生々しい録音そのままに
Title:Get Back (Rooftop Performance)
Musician:The Beatles
解散から50年以上が経過し、今なお多くの音楽ファンを魅了し続けている伝説のバンドThe Beatles。いまでも毎年のように新たなアイテムがリリースされ続けていますが、ここに来て、配信限定で新たなライブアルバムがリリースされました。1969年1月30日に、イギリスはロンドン、サヴィル・ロウにあったアップル・コアの本社屋上で40分にわたって行ったライブパフォーマンス、ルーフトップ・コンサート。既にバンドとして活動末期に行われたこのパフォーマンスは、The Beatlesのラストライブということもあって、いまでも伝説のパフォーマンスとして語り継がれています。ここからの音源は、アルバム「Let It Be」に使用されているほか、いろいろな形で発表されていたようですが、このたび、そのパフォーマンスがほぼ完全な形で収録された音源がリリースされました。
もともと、昨年動画配信にて公開された映画「ザ・ビートルズ: Get Back」内で、このルーフトップコンサートの全貌が映像作品として公開されており話題となっていたのですが、今回のライブアルバムリリースもその流れの中に沿ったもの。また、このルーフトップ・コンサートの映像だけピックアップし、劇場公開もされたようです。
さて、そのライブ音源なのですが、まず何より感じるのが非常に生々しいなぁ、という点でした。今回のライブアルバム、曲の間のおしゃべりだとか、演奏の準備の模様などもそのまま収録されています。映像ならともかく、音源のみでは正直なところ、何をしているのかわからなかったり、おしゃべりも、何を話しているのかわからなかったりする部分も大きいのですが(聞き取れたところで英語がわからないのですが・・・)、それを差し引いても、そこでビートルズのメンバーが演奏している!という生々しさを感じられます。
例えば1曲目「Get Back/Take 1」では、誰かが床を蹴るような音がするのですが、これはポールが床の強度を確かめるために、足で蹴っているのだとか。「I've Got A Feeling/Take 1」の最後でもメンバー同士のやり取りがそのまま収録されています。「Dig A Pony」の最初と最後には「All I Want Is You」のフレーズが入ったり、「God Save The Queen」の短いジャムセッションが入ったりと、自由なライブパフォーマンスならではの聴きどころがたくさんあり、それがまた自由に演奏を楽しんでいる彼らの姿がそのまま伝わってくるようです。
バンドの状況としては解散直前ということもあって最悪な状況であり、このパフォーマンスの前にはポールとジョージが喧嘩をして、ジョージが一時的に脱退するなどの事態もあったそうです。そのような事態にも関わらず、このパフォーマンスからは終焉を迎えるようなバンドとしての悲壮感はほとんど感じません。逆にバンドとしてしっかり一体感もあり、メンバーもパフォーマンスを楽しんでいるような感じが伝わってきます。普段はバラバラでも楽器を持ってパフォーマンスをはじめると、バンドとして一体感を発揮する・・・4人の間には、外部の人間にはわからない絆があるのでしょうか。これこそバンドマジックと言えるのかもしれません。
ただ一方では、これが最後だ、と知っている今聴くと、やはりどこか物悲しくも感じられてしまいます。「Get Back」にしても、シャウトするように歌うポールの曲に込めた意味を考えると・・・と感じてしまいます。そういう点を含めて、どこかThe Beatlesのバンドとしての最後の輝きを感じてしまうパフォーマンス。メンバーの背中を映したジャケット写真も印象的ですが、どこか終わっていく時代を感じてしまいます。
聴きどころに関してはマニアックな部分も大きいのですが、そんな部分を差し引いても、The Beatlesの最後のパフォーマンスとして聴き応えのある作品だったと思います。マニアならずとも広い層にお勧めできるアルバムです。
評価:★★★★★
The Beatles 過去の作品
LOVE
On Air~Live At The BBC Volume2
1+ (邦題 ザ・ビートルズ 1+)
LIVE AT THE HOLLYWOOD BOWL
ほかに聴いたアルバム
Pompeii/Cate Le Bon
前作「Reward」がマーキュリー・プライズにノミネートされたことでも注目を集めたイギリス・ウェールズの女性シンガーソングライターによる新作。前作ではフォーキーな作風が特徴的だったのですが、今回の作品はエレクトロなサウンドをベースに、幻想的なポップスを聴かせるアルバムになっており、楽曲によっては80年代的なサウンドを聴かせてくれており、妙に人なつっこさも感じれらます。一方では、メロディーラインには一癖加えられており、聴いていて、妙な感覚を覚えるようなポップもユニーク。前作に引き続き、大きな評判を呼びそうな作品です。
評価:★★★★★
Cate Le Bon 過去の作品
Reward
DFTK/Yung Kayo
これがデビューアルバムとなる注目のラッパー、Yung Kayo。メランコリックで、ある種の焦燥感すら感じられるサウンドやラップに、トラップ的なリズムが特徴的な作風で、トラップの派生ジャンルであるRage Beatと呼ばれるジャンルにカテゴライズされる作品だとか。まだまだこれからといった感じのラッパーですが、メランコリックな作風が耳に残り、今後、さらなるヒットを飛ばしそう。
評価:★★★★
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