新たな挑戦は買いたいが・・・
Title:effector
Musician:androp
フルアルバムとしては前作「cocoon」から約3年9ヶ月ぶり、ミニアルバム「daily」からもちょうど3年ぶりとなる、ちょっと久々のandropのニューアルバム。コロナ禍の中でも配信シングルの発表やオンラインを含むライブの実施などはコンスタントに行っていたようですが、レーベル移籍などもあった影響か、新曲としては久しぶりとなるリリースとなりました。
さて、andropといえばそのフルアルバムとしての前作「cocoon」は非常にバラエティーに富んだ作品になっていました。ギターロックという彼らの主軸になるような楽曲に加えて、エレクトロやポップス、シティポップやHIP HOPまで挑戦した傑作に仕上げてきました。それに続く本作も、非常にバラエティーに富んだ作品になっていたのが大きな特徴。特に1曲目「Beautiful Beautiful」はいきなりトラップを取り入れたHIP HOP風の楽曲に。途中からはメランコリックな「歌」がはじまるのですが、冒頭は「誰の曲だ?」と驚いたほどでした。
その後も「Chicago Boy」はラテン風のリズムが加わる陽気な楽曲に。「Lonely」は打ち込みも入ったダウナーな雰囲気のポップス、「Water」はムーディーなホーンセッションの流れるシティポップ風の作品、「Gain」は再びトラップ風のリズムにサンプリングの要素も加えたHIP HOP的なサウンド、「Iro」は再びメロウなシティポップ風の作品と続いていきます。
今回のアルバムは、サブスク等では10曲のみ配信され、CD盤では4曲追加という構成になっているのですが、特にサブスクで聴くことが出来る10曲については、シティポップやHIP HOP的な要素が強かったのが大きな特徴。「Moonlight」のようなバンドサウンドを取り入れた曲もあったのですが、全体としてはバンド色が弱めの構成となっていました。
ただ、この様々な作風への挑戦というのは非常におもしろいのですが、アルバム全体としては非常にチグハグ感の否めない内容になってしまったように思います。特にHIP HOPやシティポップに挑戦しているのですが、そちらに振り切れているわけでもなく、彼らの持ち味であった「歌」も全体的には抑え気味。全体的には物足りなさを感じてしまいました。
特に前作「cocoon」でもアルバムの軸となっていたのがCreepy NutsやAimerとのコラボ曲であり、若干「ドーピング気味」と言えなくもない内容にもなっていました。そういう意味では今回の曲はそんなドーピングがなかった反面、アルバム全体としてのインパクトも薄くなってしまったのかな、と感じてしまう作品でした。
様々な作風への挑戦心は買いたいのですが、個人的には次はシンプルなギターロック路線の曲も聴きたいような。ちょっと惜しい感の強い作品でした。
評価:★★★★
androp 過去の作品
door
relight
one and zero
period
androp
best [and/drop]
blue
cocoon
daily
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