エキゾチックな香り漂う
Title:Raise The Roof
Musician:Robert Plant&Alison Krauss
ご存じレッド・ツェッペリンのボーカリスト、ロバート・プラントと、ブルーグラス/カントリーの女性シンガー、アリソン・クラウスによるコラボアルバム。ロック界、それもハードロックの祖とも言えるレッド・ツェッペリンのボーカリストと、カントリー系の女性ミュージシャンという異色の組み合わせとも言えるのですが、ご存じの方も多いと思いますが、もともと2007年にこのコンビでアルバム「Raising Sand」をリリース。同作がグラミー賞の最優秀アルバム賞と最優秀コンテンポラリー・フォーク/アメリカーナ・アルバム賞を受賞するなど大きな評判を呼び、さらに「ローリング・ストーン誌」が選出した「2000年代のベストアルバム100」の55位にランクインされるなど、高い評価を得ているようです。
前作「Raising Sand」については私は未聴なので、今回のアルバムでこの2人のコンビのアルバムについてははじめて聴くことになりました。アルバムのスタイルとしては、基本的にアリソン・クラウスによるボーカルが主軸となっており、ロバート・プラントのボーカルがそれに重なる形というスタイルがメイン。もっとも、何曲かは、ロバート・プラントがメインを取っています。アリソン・クラウスの歌声は今回はじめて聴いたのですが、非常に清涼感あふれるボーカルが魅力的。また、同時に包容力も感じさせます。さらにロバート・プラントのボーカルもアルバムの中で大きな魅力に。ロバート・プラントといえば、レッド・ツェッペリンで聴かせる伸びやかなハイトーンボイスが特徴的で、今回はさすがにツェッペリンばりの張り上げるようなボーカルはないのですが、齢73歳という年齢を感じさせない、艶のあるボーカルを聴かせてくれています。
楽曲としては、全体的に落ち着いた、ちょっと語弊のある言い方かもしれませんが「大人の音楽」を聴かせてくれています。「Last Kind Words Blues」や「My Heart Would Know」はアコースティックでカントリー色が強い作風で、アリソン・クラウスの趣向が強い感じでしょうか。逆に、ロバート・プラントがメインでボーカルを取る、ブルージーな「You Led Me to The Wrong」や、ブルースロックの「You Can't Rule Me」などは、完全にロバート・プラントの趣向が強い感じがあります。
ただ、アルバムの中でひとつ大きな特徴として感じたのは、全体的にどこかエキゾチックな香りが漂っているという点。アルバムの冒頭「Quattro」のイントロの哀愁感たっぷりのギターからして、まずはエキゾチックですし、続く「The Price of Love」も郷愁感ただようヘヴィーなサウンドにエキゾチックな印象も。また、その後も「It Don't Bother Me」のリズムにもトライバルな要素を感じますし、ブルージーな「You Led Me to The Wrong」にもトライバルなリズムが加わっており、エキゾチックなムードが漂います。
また本作でユニークな点といえば、カントリーとブルース、全く違うジャンルからの影響をダイレクトに受けた曲が並んでいるにも関わらず、アルバム全体としてしっかりと統一感があるという点でしょう。その両者をむすびつけるのが、まさにエキゾチックな要素という部分なのかもしれませんが、もともとアメリカの昔からの音楽ということで両者がそれぞれ影響を与え合ったという歴史もあるそうです。そういう意味では白人ルーツのカントリーと黒人ルーツのブルースと、全く正反対の音楽性のようで、実はそれなりに音楽性に近いものがある、ということを、このアルバムで感じました。
ロバート・プラントとアリソン・クラウス、それぞれ全く異なるジャンルの音楽を奏でる2人ですが、なにげに強い共通項も感じられる作品に。なによりも2人とも歌声に惹かれる内容になっていました。決して目新しさはないのですが、2人のボーカリストに魅了される「大人な」1枚でした。
評価:★★★★
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