された映画「竜とそばかすの姫」の主人公の声を担当。さらに彼女がBelleとしてボーカルで参加したmillennium parade×Belle名義でリリースされた主題歌「U」が大ヒットを記録し、年末の紅白歌合戦出場まで果たしています。

「U」で作詞作曲を担当したのはご存じKing Gnuの常田大希であり、彼女自身は楽曲制作に参加していません。そういう意味ではシンガーソングライターとしての実力は、まだ世間にはあまり知られていない状況と言えるでしょう。実際、私自身もこのアルバムではじめて、シンガーソングライターとしての彼女を知ることが出来ました。

まず彼女の楽曲について感じるのは、全体的には明るい雰囲気というイメージがあります。彼女の声自体、どこかくったくのない明るさが感じられますし、打ち込みやバンドサウンド、さらにはピアノやストリングスも取り入れたサウンドも全体的に明るく、ポップソングとして素直に楽しめる作風に仕上がっているようにまずは感じます。

ただ、その上で彼女の作風は非常に今風であるとも感じられました。まず今風である大きな要素としてはHIP HOP的な要素の取り入れ。1曲目「KAPO」はタイトル通り、彼女の自己紹介的な作品で、軽快なアコギの音色が爽やかなのですが、ラップ的なボーカルといなっており、シンプルなリズムもHIP HOP的。また「Q日」もメロウに聴かせる曲なのですが、強いドラムーのビートにラップ的な要素の入ったボーカルスタイルに同じくHIP HOP的な要素を感じます。

さらに「Hey日」「Q日」や「ブラ~~~~~」なんていう自由度のあり、ある意味ネットスラング的なものも感じさせる楽曲タイトルも、今風と言えるのかもしれません。さらにもっとも自由度が高いといえばその音楽性。このHIP HOPもそうですが、様々な音楽的な要素を取り入れた自由度の高い音楽性も、いかにも今どきな感じがします。

例えば「さよならクレール」は、エレクトロサウンドとファルセットボイスで、シティポップのテイストを感じさせるメロウさのある楽曲。「アイミル」なども、ちょっとR&B的な要素も感じられます。「祝辞」なども、軽快なリズムはどこか「音頭」の要素を感じさせるトライバルなものですし、こちらにラップ的な要素も感じます。

かと思えば「MIU」はファルセットボイスで伸びやかに聴かせるバラードナンバーになっていますし、「Hank」もアコギのアルペジオとファルセットボイスでドリーミーに聴かせる楽曲に。さらにタイトルチューンの「NIA」ではピアノを取り入れて爽やかなポップチューンに仕上げており、ヒットポテンシャルも感じられるポップチューンになっています。

全体的には明るさや爽快さを感じさせつつ、自由度を感じさせる良質なポップアルバムに仕上がっている本作。楽曲としてのポピュラリティーも感じられ、最近の音楽の流行へのいい意味でのアップデートぶりも含めて、今風といった印象を強く感じさせます。確かに、シンガーソングライターとしての注目度の高さに納得する傑作で、今後のさらなるブレイクも期待できそう。紅白出場でその歌声だけは広く知れ渡った彼女ですが、シンガーソングライター中村佳穂としての名前がより広く知れ渡る日も遠くなさそうです。

評価:★★★★★

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2022年5月15日 (日)

今回も、日本人好みなエモコアに

Title:sore thumb
Musician:Oso Oso

ニューヨークを拠点に活動するエモバンド、Oso Osoのニューアルバム。前作「Basking In The Glow」で話題を集め、同作はインディー系バンドとしては珍しく、国内盤までリリースされるなど注目を集めたバンドとなりました。実際、あえて日本でも国内盤をリリースして売ろうとするレコード会社側の意図はよくわかります。いわゆるJimmy Eat WorldやThe Get Up Kidsなどの直系とされるエモコアのメロディーラインはメランコリックで、間違いなく日本人の壺をつきそうなもの。これを聴いて日本でも、となった発想はよくわかるような気がします。

今回のアルバムでも、1曲目「computer exploder」でいきなり心をつかまれたリスナーも多いのではないでしょうか。最初はアコギをかき鳴らしつつ、非常にキュートでポップなメロディーラインからスタート。その後は分厚いバンドサウンドが入って、いっきにダイナミックに繰り広げられる構成は見事。途中、シャウトも入り、ロックバンドらしいダイナミックさとポップなメロディーラインの妙が絶妙にマッチした名曲になっています。

その後も分厚いバンドサウンドにキュートなメロを聴かせるエモコアなナンバーが続きます。途中、箸休め的なデモ音源風のインターリュード「all love」に続く「fly on the wall」も勢いのあるパワーポップ的なナンバーで、ポップなメロが耳を惹きます。後半はミディアムチューンの「describe you」「sunnyside」や軽快なポップチューンの「because i want to」、ピアノの音色を加えて独自性のあるサウンドを聴かせる「pensacola」などバリエーションあるポップを聴かせつつ、「nothing says love like hydration」は、また前半と同様、王道とも言えるポップなメロと分厚いサウンドによるエモコアのナンバー。本領発揮とも言える楽曲で再びリスナーの耳を一気に惹きつけます。

ラストの「carousel」はギター弾き語りでしんみり聴かせる楽曲。ある意味、チルアウト的と言えるかもしれません。最後は静かな雰囲気でアルバムは終了。40分弱という短さでしたが、ポップなメロと分厚いサウンドが心地よいエモコアの王道とも言えるナンバーからバリエーションも多く聴かせてくれ、最後まで一気に楽しめるアルバムになっていました。

今回のアルバムも前作に引き続き、微妙にメランコリックなメロディーラインがいかにも日本人好みといった感じのアルバムで、前作同様、エモコア好き、あるいはパワポ好きには無条件でお勧めできそうな傑作アルバムに仕上がっていました。個人的にも壺にはまり、年間ベストクラスの内容だったかも。ただ、国内盤がリリースされた前作に比べると、本作は国内盤リリースの情報はなく、ちょっと寂しい感じが。前作が思ったほど売れなかったのでしょうか?しかし、これは是非とも日本でも注目されてほしいバンド!要チェックです。

評価:★★★★★

Oso Oso 過去の作品
Basking In The Glow

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2022年5月14日 (土)

日本をモチーフにした部分がたくさん

Title:MOTOMAMI
Musician:ROSALIA

前作「El Mal Querer」が大きな話題となったスペインのシンガーソングライターROSALIAの新作。もともとはスペインの伝統音楽であるフラメンコの歌手として活躍していたそうですが、前作でグッとポップス寄りにシフトし、各種メディアにおいても高い評価を得ました。続く本作は、レゲトンに大きな影響を受けつつも、自由度の高いポップソングを楽しめる作品に。ビルボードチャートやイギリスの公式チャートにもランクインするなど、世界的な飛躍を感じさせる作品になっています。

そして今回のアルバムで大きな特徴となっているのは、なぜか日本をモチーフにした曲が多く収録されている点でしょう。まずアルバムタイトルの「MOTOMAMI」ですが、「”Moto”はアルバムの中で最も神聖で、実験的、摩擦的で強い部分であり、”Mami”は最も現実的で、個人的で、告白的で傷つきやすい部分とのこと」と言っており、このうち「Moto」は日本語の「もっと」から来ているそうです。さらにアルバムの中で日本人にとってもっとも耳を惹くのが「HENTAI」。こちら、日本語の「変態」から来ているのですが、楽曲自体は「変態」というイメージからかけ離れた、ピアノのシンプルなアレンジで静かに聴かせる切ないバラードナンバー。ただ、全く笑う要素のない名バラードなのですが、最後は静かに「HENTAI」という歌詞で締めくくられると、日本人的には思わず笑ってしまいそう・・・なんとなく、テレビ番組「タモリ倶楽部」の名物コーナー「空耳アワー」に登場してきそうな歌詞になっています。

さらには「Chicken Teriyaki」なる曲があったり、最後に「Sakura」という曲が登場したり、日本をイメージさせるような曲が並びます。また「CANDY」のPVは渋谷で撮影され、ある意味、日本的なものを象徴するカラオケで彼女が歌うシーンなんかも登場したりと、日本的な部分が目立ちます。(ちなみに1曲目の「SAOKO」は日本人女性の名前ではなくアフリカの言葉だそうです)

