忘れられたフェスの貴重な音源
Title:Summer Of Soul (...Or, When The Revolution Could Not Be Televised) Original Motion Picture Soundtrack
(邦題:「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」オリジナル・サウンドトラック)
昨年公開され、大きな話題を呼んだ映画「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」。伝説のロックフェス「ウッドストック」と同年に実施されたものの、いままでほとんど忘れ去られた存在であった「ハーレム・カルチュラル・フェスティヴァル」の模様をドキュメンタリー化した映画。その後、アカデミー賞で「長編ドキュメンタリー賞」を、グラミー賞でも「最優秀ミュージック・フィルム賞」を受賞するな、高い評価を受けています。そして、当然のように待ち望まれていた映画のサントラ盤が、映画公開より遅ればせながらリリースとなっています。
私もリアルタイムで映画を見に行き、次から次へと登場する魅力的なミュージシャンの数々にワクワクしながら楽しみました。その時の詳しい感想はこちらに書いたのですが、各種賞レースで高い評価を受けるのも納得の傑作だったと思います。そして、なによりも映画で魅力的だったのは、当たり前ですがライブパフォーマンスそれ自体。このアルバムでも1曲目The Chamber Brothersの「Uptown」からスタートしているのですが、これでもかというほどのファンキーなリズムと力強いボーカルに一気に惹きつけられます。
その後もB.B.KINGやThe Staple Singers、Sly&The Family Stoneなどといった豪華ミュージシャンたちの楽曲がズラリと並んでいる今回のサントラ。まだまだ脂ののっているB.B.KINGのブルージーな演奏や、原曲以上にソウルフルなボーカルを聴かせてくれるDavid Ruffinの「My Girl」など聴きどころはたくさん。そしてなんといっても今回のサントラ盤の大きな魅力は、当たり前ですがフル演奏で収録されているという点でしょう。ドキュメンタリー映画の方は、ドキュメンタリーという特質上もありますし、また映画自体、このフェスを通じて、当時の黒人社会の状況を映し出したいという意図もあったため、パフォーマンスの方はフル演奏ではなく、途中でカットされていたりして、その点が唯一、不満点として感じられました。
しかし、今回のアルバムでは彼らのライブパフォーマンスがフル演奏で収録されており、その魅力を存分に味わえる内容になっています。どの演奏も素晴らしかったのですが、特に素晴らしかったのは、マヘリア・ジャクソンによる「Precious Lord,Take My Hand」でしょう。映画本編でも素晴らしいパフォーマンスで印象的だったのですが、ここでもマヘリアの歌唱力がいかんなく発揮されたパワフルなボーカルが胸をうちます。「ゴスペルの女王」と呼ばれている彼女ですが、その理由が文句なしに理解できるパフォーマンスです。
さらにSly&The Family Stoneの「Sing a Simple Song」も印象的な1曲。ファンキーなリズムにのせたにぎやかなパフォーマンスが印象に残り、ライブでの盛り上がりが音源を通じても伝わってくるような内容に。こちらも映画でも印象に残ったパフォーマンスでしたが、このサントラでも、その時の記憶が蘇ってきました。
そんな訳で、収録されている音源については文句なしの作品だったのですが、一方残念な部分もあり、それは映画の全てのパフォーマンスが収録されているわけではない点。例えばスティーヴィー・ワンダーのパフォーマンスについては未収録となっています。ここらへんはやはり権利の関係でしょうか?それだけでこのサントラの魅力が大きく落ちる訳ではないのですが、ちょっと残念に感じました。
そんなマイナス点はありつつも、サントラ盤としては申し分ない傑作である本作。あらためて映画も見直したくなりました。1969年というとソウルミュージック全盛期であり、ほとんどのミュージシャンが最も脂ののった時期のパフォーマンスでもあり、そういう意味でも貴重なライブ音源とも言えるでしょう。文句なしに、全ブラックミュージック好きには要チェックのアルバムです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Requiem/KORN
約3年ぶりとなる新作。もともと昨年の4月の段階で完成されていたものの、コロナ禍によるツアーキャンセルでアルバムをアレンジできる時間的余裕が生まれ、さらなるアレンジが加えられた作品だそうです。とはいっても、いままでの彼らとは異なる・・・といった感じではなく、ヘヴィーなサウンドとメランコリックなメロといういつものスタイルはいつも通り。むしろポップなメロが前作以上に全面に出た印象も。目新しさはないものの、いい意味で聴きやすく、ヘヴィーなサウンドにロックを聴いたという満足感を覚える1枚でした。
評価:★★★★
KORN 過去の作品
Untitled
KORNIII:REMEMBER WHO YOU ARE
THE PASS OF TOTALITY
The Serenity of Suffering
The Nothing
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