配信解禁83曲から抽出されたCDアルバム
Title:高音質のピチカート・ファイヴ
Musician:PIZZICATO FIVE
先日は、ORIGINAL LOVEのベスト盤を紹介しましたが、今回紹介するミュージシャンも同じ「シティポップ」という枠組みで紹介されることもあるという点では似たタイプのミュージシャンと言えるかもしれません。というよりも、ご存じの方も多いとは思いますが、ORIGINAL LOVEの田島貴男は、PIZZICATO FIVEの2代目ボーカリストでもあり、一時期、両バンドを同時並行で活動を行っていました。PIZZICATO FIVEもORIGINAL LOVEと同様に、間違いなくアーバンを感じられるミュージシャン。ただ一方、両者異なるのは、PIZZICATO FIVEからはメロウさをあまり強く感じない、という点でしょうか。
さて、そんな訳で今回紹介するのはPIZZICATO FIVEの新たなベストアルバム。といっても今回のベストアルバムは、もともと昨年9月から3か月連続で「配信向けのピチカート・ファイヴ」として配信が解禁された83曲の中からセレクトされた作品となります。PIZZICATO FIVEというと、1984年から2001年まで活動したユニット。結成当初は5人組で、ボーカルも3人変わったのですが、一般的には野宮真貴と小西康陽のユニットというイメージが強いのではないでしょうか。いわゆる渋谷系を代表するユニットであり、なおかつボーカルの野宮真貴のファッション性にも大きな注目が集まりました。解散から既に20年も経ているのが、ちょっと信じられないのですが・・・こういう形で今なおアイテムがリリースされる点でもわかるように、今でも音楽シーンに影響を与え続けているユニットです。
今回、もともと「配信向けのピチカート・ファイヴ」という形で一部配信が解禁になっているのですが、もともとは2019年にベスト盤「THE BAND OF 20TH CENTURY:NIPPON COLUMBIA YEARS 1991-2001」がリリースされており、それと同時に、同ベスト盤収録曲が配信解禁。日本コロンビア時代の作品としては、このベスト盤に続く形での配信解禁となります。そのため、今回、配信解禁となった83曲については、「THE BEST OF 20TH CENTURY」とはかぶりがなく、一部、重複している曲についてはバージョン違いという形となっています。(ちなみにソニー時代のアルバムについては、一部、サブスクでの配信が解禁されているようです)
そのため彼女たちの代表曲である「スウィート・ソウル・レビュー」「大都会交響曲」「ベイビィ・ポータブルロック」などといった曲は今回未収録。「東京は夜の七時」も2001年にリリースされたベストアルバム「Pizzicato Five R.I.P.〜Big Hits and Jet Lags 1998-2001」に収録された別バージョン「東京は夜の七時 the last episode」が、「ハッピー・サッド」も「ハッピー・サッド-TYO ヴァージョン」が収録されています。
そういう意味では、アナザーベスト的なアルバムという内容とも言えるかもしれませんが、それでも「新しい歌」「戦争は終わった」などなど、まだまだ名曲がたくさん並んでいます。特に「戦争は終わった」は、ピチカートとしては珍しい社会派な要素を感じさせる曲で、陽気な曲調の中「戦争はどうして/終わらないのかな」と無邪気さを装って歌われる内容が、特にウクライナが大変なことになっている今だからこそ、胸に響くような内容になっています。
その他にも松崎しげるのパワフルなボーカルにYOU THE ROCK★の軽快なラップが加わる「東京の合唱」やエレクトロアレンジの軽快なカバーとなっている「シェリーに口づけ」など、聴きどころはたくさん。特に今回のアルバムでは、クラフトワークの「電卓」をカバーした「TASCHENERECHNER(DENTAKU)」をCDでは初収録。こちらもピチカートとしては珍しい、テクノなアレンジに仕上がっているのですが、ところどころに加わる陽気なサウンドにピチカートらしさを感じます。
ちなみに今回、83曲が配信解禁となったのですが、配信はあくまでも「配信向けのピチカート・ファイヴ」というプレイリストの形でのリリースとなっており、アルバム単位での解禁はされていません。ここらへんは、あくまでもアルバムは、ブツ切れで聴かれるような配信という形ではなく、アルバム単位でまとめて聴いてほしい、というミュージシャン側からの強い意思を感じさせます。また、アルバムは、あくまでもブックレットなどを含めた「アイテム」として入手してほしい、というメッセージもあるかもしれません。ここらへん、陽気なポップソングを奏でるピチカートの聴いた感じの印象とは異なる、ミュージシャンとしての芯の強い意思も感じさせます。そして、おそらくここらへんのミュージシャンとしての芯の強さが、渋谷系の代表格としてシーンを切り開き、今なお多くのミュージシャンに影響を与え続けている大きな要素なのかもしれません。
ちょっと配信の話になってしまいましたが・・・さすがに83曲全部あらためて聴くのは難しいかもしれませんが、そういう方のためにもピチカートの入門盤としても最適なベスト盤と言えるかもしれません。あらためてピチカートの魅力を強く感じさせるアルバムでした。
評価:★★★★★
PIZZICATO FIVE 過去の作品
THE BAND OF 20TH CENTURY : NIPPON COLUMBIA YEARS 1991-2001
ほかに聴いたアルバム
DREAM/AI
NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌で、昨年の紅白でも披露した「アルデバラン」を含むAIのニューアルバム。全体的には彼女の声量ある歌声でしっかりと聴かせるスケール感あるバラードナンバーがメイン。トラップ風のリズムを用いた「First Time」みたいな曲もありつつ、全体的には良くも悪くも彼女らしいバラードナンバー一本調子というイメージも。子供を持つ父親としては、父親への想いを綴った「パパへ」みたいな曲は、母親に対する曲に比べると数が少ないだけにうれしかったりもするのですが。AIの魅力はしっかり伝えている一方、個人的にはもうちょっといろんなタイプの曲への挑戦も聴きたいかも、とも思う作品でした。
評価:★★★★
AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST
和と洋
感謝!!!!! Thank you for 20 years NEW&BEST
IT'S ALL ME - Vol.1
IT'S ALL ME - Vol.2
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