ただ、日本的な部分はこういうタイトルやPVの部分だけ。残念ながらメロディーラインやサウンドには日本的な部分は皆無。今回のアルバム、彼女は「2つのパートにわかれる」という発言をしているそうですが、おそらく、レゲトンでリズミカルに聴かせる楽曲と、それ以外の楽曲を指しているのでしょう。実際、アルバムを聴くと、レゲトンで軽快なリズムを聴かせる曲とポップなメロディーをしっかり聴かせる曲ではっきりとわかれた作品になっていました。

ただし、単純に楽曲が2種類にわかれている作品、といったイメージはありません。むしろレゲトンやポップスを中心に、実に幅広い音楽性を感じさせるアルバムになっています。軽快なレゲトンの「SAOKO」からスタートし、続く「CANDY」はしんみり聴かせるバラード。さらに3曲目「LA FAMA」ではThe Weekndが参加。レゲエ的な要素を入れつつ哀愁感たっぷりのバラードに仕上げています。

さらには「BULERIAS」ではアフリカ音楽の要素を入れたようなトライバルな作風になっていますし、再び軽快なレゲトンナンバーである「Chichen Teriyaki」からピアノバラード「HENTAI」を経て、「BIZCOCHITO」はチープさも感じるエレクトロチューンで軽快で楽しく聴かせるチップチューン的な楽曲に。レゲエのリズムを入れつつ、ファルセット気味で聴かせるボーカルが幻想的な「DIABLO」やホーンセッションを入れて、レトロな雰囲気も漂う哀愁たっぷりのラテンナンバー「DELIRIO DE GRANDEZA」、そして最後を締めくくる「SAKURA」は荘厳さを感じさせるサウンドで静かに歌う上げるメランコリックなバラードナンバー。レゲトンな強いビートを主軸にまとめつつも、アルバム全体としては実にバラエティー豊かな作品に仕上がっており、様々な音楽性を行ったり来たりする、彼女の自由さに舌を巻く内容になっていました。

傑作だった前作を易々と上回る内容となっていた本作。強いレゲトンのビートに身体を揺らしつつ、かと思えばしんみりバラードナンバーに耳を惹かれる、そんな展開で最後まで全く飽きることなく一気に楽しむことが出来る作品でした。スペイン出身の彼女らしく、どこかエキゾチックな雰囲気も感じさせるもの魅力的。文句なしに年間ベストクラスの傑作だったと思います。世界レベルのミュージシャンに、さらに一歩進化したそんな作品でした。

評価:★★★★★

ROSALIA 過去の作品
El Mal Querer

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2022年5月13日 (金)

勢いと安定感が同居

Title:Torpedo
Musician:FEEDER

イギリスのロックバンドFEEDERによる、約2年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作「Tallulah」はイギリスの公式チャートでベスト5入りするヒットを記録。バンドとして2005年にリリースした「Pushing The Senses」以来というベスト5ヒットを記録しています。その勢いを生かすためか、その後、直ぐに新作の作成をリリースした彼ら。ただ、新型コロナによるロックダウンの影響で制作は伸び伸びとなり、ようやくリリースされたニューアルバムが本作となります。そして、本作も前作に続いてイギリスの公式チャートでベスト5入りを記録。既に結成から20年以上を経過するベテランバンドの彼らですが、ここに来ての人気再燃には驚かされます。

ただ、確かに前作「Tallulah」もこの「Torpedo」も、ここに来てバンドとして脂がのっていることを感じる傑作に仕上がっており、この人気再燃もある意味納得感があります。正直、前作も本作もロックバンドとして決して目新しいことを演っている訳ではありません。ある意味、王道とも言えるオルタナ系のギターロック。もっとも、それだけにいい意味で安心して聴けるアルバムとも言えるでしょう。

特に今回のアルバムで感じるのは、ベテランバンドらしいバンドとしてのスケール感と、逆にベテランバンドらしからぬ、ロックバンドとしてのダイナミズム、勢いが同居している点で、それが大きな魅力となっていました。例えば冒頭を飾る「The Healing」はストリングスも薄く入ったバンドサウンドに伸びやかなメロディーラインはスケール感を覚え、ある種のベテランバンドらしい安定感のある作品になっています。一方で、続くタイトルチューン「Torpedo」はヘヴィーなギターリフにシャウト気味なボーカルまで加わり、ハードなスタートとなります。全体的には非常にダイナミックなバンドサウンドに、ベテランバンドらしからぬ勢いすら感じさせます。

その後も「Magpie」で、メタリックな要素すら感じさせるハードなバンドサウンドで攻めてくるかと思えば、続く「Hide And Seek」では伸びやかなサウンドとメランコリックなメロディーラインで聴かせる作風に。「Wall Of Silence」のようなダイナミズムとスケール感を兼ね備えたような曲もあったりして、楽曲としてもギターロック一本の方向性なのですが、ダイナミックなサウンドとスケール感あるサウンドで緩急つけた展開のため、最後まで全く飽きさせることはありません。

最後はギター弾き語り「Desperate Hour」で締めくくり。しんみりと歌を聴かせる楽曲で、後味のよい締めくくりとなっています。まさにヘヴィーでダイナミックな勢いのあるサウンドと、伸びやかでスケール感のある安定感あるサウンドを同居させた構成は、いい意味でベテランらしい実力の高さを感じます。しかし、ご存じの方も多いとは思いますが、FEEDERといえば、ベーシストのタカ・ヒロセは岐阜県出身の日本人で、こうやってイギリスの人気バンドでバリバリに活躍している訳だから、日本のメディアももっと取り上げてもいいと思うんですが・・・。

ちなみに彼ら、コロナ禍に入る前に作品を作り、その後、コロナ禍により制作が伸び伸びとなったのですが、そのコロナ禍の前に作った作品は、今回のアルバムに収録されず、2023年にリリース予定の次のアルバムにとってあるとか。ということは、次の作品まで1年程度のインターバルでリリースされるということですか。これは楽しみ。今、ベテランバンドとして脂ののっている彼らですので、次にも期待したいところ。ロックリスナーなら文句なしに楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

FEEDER 過去の作品
TALLULAH


ほかに聴いたアルバム

In/Out/In /Sonic Youth

1980年代初頭から30年にわたり活動を続け、特にオルタナ系ロックバンドに絶大な影響を与えた、「レジェンド」とも言えるロックバンドSonic Youth。2011年に活動を休止してからちょっと久しくなってしまったのですが、本作は2000年から2010年にかけて様々な場所で録音した音源を集めたコレクションアルバム。全体的には、これでもかというほどのギターのノイズで埋め尽くされた作品が多く、自由なセッションの後が伺わせますが、「Machine」のようなポップなメロが流れてくる曲があったり、ノイジーなギターインストについても、意外とポップで聴きやすさを感じる側面があったりと、Sonic Youthの魅力は存分に感じられます。ちなみに彼らが活動休止になった理由は、ご存じの通り、メインメンバーのサーストン・ムーアとキム・ゴードンが離婚したから、なんですが、もう10年も経ったのだから、そろそろ大人の対応で活動再開してくれないかなぁ、なんて外野としては勝手なことも考えたりして。ABBAも復活したんだし・・・。

評価:★★★★★

Sonic Youth 過去の作品
The Eternal

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2022年5月12日 (木)

返り咲き組の多いチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は対象週がGW最中ということで新譜は少な目。ただその結果、返り咲き組の目立つチャートとなりました。

そんな中、1位を獲得したのは韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIMのデビューミニアルバム「FEARLESS」。輸入盤ということでCD販売数はランクインしませんでしたが、ダウンロード数で1位を獲得し、総合チャートも1位となりました。オリコン週間アルバムランキングでは、輸入盤の売上により初動売上3千枚で3位初登場となっています。

2位は藤井風「LOVE ALL SERVE ALL」が先週の7位から2位にアップ。初登場週以来6週ぶりのベスト3返り咲きとなりました。特にCD販売数が17位から4位と大幅アップ。もっとも、オリコンでも2位にランクインしているのですが、売上枚数はわずか3千枚。GW週で新譜が少なかった影響でのランクアップだったようです。

3位にはAdo「狂言」が先週の17位からアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。ベスト3も11週ぶりの返り咲きとなります。これで通算10週目のベスト10ヒット。ベスト10返り咲きはこれで3度目となり、根強い人気を感じます。特にダウンロード数が11位から5位、CD販売数も45位から13位に大幅アップとなっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に中島美嘉「I」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数18位。初のセルフプロデュース作で、全曲本人が作詞作曲を手掛けたアルバムとなっています。リリース日が5月4日で、フライング販売分があった影響で、オリコンでは先週のチャートで31位初登場。今週、2千枚を売り上げて6位にランクアップしています。ビルボードでもオリコンでもベスト10ヒットは前々作「TOUGH」以来2作ぶりとなりましたが、オリコンでは先週、今週の売上を足しても3千枚で、前作「JOKER」の初動5千枚(17位)からはダウンしています。

