「卒のない」傑作
Title:Turntable Overture
Musician:カーネーション
途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、オリジナルアルバムとしては「Suburban Baroque」から4年2ヶ月ぶりとなるCarnationのニューアルバム。2018年には結成35周年のベスト盤「The Very Best of CARNATION "LONG TIME TRAVELLER"」をリリースしていますから、来年にはまさに結成40周年という超ベテランバンドになる彼ら。毎回、非常に良質で安定感のあるポップソングを聴かてくれる彼らですが、今回のアルバムに関しても、そんな期待にそぐわない作品を聴かせてくれました。
基本的に「ロック」をベースとしつつも、様々な音楽的要素を卒なく取り込んだ楽曲が大きな魅力の彼ら。今回のアルバムもまず1曲目「Changed」では、非常に力強いベースラインやドラムスを聴かせてくれ、ベテランとは思えない迫力あふれるサウンドで現役感を聴かせてくれます。続く「SUPER RIDE」「その心の果て」はどちらかというとAORの枠組みになりそうな聴かせる大人な雰囲気を醸し出す楽曲になっていますし、かと思えば「BABY BABY BABY」はホーンセッションも入れて賑やかなサウンドが楽しめます。
「Highland Lowland」は一転、オルタナ系のギターロックバンドを彷彿とさせるようなノイジーなギターを主軸に聴かせる楽曲になっていますし、「霧のスーヴェニール」はストリングスを入れたムーディーな雰囲気の曲調に。同じくAOR的な「マーキュロクロムと卵の泡」が続いたかと思えば、「Rock On」「I Know」はどちらもヘヴィーなサウンドを聴かせるロックチューンへと変化していきます。最後はフォーキーに聴かせる「海の叙景」からピアノも入ってメロディアスに聴かせるギターロック「Blue Black」へ続きアルバムは幕を下ろします。
正直言うと、様々な音楽性を取り入れているのですが、全体的には目新しい感じはありませんし、どちらかというとベテランバンドらしい「卒のなさ」を感じる展開になっています。ここでも何度か書いたかと思うのですが、雑誌「Rockin' On JAPAN」に良く取り上げられるバンドのことを「ロケノン系」と言ったりしますが(といっても、同誌は最近すっかりアイドル雑誌に変貌してしまいましたが)、彼らに関しては、良くも悪くもMusic Magazine誌が好みそうなタイプのバンドだな、ということを毎度思ったりします。
そういう卒のなさは今回も感じつつ、やはりバラエティー富んだ音楽性、その中でもほどよく迫力と若手に負けない現役感を覚える力強いロックサウンド、さらにキャッチーではないもののそれなりにインパクトを持ってポップにまとめあげているメロディーラインと、作品として非常に優れた内容になっているのは間違いありません。そういう意味では、間違いなく「傑作」としての評価以外できない作品になっていました。やはり凡百のバンドとは大きく異なる実力を感じさせる作品になっていました。
ちなみにここ最近の恒例なのですが、本作もDisc2としてインスト盤もついてきます。こちらも彼らのバンドとしての自信を感じさせる内容に。バラエティー富んだ音楽性がよりはっきりと理解できる作品となっていました。あらためて彼らの実力を実感できた傑作でした。
評価:★★★★★
カーネーション 過去の作品
Velvet Velvet
UTOPIA
SWEET ROMANCE
Multimodal Sentiment
Suburban Baroque
The Very Best of CARNATION "LONG TIME TRAVELLER"
ほかに聴いたアルバム
TK WORKS ~TETSUYA KOMURO HITS NONSTOP MIX~
タイトル通り、小室哲哉プロデュースの楽曲36曲をノンストップミックスでつないだDJ盤。ミックスはあのTRFのメンバーであるDJ KOOとゆけむりDJsが担当しています。ただ、基本的には小室哲哉プロデュースの作品を並べただけといった感じで、これといって新しい発見はありません。また、おなじみの大ヒット曲は、それなりにおさえてはいるものの全体的には「さほどヒットしなかった」プロデュース曲も多く、おなじみのヒット曲が並んでいるか、と言われたら若干の物足りなさも・・・。ただ、純粋に小室哲哉のオムニバスとしては楽しめる内容にはなっていました。
評価:★★★★
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