ポップ路線と実験路線がほどよくバランス
Title:Time Skiffs
Musician:Animal Collective
ニューヨークを拠点に活動している4人組インディーロックバンドの新作。アルバムをリリースする毎に高い評価を受けている彼らですが、今回は2018年にリリースした「Tangerine Reef」以来の新作。同作は映像作品を前提とした企画モノ的な作品でしたので、純然たるオリジナルアルバムとしては「Painting With」以来、ちょうど6年ぶりとなる新作となります。
Animal Collectiveというと、ポップな作風を軸としつつ、作品の中にエレクトロやポストロック、サイケなどの要素を混ぜて、実験的な曲調を展開する、インディーロックバンドとしての典型的なバンド。ただ、それだけに実験的な作風に走った時とポップ志向に走った時の振れ幅が比較的大きいバンドという印象を受けていました。正直なところ、直近作の「Tangerine Reef」も、オリジナルアルバムとしての前作「Painting With」も実験的な要素の強いアルバムで、あまりピンと来ないアルバムになっていました。
それだけに今回のアルバムの方向性も気にかかっていたのですが、今回のアルバムは、結果としてポップなメロディーが前面に出ており、いい意味で非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。
1曲目の「Dragon Slayer」からして、「竜退治」というそのタイトルとは裏腹に、様々なサウンドこそサンプリングしているものの、牧歌的な雰囲気すら感じさせるフォーキーなメロディーが流れてきており、某RPGを彷彿とさせるようなタイトルですが、途中、勇者が休憩している最中といった感じでしょうか。「Prester John」もファルセット気味のボーカルで歌われるメロが爽快で心地よい感じ。そして、前半で最も心地よかったのが「Strung With Everything」でしょう。序盤は静かでドリーミーなサウンドが流れつつ登場するメロディーラインは、60年代のギターポップを彷彿とさせるような心地よく懐かしい歌が流れてきます。
中盤以降もマリンバの音で清涼感あるリズムをバンドサウンドの中に潜ませつつ、ミディアムテンポのポップチューンを聴かせる「Walker」や、サイケでドリーミーなサウンドをバックに伸びやかなメロが「Cherokee」。ラストの「Royal and Desire」も伸びやかでドリーミーなエレクトロサウンドをバックに、しんみりと夢見心地の歌を聴かせる曲で、心地よい余韻と共に、アルバムは幕を下ろします。
ここ最近、実験的な路線にシフトしていた作風から一転し、ポップなメロを楽しめる作品に仕上がった本作。ただ、だからといって、前作までのサイケやポストロック的な路線が大きく切り替わった訳ではなく、様々な音を取り入れつつ、分厚いドリーミーなサウンドを聴かせてくれており、そういう意味では彼らの実験的な要素とポップな要素がほどよくバランスされた作品になっていたと思います。彼ららしさが最大限に発揮されたドリームポップの傑作。聴いていてとにかく心地よくなる作品でした。
評価:★★★★★
Animal Collective 過去の作品
Merriweather Post Pavilion
CENTIPEDE HZ
Painting With
The Paniters EP
Tangerine Reef
ほかに聴いたアルバム
Good To Be.../Keb' Mo'
現在のブルース界の第一人者、Keb' Mo'のニューアルバム。ブルースのアルバム・・・なのですが、所々にブルージーなギターを聴かせるものの、全体的にはむしろAORのテイストの強いアルバムに。曲によってはフォークやカントリーの色合いの強い曲もあったりと、いかにもなブルースを聴きたい、となると若干物足りなさも感じてしまう部分は否定できないのですが、全体的にはアメリカのルーツミュージックの影響を強く感じさせる良質なポップソングを聴かせてくれるアルバムでした。
評価:★★★★
Keb' Mo' 過去の作品
Bluesamericana
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