7位には人気若手俳優、牧村輝がさぐぱん名義でリリースしたデビューミニアルバム「さぐわん」がランクイン。CD販売数で1位を獲得しましたが、その他のチャートは圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコンでも見事1位を獲得していますが、初動売上3千枚と、さすがにCDが売れなくなっている今とはいえども、1位としてはかなり寂しい枚数となっています。

そんな訳で今週はGW週ということもあり新譜が少なめ、かつCD販売数も少ないということもあり、前述のAdoを含め、ベスト10返り咲きが目立ちました。まず優里「壱」が先週の21位から6位に大幅アップ。8週ぶりのベスト10返り咲き。CD販売数が51位から15位、ダウンロード数も12位から6位にアップしています。これで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

YOASOBI「THE BOOK 2」も23位から8位にアップ。こちらは14週ぶりのベスト10返り咲き。ダウンロード数が9位から4位にアップしたほか、CD販売数も圏外から46位にランクインしています。こちらも通算10週目のベスト10ヒットとなります。

さらにシェリル・ランカ・ワルキューレ「マクロス40周年記念超時空コラボアルバム デカルチャー!!ミクスチャー!!!!!」も先週の19位から10位にアップし、こちらは2週ぶりのベスト10返り咲き。特にCD販売数が27位から17位にアップしています。

一方、ロングヒット盤では宇多田ヒカル「BADモード」が先週と変わらず5位をキープ。こちらもダウンロード数が17位から11位にアップ。通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

なぜか妙に10週目のベスト10ヒット作が目立った今週・・・来週、ここらへんの返り咲き組がベスト10をキープするのでしょうか、それとも??チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年5月11日 (水)

今週はK-POPのアイドルが1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週はジャニーズ系の男性アイドルグループが1位を獲得しましたが、今週はK-POPの男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位を獲得したのはENHYPEN「Tamed-Dashed」。CD販売数1位、ダウンロード数20位、ストリーミング数32位、PCによるCD読取数10位、Twitterつぶやき数6位、You Tube再生回数49位。オリコン週間シングルランキングでは同曲を収録したシングル「DIMENSION:閃光」が初動売上30万5千枚で1位を獲得。前作「BORDER:儚い」の20万枚(1位)よりアップしています。

2位は先週から変わらずOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が獲得。これで3週連続の2位となりました。特にストリーミング数が3週連続で1位獲得。ダウンロード数も先週の2位から1位にアップしており、今後のロングヒットも期待できそうです。

3位にはTani Yuuki「W/X/Y」が先週の5位からランクアップし、2週ぶりにベスト3返り咲き。You Tube再生回数は7位から9位にダウンしていますが、ストリーミング数は2週連続の2位、ダウンロード数も22位から11位に大幅にアップ。こちらも今後、ロングヒットになりそうです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は初登場は1曲のみ。9位に韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「FEARLESS」がランクイン。ダウンロード数12位、ストリーミング数11位、ラジオオンエア数67位、Twitterつぶやき数29位、You Tube再生回数4位。元IZ*ONEのメンバーでもある宮脇咲良も所属しているグループだそうです。

一方、ロングヒット曲では、まずSaucy Dog「シンデレラボーイ」が6位から5位にアップ。ストリーミング数も先週と同順位の3位をキープしています。これで通算14週目のベスト10ヒットとなりました。

Aimer「残響散歌」は今週7位から8位にダウン。ただ、You Tube再生回数は9位から12位にダウンしたものの、ダウンロード数は10位から9位、ストリーミング数も8位から6位と若干のアップ傾向にあります。これで22週連続のベスト10入り。

優里「ベテルギウス」は9位から10位にダウンするものの、ギリギリでベスト10キープ。ストリーミング数は今週5位から4位にアップ。これで通算26週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週、通算8週目のベスト10ヒットを記録したKing Gnu「カメレオン」は今週16位までダウン。これ以上のロングヒットは若干難しい結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年5月10日 (火)

リズミカルでポップな楽曲が楽しい

Title:Hits To The Head
Musician:Franz Ferdinand

昨年、結成20周年を迎えたイギリスのロックバンド、Franz Ferdinandの初となるベストアルバム。2004年のデビューアルバム「Franz Ferdinand」がいきなり大ヒットを記録。その年のイギリス各種音楽賞の新人賞を総なめにするという快挙を達成。さらに翌年リリースされた「You Could Have It So Much Better」はイギリスのナショナルチャートで1位を輝いたほか、アメリカビルボードでもベスト10入りとブレイク。特に同作に収録された「Do You Want To」は陽気でリズミカル、特にサビは一度聴いたら忘れられないキャッチーさを持った楽曲になっており、「ウォークマン」のCMソングにも採用されるなど日本でもブレイクし、2006年には日本武道館でのワンマンライブも行っています。

ただ、それまでの勢いに比べると、その後に関しては若干低調気味。日本でもいままでほどその名前を聞く機会は少なくなり、アメリカビルボードでも3rdアルバム「Tonight」以降はベスト10ヒットから遠ざかっています。とはいえ、イギリスでは一定の人気を誇っているのは間違いなく、現時点での最新アルバムとなる2018年の「Always Ascending」も最高位6位とヒットを記録。本作も最高位7位にランクインし、イギリスでは間違いなく人気バンドの一組と言えるでしょう。

さて、このベストアルバムですが、曲順はきれいにアルバム順となっています。1stアルバムから5曲、2ndからは4曲、3rdからは3曲、4thからは4曲、そして5thから3曲が収録されており、ラスト1曲は新曲となります。比較的、どのアルバムからも満遍なく収録されているのですが、ただデビューアルバムからは全11曲中5曲も収録されており、良くありがちではあるのですが、やはりデビューアルバムというのは、そこまでのバンドの活動のベストな曲がつまった、よく出来たアルバムだった、ということでしょう。

そんな彼らの曲を発表順に聴くと、初期の作品については、エッジの効いたギターサウンドを前に押し出したガレージロックの色合いが強い作品が目立ちます。1曲目に収録された「Darts Of Pleasure」はまさにガレージなギターサウンドが軽快な作品ですし、「The Fire」も同じくガレージロック色を押し出したダンサナブルな楽曲となっています。

このガレージロックというスタイルにダンサナブルなリズムという彼らの軸足は、後半の曲にも少なくなく、例えば「Love Illumination」などは、ガレージロック風なギターサウンドにダンサナブルなリズムが楽しい楽曲になっています。ただ、後半になると、「Love Illumination」もそうですし、「Ulyssees」のようなシンセを取り入れたニューウェーヴ風の作品も目立つようになり、初期のようなゴリゴリのギターサウンドを聴かせるような曲は少なくなってしまいます。後半の作品ももちろん魅力的な作品は少なくないのですが、楽曲の勢いという点で言うと、やはりゴリゴリのギターサウンドを聴かせてくれる前半の作品に軍配が上がるのかなぁ、という印象を受けました。

そんな中でもやはり大ヒットした「Do You Want To」はメロディーのインパクトといい、聴いていてワクワクするようなそのサウンドといい、やはり彼らの楽曲の中では頭ひとつ出ているかな、という印象を受けます。とはいえ、それ以降の楽曲でも「Right Action」のようなディスコ風のリズムを取り入れつつ、インパクトのある楽曲も少なくありませんし、最後まで文句なしに楽しむことが出来るベストアルバムになっていました。

最後に収録されている新曲「Billy Goodbye」も、ガレージギターを鳴らしつつ、ホーンセッションを陽気に聴かせるダンサナブルなナンバーは、初期から変わらぬ彼らの魅力を伝える楽曲に仕上がっています。おそらく「Do You Want To」が好きなら気に入りそうな楽曲。「Do You Want To」やその後のアルバムで彼らをチェックしつつ、その後は聴かなくなってしまった方も少なくないかもしれません。そういう方も含めて、あらためて聴いてほしいベストアルバム。改めて彼らがポップで楽しいバンドだということを再認識したアルバムでした。

