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2022年4月22日 (金)

大橋トリオの魅力を再認識

Title:ohashiTrio best Too
Musician:大橋トリオ

デビュー15周年を記念してリリースされた大橋トリオの2作目となるベストアルバム。2014年にベストアルバムをリリースしており、それに続くベストアルバムとなります。本人監修・選曲によるベストアルバムで、彼の代表曲がズラリと並んだベスト盤に。オールタイムベストということで、15年のキャリアを通じた選曲になるのですが、前のベストアルバムとのかぶりが「Happy Trail」「HONEY」の2曲のみ。ちょっと意外な感もありますが、それだけ名曲が多い、ということも言えますし、逆にちょっとネガティブな言い方をしてしまうと、基本的にアルバムミュージシャンで、これといった目立ったヒット曲に乏しい・・・と言えるのかもしれません。

大橋トリオというと、「良質な大人のポップスを奏でるミュージシャン」というイメージが強くあります。彼の書くポップソングは派手さはないもののインパクトのあるメロディーライン、AORやジャズといった要素を取り入れた落ち着いた雰囲気のサウンド、ちょっとしゃれた感じのあるボーカルに歌詞と、よく出来た大人のポップスという表現が実にピッタリくるような楽曲を数多く手がけています。ただ、その結果としてメロディーラインの派手さはなく、サウンドも良くも悪くも無難にまとまってしまっている、という印象も受けていました。

それだけにオリジナルアルバムのレベルだと、良質ではあるが目新しさがないアルバム、という印象の作品が続き、良作ではあるものの傑作とは言えない、という印象のアルバムが続いていました。それだけにベスト盤としても正直、どうだろう、という印象を受けていたのですが、しかし、あらためて彼の代表曲を並べて聴くと、素直に名曲が続き、30曲2時間半弱というボリュームある内容でしたが、全く飽きることなく聴くことが出来ました。

まずあらためて彼の代表曲を並べて聴くと、意外なほど楽曲のバリエーションが多いことに気が付かされます。ファンクのリズムを入れた「THUNDERBIRD」、バンジョーが入ってカントリーテイストも感じる「Happy Tail」、ムーディーなスウィングナンバー「angle」、さらに打ち込みのリズムを入れて、大橋トリオ流のディスコチューンとも言える「GOLD FUNK」まで。もちろん楽曲全体としてはジャズ、AORを基調とした曲が並ぶものの、意外なほどのバリエーションの豊富さを感じます。

さらに斉藤和義、平井堅といった大物ゲストを迎えた曲も多く、これがインパクトとなっているのですが、特によかったのが上白石萌音とのボッサ風のデゥオとなる「ミルクとシュガー」。洒落た雰囲気が非常に良質なポップスに仕上がっていますし、清涼感あふれる上白石萌音のボーカルも素晴らしい。さらに手嶌葵との「真夜中のメリーゴーランド」も秀逸。ネオアコ風の軽快なポップスなのですが、こちらも手嶌葵のボーカルが耳に残ります。

あらためて聴くと、メロディーラインについてもインパクトあるものが要所要所に感じられ、特に耳に残ったのが「LOTUS」のサビ。アップテンポながらメランコリックなフレーズが胸にグッときます。「アネモネが鳴いた」の切ないメロディーラインも非常にインパクト大。こちらは先のベスト盤の前にリリースされた曲ですが、いまさらながら、なぜ前のベスト盤に収録されていなかったか、不思議です。

Disc1とDisc2で、1枚目は比較的明るくて軽快なナンバーが、2枚目は比較的ムーディーでメロウなナンバーが並ぶ構成。アルバム全体としても2枚通して聴いて楽しめるような構成となっており、2時間半というボリューム感でありながらも、最後までダレることなく聴くことが出来た大きな要因でしょう。あらためて大橋トリオというミュージシャンの魅力を認識できたベストアルバム。大橋トリオ入門盤としても最適な作品です。

評価:★★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD


ほかに聴いたアルバム

visions/milet

フルアルバムとしては約1年8ヶ月ぶりとなるシンガーソングライターmiletによるニューアルバム。今回のアルバムにも収録されている「Who I Am」のEPの時の感想と同様、バンドサウンドにピアノ、ストリングスを入れて、さらには曲によってエレクトロサウンドも取り入れたサウンドがとにかく分厚く、メロディーラインにはインパクトはあるものの、正直、仰々しいといった印象を受けてしまいます。分厚いサウンドに負けないだけのボーカルの力量は持っているとは思いますが、個人的にはもうちょっと交通整理してほしいかも。

評価:★★★★

milet 過去の作品
eyes
Who I Am

悄気る街、⾆打ちのように歌がある。/竹原ピストル

竹原ピストルの新作は5曲入りとなるミニアルバム。厳しい世の中で、決してむくわれずも必死に生きている人たちの背中を押すようなスタイルの歌詞の世界観は相変わらず。そんな中で、ラップを取り入れつつバンドサウンドを聴かせる「初詣」に、ダブサウンドを取り入れた「せいぜい胸を張ってやるさ。」、分厚いバンドサウンドが特徴的な「笑顔でさよなら、跡形もなく。」のように、弾き語り主体だった前作から一転、サウンド的には挑戦心も感じさせるアルバムに。次のフルアルバムでどのような形態を聴かせてくれるのか、音楽的にも楽しみです。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT
GOOD LUCK TRACK
It's my Life
STILL GOING ON

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