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2022年3月27日 (日)

レコ大受賞で勢いにのるバンドの新作

Title:ハッピーエンドへの期待は
Musician:マカロニえんぴつ

昨年はレコード大賞の最優秀新人賞を受賞。いかにも事務所の力関係で決まりそうなレコ大新人賞は、近年、ほとんどアイドル系で占められているため、彼らみたいなバンド系が新人賞を受賞したのは異例中の異例でかなりビックリしました。おそらくバンド系がレコ大の新人賞を受賞するのは1990年のたま以来では?それに伴い、今年の年初からレコ大受賞曲の「なんでもないよ、」がロングヒットを記録。いままで、アルバムではヒットを飛ばしていたものの、シングルで大きなヒットのなかった彼らですが、まずはようやくヒット曲を出すことが出来ました。

さて、そんな勢いのある中でリリースされたのが今回のアルバム。フルアルバム前作「hope」は彼らの勢いを反映されたような傑作に仕上がっていた反面、前作との間にリリースされたミニアルバム「愛を知らずに魔法は使えない」は正直なところ、期待はずれの凡作に仕上がっていました。ただ、それに続いた今回のフルアルバムは、前作「hope」と同様、今、脂にのっている彼らの勢いを反映されるような傑作に仕上がっていました。

まず冒頭からインパクトある彼ららしいポップチューンが仕上がっています。タイトルチューン「ハッピーエンドへの期待は」に、アニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」のオープニングにも起用された「生きるをする」、さらに「八月の陽炎」とポップなメロディーがインパクト満点のギターロックナンバーが続きます。「生きるをする」はミニアルバム「愛を知らずに~」にも収録されており、あのアルバムの中ではちょっと平凡なJ-POPにも感じたのですが、今回の冒頭3曲の流れの中では彼ららしいポップチューンとしてしっかりとはまっていたように感じます。

基本的にその後も冒頭3曲のような、シンプルなギターロック路線にポップなメロディーラインという曲が並んでおり、非常にシンプルなポップソングというのが大きな特徴となっています。ただ一方、特に後半になるとサウンドにバリエーションが出てきて、それがひとつのインパクトとなっていました。ピアノを主導とした分厚いサウンドを聴かせる「はしりがき」、アコギ弾き語りでフォーキーに聴かせる「キスをしよう」、軽快なギターロックかと思えば途中、ダブ的なサウンドやジャジーなサウンドが飛び出してくるユニークな展開の「トマソン」に、ヘヴィーメタル風の「TONTTU」と続きます。

前作「hope」でもノベルティー的な要素がひとつの魅力となっていたのですが、今回もこの「トマソン」や「TONTTU」が非常にコミカル。ちょうどアルバムの中盤にこういうコミカルな曲が入ることによって、リスナーの耳をアルバムに惹きつける大きな要素となっている構成も見事。そして、そんな中、後半に登場するのが大ヒットした「なんでもないよ、」。ピアノやシンセのサウンドを入れて分厚くまとめたサウンドも印象的ですし、シンプルな日常を描いたラブソングも魅力的。確かに非常に良くできたポップソングになっており、新人賞受賞や大ヒットも納得です。

「hope」に引き続き、今の彼らの勢いを感じさせる傑作アルバム。比較的シンプルながらもほどよくポップなメロディーラインに、過剰になりすぎずも、それなりに分厚いサウンドが耳に残るバラエティーに富んだサウンド、さらに嫌味にならない程度のノヴェルティー要素と、いずれもバランス良く、良くできたポップアルバムといった印象を強く受ける作品になっています。逆に、ここらへんのバランスが崩れると・・・という懸念もあるのですが、そのバランスをいかに保てるかが、今後の彼らの課題でしょうか。ともかく、大ヒットも納得の1枚でした。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★★

マカロニえんぴつ 過去の作品
season
hope
愛を知らずに魔法は使えない

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