評価:★★★★★

FRANZ FERDINAND 過去の作品
TONIGHT
Right Thoughts,Right Words,Right Action
FFS(FFS)
Always Ascending


ほかに聴いたアルバム

GREATEST HITS-Japanese Single Collection-/Paul Young

ここで何度か紹介している洋楽ミュージシャンの日本でのシングルを集めた「Japanese Single Colleciton」シリーズ。今回は80年代後半から90年代初頭に特に人気を博した、イギリスのシンガーソングライターPaul Youngのベスト盤。打ち込みを入れつつ伸びやかに聴かせるブルーアイドソウルのナンバーはいかにも80年代的、というか90年代のJ-POPシーンにもこういうタイプのミュージシャンが多かったなぁ、と懐かしく感じつつ聴くことが出来ました。

評価:★★★★

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2022年5月 9日 (月)

逆にマッキーらしい

Title:Bespoke
Musician:槇原敬之

槇原敬之の初となるセルフカバーアルバム。ご存じの通り、稀代のメロディーメイカーであり作詞家でもある彼は、様々なシンガーに楽曲を提供してきています。一番有名なのは、なんといっても「世界に一つだけの花」でしょう。SMAPに提供したこの曲は、本人のどのシングル曲よりも大ヒットを記録しました。また、それらの提供曲のセルフカバーも比較的多く、オリジナルアルバムにもよくセルフカバーが収録されています。そういう意味ではセルフカバーアルバムがこれがはじめて、というのは逆に意外な印象も受けます。ちなみにファンならご存じかと思いますが、本作、ちょっと曰くつきのアルバムで、もともとは彼のデビュー30周年企画の一端として2020年3月4日にリリースが予定されていたアルバム。それが同年の2月に、彼の覚せい剤所持容疑で逮捕されたことを受け発売が中止になりました。このまま幻のアルバムになることも危惧していたのですが、当初リリース予定日から2年の月日を経て、無事リリースとなりました。

そんなセルフカバーのタイトルとなっているのが「Bespoke」という名前。あまり聴きなれない名前ですが、「テーラーが顧客とコミュニケーションをとりつつ服を仕立てていく」で、まさに他のシンガーへの楽曲提供というスタイルにピッタリという名前に感じます。とはいうものの、この収録曲を聴いて感じるのは、作詞も彼が担当している影響も大きいのでしょうが、実に槇原敬之っぽい作品が並んだアルバムだな、ということを感じました。

CHEMISTRYに提供した「約束の場所」も、盗作騒動もあった、こちらも曰くつきの作品の初セルフカバーですが、いわゆる人生訓を歌うような「ライフソング」的な歌詞も含めて実に彼らしい感じ。続く「かみさまでもえらべない。」も、仏教的な人生訓を描いた歌詞が、ちょっとお説教じみている部分も含めて、良くも悪くも槇原敬之らしい感じがします。

「着メロ」などは、タイトル自体ちょっと時代を感じさせるのですが、暖かい雰囲気の恋人同士のやり取りを描いた歌詞が槇原敬之らしい作品。藤井フミヤへの楽曲提供曲のカバーになるのですが、こういう曲を藤井フミヤが歌っていたことが逆に意外に感じます。また、このアルバムの中でも槇原敬之らしさがもっとも炸裂しているのが「一番初めての恋人」でしょう。タイトル通り、最初の恋人を思い出すちょっと切ない歌詞に風景描写もピッタリとマッチしており、槇原敬之ファンなら間違いなく壺にはまりそうな作品。こちら、平井堅への提供曲になっているのですが、平井堅もこういうタイプの曲をよく歌うだけに、彼の曲としても違和感ありまえん。もともと平井堅自体、槇原敬之からの影響を感じさせるミュージシャンですので、平井堅への提供曲ということで、槇原敬之自身、より遠慮なしに彼らしさを表に出せた、ということなのかもしれません。

逆に彼のセルフカバーとして違和感ありまくりだったのが浜田雅功と槇原敬之名義でリリースされた「チキンライス」のセルフカバー。この曲に関しては、作詞が松本人志が手掛けています。ある意味、松本の癖が出まくっている歌詞の世界観だけに、槇原敬之の世界観とはかなりギャップが生じており、その点、さすが松本人志とも言えるのですが、マッキーが歌うと、かなり違和感を覚えてしまいます。具体的には、歌詞に出てくる主人公が、典型的な成りあがった田舎のヤンキーといった感じで、槇原敬之の曲には、まず登場しないタイプ。この曲自体、「LIFE IN DOWNTOWN」でも一度セルフカバーしており、今回2度目となるのですが、自身ではまず書かないタイプの歌詞なだけに、逆に気持ちよくカバーできるのでしょうか?

基本的に、「顧客とコミュニケーションしていきながら服を仕立てていく」というタイトルのアルバムでしたが、楽曲自体は、むしろオリジナル曲以上に槇原敬之らしさを感じさせる曲の並ぶアルバムになっていました。逆にマッキーに楽曲提供を希望している時点で、相手がマッキーらしい曲を求めてきている、ということはあるのかもしれません。時折、挑戦的な曲が入り、それが失敗していくケースも少なくないオリジナルアルバムよりもむしろ、ファンとしては安心して聴けるアルバムですらあるかもしれません。メロディーメイカーとしての、あるいは優れた作詞家としての才能をあらためて感じることが出来る作品でした。

評価:★★★★★

槇原敬之 過去の作品
悲しみなんて何の役に立たないと思っていた
Personal Soundtracks
Best LOVE
Best LIFE

不安の中に手を突っ込んで
NORIYUKI MAKIHARA SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT CELEBRATION 2010~SING OUT GLEEFULLY!~
Heart to Heart
秋うた、冬うた。
Dawn Over the Clover Field

春うた、夏うた。
Listen To The Music 3
Lovable People
Believer
Design&Reason
The Best of Listen To The Music
宜候


ほかに聴いたアルバム

ONE MORE SHABON/秋山黄色

最近、男性シンガーソングライターの活躍が目立ちますが、秋山黄色のそのうちの1人。AORのテイストを感じさせる伸びやかに聴かせる曲が目立つ反面、パンキッシュなギターロックナンバーもあり、そういう意味では最近の流行り的な路線を取り入れつつ、ロックリスナーにもアピールできそうな作風が特徴的。ただ、その結果、若干中途半端さを感じる部分もあり、全体的に耳を惹かれるインパクトある曲が少ないのは残念。もう一皮むければ大化けしそうな感じはするのですが・・・惜しさを感じる1枚です。

評価:★★★★

秋山黄色 過去の作品
From DROPOUT

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2022年5月 8日 (日)

デビュー20周年のリクエストベスト

Title:20th Anniversary Favorites:As Selected By Her Fans
Musician:柴田淳

その切ない恋の歌に定評があるシンガーソングライター柴田淳。2001年にシングル「ぼくの味方」でデビュー。その後、特に3枚目のシングル「月光浴」や、それに続く「片想い」が話題となりブレイク。現在までコンスタントに活動を続ける彼女ですが、2021年には、そんな彼女もデビュー20周年を迎えました。本作は、それを記念してリリースされたオールタイムベストとなります。

さて、この手のオールタイムベスト、もちろんいろんなミュージシャンがリリースしていますが、その選曲及び曲順については、おそらくミュージシャンも悩むところでしょうし、ファンとしても注目したいところでしょう。そんな中、今回のベスト盤についてはかなりストレート。そもそもサブタイトル自体「As Selected By Her Fans」となっていることからもわかる通り、ファンによるリクエストを元にしています。さらにストレートなのがその曲順で、純粋に1位から20位までをそのまま並べた曲順。1位「月光浴」からスタートし、「今夜、君の声が聞きたい」「ぼくの味方」と続き、20位の「夢」まで、そのままランキング順に並んでいます。

この選曲と曲順にはある種の潔さも感じさせます。特に単純なファンからのリクエスト順となると、曲が最盛期に偏ってしまうリスクもあります。実際、今回のベスト20を見ると、ほとんどが2000年代前半にリリースされた曲がメインで、やはり「月光浴」や「片想い」あたりで彼女に出会って、その後、ファンになった人が多く、そんな人たちにとっては、やはり初期に聴いた楽曲の方が印象が強いのでしょう。一方ではアルバムとして2作前、「ブライニクル」に収録されていた「あなたが泣いてしまう時は」も選ばれており、この20年間、コンスタントに名曲をリリースしてきたことも感じさせます。

