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2022年4月23日 (土)

今、流行のシティポップがわかる!

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

最近、日本のシティポップが世界的にちょっとしたブームとなっている、というのは音楽ファンならご存じの方も少なくないかもしれません。先日もアメリカの人気ミュージシャン、The Weekndのアルバム「Dawn FM」に収録されている「Sacrifice」で、日本のシティポップのミュージシャン、亜蘭知子の「Midnight Pretenders」がサンプリングされたということで大きな話題となっています。

今回紹介するのは、そんな日本のシティポップの名盤を100枚紹介するディスクガイド「『シティポップの基本』がこの100枚でわかる!」。シティポップを代表するアルバムを100枚ピックアップし、ミュージシャンも含めて詳しく紹介。音楽ライターの栗本斉による1冊。また、アルバム紹介の間にコラムを挟み、「シティポップ」について、より深く紹介しています。

「シティポップ」と一言で言っても、なかなかその定義は難しく、この本でも「ジャンルというよりは、その音楽から醸し出される印象を重視している」という視点の下で「メロウでアーバンでグルーヴを感じられる作品」と定義づけています。正直、「メロウ」も「アーバン」も「グルーヴ」もかなり抽象的とも言える定義なのですが、確かに単純にジャンルや音楽性から厳密に定義づけるのは難しいというのは理解できます。

本作では、そんな定義を下に、1974年にリリースされたSUGAR BABEの「SUGAR BABE」からスタート。荒井由実、大貫妙子、山下達郎、大滝詠一といった大御所のアルバムから、オリジナルラヴや小沢健二、キリンジ、土岐麻子といったミュージシャンを取り上げた上で、ラストはYogee New Wavesまでズラリ。松田聖子や郷ひろみといったアイドル勢にまで目を配りつつ、知る人ぞ知る的ミュージシャンも多く取り上げられており、特に私がリアルタイムで聴いていなかったような、「黎明期」「最盛期」(70年代、80年代)のミュージシャンについては、こんな知られざる名盤もあったのか・・・と、非常に食指が動かされるような作品も少なくありませんでした。

特にColumn1「編曲家とスタジオ・ミュージシャン」で紹介されている、初期シティポップを支えた編曲家やスタジオ・ミュージシャンたちについては、90年代以降の作品でもその名前を聞く人も多く、70年代や80年代のシティポップが、その後のJ-POPシーンに大きな影響を与えたことを伺わせます。

また、アルバム紹介の文章も、基本的に最初はそのミュージシャンの紹介から、アルバムの中の曲の紹介、さらにはミュージシャンのその後、という平易な構成に。比較的シンプルで事実関係をしっかりと綴るような書きぶりで、作者の変な思い入れのあるような文章は登場せず、いい意味で癖のない文章が読みやすさも感じました。

さて、このアルバムで紹介されているミュージシャンですが、「黎明期」「最盛期」のミュージシャンは、私がリアルタイムで聴いていなかった時期ということもあり、正直、有名どころ以外はほとんど初耳のミュージシャンばかりでした。ただ一方、80年代終盤から2000年代くらいまでのミュージシャンにかけては、「知る人ぞ知る」的なミュージシャンを含めて、ほとんど知っているミュージシャンばかりで、具島直子やらbenzoやら「懐かしい~~」と感じてしまうミュージシャンが並んでいました。ただ一方、2010年代に入ってからの最近のミュージシャンについては、また知らないミュージシャンも多くなってしまい・・・最近のミュージシャンもしっかりとアンテナを張ってキャッチしていたつもりだったのですが、以前に比べると、ちょっとアンテナの感度が鈍っていたのかなぁ・・・なんてことを考えてしまいました・・・。

ちなみに今回、本書をKindleで読んだのですが、アルバムや曲にリンクが貼られており、クリックするとAmazon Musicが立ち上がり、音源を聴ける仕組みに。この仕組みには驚かされると同時に、電子書籍の強みを生かした仕組みとなっており、今後はこういうメディア同士のリンクが増えてきて、「本」や「音楽」「動画」の境目が、もっと曖昧になってくるのかな、なんてことを感じたりもしました。

そんな訳で、今、世界的な流行になっているシティポップの魅力を存分に感じられる1冊。文章も非常に読みやすく、読んでいて、いろいろと聴いてみたくなるアルバムも少なくありませんでした。シティポップというジャンルに興味のある方には無条件でお勧めできそうな1冊です。

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