デビュー20年を前に、脂ののった傑作
Title:SNS
Musician:アナログフィッシュ
約3年ぶりとなるアナログフィッシュの新作は、前作に引き続き、またもや傑作アルバムに仕上がっていました。アナログフィッシュというと、デビューは2003年と、来年には早くもデビュー20周年を迎えるという、既にベテランの域に入りつつあるバンドです。ただ、ここ最近、バンドとして円熟期に入ったかのような傑作リリースが相次いでおり、むしろデビュー20周年に近づくにつれ、バンドとしての脂がのってきたという感覚すらあります。今回のアルバムに関しても、そんな彼らの勢いを感じさせる傑作アルバムに仕上がっていました。
前作「Still Life」ではメロウなシティポップの作品の中に、感じられる泥臭い要素が彼らの大きな魅力に感じられました。今回もシティポップの要素が大きな魅力となっていました。本作で言えば、まず2曲目「U.S.O.」。メランコリックなメロも印象的で、テンポよいギターの音色も印象的なシティポップ。ラストを飾る「Can I Talk to You」もメロウなメロディーラインが印象に残る作品になっていす。
さらに今回は打ち込みのリズムもアルバムの中で上手く生かした作風になっていました。例えば「うつくしいほし」は打ち込みのリズムでテンポよく聴かせる疾走感ある楽曲に仕上がっていましたし、「Moonlight」もシンセの軽快なサウンドが楽しいポップチューンに。さらに一番印象的だったのが中盤の「Saturday Night Sky」でしょう。リズミカルなアナログフィッシュ風のディスコチューンに仕上がっており、アルバムの中ではひとつの核となっています。
そして、そのようなエレクトロサウンドとシティポップ的な要素を両立させつつ、今回のアルバムでは彼らのギターロックバンドとしての側面が比較的前に出ていたように思います。1曲目の「Miharashi」からして、まずはギターロックの楽曲からのスタートとなっていますし、後半の「Yakisoba」「さわらないでいい」も同じく、ギターロックを前に押し出したような作風になっています。最近は、よりシティポップ路線にシフトした感のある彼らでしたが、その路線を維持しつつ、ギターロックバンドとしての原点に回帰したような印象も受ける作品にあんっていました。
ただ、それ以上に今回のアルバムで印象に強く残ったのがメロディーラインの良さ。決して派手ではないもののメランコリックなメロディーラインが強く印象に残る曲が目立ちます。まずは冒頭の「Miharashi」。ノスタルジックな感覚が切なく、胸がキュンとなるようなメロディーラインが印象的。さらに印象的だったのが「Yakisoba」で、ノスタルジックなメロディーラインがこちらも胸にグッと来るナンバー。どこかにいる好きな人を思い出しつつ、焼きそばを食べるという日常を描いた歌詞がまた、非常にノスタルジーあふれてメロディーもピッタリとマッチしています。以前のアナログフィッシュというと、サウンド的には良いもののメロディーのインパクトが今一つ、という印象があったのですが、いつの間にか、メロディーラインに関しても一級品を聴かせてくれることが出来るバンドになったんだな、ということを感じます。
デビュー当初は注目のバンドとしていろいろと取り上げられることも多かった彼らですが、残念ながら最近は、メディア等で大きく話題になることは少なくなってしまいました。ただ個人的には、今、もっとも過小評価されているバンドと言ってもいいかもしれません。1回聴いた時の印象で、年間ベストには挙げなかったのですが、あらためて聴くと、年間ベストの候補の1枚だったかも・・・。今、非常に脂にのっているバンドなだけに、次回作も期待です。
評価:★★★★★
アナログフィッシュ 過去の作品
荒野/On the Wild Side
NEWCLEAR
最近のぼくら
Almost A Rainbow
Still Life
ほかに聴いたアルバム
伝説の夜を君と/a flood of circle
結成15年目だった2021年の最後にリリースされたa flood of circleのオリジナルアルバム。直近作「GIFT ROCKS」がゲストを迎えての企画盤でしたのでオリジナルアルバムとしては「2020」以来となります。その「2020」が、彼らの持ち味だったガレージサウンドとポップなテイストを上手く折り合わせた傑作だっただけに、続くオリジナルも期待したのですが・・・今回はグッとポップ色に戻ってしまい、また、以前と同じく、ポップス路線のa flood of circleは駄作が多かったのですが、今回のアルバムも正直・・・。「2020」が良かっただけに残念なのですが、また次回作に期待といったところで。
評価:★★★
a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
2020
GIFT ROCKS
dear,deer/tacica
ギターロックバンドtacicaが結成16年目にしてはじめてリリースされたベストアルバム。以前から分厚いオルタナ系ギターサウンドとメロディアスなメロディーラインは魅力的ではあるものの、良くいるタイプのギターロックバンドという印象は否めず、tacicaならではの特徴が薄い・・・という印象を受けていたバンドですが、ベスト盤であらためて過去の曲を振り返っても、その印象は変わりませんでした。というよりも、1曲1曲のインパクトはあるものの、やはりこれといった特色の薄い楽曲が目立つ、という点では、その印象をより強化することになったベスト盤といった感じになってしまいました。ノイジーなギターロック路線は、素直に楽しめるといえば楽しめるのですが・・・。
評価:★★★★
tacica 過去の作品
jacaranda
jibun
HOMELAND 11 blues
LOCUS
HEAD ROOMS
新しい森
panta rhei
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