ただ一方で、このようなシンプルな曲順にした理由もなんとなく理解できます。それは、今回選ばれた20曲が、ほとんどどれも似たようなタイプの曲だったから、という点。ピアノとストリングスのシンプルなサウンドで伸びやかに聴かせるバラードナンバー。歌詞も、ほとんどが失恋、もしくは片想いの曲。ある意味、典型的なしばじゅんらしい曲が並びます。アルバム単位で聴くと、決して彼女はこのタイプの曲だけ歌っている訳ではないのですが、ただ、ピアノ+ストリングスの失恋バラードはまさに彼女の十八番とも言える作風。ある意味、似たような曲が並ぶからこそ、変に曲順をこねくり回すよりも、ストレートに人気順にした方がすっきりするという判断なのかもしれません。

そして、これだけ似たようなタイプの曲が並ぶにも関わらず、全20曲のベストアルバム、最後まで全く飽きることなく聴けてしまうというあたり、彼女の実力を感じさせます。まず印象的なのはその歌詞の世界。失恋や片想いの歌詞がほとんどなのですが、具体的な心境描写が胸をえぐられるような内容。曲によっては前向きに次に進もう、というような、典型的なJ-POP的な曲もあるのですが、あくまでも傷ついた心を受け止めるだけといった歌詞も目立ち、そこにリアリティーがあります。そんな歌詞にピッタリなのが、これまた狂おしいほど切なさを感じるメロディーラインと彼女の歌。この両者がピッタリとマッチしているからこそ、似たようなタイプの曲でありながら、最後まで全く飽きずに聴くことが出来ました。

ただ、ちょっと残念だったのは、2015年、わずか6年前に、既に「All Time Request BEST~しばづくし~」として同じくリクエスト曲を中心としたベスト盤をリリースしており、今回はその二番煎じだった点・・・。この手のベスト盤連発はよくありがちなのですが、正直、同じリクエストベストをわずか6年のインターバルで、というのはもうちょっと何とかならなかったのか、とも思ってしまいます。

もちろん、その点を差し引いても本作が魅力的なベスト盤だったのは間違いありません。あらためて柴田淳の魅力を認識できたアルバム。彼女の入門盤としても最適な作品です。

評価:★★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙
All Time Request BEST~しばづくし~
私は幸せ
プライニクル
おはこ
蓮の花がひらく時

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2022年5月 7日 (土)

無国籍なアルバム

Title:Topical Dancer
Musician:Charlotte Adigery&Bolis Pupul

男女の怪しげなポーズのモノトーンのジャケット写真が印象的な本作は、マカオ出身のプロデューサー、Bolis Pupulとベルギーのシンガー、Charlotte Adigeryとのユニットによる1stアルバム。プロデュースや作曲にベルギーのダンスロックバンドSoulwaxが参加し、彼らが主宰するレーベルDEEWEEからのリリースとなりました。

2人でのコンビでは初となる今回の作品は、まず特徴的なのは、シンプルでエッジの効いたエレクトロビートと、メロウさとポップさを兼ね備えた女性ボーカルによる「歌」の組み合わせというスタイル。サウンドは、基本的には非常にシンプルな強いビートが主軸となっているのですが、流れてくるのは必要最小限のサウンドのみ。様々なものをそぎ落としたサウンドはとても印象的で、そのバックに広がる空間を感じさせるのと同時に、Charlotte Adigeryによる歌を最大限聴かせつつ、強いビートでしっかりとサウンドもアピールしているような、そんな構成に仕上がっています。

そしてもうひとつ大きな特徴となっているのがCharlotte Adigeryによる歌。ちょっと気だるさを感じさせるボーカルスタイルでメロウに聴かせつつ、基本的にはポップでしっかりとインパクトを持ったメロディーが流れているという点が大きな魅力。イントロを挟んで事実上の1曲目「Esperanto」「Reappropriate」ではメロウで伸びやかなボーカルを聴かせてくれますし、一方、「Mantra」のようなメロディアスでインパクトもあるダンスポップチューンも非常に印象的。全体的にはシンプルなリズムトラックと合わせて、いい意味で耳障りのよいポップな感触のある作品がメインで、軽快なダンスポップの楽曲を楽しめる作品になっています。

また、ポップという点ではどこかコミカルさも感じさせる点も大きな魅力。オープニングの「Bel DEEWEE」から、どこかコントっぽい?電話のやり取りでスタートしていますし、続く「Esperanto」も軽快なエレクトロのサウンドにどこかコミカルさも感じます。コミカルといって最も特徴的なのは終盤の「HA HA」で、タイトル通り、笑い声をそのままサンプリングしてエレクトロサウンドをバックにコミカルに聴かせる楽曲。最初は単なる笑い声がちょっと不気味にすら感じられるのですが、後半はこちらまで笑ってしまいそうになります。

そんなポップで聴きやすさを感じさせるこのアルバムなのですが、もう一つ、特徴に感じるポイントがあります。それは彼らの楽曲から感じる無国籍な要素。もともと、メンバー自体、Bois Pupulはマカオ出身、Charlotte Adigeryはベルギー人ですがフランス出身で、さらにカリビアンの血が流れているシンガー。楽曲のタイトルも英語はもちろん「Ich Mwen」はおそらくドイツ語ですし、「Ceci n'est pas un cliche」とフランス語。楽曲的にはワールドミュージック的な要素はあまり感じないものの、西洋的なスクエアな四つ打ちのリズムと、ブラックミュージック的な要素を感じるメロウなボーカルの組み合わせという意味では無国籍的、と言えるかもしれません。

ポップでインパクトのあるメロディーラインと、エッジの聴いたシンプルなエレクトロサウンドが聴いていてとても気持ちよく、個人的にはかなり壺にはまった、年間ベストクラスの傑作アルバムに仕上がっていました。意外と幅広いリスナー層に受け入れられそうな傑作。文句なしにお勧めな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Motown Anthology/Mary Wilson

昨年2月に亡くなった、かのThe Supremesのオリジナルメンバーであり、ソロとしても活躍したシンガーのモータウン時代の楽曲をまとめたベストアルバム。The Supremesの前身、The Primettesの作品から、ソロ時代の作品まで彼女の楽曲を網羅的に収録。彼女の魅力的な歌声が楽しめるのですが、ソロになってからは、ファンキーな作品だったり、80年代ポップスな作品だったり、時代に応じて柔軟にそのスタイルを対応してきた彼女の活動がよくわかる内容になっています。あらためて彼女が偉大なシンガーだったことを実感できる作品でした。

評価:★★★★★

PAINLESS/Nilüfer Yanya

前作「Miss Universe」も話題となったイギリスのシンガーソングライターによる2枚目のアルバム。ちなみに読みにくい名前ですが、「ニルファー・ヤンヤ」と読むそうです。UKソウルにカテゴライズされるシンガーで、清涼感あるボーカルによる、メロウさを感じる歌い方が大きな魅力ではあるのですが、分厚いギターサウンドを取り入れた作品が多く、楽曲によってはダイナミックなアレンジの曲やサイケな曲調の作品も多く、前作と同様、比較的ロックと親和性のある作風が特徴的。メロディーは至ってポップにまとまっていますし、今後、日本でも話題になりそうな予感もします。今のうちにチェックしておきたいシンガーかと。

評価:★★★★★

Nilüfer Yanya 過去の作品
Miss Universe

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2022年5月 6日 (金)

分厚いバンドサウンドがキュートなメロにマッチ

Title:Continue
Musician:イズミカワソラ

以前も、当サイトでベストアルバムを紹介したことのあるシンガーソングライター、イズミカワソラ。デビュー当初から注目していたミュージシャンではあるのですが、インディーズでの活動がメインということもあって、なかなかその活動を追い切れていない部分がありました。ただ、約2年半前にリリースされたベストアルバムで最近の彼女の楽曲を聴き、その魅力を再認識。そしてリリースされた、実に5年ぶりとなるニューアルバムも、もちろんチェックしました。そして、その作品は、とびぬけてポップでキュートな楽曲の詰まった、彼女の魅力あふれる作品に仕上がっていました。

久しぶりの新作となるのですが、参加メンバーはなかなか豪華。三浦大知や[Alexandros]、SKY-HIといったミュージシャンを手掛けるエンジニアのニラジ・カジャンチが参加。さらにベースにAwesome City Clubのサポートもつとめる雲丹亀卓人、ドラムスにaikoやポルノグラフィティなどの作品にも参加している野崎マスケ、そしてギターはあのThe Birthdayの藤井謙二という、豪華なメンバーが顔を揃えています。

