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2022年4月12日 (火)

このアルバムで大ブレイク

Title:LAUREL HILL
Musician:Mitski

前作「Be the Cowboy」が高い評価を集め、大きな話題となった女性シンガーソングライターMitski。次回作が非常に待たれるシンガーの一人でしたが、前作から約3年半ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。また、前作で「近いうちに大ブレイクしそう」と書いたのですが、本作はアメリカビルボードチャートで最高位5位を記録。いままで、インディーシーンにその人気がとどまっていた感もありますが、本作で一気に花開いた感があります。

その前作「Be the Cowboy」はポップなメロディーを主軸にしつつ雑食性の高い音楽性が魅力的でしたが、今回のアルバムもバラエティーに富んだポップアルバムに仕上がっています。ダウナーな雰囲気のオープニングナンバー「Valentine,Texas」に続く「Working for the Knife」は分厚いギターノイズで埋め尽くされたダイナミックな楽曲。さらに次の「Stay Soft」は軽快な打ち込みのリズムと分厚いサウンドに爽やかなピアノの音色が加わるエレクトロポップチューンと続いていきます。

さらに中盤の「Heat Lightning」はメランコリックな雰囲気が漂わせつつ、ストリングスやピアノで壮大なスケール感を覚える楽曲になっていますし、そこから一転、「The Only Heartbreaker」「Love Me More」は軽快でリズミカルな打ち込みを前面に押し出した、80年代的なエレクトロポップチューンに仕上がっています。

終盤はエレクトロサウンドでドリーミーな雰囲気を醸し出している「There's Nothing Left You」「I Guess」と続き、最後の「That's Our Lamp」ではホーンセッションまで飛び出す祝祭色豊かな楽曲となっており、まさに大団円という表現がふさわしいラストになっています。

全体的にはエレクトロサウンドをベースにしつつ、今風のサウンドから80年代ポップス、さらにはロック色の強い作風までバラエティー富んだサウンドを聴かせてくれています。そして、そんなバラエティー富んだサウンド以上に魅力的かつ本作の大きな特徴と言えるのは、フックの効いた心地よいメロディーライン。前作「Be the Cowboy」でもポップなメロが大きな魅力の彼女でしたが、本作でもその魅力をいかんなく発揮しています。

今回のアルバムでも、例えば80年代風ポップにまとめている「The Only Heartbreaker」や「Love Me More」ではフックの効いたメロディーが魅力的ですし、最後の「That's Our Lamp」も祝祭色のあるサウンドと呼応する形の明るいテンポのよいメロが魅力的。いままでインディーシーンの支持をメインに活躍してきた彼女ですが、楽曲的には十分コアにアピールする力を持っており、それが本作での大ブレイクにつながったともいえるでしょう。

ちなみに日系アメリカ人で幼少期は三重県で育ったという彼女。やはり心境的には応援したくなりますし、また、邦楽からの影響も少なくないようで、そういうい意味でもメロディーライン的には日本人にもなじみのあるものではないでしょうか。これから一層の活躍が期待される彼女ですが、このアルバムを聴く限り、さらなる人気ミュージシャンに成長していきそうです。

評価:★★★★★

Mitski 過去の作品
Be the Cowboy

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