注目度上昇中のインディーフォークミュージシャン
Title:無限のHAKU
Musician:ROTH BART BARON
現在は三船雅也のソロプロジェクトとなっているROTH BART BARONのニューアルバム。前作「極彩色の祝祭」も大きな話題を呼んだのですが、残念ながら現時点ではノーチェック。とはいえ、その評判は随所で聴いていましたので、今回の約1年2ヶ月ぶりとなるニューアルバムで、アルバム単位でははじめて彼らの曲を聴いてみました。ちなみに2008年に結成しているので、既にキャリア10年以上を誇る中堅ミュージシャンとも言えます。
このROTH BART BARONについて、ジャンルとしてはインディーフォークという風にカテゴライズされているようです。基本的にしんみり聴かせるフォーキーな様相のメロディーラインがメイン。ただ、その中で大きな特徴なのは、ホーンやストリングス、ピアノさらにはエレクトロサウンドなどの楽器をふんだんに取り入れて、幻想的な独特の音世界を作り上げている点でした。
例えば1曲目「Ubugoe」ではしんみりフォーキーな曲調なのですが、エレクトロサウンドとトランペットのサウンドが、楽曲に奥行を与えています。「みず/うみ」でも、軽快なドラムのリズムに重なるストリングスやピアノの音色が楽曲に独特の幻想感を与えることに成功しています。「霓と虹」もノイジーなギターの音色と美しいストリングスの音の対比が見事で、ギターの音が鳴り響きつつも、一種の清涼感を作品に与えています。
他にもエキゾチックな雰囲気の「Helpa」やホーンセッションを入れて爽やかで伸びやかに聴かせる「鳳と凰」など、様々な楽曲を取り入れてバラエティー富んだ作風が楽しめる作品になっていました。
ただそんな中でROTH BART BARONの音楽性を形作っているのが、ボーカルもつとめる三船雅也のファルセットボイス。そのハイトーンボイスから繰り出される歌が、サウンドとの相乗効果により幻想的な音楽性を作り上げています。また、凝ったサウンドの中で流れてくるメロディーラインはメランコリックで、どこか暖かさと懐かしさを感じさせます。ここらへんのメロディーラインがインディーフォークである所以なのですが、決して派手ではないメロディーラインながらも、しっかりとリスナーの心に残る歌を聴かせてくれています。
個人的に、先日の2021年の年間ベストの中で次点候補として本作を入れていましたが、最後の最後までベスト10入りを迷ったアルバムで、そういう意味では間違いなく年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。三船雅也のソロプロジェクトとなったのは本作からなのですが、それだけにまだ今後の音楽的な広がりも感じさせます。まだまだこれからが楽しみになってくるミュージシャンです。
評価:★★★★★
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