さて、そんなメンバーが参加したニューアルバムは、4曲入りのミニアルバム。まず1曲目「ボクとキミのみちしるべ」は、リズミカルなドラムと、陽気なピアノが楽しい、彼女らしいアップテンポで明るいナンバー。ブギウギのリズムも入ったダンサナブルなサウンドが楽しく、また、その陽気なテンポにマッチした前向きな歌詞に元気づれられるイズミカワソラらしさが出たナンバーになっています。

2曲目「日常的存在証明」は、ちょっとジャジーなピアノとドラムで疾走感を持って展開されるマイナーコード主体のナンバー。楽曲タイトルはちょっと椎名林檎っぽい感じも(笑)。そして3曲目「あなたの近くにいっていいかな」はピアノの弾き語りで聴かせるバラードナンバー。切ない雰囲気でしっかりと聴かせる、ある意味、王道とも言えるラブバラードとなっています。

そしてラストはタイトルチューンであり、また先行配信曲ともなっていた「Continue」。今回参加した豪華なバンドメンバーを余すとこなく利用した、分厚いサウンドを聴かせ、スケール感も覚えるミディアムチューン。「続く」というタイトルの通り、明日へのメッセージ性も感じさせるこの曲は、明るさと切なさを同居させたようなメロディーラインが秀逸。メロディーメイカーとしての彼女の才を存分に感じさせる名曲に仕上がっています。

全4曲13分という、正直短くも感じられるミニアルバムで、もっともっと聴いていたいなぁ、とそういう点で物足りなさも感じてしまいました。久々のアルバムということで、小手調べみたいな感じでしょうか。次は、近いうちにフルアルバムを聴いてみたいのですが・・・。

また、今回のアルバムの特徴としては、豪華なメンバーが参加した影響でしょうか、全体的に音が分厚く、バンドサウンドも聴かせる構成になっていた点。分厚いサウンドがイズミカワソラの書くキュートなメロディーラインにも何気にピッタリとマッチし、相性の良さも感じます。是非、この方向性で、次の作品も聴いてみたいです。

そんな訳で、とにかく楽しい、キュートでポップな楽曲の並ぶ傑作アルバム。この充実した内容でたった4曲は物足りない!!次は是非、フルアルバムで!あらためてイズミカワソラの魅力を体感できた作品でした。

評価:★★★★★

イズミカワソラ 過去の作品
ソラベスト2


ほかに聴いたアルバム

New Spring Harvest/OAU

昨年、ベスト盤をリリースしたOAUが、ベスト盤リリース後、はじめてリリースしたのがこの5曲入りのEP盤。とはいえ、ジャケット写真はいつものOAUといった感じならば、アルバムの内容自体も、いい意味でいつものOAU。アコースティックなサウンドでメランコリックに聴かせるスタイルは以前と変わりなく、いつもの彼ららしい作品になっており、ある種の安心感はあります。ベスト盤リリース後もいい意味で変わらない一歩を踏み出した彼ら。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND) 過去の作品
New Acoustic Tale
夢の跡
FOLLOW THE DREAM
OAU
Re:New Acoustic Life

Sparkle/miwa

シンガーソングライターmiwaによる約6年ぶりのニューアルバム。この6年の間に結婚・出産という一大イベントを経た彼女。その結果、前作「SPLASH☆WORLD」では最高位5位だったチャートが同作では15位に大幅ダウン・・・よくありがちとはいえ、うわぁ、と思ってしまいます。とはいえ、楽曲自体は、以前の彼女と同様、軽快なポップス、ギターサウンドを入れたロック的なナンバー、ストリングスを取り入れてスケール感を出した楽曲などバラエティー豊富な爽快なポップチューンが並びます。まあ「アイドル的」なものを求める人たちから決別した今からが、ミュージシャンとしての本当の勝負、と言えるのかもしれませんが。

評価:★★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST

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2022年5月 5日 (木)

最後のアルバムで1位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続き、今週も女性アイドルのアルバムが1位獲得です。

今週1位を獲得したのはラストアイドル「ラストアルバム」。CD販売数1位、その他のチャートは圏外となっており、総合順位で1位獲得となりました。ラストアイドルは秋元康が企画したオーディション番組から誕生し、2017年にデビューした女性アイドルグループ。コロナ禍の中で、握手会などの活動が自由にできなくなった影響もあり、思うように活動が出来なくなったという理由から活動終了を決定。本作は、その彼女たちの初で最後のアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万1千枚で1位獲得。正直、コロナ禍でライブとかが自由にできない状況とはいえ、握手会のような人と接する活動が出来ないと思うような活動が出来ないというのは、アイドルグループとしてはどうなんだろう、と思ってしまうのですが。

2位は江口拓也「EGURand」が獲得。人気男性声優の2枚目となるミニアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数36位。オリコンでは初動売上1万3千枚で3位初登場。前作「EGUISM」の1万7千枚(3位)から微減。

3位にはEXILE ATSUSHI「ONE」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数21位、PCによるCD読取数54位。EXILE ATSUSHIのソロアルバムにベスト盤をパッケージした2枚組のアルバム。オリコンでは初動売上1万2千枚で4位初登場。前作「40~forty~」の2万3千枚(4位)からダウンしています。

続いては4位以下の初登場盤です。まず4位に「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 06」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数16位。アプリゲーム「ウマ娘 プリディーダービー」に収録された曲をまとめたサントラ盤。オリコンでは初動売上9千枚で6位初登場。前作「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 04」の初動8千枚(8位)から微増。ちなみに「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 05」は収録曲の関係でシングル扱いとなっており、オリコンではシングルチャートで6位初登場。Hot 100では収録曲の「We are DREAMERS!!」が76位(CD販売数では7位)という結果になっています。

6位には小渕健太郎「ツマビクウタゴエ2」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数58位、PCによるCD読取数46位。ご存じコブクロのメンバーによるソロアルバムで、2013年にリリースした「ツマビクウタゴエ 〜Kobukuro songs, acoustic guitar instrumentals〜」に続くギターインストアルバムの第2弾となります。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。その前作「ツマビクウタゴエ」の2万2千枚からは大きくダウンしています。まあ、9年も前だとCDをめぐる環境はかなり変わってしまいましたが。

8位には女性アイドルグループフィロソフィーのダンス「愛の哲学」がランクイン。CD販売数7位、その他のチャートは圏外となっています。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。前作「エクセルシオール」の3千枚(18位)からアップしています。

初登場最後は9位。ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-Rule the Stage「Turn up the Stage」がランクイン。CD販売数10位、ダウンロード数9位。声優陣によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」が舞台化。その舞台でつかわれた曲をあつめたアルバムとなります。オリコンでは初動売上4千枚で12位初登場となりました。

さらに今週はベスト10返り咲きも1枚。10位に宇多田ヒカル「Fantome」がランクイン。2017年3月22日以来のベスト10入りで、通算21週目のベスト10入りとなりました。これは4月27日に同作のアナログ盤がリリースされた影響。オリコンでも5千枚を売り上げて9位にランクインしています。また、同時にアナログ盤がリリースされた「BADモード」も8位から5位にランクアップ。通算9週目のベスト10ヒットとなりました。他にも「ULTRA BLUE」「HEART STATION」「初恋」のアナログ盤がリリースされたのですが、他は「HEART STATION」が13位、「ULTRA BLUE」が16位、「初恋」が34位となりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2022年5月 4日 (水)

ジャニーズ系が1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、ジャニーズ系の男性アイドルグループが見事1位を獲得しています。

まず1位初登場はなにわ男子「The Answer」が獲得。日本テレビ系ドラマ「金田一少年の事件簿」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、You Tube再生回数3位、ラジオオンエア数15位、Twitterつぶやき数38位。オリコン週間シングルランキングでも初動売上53万5千枚で1位初登場。前作「初心LOVE」の70万6千枚(1位)よりダウンしています。

2位はOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が先週と同順位をキープ。ダウンロード数は1位から2位、You Tube再生回数も4位から8位にダウンしましたが、ストリーミング数は先週と変わらず1位をキープ。今回もロングヒットとなるのでしょうか。

