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2022年4月 2日 (土)

初期コステロを彷彿させるロックンロールなアルバム

Title:The Boy Named If
Musician:Elvis Costello&The Imposters

現在67歳というベテランミュージシャンながらも、1977年のデビューアルバム「My Aim Is True」以降、ほぼ2、3年に1枚というペースでアルバムをリリースし続けているコステロ。既に「レジェンド」の域に到達していながら、これだけ積極的なリリースペースを維持しているミュージシャンも珍しいのではないでしょうか。デビューから45年の間も、ずっと第一線で活躍し続けるというのは驚異的ですらあります。

ただ一方、デビュー当初の軽快なロックンロールを聴かせてくれたコステロに比べて、ここ最近の彼は、ミディアムテンポの聴かせるタイプの作品が続いており、良くも悪くも「大人になった」という印象を受けるアルバムが続いていました。確かにアルバムの中には初期の作風を彷彿させる軽快なロックンロールも紛れ込んでおり、またコステロのメロディーセンスを感じさせる曲も少なくないのですが、アルバム全体としてはやはりおとなしいアルバムといった印象を受けるアルバムが続いており、良くも悪くも落ち着いた感が否めませんでした。

しかし、今回のコステロのニューアルバムは、初期の彼を彷彿とさせるような陽気で軽快なロックンロールナンバーが並んでいました。1曲目「Farewell,OK」のイントロのギターのノイズから、おそらく多くのロックンロールリスナーは気持ちをワクワクさせるのではないでしょうか。まさにロックンロールやパブロックの影響を強く感じさせるこの曲に続くタイトルチューン「The Boy Named If」も力強いバンドサウンドを聴かせてくれるロックチューン。エレピが入って軽快な「Penelope Halfpenny」から、ポップなメロの中にアバンギャルドさが混じる「The Difference」とロックリスナーにとっては前半のワクワク感が止まりません。

中盤のバラードナンバー「Paint The Red Rose Blue」で、やはりここからは「大人の」コステロに戻ってしまうのか??と危惧を抱いたところに、続く「Mistook Me For A Friend」はエレピも入って再び軽快なロックンロールに。後半も「My Most Beautiful Mistake」のようにメランコリックなナンバーは混じるものの、軽快なロックンロールナンバーが続いていきます。

そしてラストを締めくくるのは、まるでチルアウトのようなナンバーの「Mr.Crescent」に。伸びやかでメロディアスに歌う、コステロのメロディーセンスが光るミディアムテンポ楽曲で、しっかりと聴かせてしまくくります。序盤や後半のアップテンポなロックンロールチューンに、中盤のミディアムテンポのナンバー、さらに最後の締めくくりまで、まさに完璧とも言える構成のアルバム。全13曲52分という長さもちょうどよく、一気に楽しめる傑作アルバムになっていました。

初期のコステロを彷彿とさせる勢いあるロックンロールナンバーがメインに、一方では所々にメロディーや歌をしっかり聴かせるミディアムテンポの「大人な」コステロも垣間見れる、デビューから45年を経て、大ベテランになった彼だからこそ作りえる傑作だったと思います。また、67歳になりながらも、この初期を彷彿とさせる勢いのあるロックンロールナンバーをいまだに奏でられるというのは驚きですらありました。あらためてロックンローラーとしてのコステロの魅力を満喫できた作品。まだまだ彼の勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)
Purse(Elvis Costello&The Imposters)
Hey Clockface
La Face de Pendule à Coucou

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