趣味性の強い「KING」の傑作
Title:KING Deluxe Edition
Musician:忌野清志郎
RCサクセションのデビュー50周年を記念し、ベスト盤をはじめとして、RCサクセションや忌野清志郎にまつわる様々なアイテムがリリースされていますが、本作はその第5弾アルバムとなります。2003年にリリースされた忌野清志郎のソロアルバム「KING」のデラックスエディション。オリジナルアルバムを最新技術でリマスターした上に、彼のプライベートスタジオ「ロックンロール研究所」で発見された未発表音源を追加。さらに通常盤では発表直前にNHK-FMで行ったスタジオライブ音源を追加しているほか、限定盤ではアルバム発売直前に日比谷野外音楽堂で行われたライブの模様の音源も収録されています。今回は、私が聴いた通常盤での紹介となります。
実はこのアルバム、2003年にリリースされた時にリアルタイムで聴いていました。その時の感想は、「ゆういちの音楽研究所」の旧サイトにも載せました。今回、再掲しようかと思って、ログをひっくり返して読んでみたのですが・・・すいません、あまりにも感想が拙くて、載せるのを躊躇していまいました・・・あらためてこのアルバムを聴いた感想を書こうと思います。
この「KING」というアルバムを聴いてあらためて思うのは、忌野清志郎のルーツに対する趣味趣向がかなりダイレクトに反映されたアルバムだったな、という点でした。冒頭の「Baby何もかも」からして、まるっきりオーティスレディングなスタートですし、「WANTED」もホーンセッションやブギウギ的なピアノも入った、60年代あたりを彷彿とさせるような軽快なロックンロールナンバー。暗喩的な歌詞がユニークな「HB・2B・2H」は昔ながらのブルースロック的な楽曲ですし、今の時代を彷彿とさせるような「ウイルス」もホーンセッションが入って、軽快な70年代ソウルなナンバーに仕上がっています。
後半には「約束」のようなフォーキーなナンバーや、有名な反戦歌でありフォークソングである「花はどこへ行った」のカバーなどフォークの色合いの強い曲や、ハードロック的なヘヴィーなギターを聴かせる「モグラマン」や軽快なギターロックナンバーの「胸が張り裂けそう」のようなストレートなロックナンバーも少なくありません。ただ、全体的には軽快なホーンセッションやピアノの音色はストレートにサザンソウルからの影響を強く感じさせ、全体的には彼のルーツの影響を強く感じさせる作風になっていました。もちろん、ソウルやブルースからの影響はRCサクセションの曲にも強く感じられるのですが、ソロアルバムということからでしょうか、そういうルーツからの影響をより強く前面に押し出した作品になっており、そういう意味ではソロらしい、趣味性の高いアルバムと言えるのかもしれません。
ちなみにDisc2のNHK-FMでのライブ音源も、これまた素晴らしい内容に。RCサクセション時代の「スローバラード」や「キモチE」なども披露。2003年の頃は実は私は何度か忌野清志郎のライブを見たことがあるのですが、イベントライブの一環の30分程度のステージだと、当時は「君が代」や「あこがれの北朝鮮」のような、ちょっと飛び道具的な曲が並んでしまっていたのですが、やはりソロライブだとじっくりとRC時代の曲も含めて、魅力的な曲を聴かせるナンバーが並んでいます。結局、清志郎のソロワンマンライブにはいかなかったのですが、このライブ音源を聴くと、やはり一度行っておくべきだったな・・・ということを今更ながら感じてしまいました。
またこの「KING」の中には「奇妙な世界」という反戦歌も含まれています。「自分の国しか知らない人 自分の事しかわからない人」とそういう戦争を起こすような人に対して強烈な皮肉が込められている清志郎らしい作品になっています。先日、ロシアがウクライナに対して侵略戦争をしかけ、現在、世界は非常に混沌とした状況になってしまっています。こんな時代、清志郎だったらどんな歌を歌うのだろう・・・あらためて、今の時代、清志郎が不在であるという事実が残念に感じてしまいます。
あらためて彼のソロアルバムを聴いて、忌野清志郎の魅力を感じることが出来ました。「KING」というタイトルはかなりふてぶてしいタイトルですが、まさに彼こそがロックンロールの「KING」にふさわしいといえるでしょう。そのことを強く感じさせる傑作です。
評価:★★★★★
忌野清志郎 過去の作品
入門編
忌野清志郎 青山ロックン・ロール・ショー2009.5.9 オリジナルサウンドトラック
Baby#1
sings soul ballads
ベストヒット清志郎
COMPILED EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
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