3位にはSKY-HI主催のオーディション番組から誕生した男性アイドルグループBE:FIRSTの配信限定シングル「Betrayal Game」がランクイン。ダウンロード数及びYou Tube再生回数で1位を獲得。その他、ストリーミング数4位、ラジオオンエア数10位、Twitterつぶやき数6位といずれも上位にランクインしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は初登場曲はゼロ。一方、ロングヒット曲も目立ちました。まず6位にSaucy Dog「シンデレラボーイ」が4位から6位にダウンするも今週もベスト10入り。ただ、ストリーミング数は先週の4位から3位にアップしています。これで通算13週目のベスト10ヒットとなりました。

Aimer「残響散歌」は先週の5位から7位にランクダウン。ストリーミング数は8位をキープしましたが、ダウンロード数は9位から10位、You Tube再生回数は7位から9位にダウンとじわりと下落傾向です。ただ、これで21週連続のベスト10ヒットとなっています。

優里「ベテルギウス」は先週の8位から9位にダウン。これで通算25週目のベスト10ヒットに。ダウンロード数は27位、You Tube再生回数は23位までダウンしてしまいましたが、ストリーミング数は6位から5位にアップしています。ちなみに「ドライフラワー」は今週も11位止まりでしたが、カラオケ歌唱回数は今週も1位を獲得しています。

King Gnu「カメレオン」は先週の6位から10位にダウン。これで通算8週目のベスト10ヒットとなりました。ただ、ランクダウン傾向となっており、来週以降のベスト10ヒットは厳しそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2022年5月 3日 (火)

王道を行く

Title:Oochya!
Musician:Stereophonics

イギリスの国民的ロックバンドとも言えるStereophonics。ここでもアルバムがリリースされる度に毎回紹介していますが、デビュー以来、ほぼ2年毎にアルバムをリリースというコンスタントなペースの中、ほぼ前作、全英チャートで1位を獲得。一方、イギリス以外ではほとんど盛り上がりを見せず、特にアメリカビルボードチャートでは2001年にリリースされた「Just Enough Education to Perform」の188位が最高位という、これだけ英米の人気格差のあるバンドも、逆に珍しいかもしれません。

日本でも正直、他のイギリスのロックバンドと比べて、さほど高い人気を誇るバンドではないかもしれません。おそらくそれは彼らが、例えばRADIOHEADのような、評論家受けしそうな「最先端のサウンドを取り入れた実験的なバンド」ではないからというのも一つの要因でしょう。彼らの奏でる楽曲は、決して目新しくはない、王道なロックといった路線が魅力的。ただ一方、だからといってoasisのような、わかりやすいメロディーラインのロックを奏ででいるかと言われれば、そういうわかりやすいオルタナ系ロックチューンを聴かせてくれたかと思えば、日本人受けが、特に彼らのファン層として受け入れそうな若い世代の受けがあまりしなさそうな、渋いブルースロック的なナンバー中心のアルバムを作ってきてしまうあたり、比較的UKロックが好きなはずの日本人受けが今一つという大きな要素のように感じます。

実際、前作「Kind」は、そういう日本人受けがあまりしなさそうな、渋いロックチューンが主導となっているアルバムになっており、悪いアルバムではないな、と思いつつも、正直なところ、あまり好みの作品ではありませんでした。しかし、一方、今回の作品はグッと軽快なロックチューンが目立つ作品になっており、オルタナ系ロックが好きな日本人リスナー層にも受けそうな作品のように感じます。特に1曲目「Hanging On Your Hinges」は軽快なギターリフとポップなメロが主導となっているガレージロックのナンバー。いい意味でわかりやすきポップに仕上げているロックンロールチューンに仕上げています。

続く「Forever」も、ちょっと泥臭さを感じさせるサウンドながらもメランコリックさを感じるメロディーラインは多くのリスナーにとっても壺にはまるのではないでしょうか。同じく先行シングルともなった「Do Ya Feel My Love?」も分厚いバンドサウンドにちょっと切なさを感じるメロディアスなメロが魅力的な作品で、こちらも多くのリスナーが楽しめそうな楽曲。後半の「Made A Mess Of Me」などもノイジーなギターロックにポップなメロディーラインの楽曲と軽快でオルタナ色の強いナンバーになっていますし、ラストを飾る「Jack In A Box」もアコースティックなギターがメインのメロディアスに聴かせる楽曲に仕上げています。

一方では「Running Round My Brain」はヘヴィーなギターサウンドとシャウト気味なボーカルでハードロック色の強い作品に。終盤のミディアムチューン「Don't Know What Ya Got」も同じくシャウト気味なボーカルでハードロックテイストを感じさせる曲になっていますし、「Seen That Look Before」は郷愁感たっぷりのブルースロック的な作品と、渋さを感じさせる要素もしっかりと入っています。

ガレージロックからオルタナ系、ブルースロックやハードロックなど、ロックというカテゴリーで幅広い作風を感じさせるアルバム。ただ、どの曲も基本的には分厚いバンドサウンドを主軸にダイナミックなサウンドとメロディアスな歌をしっかりと聴かせるような作品になっており、聴き終わった後に「ロックを聴いたな」という、ロックリスナーにとっては充実感を持たせる作風に仕上がっていました。目新しさはないものの、王道を行くような満足度の高い作品に仕上がっていたアルバム。確かに、イギリスで国民的人気を誇るのは納得ですが、その反面、なぜイギリスだけ?という印象も受けてしまいます。ロックが好きなら文句なしに楽しめる作品です。

評価:★★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds
Kind


ほかに聴いたアルバム

Black Radio III/Robert Glasper

アメリカ・ヒューストン出身のジャズピアニストRobert Glasper。2012年にリリースしたアルバム「Black Radio」が大きな話題となり、世界的に注目のジャズピアニストになりました。「Black Radio」はグラミー賞を受賞するなど大きな評価を受け、さらに翌年リリースした第2弾「Black Radio II」も高い評価を受けました。本作は、その「Black Radio II」から約9年ぶりのリリースとなる「Black Radio」シリーズの第3弾。「Black Radio」シリーズはジャズというよりもR&Bにカテゴライズされる楽曲が並び、実際、グラミー賞でも「R&B Album」部門での受賞となっています。今回のアルバムでは、さらにジャズ的な要素は薄れ、どちらかというとR&B、さらにはAOR的な要素の強い作品に。いままで以上にポップで聴きやすさを感じさせるアルバムになっており、ジャズ以上に幅広くポップスリスナーが楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★★

Robert Glasper 過去の作品
Black Radio
Black Radio 2(Robert Glasper Experiment)
ArtScience(Robert Glasper Experiment)

Plonk/Huerco S.

アメリカの電子音楽家、ブライアン・リーズによるHuerco S.名義としては約6年ぶりとなるニューアルバム。とはいえ、ブライアン・リーズはPendant、Royal Crown of Swedenなどの名義でもアルバムをリリースしており、彼自体はコンスタントに作品をリリースし続けているようです。もっとも私が彼の作品を聴くのは本作がはじめて。非常にエッジの効いたメタリックなサウンドで、複雑に構成されたリズムが印象的。そういう意味では決して万人受けするとっつきやすい作品ではないかもしれませんが、これが良く聴くと、微妙にメロディアスな作風になっており、ついつい聴きこんでしまうポピュラリティーも持っているから不思議。何気にポップという印象すら受けてしまうアルバムでした。

評価:★★★★★

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2022年5月 2日 (月)

実に13年ぶりのニューアルバム

Title:THE NEW ALBUM
Musician:スケボーキング

なんと、あのスケボーキングが帰ってきました!!・・・・・・といっても、特に若い世代にとっては、「スケボーキング・・・誰?」という方も少なくないかもしれません。1995年に結成した彼らは、いわゆるミクスチャーロックにカテゴライズされたバンド。1999年に、Dragon Ash主催のイベント「TMC」に出演し知名度を上げ、さらに2001年には小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」をサンプリングしたシングル「TOKYO LV」が大ヒットを記録しました。

ただ、その後、活動休止期間などを挟み2010年に解散。初期の彼らは、どちらかというとポップス寄りのミスクチャーロックバンド、その後、エレクトロ方面にシフトし、若干迷走気味のアルバムをリリースしていましたが、ラストアルバムとなる「RETURNS」は、そこまでの実験性と、初期の彼らのポップな方向性が見事にマッチした傑作に仕上がっており、それだけにこのタイミングでの解散は非常に惜しく感じたことを覚えています。

それから10年。なんと2020年に、解散時のメンバーにより活動再開を発表。配信限定のシングルなどをリリースしつつ、今回、実に13年ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。その名も、そのまま「THE NEW ALBUM」。そっけないタイトルながらも、どこかユーモラスを感じさせるものが彼ららしさを感じさせます。

