良くも悪くもビーイング系らしい
Title:慈愚挫愚 参 -夢幻-
Musician:-真天地開闢集団-ジグザグ
フルアルバムとしては4作目となる本作が、いきなりビルボードチャートでベスト3入りし、突然のヒットとなったヴィジュアル系バンド、-真天地開闢集団-ジグザグ。ちなみに読み方は「しんてんちかいびゃくしゅうだん じぐざぐ」と読むそうです。日本の神道的なイメージを突き詰めてヴィジュアル系にしたようなコンセプトのいで立ちに、ライブを「禊」と読んだり、ファンを「参拝者」と読むような独特の世界観を貫いているようなバンド。この独特の世界観がユニークに感じられたので、チャートインする前には一切、音源等を聴いたことのないバンドだったのですが、今回、はじめてアルバムを聴いてみました。
で、このバンドがどういうバンドか調べていく過程で少々驚くことがありました。このレコードの販売元が、GIZA Studio参加のCRIMSONというレーベルだったということ。要するに、彼ら、いわゆるビーイング系のバンドということ。ビーイング系といえば、特に90年代後半、CMソング向けに作られたような異様にキャッチーなサビを持つ画一的なJ-POPサウンドで一世を風靡したグループ。良くも悪くも「売れる」ことに主眼を置いたようなポップソングはヒットチャートを席巻し一時代を築くものの、音楽的な評価は一部のミュージシャンを除き、決して高いものではありませんでした。
そんな画一的なポップソングが特徴的なビーイング系なだけに、彼らのような独特の世界観を持つようなヴィジュアル系バンドを擁している点に少々驚きつつ、ビーイング系も変わったんだなぁ、と思いつつ、アルバムを聴いてみたのですが・・・確かに、ビーイング系のミュージシャンのアルバムになっていました。
その独特のビジュアルイメージとは相反するように、サウンド的には至って爽やかなポップ路線。「タガタメ」などではメタルの色合いが強かったり「死神」や「Requiem」ではデス声などを取り入れたハードコアな路線も目立つのですが、基本的に歌がスタートすると非常にポップで、良くも悪くもキャッチーなメロディーラインが特徴的。「昴」のように和なサウンドをふんだんに取り入れつつ哀愁たっぷりに聴かせる楽曲にも彼ららしさを感じるのですが、アルバム全体としては良くも悪くも聴きやすいポップな路線にまとまっており、「ビーイング系」のイメージを大きく逸脱するものはありませんでした。
最初からこのような路線のバンドだったのか、それとも売り出される過程でこのようなサウンドに変わっていったのかはわかりません。ただ、メタルやハードコアからの影響も強く感じられるだけに、いかにも悪い意味でJ-POP的な、キャッチーだけど平坦なメロディーラインのポップ路線は、個人的には物足りなさを感じます。和風の要素を取り入れた独特の世界観を打ち出しているバンドなのに、メロディーはよくありがちなJ-POPという路線は、ちょっともったいなくも感じてしまいます。
ただ一方、メタルやハードコアの要素だけではなく、ラストの「ナニモシタクナイ」ではパンクの要素も感じられたりと、なにげにユニークな音楽性にはバンドとしての面白みも感じられました。それだけに、いかにもJ-POP的なサウンドとメロディーにまとめ上げられている点はバンドとしてプラスだったのか、かなり微妙な印象も。こういう売れ線な曲の作り方を、ともすれば30年以上、貫きとおすあがりが逆にビーイング系のすごさとも言えるかもしれませんし、こういう売り方しかできないという点がビーイング系の限界とも言えるのかもしれませんが・・・。
ちなみにボーカルの命-みこと-はWANDSのボーカルとしても活動しているそうで、当たり前ですが声が完全に一緒です(笑)。WANDSのボーカルとしては、かなり物足りなさを感じていたのですが、ジグザグでは全く違和感がなかった点、こういうタイプの曲の方が合っているんだろうなぁ、と思ってしまいます。ここらへんの「使いまわし」もある意味、ビーイングらしい感じなのですが。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
Kirari Remixes(Asia Edition)/藤井風
藤井風の大ヒットナンバー「きらり」をアジアで活躍するミュージシャンたちがリミックスを手掛けたナンバー。ソウルや台北、インドネシアや中国など、日本ではあまりなじみがないもののアジア各地で活躍するミュージシャンたちが「きらり」の作品をリミックス。エレクトロサウンドが主体な中でも、ラテンな要素があったり、チップチューン的な曲があったり、トランシーに仕上げてきたり、それぞれの個性を感じさせるのがおもしろいところ。「きらり」という曲を素材にしつつも様々な調理が可能ということを実感できるユニークなリミックス盤でした。
評価:★★★★
藤井風 過去の作品
HELP EVER HURT NEVER
HELP EVER HURT COVER
30Years 30Hits/THE YELLOW MONKEY
今年、デビュー30周年を迎えるTHE YELLOW MONKEYが、サブスク限定でリリースしたベストアルバム。タイトル通り、30曲のヒットソングがつまった内容に。いずれもリマスタリングが施されているため、ファンにとってはとりあえずはチェックしておきたいアルバムかも。THE YELLOW MONKEYについては、既に何枚もベスト盤がリリースされているだけに目新しさはないのですが、歌謡曲とグラムロック的な要素を上手く融合させた独特のロックチューンは、やはり何度聴いても魅力的。最新のベスト盤として、今の時点の入門盤としては最適かも。
評価:★★★★★
THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
Live Loud
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