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2022年4月 3日 (日)

より強靭なバンドサウンドに

Title:THEガガガSP
Musician:ガガガSP

前作から約2年弱ぶりのガガガSPのニューアルバム。2022年に結成から25年が経過した彼らのリリースする記念すべきオリジナルアルバムとなります。今回の作品は「THEガガガSP」と、ほぼセルフタイトルのアルバムになっている点からも彼らの力の入れようが伺うことが出来ます。

ある意味、勢い重視のパンクロックバンドが、25年も活動を続けているという点が驚き。さらにデビュー当初の彼らは、どちらかというと勢い一辺倒な部分もあり、マンネリ感も強いバンドだっただけに、これだけ長い期間、活動を続けられるというのは少々驚きでもあります。もっとも、2012年にはメンバーである桑原康伸の病気もあり、活動休止。前作「ストレンジピッチャー」と、その前の「ミッドナイト in ジャパン」の間は(途中、ベスト盤のリリースはあったものの)約4年半のインターバルがあるなど、ここ最近は桑原の病気というアクシデントもあり、若干リリースペースが落ちている感もあります。

もともと「元祖青春パンクバンド」的な立ち位置の彼らの以前の彼らは、青臭い青春のストレートで痛々しいラブソングが大きな特徴でもあり魅力でもありました。ある意味、楽曲的にも一本調子なところもあり、良くも悪くもガガガSPらしさという若干マンネリ気味な作風の曲が初期から最近の曲に関してまで感じられました。

ただ、ここ最近、その方向性が若干シフトしつつあります。まず大きな変化を感じさせるのが歌詞の世界。いまでも確かに「イケてない男性の内省的な歌詞」という歌詞の方向性は大きくは変りません。ただ、今回のアルバムにしても、そういうイケてない男性の心境を綴った「oiの中の蛙」にしても「ニートザンス」にしても、以前の作品のような妄想全開のイタタな要素はあまり感じさせません。さらに、これは前作「ストレンジピッチャー」でも強く感じられたのですが、「やはり素晴らしきこの人生」「遠い遠い」のような、昔を振り返るノスタルジックあふれる歌詞も目立ちます。やはりこれはメンバー全員が40歳を超えて、いい意味で大人に成長した結果と言えるのでしょう。

また今回のアルバムで特に感じたのはバンドサウンド的にも、初期のようなフォークを基調にしつつもいかにも日本的な「青春パンク」という路線から若干シフトチェンジ。以前に比べてグッとサウンドの分厚さとタフさが増した感じもします。今回のアルバムでも「これでいいのだ」もかなり分厚いサウンドになっていますし、「oiの中の蛙」にしても「妄想天国」にしてもバンドサウンド的にはハードコアにも近寄ったようなハードなサウンドを聴かせてくれます。

あえていえばサウンド面で初期の作風を感じさせるのは、いかにもガガガSPらしいパンクの「奮闘努力節」と、フォークソングからの影響が強い「遠い遠い」くらいでしょうか。ガガガSPらしさは要所要所に感じらせるものの、バンドサウンドの分厚さがグッと増して、ロックバンドとしての体力が非常にアップした印象を強く受けました。

そもそも、ガガガSPは、初期の作品をほぼすべて、ボーカルのコザック前田が務めてきましたが、2013年の「日常アナキズム」以来、山本聡と桑原康伸も共に作詞作曲を手掛けるようになりました。基本的には3人共、似たような方向性の作風が多いのですが、ここ最近の作品は、作詞作曲を3人で手掛けることによるバリエーションが徐々に発揮されつつあるように感じられます。ただ、そうといってもやはりコザック前田の書く作品が、一番インパクトがある点は否めないのですが・・・。

正直言うと、以前のようなインパクトの塊のような「これ」といった曲はないのですが、特にバンドサウンドに関しては、ここに来てバンドとしての成長を感じられるアルバムになっていたと思います。結成25年を経た彼らですが、まだまだその活躍は続きそうです。

評価:★★★★

ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集

ガガガを聴いたらサヨウナラ
ミッドナイト in ジャパン
ガガガSPオールタイムベスト~勘違いで20年!~
ストレンジピッチャー

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