さて、そんな待望となるニューアルバムですが、解散前最後はエレクトロ方面にシフトしていた彼ら。活動再開後はどの方面のアルバムを聴かせてくれるのか、期待しつつ作品を聴いたのですが、方向性としては、比較的初期の彼らに近い作風になっており、いわば原点回帰的な作品。ミクスチャーロックというよりは、もともとビースティーボーイズからの影響が大きい彼らなだけに、作品的にもビースティーズの影響を強く感じるような、オールドスクールなHIP HOP、あるいはロックのサウンドを取り入れたHIP HOPという方向性の強い作風に。タイトルそのまま「ビートとベースとスクラッチ」などは、そのタイトルのまま、オールドスクールの要素の強いHIP HOPチューン。先行シングルとなっている「キャプテン隊長」「不気味の谷」にしても、軽快なリズムでオールドスクール的なHIP HOPの楽曲に仕上げています。

そのほかにも、解散前に目指していたエレクトロの方向性を取り入れた「Out of Known」やメロウなサウンドを取り入れて、最近の流行で言えば、シティポップ的な要素も感じられる「sign」といった楽曲もあり、アルバムにインパクトを加えているほか、さらにDragon Ashとのコラボで、お互いの名義で作品をリリースし続けている「EPISODE」シリーズの最新作「EPISODE 7」も収録されて大きな話題となっています。

率直に言ってしまって、サウンド的には目新しさはありません。このアルバムで聴かせるオールドスクール的なサウンドは、残念ながら今でも「一回り周って新しい」といった感じはなく、ただ「懐かしい」という感情を抱いてしまいます。しかし一方、コミカルな要素を含めてポップでいい意味で最高に聴きやすいという点は大きな魅力。特にスケボーキングの特徴であるSHIGEOのハイトーンボイス、SHUNのロートーンのボーカルという対比は今回のアルバムでもうまく生かされています。さらに「不気味の谷」のような、どこかコミカルな楽曲も少なくなく、スケボーキングらしさはしっかりと出ていたように感じます。

13年ぶりのアルバムということで、まずはスケボーキングらしさをしっかりと発揮させた、復帰後のあいさつ代わりの1枚といった感じでしょうか。そして、しっかりとスケボーキングの魅力が出ていた傑作アルバムに仕上がっていたと思います。今後はコンスタントに活動を続けていくのでしょうか?これからの彼らの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

スケボーキング過去の作品
ZOMBIE BEST
RETURNS


ほかに聴いたアルバム

東京/SUPER BEAVER

結成17年目で、そろそろベテランの領域に入るバンドながら、ここ最近、人気が上昇してきている4人組。それなりにヘヴィーなバンドサウンドを聴かせつつも、いまひとつルーツレスなサウンドや、ちょっとベタなメロディーラインはいかにもJ-POP的。前作「アイラヴユー」では骨太な路線に進むのか、軽快なギターロック路線に進むのか、中途半端な立ち位置といった印象を受けたのですが、よりポップな方向性に進んだような印象も。良くも悪くも、確かに売れ線といった感じなのですが。

評価:★★★★

SUPER BEAVER 過去の作品
アイラヴユー

The Best&More 2001~2022/CHEMISTRY

活動20周年を記念してリリースされたCHEMISTRYのベスト盤。ただ、単純に過去の代表曲を並べた作品ではなく、Disc1は「PIECE OF A DREAM」「Point of No Return」といった代表曲をmabanuaやKan Sanoといったミュージシャンを迎えてリメイクした内容。Disc2は、メンバー2人それぞれがセレクトした知る人ぞ知る的な曲を並べた「裏ベスト」的な内容となっています。リメイクの方は、若干、最近の流行のシティポップ的な要素も混ぜ合わせ、最近の音にアップデートした内容に。Disc2の曲は、スタンダードな作風ながらもしっかりと歌声とメロディーを聴かせる良曲が並んでいます。どちらも卒のない内容ながらも、抑えるべきところはしっかりと抑えた作風といった感じでしょうか。CHEMISTRYの今の魅力をしっかりと感じさせるベストアルバムでした。

評価:★★★★★

CHEMISTRY 過去の作品
Face to Face
the CHEMISTRY joint album
regeneration
CHEMISTRY 2001-2011
Trinity
はじめてのCHEMISTRY
CHEMISTRY

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2022年5月 1日 (日)

This Is アヴリル

Title:Love Sux
Musician:Avril Lavigne

約3年ぶりとなるアヴリルのニューアルバム。デビューアルバム「Let Go」の時は若干17歳で、若きパンククィーンだった彼女ですが、デビューから20年を経て、現在は37歳と、すっかり「大人の女性」となった彼女。その影響もあってか、ここ数作、「大人の女性」を目指したようなアルバムが続いていました。セルフタイトルとなった前々作「Avril Lavigne」ではバラエティー富んだ音楽性で、次の一歩を目指し、続く前作「HEAD ABOVE WATER」では、ミディアムテンポ主体の作品へとシフトしていきました。

ただ、その結果として、初期のパンクロッククイーンとしてのアヴリルをイメージすると、少々物足りなさも感じさせる向きも少なくなかったようです。実際にビルボードチャートでは前作「HEAD ABOVE WATER」は最高位13位とベスト10から陥落。その前からチャート的には下落傾向であったものの、アメリカビルボードのみならず、世界的にも厳しい結果に終わるアルバムとなってしまいました。

しかし、今回のアルバムはそんな「大人の女性」への方向性からうってかわって、初期アヴリルを彷彿させる勢いのあるパンクロックのナンバーが並ぶアルバムになっています。1曲目「Cannonball」から、いきなりギターのイントロからスタートし、彼女の元気よいボーカルでバンドサウンドをバックに疾走感もって歌い上げる楽曲。続く「Bois Lie」も、日本の90年代のガールズポップを彷彿とさせるような、ご機嫌なメロディーラインの流れてくるアップテンポなパンクポップチューン。その後もアップテンポでパンキッシュなギターロックの楽曲が続いていきます。

タイトルチューンの「Love Sux」も、力強いギターサウンドをバックに彼女のハイトーンボイス歌い上げる、典型的なメロディアスパンクな楽曲。エッジの効いたギターで疾走感もって聴かせる「Kiss Me Like The World Is Ending」もわかりやすくポップなメロディーラインとほどよく分厚いギターロックのサウンドが、ともすれば90年代的な雰囲気も感じさせる楽曲で、J-POPリスナーの親和性も高そう。日本でも毎回、ヒットを飛ばす彼女ですが、今回のアルバムは日本人受けも良さそうな感じがします。

ちなみに今回のアルバムは男性ボーカルを取り入れた曲も多く、「Bois Lie」ではマシン・ガン・ケリーが、「Love It When You Hate Me」ではブラックベアーが、「All I Wanted」ではBlink182のマーク・ホップスがゲストシンガーとして参加しています。全体的にアップテンポなパンクチューンで少々一本調子になりがちな中、男性ボーカル陣がちょうどよいインパクトとなっているようにも感じます。

アルバムの長さ自体も、全12曲で33分と、1曲あたり平均3分未満という短さ。パンクチューンで一本調子・・・とはいえ、これだけの短さですので、全く飽きることなく一気に聴けてしまいます。終盤には「Dare To Love Me」というバラードも並んでいますが、最後は再び「Break Of A Heartache」という勢いのあるパンクロックナンバーで締めくくり。最後まで勢いのあるパンクチューンが続いていました。

初期を彷彿とさせる、といっても、内容的にはともすればデビュー作以上にパンキッシュで、特にパンクロック色の強かった「The Best Damn Thing」以上に勢いのあるパンキッシュな内容に仕上がっていました。ただ、それだけに難しいこと抜きに楽しめるアルバムに仕上がっており、文句なしにワクワクする作品だったと思います。やはりこういうアルバムを望んでいたファンも多いのか、チャート的にもビルボードチャートで最高位9位と、以前には及ばないものの、2作ぶりにベスト10ヒットを記録。好調な結果となりました。次回作は、なんとなく以前にような大人な作品に戻りそうな感じもするのですが、ただ、何作かに1枚は、こういう元気印のアヴリルが聴きたいなぁ。とても気持ちのよい良作でした。

評価:★★★★★

Avril Lavigne 過去の作品
Goodbye Lullaby
Avril Lavigne
HEAD ABOVE WATER

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