いかにも「ヒット」しそうなアルバム
Title:壱
Musician:優里
おととしの10月にリリースした配信シングル「ドライフラワー」が驚異的なヒットを続ける男性シンガーソングライター優里。ビルボードのHot100では、2020年の11月以来、1年以上にわたってランクインし続けるという大ヒットを記録しています。ただ、女性スキャンダルが影響したのか、昨年末の賞レースでは、ほとんど「なかったもの」として扱われ、さらには紅白にも落選という自体となってしまい、自業自得の感は否めませんが、若干不遇な境遇である感じもします。とはいえ、今年に入って「ベテルギウス」も「ドライフラワー」並みのロングヒットを記録。待望のデビューアルバムとなった本作も大ヒットを記録するなど、「ドライフラワー」の一発屋かと思いきや、ミュージシャン優里の人気も確実に獲得しつつあります。
さて今回紹介するのはそんな大ヒット中の本作なのですが、大ヒットした「ドライフラワー」や「ベテルギウス」をはじめとして、確かに全体として、この2曲に負けないインパクトある曲も多く、曲に対してではなくミュージシャンに対して人気を得ているのもわかる気がします。特に本作では大ヒットしている2曲「ベテルギウス」「ドライフラワー」をいきなり冒頭に持ってきているあたり、その自信のほども感じさせます。
楽曲的には、あくまでも「ドライフラワー」「ベテルギウス」もそうですが、シンプルに歌を聴かせるミディアムテンポのナンバーがメインなのですが、まず目立つのはオルタナ系のギターロックからの影響を受けているような楽曲。大ヒットしている「ドライフラワー」など、まさにギターロック路線の典型例なのですが、「飛行船」などは疾走感あるギターロック路線でBUMP OF CHICKENからの影響がかなり顕著な作風に。もともと優里自体、THE BUGZYというロックバンドのボーカリストだったらしく、そんなバンド時代からの継続性を感じさせる曲調の作品も少なくありません。
また中盤「レオ」「ピーターパン」のように哀愁たっぷりのメロディーラインの曲も並び、ここらへんは歌謡曲的な側面も。さらに中盤以降でインパクトが強かったのが「かごめ」で、静かなピアノをバックにシャウト気味の力強いボーカルと胸をかきむしるような哀愁たっぷりのメロディーや社会への焦燥感を歌った歌詞が強く印象に残ります。特に、比較的シンプルなラブソングを歌う中で、この自らの焦燥感をつづった歌詞のインパクトはかなり強く、優里の音楽性の幅広さも感じさせる1曲となっています。
シンプルなポップソングがメインであり、メロディー的にも歌詞の表現的にも目新しいものは見当たらないですし、優里だけの個性がどれだけ出ているかと言われると、少々疑問な部分も否めなかったのですが、確かにインパクトのあるメロディーとそれなりにバリエーションある展開が楽しめるアルバムで、こういう楽曲がヒットするんだろうな、とある種の納得感を覚えるアルバムになっていました。おそらく、今後もコンスタントにヒットを続けていきそうな感があります。今後、どのような活躍を見せるのか、注目していきたいミュージシャンです。
評価:★★★★
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